晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

大沢在昌 『新宿鮫VI 氷舞』

2012-11-29 | 日本人作家 あ
今現在シリーズ途中まで読んで、これから全巻制覇したいなあ、と
思っているのが、「ダレン・シャン」と、この「新宿鮫」。

冒頭、鮫島は、新宿署の同僚で鑑識の藪といっしょに芝居を観ています。
その芝居とは女優の一人芝居で、鮫島はのめりこみます。

それはさておき、今回の”事件”のはじまりは、鮫島が偽造クレジット
カードの故買屋の住むマンションを見張っていたときに、新宿のホテル
で外国人の死体が発見されたと通報が入ります。

現場にかけつけると、そこには鮫島の同期で公安部の香田が。捜査権は
所轄から公安部に乗っ取られます。

被害者の外国人男性は、元CIAの人間ということがわかり、さらにコカイン
の常習者。しかしこれだけで香田の所属する公安の外事一課が動くとは、
どうにも不自然です。

さて、カードの故買屋のところにいた男は渋谷の平出組というヤクザで、
平出組は比較的新しい組織で、コカインを扱っているとのこと。

そんなある日、前作「炎蛹」で海外に高飛びされてしまった仙田から
鮫島に会いたいと連絡があり、そこで驚きの情報が。新宿で殺された
外国人、ブライドは平出組とコカインビジネスをしていたというのです。

そこで鮫島は、前岡という男を見張ろうとしていた矢先、渋谷の平出組
事務所に公安総務課があらわれて、前岡を連れて行ってしまったのです。

これには、外事一課の香田も、もちろん鮫島もわけが分かりません。
どうやらブライドにまつわるこの事件は、どこかで誰かが”フタ”をしよう
としているのか・・・

クレジットカードの紛失で鮫島に連絡があった女性は、冒頭で観た芝居に
出ていた女優で、彼女から聞いた、逗子で起こった知人の殺人事件とは
一体・・・

そんな中、香田から鮫島に連絡が。さっそく会うと、香田は今回の事件の
公安部長や総務課長の方針に納得ができない様子で、鮫島の持っている情報
を聞きたがります。
そこで、この事件には公安OBの”ある男”が絡んでいる、と教えるのですが・・・

ところで、今作では、鮫島の恋人、晶のがすっかり”売れっ子”になり、なか
なか会えずにいます。しかも、鮫島は舞台で観た女優に惹かれはじめるのです。
本筋の事件の方も気になりますが、晶との今後も気になるところ。こういった
関係なさそうな話の絡ませ方が実に巧いですね。
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ジェフリー・アーチャー 『遥かなる未踏峰』

2012-11-25 | 海外作家 ア
『遥かなる未踏峰』は、ジェフリー・アーチャーの作品では珍しい、
実在の人物の伝記的な作品で、主人公は、ジョージ・マロリー。
マロリーって?名前だけ聞けばよく知られてませんが、「なぜ山に
登るんですか」「そこに山があるからだ」は誰でも知ってる有名な
言葉ですね。それを言ったのがマロリー。
恥ずかしながら、じつはずっと、エベレスト初登頂のエドモンド・
ヒラリーの言葉だと思ってました。

登山家のマロリーは、エベレスト登頂に最後のキャンプを出てから
戻ってこず、遺体は70年以上たってから、発見されました。
そして、遺体の服のポケットには、「あるはずのもの」が入ってい
なくて、捜索隊は歓喜の声を上げる・・・というところから話がス
タート。

イギリスの司祭の家に生まれたジョージ・マロリー。幼いころから
冒険心は人一倍。ただ、どうにも時間にルーズで、あまり大人の
いうことを聞かないような面もあり、高校の登山サークルでは先生
の面目を潰す、大学受験に大遅刻するなど、のちにイギリスの英雄に
なる男の人間くささが描かれていて、序盤からマロリーという人物像
に惹かれます。

さて、ケンブリッジ大学には、なんとか温情もあって合格できます。
登山サークルに入るのですが、そこでマロリーは”事件”をやらかし
ます。フランスの山に登った帰りにパリに宿泊していたマロリー達。
マロリーは、友達といっしょにホテルを抜け出し、夜のパリへ繰り出し、
なぜかそこでエッフェル塔に登ってしまうという奇怪な行動に。
引率の教授がなんとかパリ警察と話をつけて逮捕までは至らなかった
のですが。

大学を卒業することになり、もちろん山登り生活できるわけもなく、
学校の先生に。そこで学校の理事の娘、ルースと出会い一目惚れし、
マロリーはルースと結婚します。

じつはその馴れ初めもちょっとばかりの”事件”が絡んでいて、マロ
リーらの登山隊はフランスにいたのですが、そこから消えて、理事の
家族旅行先のベネチアに向かって、ルースと会って、なんとそこでも
ベネチアの歴史的建造物によじ登ってしまいます。

そんな”変人”マロリーですが、学校の先生の仕事はきちんとやり、
家庭では良き夫、父となります。そこに、ケンブリッジ時代の恩師
から、エベレスト登頂隊のメンバーに推挙され・・・

20世紀初頭、地球上で人類の未到達な場所に誰が一番乗りできるか、
という競争があって、北極点はアメリカ人が、そして南極点へは
イギリスのスコット大佐が挑戦しましたが、隊員のほとんどが死亡
するという惨事があって、その隙にアムンゼンに先を越されてしまい、
残るは世界最高峰のエベレストに、これはイギリス人が人類初になら
なければ、という想いが強かったようです。

しかし、エベレストにせよ南極にせよ、当時は酸素ボンベ使用の是非
などが問われていて、マロリーは使用に反対、そして彼のライバルに
して親友のオーストラリア人登山家、フィンチは使用賛成派でした。

それはさておき、人類初のエベレスト登頂に挑むイギリス隊。残念
ながら最初のチャレンジは失敗に終わります。
ところが、イギリスに戻ってみると、マロリーは英雄になっていた
のです・・・

そんなこんなで2度目の挑戦でマロリーは帰らぬ人となってしまう
のですが、愛する妻に、エベレストの頂上に着いたら、君の写真を
頂上に置いてくるよ、と手紙に残しています。
はたしてマロリーは成功したのか・・・

エベレスト山頂付近の過酷さ、山を「レディー」と擬人化しての
情景や隊員の心理描写は圧巻。コタツに入って茶でも飲みながら
読んでいても「うわ、ここで落ちたら・・・」とビシビシ伝わって
きました。
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楡周平 『骨の記憶』

2012-11-20 | 日本人作家 な
今までに読んだ楡修平の作品は、ハードボイルド、アクション的な、
ページをめくる手がとまらないスピーディー感といったようなもの
でしたが、『骨の記憶』は、じっくりと読んでいく、ページを遅く
めくる、そこに書かれている一文字一文字を噛み締めて、といった
感じ。

年老いた清枝は、夫の入院する病院にでかけます。今までは大きな
街の大学病院に入っていたのですが、お金を切り詰めなければばらず、
また夫も、かつて父が世話になった地元の病院がいいということに。

夫の弘明は、末期の状態で、余命はあとわずか。入院費や生活費は、
家が持ってる土地や山を売ってくれ、と言うのですが、じつは清枝
は、それらをとっくに売り払っていたのです。

かつては地元の名士だった曽我の家。しかし、大きな屋敷は今では
荒んだ状態。しばらく放っておいたので掃除をしなければ、とため息
をつく清枝。そこに宅配便が。

送り主は「長沢一郎」とあります。長沢は、清枝と弘明の中学の同級生
で、中学を卒業して東京に就職し、わずか一年で火事で死亡しています。
そんな長沢からどうして今さら荷物が?

タチの悪いいたずらと思い、箱を開けてみると、中には人骨が。

手紙も入っていて、そこには、「この骨は、50年前に失踪した、あなたの
父、杉下良治氏のご遺骨です」とあります。そして、50年前の失踪事件の
真実が書かれていて・・・

ここから、東北の片田舎に暮らす少年、長沢一郎と曽我弘明の話にタイム
スリップ。
一郎の家は貧しい農家で、毎日食べていくのがやっと。もう小学5年生の一郎
は大事な「働き手」なのですが、曽我の弘明と遊ぶといえば、家の手伝いから
解放されます。
というのもこの地域では曽我といえば大地主で篤志家、地元の名士で、近々、
製材所を建てるので、そこで働かせてもらいたいので、いわば一郎と曽我の
息子を「顔つなぎ」させておく、という腹積もり。

そんな一郎と弘明ですが、他人にはどうしても言えない”秘密”があります。
それは、小学校の杉下先生が、キノコ狩りに出かけるといったまま行方不明
になった事件の”真相”だったのです。
杉下先生の娘で、美人の優等生、杉下清枝は、父の失踪のあと、仙台に引っ越
します。
”秘密”は中学の卒業までしっかり守られ、やがて一郎は集団就職で東京し、
弘明は仙台の私立高校に進学、と別々の道に。

一郎は、都内のラーメン屋で働きはじめますが、食べ物屋なら食いっぱぐれが
無いという甘い考えが吹っ飛ぶような劣悪な職場環境。くわえて地理も分からず
出前は遅刻、行く先々で訛りをバカにされます。
しかし、そんな中でも一つ上の先輩、幸介はいろいろ気を使ってくれ、時には
悪い遊びも幸介に教えてもらったりします。

ところが、幸介が店の帳簿をごまかして金をちょろまかしていたことが発覚、
幸介は即刻クビ、そしていつも一緒にいた一郎も疑いの目が。
そして、ふだんは無口な先輩から、はやくこの店を辞めて別の仕事を探した
ほうがいいよ、とアドバイスされますが、しかし行くあてがありません。

その日の夜、一郎の寮に遊びに来た幸介。いざとなったら俺が仕事先を紹介
してやるとデカイ口を叩いて酔って寝てしまいます。
一度実家に帰って、それから身の振り方を考えようとする一郎。

上野から電車に乗り、福島の郡山に着いたあたりで、持ってきた雑嚢を開くと、
その雑嚢はなんと幸介のものだったのです。
この当時、幸介や一郎の父親世代はもれなく徴兵に行っていて、そこで支給され
た雑嚢は同じ規格のものなの。
中には、幸介の話していた、戦死した父親の恩給の証明書、そして田舎の土地の
権利書、さらに少ないながら現金も。
これはいけないと思って上野に戻る一郎。

そして、寮の最寄駅に着くと、その寮がある方面が騒がしく、消防車や野次馬が。
寮は全焼していました。怖くなって、その夜は上野の安宿に泊まり、翌朝、新聞
を見てみると、寮が漏電で全焼し、ふたりの焼死体が発見された、とあります。
ひとりは、となりの部屋の若いお医者さんで、もうひとりは「長沢一郎」・・・

ちょうど背格好、年齢もさほど違わず、同じ男性で、一郎の部屋から発見された
ことで、幸介の遺体は一郎ということになってしまいます。

今まで、ろくな人生じゃなかった、もしかしてこれは何かのチャンスなのでは、
これからは「松木幸介」として生きていく・・・

さて、一郎は、これから幸介となるわけですが、幸運なことに幸介の身寄りは
いなく、顔バレするとすればかつての職場のラーメン屋か、彼の地元くらい。
さっそく、運送屋に面接にいくと、あっさりと採用されます。時はおりしも、
まもなく開催されるオリンピックのおかげで好景気。

それから一郎は、「棚ぼた」で手にした金と、もともと持っていた(ラーメン屋
では発揮できなかった)才覚で、どんどん出世して、やがては関東でもそこそこ
大手の運送会社の社長になります。

一郎(幸介)の出世ストーリーはさながら昭和の東京を舞台にした経済小説。
ところが、彼の少年時代に犯した”罪”は、まるで彼につきまとうように・・・

別人に成り変わって生きる、というのは昔からよくある話ではありますが、
そこにまたちょっと隠し味があったりして、最後はちょっと恐ろしいです。

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宮部みゆき 『おそろし』

2012-11-17 | 日本人作家 ま
時代小説を読みたいんだけど、昔の話だから言葉遣いとか所作とか
地名とか古くて難しいんじゃないか・・・と心配して時代小説を読む
のに二の足を踏んでる方がいらっしゃったら、宮部みゆきの作品は
ものすごく読みやすくてオススメ。

江戸、神田に「三島屋」という袋物屋さんがあって、そこの主人の
伊兵衛の姪にあたるおちかが三島屋に住むことになり・・・

というところからはじまる、この話。

おちかの実家は川崎の宿屋で、そこであるトラブルというか、恐ろしい
体験をしたせいで心を閉ざしてしまい、家にいられなくなり、親は娘を
江戸にやって気分転換でもさせようとします。

おちかは三島屋の主人と奥さん、女中や番頭からお客さん扱いされること
をきらい、積極的に家の仕事を手伝います。

そんなある日、主人が外出することになり、留守中にお客さんが来ること
のなっているので、おちか、お前がお客さんの相手をしなさい、と告げられ
て、おちかは、さあ困ります。

さっそくお客さんを招き入れますが、そのお客さんは、庭を見るなり、具合
が悪くなります。聞けば、庭に咲いている曼珠沙華を見て、というのです・・・

このお客さんは、罪人の兄を疎ましく思い、島流しから江戸に戻ってきても
一切の接触を拒み、しかしそうこうしているうちに兄は死んでしまい、兄は
死ぬ数日前に、曼珠沙華を指差し、あそこに弟の顔が見える、と話していた
のです。その時、弟は兄に「死んでほしい」と呪っていて・・・

こんな、いわば「トラウマ」を話していたお客さんは、おちかを見るや、
あなたもお辛い体験をしたでしょう、と気づくのです・・・

そこでおちかは、川崎宿で起こった悲しい出来事を、初めて会ったお客さん
に話しはじめるのですが・・・

その「恐ろしい体験」は、別におちかに落ち度というか非があったわけでは
ないのですが、おちかは自分を責めて、他人の辛い体験を聞くことで自分も
過去の忌まわしさと向き合うことによって、少しずつ快復できるようになる
のでは、と感じた伊兵衛は、ちょっと変わった「百物語」をしよう、と決め
ます。
「百物語」とは、怪談を話して1本ずつろうそくの火を消していく、というやつ。
この話を聞きつけた町の人びとが、三島屋を訪ねてきて、おちかに自分の体験
した不思議な恐ろしい話を聞かせ、やがてそれらの話がどこかでリンクしはじめて、
おちかは、あるお屋敷に向かうことになり・・・

たんなる「江戸怪談話」ではなく、そこには人間の絆や心の大切さも訴え、
現代に置き換えてもいいようなテーマを、敢えて時代小説にしている意味というか
意義を深く考えさせられます。
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ジェイムズ・エルロイ 『ブラックダリア』

2012-11-14 | 海外作家 ア
まあ、そんなに好き好んで読むわけではないですが、ノワールと呼ばれる
暗黒小説ですか、たまに読んだりします。
日本だと馳星周さんが有名ですが、あとがきや解説でよく目にしてきたのが
このジェイムズ・エルロイという作家名。

”暗黒のLA4部作”というのがあって、この『ブラックダリア』は第1作。

舞台は、大2次大戦終了間もないロサンゼルス。

主人公のバッキーは、元ボクサーで、友人だった日系人を戦時中に密告して
収容所送りにして、警官になったという、まあ「いいヤツ」ではありません。

そんなバッキーに、運命の出会いが。こちらも元ボクサー(バッキーよりも
重い階級)のリーが、ロスで起こった暴動の最中に、いっしょに犯人を逮捕
します。
もともと、面識はなかったのですがお互いを知っていて、世間や同僚たちは
ボクシングスタイルからバッキーを「アイス」、リーを「ファイア」と呼び、
なんとこの二人は後日、ボクシングの試合をすることに。

そこで、りーの彼女を紹介されるバッキー。ケイという女性は、かつてリー
が逮捕した銀行強盗犯の愛人というから驚き。

さて、ロサンゼルス市警の企画した「アイス」対「ファイア」のボクシング
はりーの勝利で、大盛況だったことで市警の予算アップに貢献したとして、
バッキーは特別捜査課に移ります。そこで、リーとパートナーに。

とある事件の捜査をしているときに一件の通報が。現場は近く、駆けつけた
バッキーとリーは、凄惨な女性死体を見ることに。
上半身と下半身は切断され、内蔵はくり抜かれ、体中にあざや絞められた痕
がついていて、顔は口が耳まで切られていて、まるで笑っているよう。

被害者の身元は、アメリカ東部出身のエリザベス・ショートで、ハリウッド
女優を夢見てロサンゼルスにやって来たのはいいのですが、そういう人間は
ごまんといるわけで、エリザベスに出番が回ってくることはなく、お金もなく、
夜な夜な、軍人たちの”一夜の相手”をしていたというのです。
しかも、彼女は嘘や大言壮語を吹聴しまくっていて、あまり評判は良くなかった
ようです。
彼女はよく黒い服を身につけていて、美しい顔立ちと黒い衣装から、「ブラック・
ダリア」と呼ばれていて・・・
住処も転々とし、異性関係も激しく、ときには同性愛関係もあったりして、捜査
は難航。

バッキーとリーは別件の捜査があったのですが、リーはこの事件に執着します。
というのも、りーの幼い頃、妹が誘拐されていまだ解決していないという過去
の忌まわしい記憶があり、「おそらく妹は犯人に惨殺されたにちがいない」と、
エリザベスに妹を重ね合わせてしまい、精神安定剤の服用も日に日に増えて、
時には常軌を逸したような言動に。

そんな中、ケイの元”恋人”の銀行強盗犯が出所するという知らせが。もうこう
なったらりーの精神状態は崩壊寸前。
出所してメキシコに行ったと聞いたリーもメキシコへ飛びます。

さて、バッキーは「ブラック・ダリア事件」の捜査をしていて、マデリンという
女性と知り合います。
彼女は大手不動産会社社長の娘で、何よりもバッキーが惹きつけられたのは、
エリザベスに似ているということだったのです。
なんとマデリンは生前のエリザベスを知っていたというのですが・・・

リーはメキシコに行ったまま連絡が取れず、傷心のケイの話し相手をしている
うちに二人は恋仲になり・・・

いちおう本筋は「ブラック・ダリア事件」なのですが、織り混ざるようにして
ロス市警内部の複雑に入り組んだ人間関係、1940年代のロスの状況、そしてリー
の過去が描かれていって、疾走感もあって分かり易い、そんな印象。

話の序盤、リーとバッキーが出会ったとき、リーは「シェルシェ・ラ・ファム」
(女を捜せ)と言うのですが、この言葉がラストに引用されて、この演出には
ぶったまげました。

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A・J・クィネル 『メッカを撃て』

2012-11-12 | 海外作家 カ
クィネルの作品には、派手なアクションや、リアルな(当人にとっては
耳の痛い)政治スキャンダルなどの合い間に、ほどよくロマンスが織り
込まれていて、決して本筋の邪魔になることなく、話の奥行きといいま
すか、幅が拡がって読み応えがあるように仕上げていて、そこらへんが
上手いなあ、と思って最近ハマっております。

さて『メッカを撃て』ですが、メッカとはイスラム教の聖地でイスラム
教徒なら一生に一度は訪れるべき場所で、シーズンともなれば世界中から
わんさか人が集まりますね。
そんな聖地に、アメリカの”ひも付き”である預言者(マハディ)を送り
こもう、という計画が立ち上がります。
CIAのある人物が、今は引退してマレーシアの山奥の豪邸に暮らしている
元スパイのもとを訪ねます。
そこで、老スパイは、混乱を極める中東をコントロールしようと、預言者を
”こちら側で作り上げる”計画を提案。
この話にイギリスの諜報組織MI6が加わって、”ミラージュ計画”が実行
されます。

まわりから、ちょっと頭の弱いと思われていますが、本人はいたって敬虔な
イスラム教徒で、数日、洞窟に入って瞑想をして町に戻って、を繰り返して
いるアブ・カディルという男がいます。
彼に、特殊効果で”神の声”を聞かせて、預言者にさせようというのです。

それを、アラブ人の実業家が「預言者が現れた」と口コミで話を徐々に拡げて
いきます。
というのも、イスラム教国家では、「自分は預言者」だと言いふらすと罪に
なるのです。
そこで、本人(預言者)が特定されないように、でも預言者が現れて、しかも
イスラム暦のキリの良い年にメッカに登場し、政府が止めようもない状況にまで
持っていこうとします。

さて、この「隠密行動」を嗅ぎつけたソ連のKGB。アメリカとイギリスが
サウジアラビアで何かを計画しているところまでは分かったのですが、中東
情勢では西側よりもリードしていたいソ連。そこで、イギリスにスパイを
送り込むことに。

ソ連の名門バレエ団のプリマドンナ、マヤを、バレエ鑑賞が趣味というMI6
の人間に近づけさせ、「自分は亡命したい」と話を持ちかけ・・・

いわば「仲間外れ」状態だったKGBも”ミラージュ計画”を知ってしまい、
これからどうなるのか。マハディはメッカまでたどり着けるのか・・・

アメリカ、イギリスの諜報にソ連まで加わって預言者を「でっちあげる」
という、まあなんとも小説というか映画の世界といいますか、突飛なアイデア
ですが、話の元は、あとがきによると1979年に「ネオ・マハディ主義」を標榜
する原理主義がメッカのモスク襲撃事件を起こし、これをもとに描かれたと
いうのです。

翻訳者の解説には、ほぼ全部「これが最高傑作」と褒め称えています。まあ
それだけインパクトが大きくて、前に読んだ作品を凌駕してしまう、純粋な感想
なんでしょうね。ものすごく同意。ほんとにそう思いますね。
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宮部みゆき 『名もなき毒』

2012-11-09 | 日本人作家 ま
この作品は、「誰か」の続編にあたり、登場人物はほぼいっしょ。
ざっと「誰か」のあらすじを書きますと、日本有数の大企業、「今多
コンツェルン」会長の娘と結婚した杉村三郎が主人公で、杉村は、
娘婿になるにあたって、出版社をやめて今多コンツェルンに入社する
こと、それと、”出世欲を見せない”という条件付き。

というのも、娘、菜穂子は隠し子で、母が亡くなったあとに引き取り、
家族とは仲良くやっていて、何不自由なく暮らしていて、杉村と結婚
してからも、それこそ杉村が働かなくても一生暮らしていけるだけの
財産を所有しています。
そこで、菜穂子と結婚することで今多コンツェルンのビジネスに割り込
んでこなさそうな、いわば”害のなさそうな”男こそが杉村、というわけ。

杉村は、社内誌「あおぞら」の編集という仕事をしています。前作「誰か」
では、会長の専属運転手が事故死して、それの真相を探る杉村と、運転手
のふたりの娘が、父の本を自費出版をしようとする手助けをしてゆく中で
思わぬ事実が・・・という話。

さて、『名もなき毒』では、無差別で毒入り混入の連続殺人事件が起こり、
一方「あおぞら」編集部では、新しく入ったアルバイトの原田という女性に
手を焼いています。
原田は、前職では編集をしていたと履歴書に「嘘」を書いてアルバイト採用
されて、あまりに仕事ができず、それを周りの人の教え方が下手だといい、
あげく、無断欠勤。
とうとう編集長(杉村の上司)は、彼女をクビにしよう、ということに。

ところがこれに腹を立てた原田は、なんと会長あてに、嘘を並べた手紙を
送りつけます。

杉村は、原田が前に勤めていた会社を訪ねてみます。そこでも彼女はトラブル
を起こしていて、そこの社長をストーカー呼ばわりして、家庭崩壊に追い込ん
だのです。
そこで杉村は、社長から原田撃退のときに役立ってくれた”探偵の真似事を
している男”という人物を紹介してもらいます。

探偵のようなことをしている北見という男は元警官で、家を訪ねた杉村ですが、
そこには先客が。
原田について相談を終えて帰ろうとすると、さっきの先客の女子高生が外に
いて、いきなり倒れるのです。

その女子高生は栄養失調で、後日、「娘が倒れたときに救急車を呼んでくれた」
御礼をしたいと、母親から電話が。
母娘と会うことになった杉村ですが、そこで、母親は現在ニュースで騒がれてる
連続毒殺事件の被害者遺族だったのです・・・

どんどんエスカレートする原田の嫌がらせ。そして、ひょんなことから連続毒殺
事件に巻き込まれていく杉村。

社内誌「あおぞら」の企画で、ある社員にインタビューした杉村は、家族が「シック
ハウス」で悩んでいると聞き、折しも杉村家は新居を建てていて、妻の菜穂子は
シックハウスについて調べに調べまくっていたのです。

シックハウスという「見えない毒」、あまりに理不尽な理由で他人を「毒殺」する犯人、
そして、「毒」に犯されたとしか言い様のない原田という女性。

ここまで「毒」が蔓延してしまった現代社会を、複数のテーマを織り交ぜ「混沌」を
演出しつつも複雑になりすぎず、バシっと描ききるのは凄いなあ、と感嘆しきり。

インターネット上で安易に他人の人格否定をしておいて、「それはネット上だけの話で、
実生活ではそんなこと言わない」と悪びれない人はさぞかし「猛毒」に犯されているのでしょう。

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山本一力 『お神酒徳利』

2012-11-06 | 日本人作家 や
元・臥煙(がえん。火事のときに誰よりも早く現場に駆けつける)の新太郎
と、房州勝浦の出身で、元相撲取りの尚平というコンビの駕籠屋さんの活躍を
描く「深川駕籠」のシリーズ第2弾ということで、楽しみにしてました。

前作では、速足自慢のいろんな職業の人がレースを行うのですが、そこに金に
汚い役人の邪魔が入ったり、賭けを仕切るヤクザが入ったり、なんとしてでも
勝ちたい新太郎と尚平のライバルの駕籠屋との駆け引き、の途中で終わってい
て、その続きが読みたかったのですが、まったく違う話から始まっています。

あのレースの行方はどうなったんだろう・・・山本さん忘れちゃったのかな、
と思いつつも、まあそれはいいとして、『お神酒徳利』は、表題作と「紅蓮
退治」の2作品となっています。

態度の悪い女性客を駕籠に乗せて、時間がかかって、しかも不味い蕎麦を食べ
て、イライラのつのる新太郎と尚平。
そんなところに、お腹の大きな女性が土手にうずくまっています。
その女性を助けようと、さっきの蕎麦屋に連れて行きます。奥の座敷を借りて、
急いで産婆さんを呼びに行きます。
無事、赤ちゃんが産まれてよかったよかったと喜んでいるところに、火事を
知らせる半鐘の音が・・・

しかし、どこから煙が上がっているのか。当時の江戸では、半鐘職人という
火事をいの一番に知らせる役目があったのですが、それとは別に、江戸に住む
大名屋敷もそれぞれ独自の火消し集団を持っていて、広大な敷地に火の見やぐら
を建てていたりします。
そこの火の見担当が、ごくたまに、イタズラで鐘を鳴らす時があるのです。

確かに煙があがっているのに、火元が分からないでいらいらする新太郎。
そのうち、田安という大名屋敷がさっきの半鐘の元と見て、訪ねますが、はねつけ
られます。

そのうち、小網町から火の手が。慎太郎は臥煙でしたが、生まれは小網町にある
両替屋の息子だったのです。実家が燃えないように、地元の火消しに協力し、田安
の大名屋敷の火消しにもお願いを・・・

もうひとつの「お神酒徳利」は、尚平と良い仲のおゆきが、なかなか進展しない
ことに、いらいらする新太郎、といったところからスタート。
ある日、尚平とおゆきは浅草でデートをするのですが、相方の新太郎がいなくて
気もそぞろの尚平を見かねて、おゆきはひとりで帰ってしまいます。
ところが、その帰り道におゆきが何者かにさらわれて・・・

おゆきは、今では飯屋で働いているのですが、かつては賭場の胴元、芳三郎にも
可愛がられた、有名な壺振りだったのです。
誘拐の手紙を芳三郎親分に見せる新太郎と尚平。すると、この筆跡はアイツに
違いない、と見抜きます。
その渡世人、弥之助は、字の上手さでかつては芳三郎のもとにいたのですが、
根が腐っていたので放り出されて、その後は知らない、というのです。

はたして、何のために弥之助はおゆきをさらったのか・・・

いろいろと調べていくうちに、他の賭場で弥之助が目撃されていて、そこで、
ある若旦那とつるんでいるというのですが・・・

そして、ひょんなことから身投げをしようとしている男を助けた新太郎と尚平。
その男は賭場での借金に首が回らなくなったというのですが、この男がどう関係
してくるのか。

それにしても、山本一力作品に出てくる女性は、おゆきといい、江戸屋の女将の
秀弥といい、女性にはふさわしい形容ではありませんが「カッコイイ」ですね。
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ケン・フォレット 『大聖堂 下』

2012-11-04 | 海外作家 ハ
この作品はオムニバスではないので、本来は1回でまとめるべきなの
ですが、あまりに長いので、文庫での上中下の3回に分けて感想を書く
ことにしました。

さて、「中」で建築職人のトムが事故で死んでしまい、修道士見習い
を馘になったジャックは、大陸に渡ることに。
羊毛ビジネスも一からやり直すことになったアリエナは、ジャックの
義兄アルフレッドと望まぬ結婚をすることになります。

しかし、そこにジャックの母エリンが、ふたりの結婚を呪う言葉を
浴びせかけます。
そう、冒頭で無実のフランス人が処刑されることになり、そこに立ち
会った僧侶や騎士、役人たちに呪いの言葉を浴びせた娘こそ、エリン
だったのです。そして、処刑される前にふたりは結ばれて、その時に
身ごもったのがジャックでした。

エリンの呪いの言葉が効いたのか、アルフレッドは一度もアリエナを
抱こうとしません。それが気に入らなくて妻を殴る蹴るの暴行。
それでも、弟リチャードの騎士でいるための費用のため、耐え忍ばな
ければなりません。
そんな中、アリエナは妊娠します。そして、産まれた子は、明らかに
ジャックの特徴を受け継いだ男の子。
アリエナはエリンに相談すると、ジャックの妻なんだから、ジャックを
追いかけなさい、と・・・

一方ジャックはといえば、フランスへ渡り、教会の建築現場に飛び込み
で仕事をもらったりしながら旅を続け、スペインの巡礼地、サンチャゴ・
デ・コンポステラへ向かい、さらにいろいろあってキリスト教に改宗した
サラセン人の富豪の家に住まわせてもらうことに。
そこの娘に気に入られて、主人も2人の仲にまんざらでもなく、話は結婚
まで進みかけたのですが、ジャックはアリエナのことが忘れられず、家を
出ることに。そしてフランスへと旅立ちます。

伯爵令嬢だったころには何回か訪れたフランスですが、今では乳飲み子を
かかえたみすぼらしい格好のアリエナ。教会の建築現場で、イングランド
人でジャックという男を訪ね、偶然にもジャックを覚えている人に出会った
りして、なんとかジャックの住んでいたサラセン人富豪の家まで辿り着いた
のですが、すでにジャックは去ったあと。
しかし、そこの娘が、アリエナの抱えていた赤ちゃんを見て、この女性が
ジャックの想い人だと分かり、ジャックはフランスへ向かったと教えてくれ
ます。

パリのサン・ドニ教会で再開するジャックとアリエナ。作業場近くで家族3人
で暮らしているところに、大司教が教会を訪れることになり、大司教をひと目
見ようと民衆が殺到、あわや暴動の寸前になるところに、ジャックがサラセン人
富豪からもらった木彫りの聖母マリア像が、涙を流したのです。

この「涙の聖母」が話題になり、ジャックは、この像をキングズブリッジ再建
に使えると思います。カンタベリ大司教も、自分の教区に欲しいと思って、「涙
の聖母」はイングランドに戻ることになります。さらに、サン・ドニの建築職人
も、引き連れて行くことに。
行く先々でお布施があり、大金を手にするジャック一行。
そこで、海岸沿いの町で、ジャックを目にした人々が恐れるのです。話を聞けば、
イングランドへ渡った「ホワイトシップ号」という船が沈没して一人も助からず、
その中にジャックと瓜二つの男もいたというのです。
それこそがジャックの父親、無実の罪で処刑された詩人のジャックだったのです。

思わぬところで父親の家族と会ったジャック。さて、どうして父親は処刑させられ
たのか・・・?

カンタベリ大司教や修道士、建築職人たちとともに(しかも大金を持って)キングズ
ブリッジに戻ってきたジャックとアリエナ。
「涙の聖母」像をこの教会の人寄せとして、フランスで最新の技術を学んできた
ジャックは、さっそく大聖堂建築にとりかかります。

この話を聞いて面白くないのがシャーリングを統治するウィリアムと、フィリップを
目の敵にしている司教のバイゴッド。
ふたたびキングズブリッジを襲おうとしますが、ジャックがたったの数日で防護壁を
築き、ウィリアム軍は撤退。
そこで、フィリップのお供をしているジョナサンが、隠し子なんじゃないか、という
根も葉もないことで裁判に出るバイゴッド。
ところが、これがフィリップの旧敵が裁判に関わって・・・

さらに追い打ちをかけるように、妻に去られ現場で事故を起こしてキングズブリッジ
から逃げていたアルフレッドがジャックのもとで働いていたのですが、裏で職人たちを
シャーリングの大聖堂建設のために引き抜き工作を・・・

成長したリチャードは立派な騎士になって、シャーリングを取り戻そうとします。
はじめはゲリラのような作戦で、そのうち城に侵攻しようとしますが、果たして成功
するのか。

そして、フィリップの裁判ですが、ジョナサンの実の父親はトムであったことは彼の
生前の告白で知っていたのですが、すでにトムはいません。ところが、ジョナサンは
捨て子だったのを知っていた人がいたのです。そう、ジャックとエリン。
裁判に出席するジャックはそう訴えますが、聞く耳を持たないバイゴッド。
そこにエリンが登場し、バイゴッドが過去に偽証罪を犯した、というのです・・・

読み終わったときには感動で打ち震えるくらいで、これぞ「物語」です。
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ケン・フォレット 『大聖堂 中』

2012-11-03 | 海外作家 ハ
大聖堂を建てたいという夢を抱く建築職人のトムと、その一家である
内縁の妻エリンとその息子ジャック、そしてトムと亡くなった妻との
間の息子アルフレッドと娘マーサは、キングズブリッジ修道院の修復
工事のあいだ、キングズブリッジで生活することに。

アルフレッドはまだ少年ながらも父の”片腕”として建築技術の基礎は
身につけています。ゆくゆくはジャックも同じ道に進ませようと考える
トム。ところがジャックは、母親エリンから文字の読み書きをすでに教
わっていて、さらに好奇心も強く、覚えたことの応用力もはやく、長年
建築に携わってきたトムも舌を巻くほど。マーサもあこがれを抱くように。

が、これをアルフレッドは面白いはずはなく、なにかとジャックに向かって
きつく当たり、時には暴力に出ることも。

キングズブリッジの若き修道院長のフィリップは、ここに大聖堂を建てたい
というトムの計画を聞いて、さっそく着工といきたいところですが、古い
聖堂の修復もまだ終わっていないし、そして何よりも資金難で苦しく、それ
どころではありません。
そんなある夜、修道院で火事が起こり、工事は中断。いっそのこと、新しく
大聖堂を建てよう、ということになるのです。しかし、この火事は誰かの
不始末だったのか、それとも何者かの放火・・・?
ところが、ここでトムとエリンが未婚ということが問題に。エリンは教会、
とりわけ修道士に対して反感を持っていて、フィリップに対しても罵声を
浴びせたり。
そんなこんなで、エリンは森の中での生活に戻ることに。そしてジャックは、
フィリップ預かりのもと、修道士見習いに。

フィリップは、弟で同じく修道士のフランシスが見つけた捨て子のジョナサン
をいつも連れて歩いています。「この子は森の中の教会の近くに捨てられていて、
拾って育ててここまで大きくなった」ということをトムは知り、ジョナサンは
あの時捨てた子だ、と悟るのです。

さて、キングズブリッジの近くにあるシャーリングは、ハムレイという豪族に
よって征服され、ハムレイは新しい城主に。前の伯爵の娘アリエナは、ハムレイ
の息子ウィリアムと婚約破棄した遺恨もあり、アリエナの弟リチャードのともに
囚われの身に。
しかし、どうにか城から脱走する2人。そこから食べてゆくために、羊毛ビジネス
をはじめますが、これが大当たり。
キングズブリッジに住むことになったアリエナとリチャード。教会とも契約を結ん
で、金持ちに。
そしてリチャードを騎士にするべくお金をかけることに。

ある日、森の中でアリエナが読書しているところにジャックが声をかけてきます。
じつはジャックは以前からアリエナに恋心を抱いており、ジャックが読み書きが
できたり誌を諳んじたりできることに驚き、たちまちふたりは恋仲に。

ハムレイの統治になってから、シャーリングでは税金が上がり、逆らえば殺され、
庶民はたちまち生活が苦しくなり、お隣のキングズブリッジに逃げ出す人が続出。
一方キングズブリッジは、日曜市などでどんどん発展していきます。

これが面白くないハムレイは、なんとキングズブリッジを焼き討ちにかかろうと・・・

しかし、こんな野蛮な行為が許されるのか、と思いきや、当時のイングランドでは
国王と反国王派が拮抗していて、ハムレイは現国王の戦力となっていて、たとえ
フィリップが訴えたとしても勝ち目はなく、また教会も微妙な立場。
さらにフィリップを修道院長にするかわりに司教の座についたバイゴッドは出世の
ためにハムレイ側についています。

資金も底をつき、不安から人々がどんどん去るキングズブリッジ。さらに悪いことに
建築途中にトムが転落して、帰らぬ人に。その後釜はアルフレッドが継ぐことに。
アリエナも生活が苦しくなり、じつはアルフレッドはジャックとアリエナの仲を妬んで
いて、アリエナに求婚します。
リチャードの騎士にかかるお金も必要で、アリエナは承諾することに。

一方ジャックは修道士見習いを馘になり、アリエナの結婚(よりによってアルフレッドと)
を知ってショック。ジャックは、建築の勉強をしながら巡礼をしようと、大陸に渡ろうと
決意。

ところで、ジャックが修道院の地下の反省部屋に閉じ込められていたときに、なんと
母親エリンが姿を見せます。驚くジャックですが、じつはエリンは「秘密の通路」を
知っていて、まだジャックが生まれる前、ジャックの父親が同じ部屋に捕われていた
ときに、同じ通路を使って会いに来ていて、そこでフランス語を教わったというのです。
そして、その男は、無実の罪で処刑されたのです・・・

ジャックの父親はどうして処刑されたのか、その答えは海の向こう、フランスにある
のか・・・?
上巻では曖昧になっていたいろいろな部分が徐々にわかってきて、大スペクタクル歴史
ドラマに愛憎渦巻く昼ドラ的要素?が加わって、ますます面白くなってまいりました。


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