この作品は、第8回「このミステリーがすごい!」大賞の
(隠し玉)として世に出たもの。
(隠し玉)とは、あとがき解説によれば、出版社の編集部
が「落選はしたけどぜひとも出版したい」と思わせた作品
で、すべての回にあるわけではなく、これで3作品めなの
だそうな。
面白ければ必ず売れるという確証などはありませんが、応
募してきた中で「一番面白い作品を選ぶ」のが公募の文学
賞なので、選考委員の方はそれでいいのでしょうが、出版
社にしてみると、なにはともあれ本を売らなければいけな
いので、作品の出来不出来ももちろん大事ですが「売れる
か売れないか」という視点で見たら「あ、これ売れそう」
と思ったから本を出したということなので、例えばこうい
った(落選作)がのちに大ヒットしたからといって、選考
委員が節穴だったとかそういうことではありません。
さて、時は江戸後期、江戸の深川に周吉というオサキモチ
がいます。「オサキ」とは狐の形をした妖怪の類で、その
オサキに憑りつかれた人間をオサキモチというそうな。
他の人はオサキが見えませんし、周吉とオサキの会話も聞
こえません。
で、この周吉、もともとは江戸から遠く離れた田舎出身な
のですが、村で酷いことがあって江戸に出てきます。
そんな周吉ですが、深川にある献残屋(けんざんや)の主、
安左衛門に拾われて奉公人となります。
「献残屋」とは、武家の多い江戸では時候の挨拶や「ひと
つよしなに・・・」といった貢ぎ物などのやりとりが盛ん
でして、いくら高級な皿だ壺だ絵だといっても宝の持ち腐
れですので、とっとと売っちまうのが正解でして、そこで
こういった故買商の出番となるわけです。
もう百年以上も戦が絶えた天下泰平の世の中、武士はどん
なに剣や弓馬の技術に長けていてもそれで食べてはいけず、
町にはアウトローと化した浪人がウロチョロし、治安は日
増しに悪化。
深川でも、夜中にいきなり槍で突かれるという殺人事件が
頻発し、周吉は夜回りに出ます。周吉はオサキモチではあ
りますが特別な霊能力があるわけではありません。とはい
ってもオサキという妖怪に憑かれているわけですからそこ
らへんの人間よりは(人間離れ)しています。
さっそく槍突きが登場、しかも単独ではありません。殺さ
れる!と思ったそのとき、周吉の顔見知りの蜘蛛ノ介とい
うお侍さんが助けに・・・
献残屋には(お琴)というお嬢さんがいるのですが、どう
やら周吉とお琴の縁談話が着々と進んでいます。
ところが周吉はウブというか鈍感というか、全く気付いて
いません。
槍突きの事件は収まったのですが、まだまだ夜は物騒。
そんなある夜、お琴の姿が家にありません。もしや誘拐・
・・?
物語の冒頭に、小僧と坊主の不気味な話があるのですが、
そこからいきなりこの周吉とオサキの話に飛びます。
まあ最終的に冒頭の話と本編は繋がるのですが、繋がり
が見えてくるまでに途中チラッチラッとヒントらしきも
のは出てきますが、あの冒頭の話はなんだったんだろう
と喉に魚の小骨が引っかかったような違和感がずーっと
残っていました。
それよりも読んでて気になったのは、無理に時代言葉を
使わなくてもいいのになあ、と思ってしまったこと。
そう感じてしまうくらいに、何か時代小説に気を遣って
るなあ、と。キャラ設定やストーリーはさすが編集部に
「これを埋もれさすのは惜しい」と思わせたほど。
もっともそんなのは「余計なお世話」で、この作品はシ
リーズ化されて、他にも多くの作品を出されています。
(隠し玉)として世に出たもの。
(隠し玉)とは、あとがき解説によれば、出版社の編集部
が「落選はしたけどぜひとも出版したい」と思わせた作品
で、すべての回にあるわけではなく、これで3作品めなの
だそうな。
面白ければ必ず売れるという確証などはありませんが、応
募してきた中で「一番面白い作品を選ぶ」のが公募の文学
賞なので、選考委員の方はそれでいいのでしょうが、出版
社にしてみると、なにはともあれ本を売らなければいけな
いので、作品の出来不出来ももちろん大事ですが「売れる
か売れないか」という視点で見たら「あ、これ売れそう」
と思ったから本を出したということなので、例えばこうい
った(落選作)がのちに大ヒットしたからといって、選考
委員が節穴だったとかそういうことではありません。
さて、時は江戸後期、江戸の深川に周吉というオサキモチ
がいます。「オサキ」とは狐の形をした妖怪の類で、その
オサキに憑りつかれた人間をオサキモチというそうな。
他の人はオサキが見えませんし、周吉とオサキの会話も聞
こえません。
で、この周吉、もともとは江戸から遠く離れた田舎出身な
のですが、村で酷いことがあって江戸に出てきます。
そんな周吉ですが、深川にある献残屋(けんざんや)の主、
安左衛門に拾われて奉公人となります。
「献残屋」とは、武家の多い江戸では時候の挨拶や「ひと
つよしなに・・・」といった貢ぎ物などのやりとりが盛ん
でして、いくら高級な皿だ壺だ絵だといっても宝の持ち腐
れですので、とっとと売っちまうのが正解でして、そこで
こういった故買商の出番となるわけです。
もう百年以上も戦が絶えた天下泰平の世の中、武士はどん
なに剣や弓馬の技術に長けていてもそれで食べてはいけず、
町にはアウトローと化した浪人がウロチョロし、治安は日
増しに悪化。
深川でも、夜中にいきなり槍で突かれるという殺人事件が
頻発し、周吉は夜回りに出ます。周吉はオサキモチではあ
りますが特別な霊能力があるわけではありません。とはい
ってもオサキという妖怪に憑かれているわけですからそこ
らへんの人間よりは(人間離れ)しています。
さっそく槍突きが登場、しかも単独ではありません。殺さ
れる!と思ったそのとき、周吉の顔見知りの蜘蛛ノ介とい
うお侍さんが助けに・・・
献残屋には(お琴)というお嬢さんがいるのですが、どう
やら周吉とお琴の縁談話が着々と進んでいます。
ところが周吉はウブというか鈍感というか、全く気付いて
いません。
槍突きの事件は収まったのですが、まだまだ夜は物騒。
そんなある夜、お琴の姿が家にありません。もしや誘拐・
・・?
物語の冒頭に、小僧と坊主の不気味な話があるのですが、
そこからいきなりこの周吉とオサキの話に飛びます。
まあ最終的に冒頭の話と本編は繋がるのですが、繋がり
が見えてくるまでに途中チラッチラッとヒントらしきも
のは出てきますが、あの冒頭の話はなんだったんだろう
と喉に魚の小骨が引っかかったような違和感がずーっと
残っていました。
それよりも読んでて気になったのは、無理に時代言葉を
使わなくてもいいのになあ、と思ってしまったこと。
そう感じてしまうくらいに、何か時代小説に気を遣って
るなあ、と。キャラ設定やストーリーはさすが編集部に
「これを埋もれさすのは惜しい」と思わせたほど。
もっともそんなのは「余計なお世話」で、この作品はシ
リーズ化されて、他にも多くの作品を出されています。