晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

宇江佐真理 『十日えびす』

2018-05-27 | 日本人作家 あ
さて、宇江佐真理さんの未読本はあとどれくらいで
しょうかね。読破してしまうととってもさみしいの
で、少しずつ読んでいくことにしています。

錺(かざり)職人の三右衛門が急死し、妻の八重は
近所の人の手助けもあり通夜だの葬儀だのの準備で
たいへん。

じつは八重は後妻で、三右衛門と前妻との間には、
男3人女3人と6人も子がいますが、末っ子の娘(
おみち)以外は結婚したり独立したりで一緒には住
んでいません。
この(おみち)と八重、血こそ繋がってませんが、
とっても仲良し。

葬儀も終わり、家族が集まって、そこで長男がいき
なり「いままで義母さんにはお世話になったが、こ
の実家は俺の家族が住む」と言い出します。

おみち以外のきょうだいとも話はついていたようで、
もう四の五の言っても仕方ないということで、八重
は引っ越すことに。

新居はわりと賑やかな所で、隣は豆腐屋、向かいに
は畳屋、総菜屋、茶屋。
近所に引っ越しのあいさつを済ましますが、玄関に
女性が立ってて「(おれ)の家にあいさつ無しかい」
といきなりケンカ腰。名を訪ねても「名無しの権兵
衛だ」とふざけます。

聞けば、近所に住む(お熊)で、病弱の息子と住ん
でいるらしく、近所の厄介もの。朝から布団を叩い
て、近所迷惑だと注意した男に水をぶっかける始末。
地元の岡っ引きも関わりたくなさそう。

さっそく、小間物屋を始める八重とおみち。月命日
に実家に線香をあげに行きたいのですが、留守には
できないし、どうしようとしていたら「おれが見て
てやる」とお熊。あれ、案外いい人?

それからのち、長男の嫁が八重のところに来ます。
何をしに来たのかと聞けば、法事でお坊さんが家に
来てお布施代を出してほしいというのです。
八重を追い出しておいてこの言い草にふざけるなと
口論になっているところにお熊が来て嫁を追っ払い
ます。ですが改心したのかと思いきや朝っぱらから
布団叩きは相変わらず続けてるし、隣の豆腐屋は朝
早くから仕事をはじめるしで八重は参ってしまいそ
うに。

さらに頭の痛い問題が。お熊の息子(鶴太郎)は、
病気になる前は絵師をしていたようなのですが、あ
る日、おみちが「絵を書いてもらったの」と嬉しそ
うにしています。おみちの良い嫁ぎ先が決まるとい
いなと思っていた八重ですが、よりによってお熊の
病弱な息子と・・・

しばらくして、長男の一家が夜逃げしたという衝撃
のニュースが・・・

ご近所トラブルや家族問題など現代にも通じる悩み
ですが、八重もおみちも「やられたからやり返す」
ようなことはしません。別に自分たちは何も悪いこ
とはしてないんだから堂々と振舞えばいい、自分を
下げる必要は無い。
これが簡単なようで難しいですね。
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佐藤雅美 『槍持ち佐五平の首』

2018-05-22 | 日本人作家 さ
だいぶ間をあけての投稿となってしまいました。

というのも、今月に入ってから、やたら眠くて、
だいたい夜の7時ごろ夕飯を食べて、それから
なんだかんだで9時ごろにはもう布団に入って
そのままスヤーといってしまいます。

読書タイムは基本的には就寝前の1時間ぐらい。
本が面白くてどうしようもないときには2時間
や3時間になってしまうこともありますがここ
しばらくは読書タイムが取れないので、移動中
や病院での待ち時間にちょこちょこと読む程度。

ま、そんな個人的な話はさておき、佐藤雅美(
まさよし)さんの作品ははじめて。

この作品は時代小説の短編集で、簡単にまとめ
てしまえば全部いやーな話。
全編、江戸時代の武士の陰湿な、狡猾な部分を
描いていて、江戸時代はいい時代だった、武士
はみんないい人、そんな風に思ってる方には逆
な意味で「面白い」作品だと思います。

ある旗本の娘の嫁ぎ先を探すために旗本家の用
人が奔走し・・・という「小南市郎兵衛の不覚」。

陸奥相馬藩の家来は参勤交代の宿を予約します
が、あとから格上の会津藩が宿を横取りしてき
て・・・という表題作の「槍持ち佐五平の首」。

江戸末期の旗本、近藤重蔵という人物記の「ヨ
フトホヘル」。このタイトルは、近藤がかつて
蝦夷地取締り役だったことを、当時のスター、
太田南畝が「近藤はじつはロシアの回し者で、
酔うと吠える(ヨフトホヘル)という」と付け
た、とか。

幕府の御役「小普請組組頭」に入った新入りに、
先輩が陰湿な嫌がらせを・・・という「重怨思の
祐定」。

先輩の夜食のお粥に灯油を入れたというなかなか
ブッ飛んだ矢部駿河守定謙を描いた「身からでた
錆」。

とにかく見栄っ張りな津軽藩の当主、右京太夫が
息子に(よかれ)と思ってしたことが・・・とい
う「見栄は一日 恥は百日」。

農家の嫁に乱暴し、それを止めに入った亭主の腕
を刀で斬ってしまった大名、井上河内守正甫の話
の「色でしくじりゃ井上様よ」。

天保の改革でお馴染み水野忠邦が家来に水野家の
家譜編纂を命じたところ、八代目当主の忠辰とい
う人物が「十四歳で家督を継ぎ、二十九で病を得
て卒す」とだけで、詳しく調べると座敷牢で亡く
なったことが分かり・・・という「何故一言諫メ
クレザルヤ」。

井上河内守の話は池波正太郎さんの短編に架空の
大名としてありましたね。
この作品に限らず、江戸時代の幕閣あるいは大名
家の権謀術数、または末端武士の悲劇などはよく
書かれてきましたが、この『槍持ち佐五平の首』
の読後の「やりきれない」感はなんともいえず、
強烈です。
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岡崎琢磨 『珈琲店タレーランの事件簿2』

2018-05-12 | 日本人作家 あ
このシリーズの1作目を読んで「早く次作を読まないと」
と投稿したのが2015年の12月。

どうせ間をあけるならそんなこと書かなきゃいいのにと
考えなくもないですが、読み終わった後にそう思ってし
まったのですからしょうがありません。

ざっと簡単に説明しますと、アオヤマという京都に住む
大学生が「タレーラン」という名の喫茶店を見つけます。
この喫茶店はいまどき珍しく豆から挽いてドリップする
本格派。しかも若い女性(オーナーはおじさん)。

この若い女性、切間美星は謎解きが好きで、アオヤマは
美星が目当てなのか彼女のコーヒーが目当てなのかタレ
ーランに通い、ちょっとした不思議な出来事を話して、
それを状況説明だけで美星が解決していきます。

ちなみになぜアオヤマは青山と漢字ではなくカタカナな
のかは1作目にその理由があった、と思います。

さて、今作では、美星の妹で、東京で学生をしている、
「美空」が登場します。なにやら複雑な家庭の事情で、
ふたりの仲はあんまり良さそうではありません。

ところで美空は何をしに京都へ、というのはこの物語
の中心部分ですが、それよりも美空は京都観光という
ことでさっそく伏見稲荷へ。ですがアオヤマと美星と
は別行動。そこでちょっとした謎があったのですが、
ちょちょいと解決しまして、さて美空の話。

彼女は何者かに会いに京都に来たらしいのですが、文
中に、なにやら意味深な、男のつぶやきが・・・

美空はスマートフォンとガラケーの、いわゆる「2台
持ち」で、一般的に若い女性が2台持ちをする理由と
して、彼氏との通話はガラケーで、ネットはスマホで
というものなのですが、では美空は恋人に会いに京都
に来たのでしょうか。まあこの「2台持ち」が、ある
事件の解決のカギになったりします。

「携帯電話の普及で、それまでの舞台やドラマや映画
のセオリーが変わる」と、どなたかが言ったような、
じっさい、公衆電話を使ったトリックだのロマンスは
「携帯あんじゃん」の一発解決で、まったくもって、
トリッキーでもロマンチックでも無くなってしまいま
した。

そこでこの「2台持ち」という(文化)をミステリに
取り入れたのが、まるで「フィンチの嘴」のような
(進化)を見た、ような気がします。

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乙川優三郎 『五年の梅』

2018-05-04 | 日本人作家 あ
時代小説に限らず、この作家さんの作品を読むのにちょうど
よい季節というのがあるような気がしまして、まあ分かり易
い例えでいうなら、ホラー系は夏、じっくり読ませる長編は
秋といったもので、乙川優三郎さんはズバリ「冬」ですね。

この投稿が5月のはじめ、まあ今年は異常気象で4月の時点
で夏日連発とすでに初夏を通り越してしまったようですが、
読むんだったらもう1~2ヵ月ぐらい前ぐらいだったら良か
ったなあなどと今さらなことを書きつくればあやしうものこ
そぐるほしけれ、ですよ。

そんな与太話はさておき、この『五年の梅』は、山本周五郎
賞を受賞したそうです。
山本周五郎も読むのは冬がいいですね。

どこかで雨宿りをしている矢之吉とおふじという男女。しか
し悪態をつきあっています。矢之吉はもともと店の手代で、
おふじは小料理屋の女給。矢之吉はおふじに入れ揚げてしま
い、とうとう店の金を盗んで逃げ・・・という「後瀬の花」。

小間物問屋の女将、おさいは、宴会の帰り、幼なじみの清太
郎に会います。おさいはかつて職人の父と二人暮らしで、清
太郎とは近所付き合いをしていました。ところが父が急死、
おさいは引っ越します。久しぶりに再会した清太郎は「あの
時、私はおさいさんのことが・・・」という「行き道」。

裏店に住む鹿蔵とおつねの夫婦。鹿蔵は一応は職人ですが、
なにかというと「気に入らねえ」といって仕事をせず夫婦は
貧乏。ふたりには政吉という子がいたのですが政吉は父に愛
想を尽かして家出します。それから10年、とうとうおつね
の我慢も限界に達し、鹿蔵を置いて家出を・・・という「小
田原鰹」。

三度目の嫁ぎ先の家に向かう志乃。志乃は藩家老の妾の子で、
養家から「あなたはうちの子ではない」と突き付けられてか
らそれこそ(たらい回し)のように嫁いでは離縁を繰り返し、
そして三件目の婚家は十俵二人扶持という柔術師範の岡本岡
太という男。さて、嫁いだ晩、岡太が夕飯に出したのは茹で
た蟹。武家の娘が食べるようなものではないのですが食べて
みると案外美味しく・・・という「蟹」。

村上助乃丞は、友人の矢野藤九郎を心配しています。という
のも矢野は藩の台所奉行なのですが、藩主のお殿様が食事を
しないことに藩内から「台所方が悪い」と責任を取らされそ
うになって、日夜、献立を考えています。村上は矢野の妹と
恋仲でしたが、ある日、村上は一方的に「妹と別れたい」と
言い出します。すると後日、矢野の耳に、藩の近習役の村上
が殿に「病気でもないのに食べないことで藩にどれだけ迷惑
をかけてるか分かってるのか」と言い放ち、寺に蟄居の処分
を下され・・・という「五年の梅」。

江戸時代は、島原の乱を最後に大きい戦争(小規模の反乱は
あったでしょうが)が200年以上も無かった、世界史的に
も稀な時代でして、まあこれを「平和」と捉えてもいいので
しょうが、徳川将軍家を頂点とした徹底的な封建社会で、当
然ながら一般市民に「自由」などなく、当時の庶民の暮らし
は果たしてハッピーだったのかは分かりません。
とはいえ、どうせ生まれてきたからには笑って死にたいのは
いつの世も同じでしょうから、限界下でも幸せを見出そうと
庶民は努力をしていたのでしょう。
ということを読み終わって考えさせられました。
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