晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

真保裕一 『灰色の北壁』

2019-05-16 | 日本人作家 さ
当ブログの過去の投稿を見てみましたら、2018年の10月ですね、
新田次郎「孤高の人」を投稿してました。

日本に「文学賞」はいくつあるのか分かりませんが、その大多数
は作家の名前を冠したものとなっていますね。
で、「孤高の人」を読んで、はじめて「新田次郎文学賞」という、
時代小説や自然分野の小説に贈られる賞があることを知り、では
過去の受賞作を調べてみると、有名な作家さんが多く受賞されて
ますね。

というわけで、探してきて買ってきたのが真保裕一さんの『灰色
の北壁』です。

そういえば出世作の「ホワイトアウト」も、まあある意味「自然
分野」といえなくもないですが、厳しい自然に立ち向かう、ちっ
ぽけで無力な人間というのはすでに書かれているということで、
読み始める前から期待大。

「黒部の羆」は、北アルプスの黒部が舞台。山小屋にいる男は、
元警備隊。今は山小屋の主人。しかし営業期間が終わっても下山
しません。まだ入山規制の前なので、登山者がいれば誰かしらが
山にいなければならないので、どうせ麓に下りても独り暮らしな
のでと男は残っています。そこに警察からの無線が。
このふたりの遭難者、矢上と瀬戸口にはたんに登山に来ただけで
なく、それぞれ別の思いが・・・

表題作「灰色の北壁」は、ヒマラヤ山脈にある、世界中の登山家
が恐れる「ホワイト・タワー」と呼ばれている山が舞台。
主人公の作家の下に「登山家の刈谷修が亡くなった」と電話が。
じつはこの作家、過去にホワイト・タワー登頂の偉業をなしとげ
た刈谷修の(山頂から撮った写真)に疑惑があるという文を書い
たことがあったのです。その(疑惑)とは。刈谷修はホワイト・
タワー登頂に成功したのか。作家が疑惑を投げかけた(証拠)と
は一体・・・

「雪の慰霊碑」は、北笠山が舞台。タクシーに乗った中高年の登
山客を見て運転手は「お客さんひとりで登るんですか。気をつけ
てくださいよ」と声を掛けます。というのも三年前に遭難で三人
が死亡する事故があったばかり。じつはこの中高年の登山客は、
その死亡した登山者のリーダーだった男の父親。
この三年、生きていると実感もないまま過ごし、息子が最後に歩
いた道を歩いてみよう、そして息子と話してみようと事故現場で
ある北笠に登ります。
一方、息子の婚約者だった女は(お父さん)が身辺整理をして出
ていったと思い、彼女もまた北笠へ・・・

三作品とも山岳小説ではありますが、ミステリぽくもあります。
そして共通するのは女性の存在。
山はよく「レディ」などと擬人化されるように、神話の世界でも
その昔、富士山が(ヒステリー)で噴火したなど、(女性)とし
て表現されます。
ハイキングのレベルではない本格的な(登山)ともなれば、それ
はもう命がけ。麓に愛する存在を残してまで命の危険を冒す理由
とは何なのか。

とまあ、命の危険を全く感じない(読書)をしながら、ふと思っ
たわけであります。
コメント
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