晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

J・R・R・トールキン 『指輪物語 王の帰還』(再読)

2012-04-30 | 海外作家 タ
ようやく読み終わりました。そして、いかに記憶違いが多かった
ことか軽く自己嫌悪に陥ってしまいました。

前巻「二つの塔」では、もともと9人いた旅の仲間が途中で2人
減ってしまい、パーティーは3方向に分かれて、そのうち指輪保持者
であるフロドと、その仲間サムのふたりだけで、旅の目的である、
指輪をモルドールというところにある火山の噴火口に投げ捨てる
ために、悪の帝王サウロンのいるモルドールへと登ってゆくので
すが、道案内のゴクリに騙されてフロドはオークどもに捕われて
しまいます。

なんとか逃げたサムは、フロドの行方を探し、モルドールにある
塔に侵入、フロドを発見します。塔から脱出したふたりは、食べ物
も飲み物もほとんど取らず、フラフラになりながらも、火山を目指し
て歩いていきます。

一方、メリーとピピン、アラゴルンとレゴラスとギムリ、そして谷底
から復活してきたガンダルフの6人は合流し、ローハン国とゴンドール
の軍に入ります。

アラゴルンは、レゴラス、ギムリと、裂け谷から派遣されてきたエルフ
の戦士と野伏を連れて、「死者の道」と呼ばれる別のルートで向かうの
ですが・・・

そして、いよいよモルドールから大軍勢がゴンドールに向けて押し寄せて
きます。はじめは劣勢に立つゴンドール軍、しかしローハン国から応援部隊
が到着すると形勢は逆転しますが、敵はさらに押し返してピンチとなります。

ようやく別ルートで向かって来たアラゴルン、なんと船に乗って登場。
ゴンドールとモルドールの間に流れるアンドゥインという大河がある
のですが、じつはモルドール側は南の国からの援軍をアンドゥインに
待機させていたのです。
そこに、大量の幽霊を引き連れたアラゴルンが、船に乗っていた兵士たち
を蹴散らし船を奪って、ゴンドールへと向かったのでした。

この「幽霊」というのは、死者の道にいる幽霊で、前の指輪戦争のときに
死んだ兵士たち。先の戦争で活躍した戦士の末裔であるアラゴルンが彼らを
長い眠りから目覚めさせ、仲間にします。

なんとか勝ったゴンドール軍ですが、しかしこれで悪の帝国が滅びたわけで
はありません。モルドール「黒の門」へと向かうガンダルフ一向でしたが・・・

最終的に、フロドは指輪を噴火口に投げ捨てることになるのですが、その
方法とは、かつてガンダルフに「何かに利用できるかもしれぬ」と言われ
ていたことがあり、(それ)とともに指輪は消滅。

ようやく彼らの旅は終わり、と思いきや、ここからまだまだ続きます。
旅の終着点はホビットの4人がホビット庄に到着。しかし、何か様子が変。
なんと4人は警察に捕まってしまうのです・・・


今回再読してみて、(記憶違いは別にして)前に読んだときの疑問や謎が
解明して、さらに、前はあまり感動しなかったシーンに感動したり、その
逆もあったり、なかなか有意義でした。
また数年後に再読してみたいと思います。

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J・R・R・トールキン 『指輪物語 二つの塔』(再読)

2012-04-25 | 海外作家 タ
さて、再読強化月間のほとんどを費やしてしまっている
『指輪物語』ですが、内容をうろ覚えどころか中にはけっこう
重要な部分を間違えて覚えていたりしてました。ひどい話です。

前巻「旅の仲間」では、世界を悪の恐怖に陥れようとしている
サウロンがどうしても手に入れたい指輪を持っているホビット族
のフロドとその仲間のホビット(サム、メリー、ピピン)が、
灰色の賢者ガンダルフ、野伏のアラゴルン、人間の戦士ボロミア、
エルフのレゴラス、そしてドワーフのギムリの9人で、指輪を
火山の噴火口に投げ入れて溶かしてしまおうと長い長い旅に
出かけるところの序盤が描かれていて、山のトンネルで怪物と
闘ってガンダルフが穴に落ちて離脱、8人になってしまい、さらに
途中でボロミアが指輪の魅力に抗いきれずフロドに襲い掛かろうとし、
これに傷ついたフロドは、サムと2人だけで火山のあるモルドールへ
と向かいます。

そして『二つの塔』では、オーク(悪の手下の兵隊)に襲われて
ボロミアが命を落としてしまいます。さらに、メリーとピピンが
捉えられてしまうのですが、どうやら上の者の命令で、殺さずに
生け捕りしてこいということらしく、殺されずに運ばれます。
途中、ローハン国の騎士団とオークの決戦があり、その隙に2人の
ホビットは近くの森に逃げ込みます。しかしその森は不気味で、
なにやら得体の知れない生命の雰囲気が・・・

その「生命」とは、なんと喋り、動き回ることのできる木なのです。
エント族と呼ばれる木の仲間たちは、もはや伝説として語られている
存在で、その中の長老「木の髭」はメリーとピピンを気に入ります。
2人は、旅の目的を木の髭に話し、エントたちも、ここ最近のオーク
どもの無法ぶりには怒りを覚えていて、その諸悪の根源はアイゼンガルド
に住む白の賢者サルマンだというのです。
そこで、エント族の会議の結果、サルマンを懲らしめてやろうと、
ついに木の巨人たちが動き出し、アイゼンガルドへと向かいます。

一方、2人のホビットの行方を探すアラゴルンとレゴラス、ギムリは、
穴から脱出してきたガンダルフと再会、途中にローハン国に寄りますが、
そこの国王セオデンは、サルマンの手下の「蛇の舌」に言いくるめられて
しまっています。

ところで、フロドとサムですが、モルドールへ向かう途中に、もともと
指輪を持っていたゴクリと会います。ガンダルフから「ゴクリは生かして
おいたほうが何かと役に立つかもしれない」ということで、殺すことは
止められています。
なんとか言いくるめて手下にし、モルドールまで案内してもらうことに。
正式ルートである「黒の門」には見張りがいてそこから侵入するのは諦め、
ゴクリの案内で秘密のルートを選びますが、じつはこれはゴクリの罠だった
のです・・・

この『二つの塔』は、読みづらかったり分かりにくかったりという部分は
ほとんど無く、勢いよく描かれています。
いろいろな謎も解明されてゆき、世界も広がり、第3部「王の帰還」へと
続きます。
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J・R・R・トールキン 『指輪物語 旅の仲間』(再読)

2012-04-20 | 海外作家 タ
さて、「再読強化月間」ということで、過去に読んだけど内容が
うろ覚えだったり、あるいはもう一度読んでみたい、という作品を
再読しているのですが、どうやらとんでもないものに手をつけて
しまいました。

今月はブログのタイトルに(再読)と付けた記事を、少なくとも
5作品は更新しようと目論んでいたわけですが、1週間くらい前
から『指輪物語』をよみはじめて、ようやく第1巻「旅の仲間」を
昨夜読み終えて、ただいま第2巻「二つの塔」を読み進めている
最中。こりゃ今月いっぱいかかりそう。

読む前にちょっと検索してみたら、はじめの100ページくらいで
挫折した(読むのをやめた)という人の多いこと。
まずここから「試練」が始まるのです。というのも、いくぶん古めか
しく訳されていて(まあそれが味わいといえばそうなのですが)、
ここさえ乗り越えれば、あとはすらすらと読めると思います。
というか、読むのが辛くなったら飛ばしても構わないです。

冒頭は、主に『指輪物語』の前に書かれた「ホビットの冒険」
のおさらいとなっていて、ホビットという、人間でいうと膝丈より
ちょっと大きいくらいの小さい種族が住んでいて、そのビルボという
ホビットが、灰色の賢者ガンダルフという老人と、これまた小さい
種族のドワーフ(白雪姫に出てくる7人の小人、あれがドワーフです)
といっしょに旅に出て、ある指輪を手に入れて家に帰るまでが書かれて
います。

そして、この指輪こそが物語の核になっていて、指輪が作られて、どの
持ち主に渡り、誰が奪い、ビルボが手にするまでの経緯が説明されます。
ビルボの誕生日パーティーの席で、養子のフロドに家を託すと宣言、指輪
もフロドに渡します。しかしこの指輪、なにやらふしぎな力を持っていて、
災いをもたらすようで、しかも処分するには、前の前の前の持ち主である
悪の大親分、サウロンの住む国にある噴火口に投げ捨てて溶かさなければ
ならないというのです。サウロンの手に渡れば世界の終わり。

というわけで、フロドは庭師のサム、親類のメリー、ピピンの4人で旅に
出ることに。途中、野伏のアラゴルン(はじめは「馳夫」と呼ばれる)も
旅に加わり、裂け谷のエルロンドの館でさらにエルフのレゴラス、ドワーフ
のギムリ、そして人間でゴンドール国のボロミアも仲間となり、ガンダルフ
とあわせて9人で旅に。

途中、ガンダルフがトンネル内で怪物と戦って奈落の底に落ち、案内人を失った
8人はなんとか旅を続けますが、途中、仲間のひとりが指輪の魅力に抗しきれず、
フロドに襲いかかって・・・

レッド・ツェッぺリンのボーカル、ロバート・プラントは「指輪物語」の
大ファンとして知られ、「指輪物語」を彷彿とさせる詩の曲もあります。

次の巻「二つの塔」では、フロドとサム、メリーとピピン、アラゴルンとレゴラス
とギムリの3つのパーティーに別れて、それぞれの旅が描かれます。
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鈴木光司 『リング』『らせん』『ループ』『バースデイ』(再読)

2012-04-15 | 日本人作家 さ
『リング』『らせん』『ループ』の3部作、そしてこの3作のアナザー
ストーリーの『バースデイ』は、このブログをはじめた当初に投稿
して、記事を読み返してみると、あまり内容を理解できてなかった
印象があって、もう一度ちゃんと読んでみることに。

『リング』
新聞記者の浅川が偶然乗ったタクシーの運転手から、心臓麻痺で
死んだバイクに乗った青年の話を聞き、浅川の姪も同じく心不全で
突然死したことを思い出し、しかもそれらの日時がほぼいっしょと
いうことに気付いて、調べていくうちに他にも2人がこの時刻にやはり
心臓麻痺で死亡していたことがわかり、4人は生前に箱根のリゾート
施設に泊まっていたことを突き止めます。

4人が泊まったリゾート施設のコテージに行った浅川は、あるビデオを見ます。
不思議な文字が出て、火山の噴火、方言を話すお婆さん、悪意を持った顔が
いっぱい出てきて、そして肩に傷のある男のアップ、丸い枠から何かが降って
きて、最後に「この映像を見たら一週間後に死ぬ、死にたくなければ」と、ここで
重ね撮り。浅川は気持ち悪くなってしまいます。

これはひとりで解決できる問題じゃないと、浅川は高校時代の友人、高山に
相談。高山はダビングして見せろと言い、この映像の解明に。どうやらこの
映像は、誰かの念写らしいということで、超能力者の研究をしていた人の資料
を見てみると、お婆さんの話していた方言=伊豆大島、火山は大島の三原山、
そして、大島出身の、山村貞子という女性を探し当てるのですが彼女は生きて
いるのか・・・

『らせん』
ビデオを見てから一週間後に高山は死んでしまい、浅川は生き残ります。
浅川は、死なずにすむ方法はビデオをダビングすることだと分かり、映像
を見てしまった妻と娘を助けるために、ダビングした映像を他の人に見せ
ますが、なんと妻と娘は死んでしまい、ショックで交通事故を起こし、意識
不明の重体。

高山の大学時代の同級生、安藤は高山の遺体を解剖。そこで、解剖後の遺体
の縫合部分から、新聞の切れ端のような紙が出てきます。そこには謎の数字が。
高山が死ぬ間際に電話を受けたという高野舞という女性は、安藤から死因は
心臓に出来た“腫瘍のようなもの”と聞き、生前の高山は健康体だったので
不思議に思います。
電話口で最後に発した絶叫は何だったのか、舞は調べてみることに。一方
安藤も、この腫瘍は絶滅したはずの天然痘に酷似していると知り、調べてみる
と、亡くなった浅川の妻と娘にも同じく心臓に天然痘のような腫瘍が。

この腫瘍を詳しく分析してみたら、そこに奇妙なDNAの配列があることを
見つけます。
高山は生前、浅川と「暗号遊び」に凝っていたことがあり、これは高山からの
暗号メッセージなのか・・・

舞は、高山の原稿を探しに実家に行きますが、そこでビデオを発見。例のビデオ
を見てしまいます。浅川は舞に連絡を取ろうとしますが電話に出ず、心配になって
大家から鍵を借りて部屋に入ると誰もいません。しかし浴室に何者かの気配が・・・

数日後、高野舞は、マンションの近くの雑居ビル屋上で死体となって発見され
ます。しかしそこで奇妙なことが。なんと彼女は妊娠、出産していた痕跡があった
というのです・・・
安藤は、高野舞の姉と名乗る女性と出会うのですが、この女性の正体は・・・

『ループ』
馨は好奇心旺盛な小学生、ある日、世界地図と重力の分布図を照らし合わせて
みたら、アメリカの西部、砂漠地帯に特に極端な重力異常があり、いつの日か、
ここに家族旅行に行こうと約束。
しかし、馨の父、秀幸はガンにかかってしまい、それから十年、馨は医大生に。
「転移性ヒトガンウィルス」という新種のウィルスは、父の勤めていた研究所
の職員が多く罹病しているらしく、その治療法はまったく分かりません。

秀幸が研究をしていた「ループプロジェクト」を聞きに、元同僚を訪ねる馨。
そこで、「ループプロジェクト」の元研究者のアメリカ人から、転移性ヒト
ガンウィルスの治療法が見つかったかもしれない、と教えてもらいます。
「その鍵をにぎるのは『タカヤマ』だ」と・・・

そんな中、馨はガンで入院している男の子の勉強を教えてあげることに。その
母親、礼子の美しさに馨は恋に落ちてしまいます。
やがてふたりは結ばれますが、息子にバレてしまい「あとはちゃっかりやってよ」
という遺書を残し、息子はビルの屋上から・・・

失意の中、なんとかウィルスの治療法、そして「タカヤマ」とは何かを探しに
アメリカへ旅立つ馨ですが・・・

『バースデイ』
これは、3作の短編になっていて、高野舞がどうやって妊娠、出産し、そして
死んでしまうのか、の経緯という話の「空に浮かぶ棺」、大島から上京し、劇団
飛翔に研究生として入った山村貞子と、彼女と交際をしていた男の話の「レモン
ハート」、そして、馨の子を妊娠した礼子の話の「バースデイ」。

久しぶりに読んでみて、また怖くなって夜中にトイレに行けなくなったら嫌
だなあ、と心配しましたが、免疫ができていたせいか、そこまでではありま
せんでした。
『ループ』は、はじめて読んだときは話の展開にあまり納得できてなかった
のですが、改めて読んでみて、そもそもビデオを見て病気になったり、あまつ
さえ妊娠などという現象をどう説明できるのか、今度は「なるほどー」と満足。
要は理解力が無かったということですね。反省。

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朝倉卓弥 『四日間の奇蹟』(再読)

2012-04-12 | 日本人作家 あ
書棚の整理をしていて、家にある本は全部読んだのですが、
タイトルは覚えていても、内容がぼんやりとしか思い出せない、
そんな本がけっこうあることに落胆し(けっこう覚えてる自信が
あったのですけど)、今月は勝手ながら【再読強化月間】と銘
打ち、ブログを更新していきます。

ということで、日本人作家「あ」のトップ、書棚でいうといちばん
左上(五十音順に並べて)に位置する、朝倉卓弥『四日間の
奇蹟』。
過去の「記事一覧」を見てみたら、ありませんでした。つまりこの
ブログを始める前に読んだのですね。

「このミステリーがすごい!」大賞の記念すべき第1回大賞受賞
作品で、単行本、文庫の売上げが累計100万部突破、さらに映
画化もされ、「このミス」は上々の船出、信頼に足る文学賞という
評価を得るようになった(この後に海堂尊という怪物を輩出したこ
とも大きいですが)、まあいわば「試金石」的作品。

将来を嘱望されながら、留学先のウィーンで事故に巻き込まれて
指を失ったピアニストの如月敬輔、その事故で両親を失い、身元
引受人も見つからず天涯孤独となった、脳に傷害を持つ少女、千織。

千織を連れて帰国した敬輔は、ある日、千織にピアノを弾かせて
みると、彼女の“特殊な”能力に気付きます。それは、一度聴いた
メロディを完全に覚えているという、知的障害者に症例の多い「サ
ヴァン症候群」の典型例で、敬輔はそれまでピアノと向き合うこと
をためらっていたのですが、千織に教えることに。

それから敬輔と千織は、全国の施設を巡ることに。

これから向かう施設は、ものすごく山奥にある療養センターで、
そこで岩村真理子という職員と出会います。真理子ははじめは
隠していたのですが、じつは敬輔の高校の後輩で、敬輔の卒業
するときに第2ボタンをもらったのですが、敬輔は覚えていません
でした。

千織のピアノ演奏が終わり、なんやかやでもう一泊することに
なった二人。翌朝、千織は真理子を庭に出て歩いていたところ、
急に大雨となり、運悪く上空を飛んでいたヘリコプターに雷が
直撃、二人のところに墜落してきたのです。とっさに千織を
かばう真理子でしたが・・・

センターに併設している医療施設に運ばれる真理子は意識不明の
重体。千織は多少の火傷でしたが、事故から一夜明けて目が覚め
るも、一言も発しません。
はじめは事故のショックだろうと思った敬輔でしたが、医師や職員
が出て行って、千織が発した言葉は、自分は真理子だというのです・・・

真理子はかつて農家に嫁いでいたことがあり、それ以来、卵が食べられ
なくなる、という一見どうでもいいエピソードが、物語の重要な伏線と
なっているのが面白いですね。

登場人物ひとりひとりが文中にしっかりと「そこに立って」いるような
丁寧な描写。情景もきちんと描かれていて、話の主軸、サイドストーリー
の絡ませ方もスムーズで、再読ながら泣かされてしまいました。

コメント (2)
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垣根涼介 『サウダージ』

2012-04-09 | 日本人作家 か
この作品は「ヒートアイランド」の続編で、渋谷のストリート
ギャングと、プロの現金強奪団と、そこにヤクザも絡んでの
一大バトルが終結し、チーム「雅」のリーダー、アキは、その
現金強奪団、柿沢と桃井の一味に加わります。

物語は、ある男が、旅行代理店の売上げ金を強奪するところから
はじまります。しかしこの男、かつては柿沢、桃井からプロの現金
強奪トレーニングを受けますが、いまいち信用ができないといって
クビに。

耕一は、ブラジル移民の子で、日本に帰国したものの、そこから辛酸
をなめさせられ、“ある事件”をきっかけに家族と離れて東京へ逃げて
きて、そこで柿沢に拾われるのです。

そこから、裏カジノや麻薬の取引、地下銀行などの裏金を強奪して生計
をたてていますが、出会ったコロンビア人娼婦のDDに入れあげてしまい
ます。
このDD,ちょっとオツムの弱いところがあり、わがままで耕一も困り
ますが、それでもDDと別れようとしません。
そんなDDの貯めていたなけなしの貯金をアパートの違う室に住むヤクザに
取られて、それを知った耕一はそのヤクザを殺してしまいます。

殺す前に、近々大量のコカイン取引があると聞きます。しかし単独でそこ
に踏み込むわけにはいきません。大金をせしめて、DDといっしょに南米
に帰ろう・・・そう思った耕一は、かつての“仲間”に連絡を・・・

柿沢、桃井、そしてアキは、耕一の「儲け話」を受け入れるのか。

ブラジル移民の過酷な状況は「ワイルド・ソウル」でも描かれていますが、
政府に騙され、それでも懸命に働き、故郷に戻ってきても、同胞として
迎え入れてはもらえません。
そんな心の荒んだ彼らの行き着く先は・・・

残酷な描写があると思ったらギャグも出てきたり、アクションのスピード感
、スリリングな展開、ちょっとしたロマンスも入れの、といってゴチャゴチャ
にはならずに読みやすいですね。

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ネルソン・デミル 『ゴールド・コースト』

2012-04-05 | 海外作家 タ
『ゴールド・コースト』とは、オーストラリアの東海岸ではなく、
ニューヨークの東に位置する、長細い島、ロングアイランドにある
海岸で、20世紀のはじめから豪邸が並ぶ、その所有者はヴァンダー
ビルト家、モルガン家などハンパな金持ちではなく、さらにその土地
の広さときたら、この物語に登場するスタンホープ屋敷でいうと、200
エーカー(約80ヘクタール)、よく日本ですと「東京ドーム○個分」と
表現しますが、東京ドームは約4,7ヘクタールですので、17個分。

しかし近年では、アラブ系、アジア系などが買占め、土地を切り売り
したり、そして、この物語の軸となる、イタリア系マフィアが引越し
てきたりと、残された「古き良き」アメリカは消えつつあります。

主人公のジョン・サッターは、マンハッタンとロングアイランドの小さな
町に事務所を構える弁護士で、妻のスーザンは、スタンホープ屋敷で
生まれ育ったお嬢さま。2人の子どもは大学と高校の寮住まいで家には
住んでなく、といっても本邸は50部屋もあるので、夫婦はゲストハウス
に住んでいます。

そして、「古き良き」アメリカの豪邸住まいに欠かせないのが使用人。
年寄りのアラード夫婦は、先々代のスタンホープ家の主人(スーザンの
祖父)から、終身雇用を言い渡され、それを忠実に守っています。

そんなゴールド・コーストに、なんとニューヨークからマフィアの大ボス、
フランク・ベラローサがスタンホープ屋敷の隣に引っ越して来るという
ので大変。
ただでさえ閉鎖的で排他的なコミュニティなのに、マフィアと近所付き合い
など出来ないと心配するジョンとスーザン。

しかし、このフランクと妻アンナはとても気さくで、地域に溶け込みたいと
いう希望もあり、気がつけばジョンもスーザンも彼らと仲良くなっていきます。
ところが、そこはマフィア、ジョンの弁護士という肩書きを、はじめから利用
しようと企んでいたのです・・・

ジョンはもろもろの諸問題に悩み、あげく別荘の脱税疑惑がふりかかってきて
、もともと破滅願望があったのか、これが渡りに船だったのか、とうとう精神が
崩壊してしまい・・・

コミカルな描写や、どぎつい一歩手前で「クスリ」と笑える下ネタだったり、
法律問題、家族の問題、マフィアの抗争などがごっちゃになりつつもきちんと
構成がなされて、エンタテインメントとして楽しめつつも、うーんと考えさせ
られます。

訳者あとがきにもあって思い出したのですが、ロングアイランドといえば名作
「グレート・ギャツビー」の舞台でした。
だいぶ前に読んだのですが、「そういわれてみたらそうだった」というくらい
忘れてました。また読み返さないと。
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