晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

浅田次郎 『オー・マイ・ガアッ!』

2013-10-27 | 日本人作家 あ
基本的にギャンブルというものに興味がなく、過去に2、3回、
付き合いで競馬に行ったことがあるくらいで、馬券も数百円程度。
パチンコは一度もやったことがありません(あ、もちろん趣味で
やってる方を否定したりはしません)。

共同経営をしていた友人に逃げられて借金を背負わされ、ついでに
長年付き合った外国人の彼女にも別れを告げられて、人生のどん底
状態でラスベガスにやって来た大前剛(おおまえ ごう)。

日本ではキャリアウーマンだったのに、どういうわけかラスベガスで
コールガールになってしまった梶野理沙(かじの りさ)。

そして、ベトナム戦争の英雄というのが自慢の、ジョン・キングズレイ。

こんなバラバラの3人が、たまたま居合わせたカジノで5、400万ドル
という大金を当ててしまった、という話。

ラスベガスじゅうのカジノにあるスロットマシンがネットワークで結ばれて
いて、当たりが出るまで賭け金はドンドンたまっていく「ダイナマイト・ミリオン・
バックス」。
ここでジャックポットが出れば賞金は独り占め。

これに挑戦していたジョン。そして、ジョンの座ってる台から一台あけて梶野が
座ります。そこに大前がやって来て、ジョンと梶野の間の台に座ります。

大前がちょっと休憩、といって席を離れるのですが、ボーイが「台をキープして
おきますか?」と聞きます。しかし大前は断り、台の前にタバコとライターを置いて
(日本のパチンコではこれでキープの意味になる、そう)トイレに。
なかなか当たりの出ないジョンは、大前の台に移動します。そこはさっきの男の
台よ、と注意する梶野。しかし大前はキープを断って席を離れたため、まあいいじゃ
ねえか、とジョン。
その隣に座っていた梶野が、ジョンが始めようとしたとき、レバーを勝手に倒し・・・
なんとジャックポットが出てしまいます。、つまり5、400万ドルの総取り。

さて、ここで問題が。ジャックポットの出た台は俺がキープしていたと主張する梶野。
しかし梶野はボーイの「キープしますか」を断っています。
ジャックポットが出た台に座っていたのはジョン。しかしそのレバーを倒したのは
梶野。3人の主張はまとまりそうにありません。
カジノ側としては、ひとりにしか賞金は出せないので、そこで3人が山分けするために
取った行動とは・・・

ラスベガスでは「ジャックポットの呪い」という、大当たりを出した人は不幸に
見舞われる言い伝えがあり、ここ最近では大金を手にしたウェイトレスが交通事故
で死んでしまいます。
これはただの「呪い」なのか、あるいは何者かが命を狙っているのか・・・

この3人の話の合間に、「私」と称する(作者かあるいは誰か)人物が、砂漠の真ん中に
ラスベガスがどのように誕生したのか、ギャンブルとは、また日本そして日本人とは、と
いった話が書かれていて、こっちはこっちで深く考えさせられます。


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山本一力 『粗茶を一杯』

2013-10-21 | 日本人作家 さ
この作品は「損料屋喜八郎始末控え」のシリーズ第3作で、元同心で損料屋
(レンタル屋のようなもの)をやっている喜八郎が、海千山千の札差(米屋
の大店)と頭脳勝負したりするのがメインなのですが、深川の老舗料亭、
江戸屋の女将、秀弥とのロマンスもあったりして、読む前から楽しみ。

寛政元年(1789)年に、幕府は「棄捐令」を発布します。これは簡単
にいうと、武士の借金をチャラにしてしてあげるよ、というもの。
武士の俸給は石高に合わせて米が支給されることになっていて、その米を
現金に換えてくれるのが、札差という米屋の大店。武士は支給前に新米を
担保に金を借りていて、その借金は江戸の武士全体で何万両とかいう借金
になっていて、もうどうにもならないといった状態での一手が棄捐令。

ところが、それまで金を貸していた札差にとってはたまったもんじゃあり
ません。当然、それまで豪快に遊んでたのを控えるようになります。
それによって、江戸の経済の末端を支えてた札差の「大盤振る舞い」が
なりを潜めると、たちまち不景気に。

それから3年後の寛政4年、門前仲町にある一膳飯屋「七福」で、あるじの
勇蔵が、常連の棒手振に、ある話を教えます。
なんでも、昼前に七福に団体客が来て、急に大勢で押しかけても勇蔵は
人数分の料理を出して、客たちは大満足します。その客の中のひとりが、
今夜、あるところに来てくれれば、うまい儲け話を聞かせてあげましょう、
と勇蔵に教えたのです。

勇蔵は、棒手振の勝次を連れて、佐賀町にある蔵へ向かいます。そこで、
日本橋で御公儀御用達をつとめているという男に会い、「猫札」という
謎の金儲けシステムを教わるのですが・・・

一方、喜八郎は、北町奉行所の与力、秋山と小料理屋で食事をしています。
話の内容は、近々、幕府が不景気の復興策として、3万両で札差から米を
買うというもの。
秋山は喜八郎に、幕府の米買取り政策に関して変な騙りがないかどうか
しっかり見張っててくれ、と頼みます。

しばらくして、七福のあるじ勇蔵の娘が、棒手振の勝次の仲間に、お父さん
が家の蓄えを全部出して「猫札」を買おうとしている、と相談を受けます。

はたして猫札とは何か、そしてこの怪しい計画を企んでいる大城屋の目的とは・・・

さて、あれ、江戸屋の秀弥とのロマンスの行方は?のことですが、終わりのほうで
ちょこっと出てくるだけ。正直言って進展を期待していただけに「ズコーッ」といった
具合の肩透かしをくらいました。

まあ第4作に期待。
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浅田次郎 『輪違屋糸里』

2013-10-07 | 日本人作家 あ
彼岸を過ぎてからぐっと涼しくなって、いよいよ読書の秋がやってきた、
これで読むスピードアップで溜まってる未読本に手をつけていこう、と。

浅田次郎さんの本というだけで内容を知らずに買って、読み始めたのです
がなかなか進まず、上巻が終わるまでものすごい時間がかかってしまいま
した。

というのも、この『輪違屋糸里』は主に新選組にまつわる話で、正直いって
あまり好きなテーマではないのです。いや新選組が嫌いというわけではなく、
昔から、幕末のゴタゴタがどうにも苦手といいますか。

まあ、とはいっても「壬生義士伝」は好きだったのですけど、一応「壬生~」
も新選組がテーマではあるのですが、主人公と新選組の距離を置いて描いてい
て、傭兵の悲哀が涙なくしては読めないくらい感動したんですが。

「輪違屋」というのは、京都の島原というところにある花街の中にある置屋
のことで、糸里とは、そこの「天神」という位の芸妓。

糸里は6歳のときに若狭の小浜から女衒に連れられて京都に。母親は”おいと”
を産んですぐに亡くなり、輪違屋の女将に「お母さんがつけてくれた名前だけは
取らないで」と懇願、もらった名前は「糸里」でした。

トップは「太夫」で、音羽という芸妓。太夫は禁裏より正五位を賜り、御所の出入り
もできるほどで、糸里は小さい頃から音羽に妹のように可愛がってもらいます。

ところがある日のこと、壬生浪士組(まだ新選組という名前をもらう前)の芹沢局長
が島原に遊びに来るとのことで、しかも音羽太夫に逢状(今風に言うと指名)が。

壬生浪士は島原の礼儀をわきまえずに、そればかりか商家に押し借り(強引に金を
催促)などして、特に局長の芹沢は短期で酒癖も悪く、評判は最悪。

ここで音羽太夫は芹沢に対してあくまで島原の流儀を通しますが、けちょんけちょん
に言い負かされた芹沢はあろうことか音羽をその場で斬ってしまい・・・

と、こんな感じで始まります。前に「主に新選組にまつわる話」と書きましたが、
新選組に食住を提供していた家の女房、西陣の大店の愛妾(じつは芹沢と深い関係)、
そして糸里は副長の土方歳三から贔屓にされ、糸里の親友で吉栄は隊士の平山五郎と
昵懇、「女性からの視点の新選組」という描かれ方にもなっています。

新選組の話としては、芹沢の暗殺までになっていて、これには長州がやった、あるいは
内ゲバ、など諸説あるのですが、ここでは内ゲバになっています。そもそも芹沢と近藤
というツートップ体制から内部亀裂が生じて、というのが通説ですが、さて最終的に
芹沢暗殺というのは誰の描いた脚本だったのか・・・

たしかに上巻まではなかなか読み進まなかったのですが、下巻に入ってスピードアップ、
そしてラストでは「やられた」と言いたくなるほど感涙。




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