晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

ロザムンド・ピルチャー 『夏の終わりに』

2023-05-14 | 海外作家 ハ

今年の、公共放送では大型連休と呼んでいるでお馴染みゴールデンウィークですが、夜勤が1日おきに入ってましてゴールデンウィーク期間中はずっと仕事でした。もっとも土日も祝日も盆も正月も関係ないような職種ですから世間の休みと自分の休みが重なると出かけたくなくなるといいますか。平日のほうが空いてますし。

ワーカホリックではありません。

さて、ロザムンド・ピルチャー。スコットランドの女性作家。だいぶ前ですが「9月に」という作品を読みまして、作者の名前も作品もしらずに買って読んだらこれがまた面白かったのです。「面白い」というのはハラハラドキドキのスリルとかジェットコースターのようなスピード感とかではありません。そういうのは全くありません。ごく普通の登場人物でごく普通の話が淡々と述べられていく、ぶっちゃけ地味な内容なのですが、なぜか物語に引き込まれてしまい、読後にはとても良い本を読んだと心がほんのりあったかくなるような気分になります。

アメリカ西海岸カリフォルニアの観光客はまず来ない場所にある家に住んでいる娘ジェインと父のふたり暮らし。飼い犬もいます。ジェインの父は映画やドラマの脚本家で、もともとはスコットランドに住んでいたのですが、ジェインの母親の死後にアメリカに移り住んではや7年。ある日のこと、父は出かけていてジェインが家にひとりでいると一台の車が家の前に停まり、男が父に用があって来たと告げ、玄関越しにジェインの声を聞くと「ジェインだね?」と言います。

男はデイビッドといいスコットランドに住むジェインの祖母の弁護士。アメリカまで来た理由は祖母が何度も手紙を出しても返事が来なかったからで、ジェインはそのことを知りません。手紙の内容はジェインにスコットランドに帰ってきてほしいということなのですが、じつは父娘がアメリカに来る前、父と祖母が言い争っていたことがあったので、父がそれを読んで娘を帰らせたくなかったので隠してたのか。

もっとも、父と飼い犬を残して帰ることは難しく、スコットランドには帰らないと言いますが「火曜までいるので気が変わったら連絡をくれ」といって帰ります。父の机を開けるとそこには祖母からの手紙が。するとジェインの脳裏に懐かしいスコットランドの情景が思い浮かんできます。翌日、父が恋人のリンダといっしょに帰ってきます。なんとこれからいっしょに暮らすというのです。

ジェインはスコットランドに帰ると決心し父に告げ、弁護士が来て手紙の件も知ってしまったことを言うと「とめないよ」と許してくれます。そして、デイビッドといっしょにイギリス行きの飛行機に乗ります。ロンドンから寝台列車でエディンバラを過ぎてスロンボという駅に着きます。そこから車でしばらく行くとエルヴィー湖があり、ほんの半マイル先にエルヴィー荘が。到着すると中から祖母が出てきて7年ぶりの再会。

デイビッドが帰り、家に入ると祖母が「驚かせたいことがある」といってジェインが振り向くと「お帰り、ジェイン」と、ロンドンに住んでいるはずのいとこのシンクレアが立っています。休暇を取って戻ってきて、ジェインはシンクレアと懐かしい人に会ったり懐かしい場所へ行ったりします。

ふたりでピクニックに出かけると、いきなりシンクレアが「結婚しよう」とジェインにプロポーズを・・・

ジェインがまだ小さかった頃、密かにシンクレアに恋心を抱いていたことはあったのですが、ジェインはオーケーするのか。そして、知ってしまった家族に関する秘密とは。

 

こういう感想だとロマンスぽい内容のようですが、ロマンチックな結末ではありません。冒頭、カリフォルニアから始まったのでびっくりしましたが、その後のメインストーリーはスコットランドになったので安心。そしてスコットランドの情景描写はとても美しく、行ったことがなくてもなんだか懐かしい気持ちになってしまいました。「蛍の光」や「故郷の空(誰かさんと誰かさんが麦畑)」、「スコットランド・ザ・ブレイブ」といったスコットランド民謡やバグパイプの演奏を聞くとなぜか懐かしさがこみ上げてきます。音楽の専門的な話になりますが日本の歌とスコットランド民謡の共通点として「ヨナ抜き音階」というのがあって、ドレミファソラシドを数字にして4と7つまりファとシが無い、ドレミソラドの5音で構成されているメロディーが多いのです。ちなみに沖縄音楽は2と6(レとラ)抜きの「ニロ抜き音階」といいます。じっさいに弾いてみたらわかります。

 

 

 

 

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アーサー・ヘイリー 『ニュースキャスター』

2021-03-02 | 海外作家 ハ
先月は1回しか投稿できませんでした・・・
といいますのも、今年度の学校の課題とレポートの提出期限が2月の半ばで、それまでにできるだけ提出しておこうとしてテキスト読んで課題やってと「勉強モード」で本など読んでるヒマが無く、ようやく提出期限が過ぎて「さあて、本読むぞー」とはりきって手にしたのが割と長編。なんとか先月中に読み終えたかったのですが、今度は仕事が忙しく、投稿は3月に突入。

で、その長編とやらはなんじゃらほいという話ですが、当ブログ記事のタイトルにある作品でございます。
アーサー・ヘイリーは個人的に好きな作家で、翻訳がジェフリー・アーチャーの訳でお馴染みの永井淳さんというのもあってでしょうか、わりと硬派なテーマでありながらけっこう読みやすく、エンターテインメントとはいかないまでもハラハラドキドキ感もあって、読む前から期待大。

ニューヨークのテレビ局「CBAネットワーク」が主な舞台となるのですが、作品中に「ライヴァル局のCBSでは〇〇、ABCでは〇〇、NBCでは〇〇~」とあり、アメリカの3大ネットワークといえばこの3局で、つまり架空。CBAの(ナショナル・イヴニング・ニュース)のニュースキャスター、クローフォード・スローンは、番組が終わって自動車で家まで帰りますが、その後方にスローンの車を追う青のフォードが・・・

家に着いたスローンを迎えたのは、妻のジェシカと息子のニッキー。ジェシカから「あなたのお父さんが明日の朝にこっちに来るわ」と聞いて、スローンは「この前来たばっかりじゃないか」とややうんざりしますがジェシカもニッキーも歓迎。ところがスローンの父親が来るのを歓迎しない人物が他にもいたのです。翌朝、スローン家の前でタクシーが止まって老人が降りてスローン家に入っていくのを監視していた人物は、リーダーに符牒で「何者か知らない老人がタクシーで来て家に入った」と報告します。

スローン家から離れた貸家の(作戦本部)にいたリーダーのミゲルは予定外だったスローンの父親が来たことで作戦に若干の変更があることを心配しますが、いずれにせよ実行することに。

数日後、仕事に行くスローンを見送った後、ジェシカとニッキー、そしてアンガスの3人はショッピングへ。そこに「ミセス・スローンですか?じつはご主人が事故で・・・」と話しかける謎の男が。ですがそれを聞いていた退役軍人のアンガスは、この男の言う病院は救急患者を受け入れていないことを知っていて、つまりこれは嘘だと見抜き「ジェシカ、ニッキー、逃げろ!」と叫びますが銃で頭を殴られたアンガスと車に引きずり込まれたジェシカとニッキーの3人は連れ去られます。

CBAのディレクターに、郊外で誘拐事件が発生したことが告げられ、さらに「ショッピングモールの駐車場でクローフォード・スローンの妻と息子と、クローフォードの父親が正体不明の犯人たちに車で連れ去られた」と詳細情報が。CBAはこの出来事を速報で流すことに。「やめてくれ!」と懇願するスローンですが、CBAが流さなくてもいずれ他局や通信社が取り上げるだろうし、ならば「一番乗り」で報道しよう、という局の決定にしぶしぶ納得。

その後、記者会見を開きますが、そこで、過去に出版されたスローンの本に「テロリストと決して取引するべきではない、人質には気の毒だが(消耗品)とみなすべきである」と書いてあったことに追及が・・・

さて、CBAの方針として「政府機関は信用できない」というのはスローンも同意で、ならば海外の調査報道に経験豊富な我々なら家族が連れ去られた先とその目的を突き止められるのではないか、ということでこの件のタスク・フォースを組織することに。その指揮官に、スローンは「ハリー・パートリッジを希望する」と言ったのです。

じつはスローンとジェシカが結婚する前、ジェシカはパートリッジの恋人で、価値観の違いで別れてしまったのですが、スローンにとってそのことが今もパートリッジに対してわだかまりがあるというか微妙な関係なのです。
ですがそれはそれとして、今は「優秀な同僚」に全権を預けることに。

パートリッジが結成したチームはわずかな手がかりを頼りに誘拐犯とスローンの家族の行方を捜しますが、彼らは飛行機でアメリカを脱出し・・・

今まで読んだアーサー・ヘイリーの作品は企業や政界など「組織」の人間模様を描いて、もちろんこの「ニュースキャスター」もテレビ局という組織を中心に描いてはいるのですが、後半はアクション色が強く、個人的には好きなジャンルですので楽しんで読みました。

この話と並行して、テレビ局の経営、テレビの未来、報道の倫理、使命、社会的役割、などなどが随所に描かれていて、作品中に「近い将来、テレビはアンテナから電話線を使った放送に取って代わる」とあり、この作品が発表されたのが1990年で、もうすでにインターネットはあったのですが、まだこの時点では商業的にも文化的にもインターネットが大きな影響力を持つまでにはなっていなかったと思います。

読み始めは「なんだか小難しいテーマだなあ」と思いながら、そのうちだんだんハマっていって最終的には(読書という楽しさはこれなんだよ)と堪能させていただき、以前にも書きましたが「読み終わった後に”おりこう”になったような気がする」のです。
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セバスチャン・フィツェック『ラジオ・キラー』

2019-07-16 | 海外作家 ハ
さて、ここんとこずっと1か月に1回しか投稿できてませんが、
本が読めていないというわけでもありません。

病院など待ち時間が長いだろうなという場所に出かけるとき
に、長編の単行本は持って行くのが面倒なので、そういうと
きに重宝なのが短編の文庫。
「鬼平犯科帳」「剣客商売」など何度も読んでも面白いので
非常に助かります。
でも1~2時間で1冊読み終わることもないので、家に帰って
も続きを読むわけ。すると1巻を読み終えて次は2巻・・・と
全部読んでしまうことに。

相変わらず与太話ですが、このままじゃ未読の本がいつまで
たっても未読なままなので、ついに手に取ることに。

海外の小説です。久しぶりです。

ツイッターで本好きな方や出版関係の方や評論家、翻訳家の
方などをフォローしてまして、セバスチャン・フィツェック
という名前はチラチラと出てきまして、いつか読もうと思っ
てはいました。

海外の小説というとアメリカとイギリス、まれにカナダやア
イルランドやオーストラリアといった英語圏がメインになる
とは思うのですが、最近読んだ中ですとピエール・ルメート
ルですか、フランスの作家ですね。フィツェックはドイツ人。

ベルリンのラジオ局で、人質立てこもり事件が発生します。
犯人は、ラジオの生放送中にリスナーに電話をかけて、相手
にキーワードをしゃべらせます。ですがそのキーワード以外
の言葉をしゃべってしまったら人質を一人ずつ殺していく、
というサイコっぷり。

警察は、ある「交渉人」を呼ぶことに。イーラという女性で
犯罪心理学者。しかし彼女はプライベートで問題を抱えてい
てアルコール依存となり、とうとう自殺まで考えます。
そんなときにベルリン警察特別出動隊からこの事件が知らさ
れ、イーラは現場に。
ところが現場を指揮する本部長はイーラに犯人との交渉の任
務をさせることに反対。

ところでこの犯人、奇妙な要求をします。

それは、先日、交通事故で亡くなった恋人を連れてこい、と
いうもの。もしかしてこの犯人、頭がアレなのかしらと思う
イーラでしたが、本部長の反対を振り切って犯人と交渉に。

すると、恋人はたしかに生きている、その証拠もあるという
のです。イーラは、犯人との会話で言葉の特徴からこの犯人
は非常に知能が高く、特殊な資格(医学や法律関係)を所持
していると分析します。

そうこうしていると、犯人のいう「ゲーム」がスタート。
リスナーに電話をすると、出た相手は「もしもし」とキーワ
ード以外の言葉を話してしまいます。すると受話器の向こう
側から銃声が・・・

犯人の要求とは本当なのか。犯人はもっと影響力のあるテレ
ビを使わずなぜラジオなのか。

イーラにとって最悪の知らせが。なんと人質の中にイーラの
娘がいると・・・

犯人の恋人が死んだというのが嘘だとしたら交通事故も偽装
だったということになるのですが、話はこの問題だけにとど
まらず、最終的に国を揺るがす大問題に。

久しぶりに読んだサイコスリラー。海外のミステリー系に
ありがちな、犯人は人間離れで捕まえる側も神がかり的な
やつではなく、しっかりと「人間対人間」で描けていて、
ストーリー展開もスピーディーかつ重厚で、とても充実。

この作品は2作目で、本の帯に「話題作『治療島』に続く第
二弾!」とあったので、てっきりデビュー作と登場人物が
一緒の続編的なやつかと思ってたのですが、違いました。




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ベンジャミン・ブラック 『ダブリンで死んだ娘』

2019-01-20 | 海外作家 ハ
このベンジャミン・ブラックという作家名、じつはペンネームで、
うしろにある解説をそのまま引用させていただくと
「現代アイルランドを代表する作家ジョン・バンヴィルの別名義。
(中略)2005年には『海に帰る日(The Sea)』で、カズオ・
イシグロ『わたしを離さないで』を抑えてブッカー賞受賞」
とのこと。

もともと純文学系の作品を書いていたのだそうで、ミステリーを
書くにあたってなぜ別名義にしたのかというのはあとがきにあり
ますが、まあとにかくこの作品はミステリー。

1950年代のアイルランド、ダブリン。(聖家族病院)の病理
医で検死官のクワークは、看護師の送別会で酒を飲み過ぎて意識
も明確ではない状態で、自分のオフィスである病理科に行くと、
そこに同じ病院の産婦人科医でクワークの義兄でもあるマルがい
ます。そしてその傍らには若い女性の遺体。名前は「クリスティ
ーン・フォールズ」とあります。

が、次の日、病院に行くと、昨夜の女性の遺体が消えています。
同僚に聞いても「知りません」とのことで、マルに話を聞きます
が、はぐらかされます。

しかし、遺体が病院に運ばれた記録は残っていて、そのファイル
を見ると、明らかに何者かが書き換えた跡が。あの夜、マルは何
をしていたのか。
ファイルによると、件の女性の死因は「出産時の出血死」。

クワークには死別した妻がいて、その妻の死因も同じ。だからと
いうわけではありませんがクワークはクリスティーンの生前の行
動を探ります。

そこで、生前、クリスティーンと同居していたドリーという女性
を探り当てて話を聞きますが、クワークが訪れた次の日、ドリー
は何者かに殺されます。
そして、クワークのもとに謎の男が来て「今あなたがしているこ
とをやめないと痛い目に遭いますよ」と忠告(脅迫)が・・・

クワークの死別した妻デリアはマルの奥さんサラと姉妹。マルと
サラの娘フィービは両親と揉め事中で、叔父であるクワークを慕
っています。
クワークの父はアイルランドの判事、マルとサラの実父はアメリ
カ・ボストン在住の大富豪。

ミステリのほうである「本筋」と、クワークの「家族関係」の話
が複雑に入り組んで、最終的にクワークは知ってはいけなかった、
開けてはいけなかった箱を開けてしまうのですが、まあなんとい
いますか、いやーな話です。

文体が全体的に「純文学と一般文学の中間」のようで、スコット・
トゥローの作品にもあったと記憶してるのですが、まあ向き不向き
といってしまえばあれですが個人的にどうにも読みづらく、数ペー
ジ読んでは寝落ちし、これ今月中に読み終わるか?と不安でした。

あ、でもそういえば、カズオ・イシグロの『わたしを離さないで』
と、話の内容こそ違いますが、おおまかな「方向性」は似てるよう
に感じます。
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ケン・フォレット 『ハンマー・オブ・エデン』

2018-11-26 | 海外作家 ハ
先月と先々月は1ヵ月に2回しか投稿しなかった、つまり
2冊しか読んでなかったわけですが、自称「本好き」とし
てはこれじゃイカンと思いつつ、就寝前の1時間を「読書
タイム」にしてはいるのですが、インザベッドするとアズ
スーンアズでスリープしてしまうのですね。

思わず英語が出てしまいましたが、しかし、今月も最後の
週末に入ってようやく3冊目が読み終わるという快挙。

さて『ハンマー・オブ・エデン』です。いちおう邦題とし
て(エデンの鉄槌)とありますが、こころみにハンマーの
意味を調べますと、hammerだけだと(金属製の)とあり、
なるほど鉄槌なわけですね。ちなみに木槌だとmalletで、
柄が1メートルぐらいある両手で持つタイプのはsledgeで、
裁判官の机にあるやつはgavelだそうです。

アメリカ、テキサス州の砂漠地帯、石油掘削の現場にリッ
キーと呼ばれる男が。リッキーは現場にある「サイスミッ
ク・バイブレーター」という、地下の油田を探すのに使う
巨大な振動を起こすトラックを盗もうとしています。

リッキーはある女性に会いに行きます。(スター)という
女性はどうやらリッキーの共犯者で、そしてリッキーは、
スターには(プリースト)と呼ばれています。

このふたり、カリフォルニアの山奥にあるコミューンで暮
らしていて、文明からは隔絶した生活をしています。
しかし、彼らの暮らす地の近くで発電所建設の計画があり、
立ち退きを迫られていて、しかしコミューンのリーダー的
存在であるプリーストは立ち退きをしないどころか、発電
所の建設計画をやめさせようとするのです。

このコミューンには(メラニー)と呼ばれる女性がいて、
じつはメラニー、コミューンに来る前に大学で地震学の研
究をしていて、彼女いわく「地震は人工的に起こすことが
できる」そうで、これを聞いたプリーストは、地震を起こ
すといってカリフォルニア州知事に発電所の建設を撤回さ
せるのはどうかと考え、この作戦を「エデンの鉄槌」と名
付けます。

カリフォルニアには巨大な断層が2本あり、ここに溜まっ
たエネルギーを人工的に(誘発)させれば、エネルギーが
一気に放出、これが地震を人工的に起こす仕組みなのです
が、そのためには何かで地殻に振動を与える装置が必要と
なり、それが石油掘削現場で使う「サイスミック・バイブ
レーター」なのです。

当初の計画どおりとはいかず多少ゴタゴタはありましたが
プリーストはこのトラックを盗むことに成功します。

話は変わってサンフランシスコのFBI支局。女性捜査官
のジュディ・マドックスは、支局長から、州知事が(エデ
ンの鉄槌)と名乗るテログループから脅迫を受けたので、
そちらの捜査に当たってほしいと言われます。

その脅迫内容はカリフォルニア州の発電所新設計画の中止
で、もし撤回しなければ4週間後に地震を起こす、とのこ
と。

こんな頭のいかれた脅迫などまともに取り合う必要はない
と思ったジュディのもとに脅迫文の分析を行うサイモンが
来て「彼らをたんなる異常者と決めつけるのは尚早で危険
だ」とアドバイスします。

ジュディは地震学者のマイケル・カーカスに会い、人工的
に地震は起こせるのか聞きに行きます。答えは「イエス」
ですが、そのためには高度な地質学と高価な振動装置が必
要で、現実的に脅迫に用いるのは考えにくいとのこと。

脅迫期限の前日、ジュディは報告書を作成しますが、支局
長をはじめ知事の側近も真面目に取り合おうとしません。
そして当日、オーエンスバレーという場所で、小規模の地
震が発生します。

地震研究所は「これは普通の地震」と断定しますが、その
少し前に、ラジオ番組に「エデンの鉄槌」から犯行声明の
電話があったのです・・・

地震学者のマイケルに聞いてみると、振動が(あまりにも)
規則的で、人為的の可能性があるとの見解を出しますが、
いざFBIに戻ってみると、この件は捜査本部が置かれて、
なんとジュディは担当から外されてしまい・・・

次の期限は7日後。今度はもっと大規模な地震を起こすと
脅迫が。ジュディは「エデンの鉄槌」を見つけることがで
きるのか。

この物語で重要な部分はジュディのバックグラウンド。
彼女の亡くなった母親がベトナム人で、つまりアジア系。
父親が警官で、彼女は幼い時にサンフランシスコ大地震を
経験しています。FBIというゴリゴリのエリート集団で
男尊女卑文化も消えたとはいえない中でアジア系女性とい
うだけで出世は難しそうですが、こちらの人間模様もまた
面白いところ。

そしてケン・フォレットの作品といえば欠かせないのが、
ロマンス。マイケルはジュディがお気に入りのご様子で
すがマイケルは別居中の妻子あり。その妻というのが・・・
どうなるんでしょうか。
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ロバート・ローレンス・ホルト『グッド・フライデー』

2018-08-25 | 海外作家 ハ
相変わらず暑いです。

もはや前置きのくだらない与太話すら考える余裕がありません。

さて『グッド・フライデー』。
昔、たけし軍団が襲撃した週刊誌とは何の関係もありません。
イエスキリストが処刑された日が13日の金曜日とされてい
まして、映画のタイトルとしてあまりに有名になった、一般
に「不吉な日」ですが、一方で「人間の罪を背負って処刑さ
れたことで人類は救われた」ということで、イースターの2
日前が「聖金曜日」になります。

で、1990年代のいつか、イラン軍はイラクとクウェート
に侵攻、いよいよサウジアラビア国境にきたところでイラン
軍の兵士がインフルエンザに集団感染、緊迫した中、ソ連の
戦闘機がサウジに向かって飛行してきて、前年に就任したば
かりのアメリカ大統領はどうするか・・・という話。

この作品が書かれたのが1987年ということで、史実では
翌1988年にイランイラク戦争が終結して、1990年に
イラクがクウェートに侵攻します。

というわけでして作者が描いた近未来予想とは若干の違いは
ありますが、それでも一歩間違えばこうなった可能性も十分
考えられる内容です。

ソ連の狙いはサウジの油田であることは明らかなのですが、
アメリカ大統領スタイナーは、ソ連のデレベンコ書記長に
電話で聞きますが相手は「は?なんのことかさっぱり」と
すっとぼけます。それだったら米軍が先にサウジを侵攻し
てしまえばいいということでホワイトハウスはサウジ国王
に「今から米軍が侵攻します」と連絡。ただしこれは偽装
作戦で、サウジの空軍基地の横っちょに爆弾をちょいと落
として米軍がソ連より先に入っちゃおうというもの。
サウジ国王はしぶしぶ作戦を承諾しますが、サウジの国家
警備隊司令官でもあるサリーム皇太子が「アメリカだろう
がソ連だろうがすべての異教徒を追い払う!」と猛反対。

いよいよソ連機が迫ってくるといった状況で、サウジ側か
らアメリカへの通信手段がシャットアウトされてしまいま
す。
アメリカ海兵隊中佐のトム・ヘミングウェーは、米国人の
居留地に向かいますが、ここでも電話は使えません。
しかし、ある双子の男の子と女の子が「ハム無線が・・・」
と話しているのを聞き・・・

サウジアラビアといえば、中東でゴタゴタがあった際、米
軍隊が足がかりにしていることで、そういうニュースを見
ていると、なんとなく「西側自由陣営、民主主義側の味方」
というイメージがあり、アラブ諸国の中でも比較的「自由」
なのでは、と思う方もいるでしょうが、じつは文中でも出て
きますが、この当時は女性が車を運転してはいけなかった
のです。ちなみにサウジで女性の運転が解禁になったのは
なんと今年。2018年。
オリンピックでも女性選手が出場できるようになったのは
確かリオかロンドンから。

そういえば「イケメンすぎて国外退去」なんてのもありま
したっけ。
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ディック・フランシス 『罰金』

2018-08-04 | 海外作家 ハ
今までに、競馬場に付き合いで行ったのは2回か3回、
賭けたお金は1レースでせいぜい数百円、ネットで馬券
も何回か買いましたが、こちらも賭けるのは数百円。
パチンコに関しては、人生で一度もやったことはない
というくらいに、ギャンブルとはほぼ縁が無く生きて
きたわけですが、今回読んだディック・フランシスと
いう作家さん、元競馬騎手だそうです。

「競馬スリラー」というシリーズだそうで、この『罰金』
は7作目、アメリカ探偵作家クラブ賞(MWA賞)の長編賞
を受賞しています。

初めて知ったのは、イギリスでは競馬のレースの開催日
のだいぶ前から賭けていいんですね。
もっとも、正規の(馬券)ではなく、ブックメーカーと
いう(賭け屋)ですけど。ちなみに日本ではノミ行為は
別にして競馬では特定のレースは前日から買えるそうで
す。
まあイギリスはサッカーW杯の優勝予想からロイヤルフ
ァミリーの赤ちゃんは男の子か女の子かなんてのも賭け
の対象になるくらいですから、文化が違うんでしょうね。

新聞の競馬担当記者のジェイムズ・タイローンは、「ラ
ンプライター・ゴールド・カップ・レース」に関する記
事を書くことに。
その日、タイローンは、知り合いの同業者バート・チェ
コフに会います。待ち合わせの場所に行くと彼はすでに
べろべろに酔っていて、何を話しているのかよく分かり
ません。
仕方なくタイローンはチェコフをオフィスまで送って行
きますが、するとチェコフがいきなり「忠告だ」と言う
のです。

さらに「頼まれても引き受けるな」「記事を金にするな」
と言いますが、タイローンがどういう意味だと質問しても
答えてくれません。
どうにかチェコフをオフィスまで連れて行き、そこで別れ
てタイローンは帰ろうとすると背後から叫び声が聞こえま
す。引き返すとそこにはチェコフが路上に横たわっていた
のです・・・

ビルの7階の窓から転落したらしいのですが、まともに
歩けないほど酔っていたので自殺ではなく事故死。

さて、タイローンはランプライター・レースに出走する
ティドリイ・ポムという馬の取材に出かけます。
すると馬主は「バート・チェコフを知ってるか」とタイ
ローンに尋ねます。
どういうことか逆に質問すると、バートもランプライタ
ー・レースの取材をしていて、どうやら馬主は彼の書い
た記事に怒っている様子。
雑誌を見せてもらうと、そこにはティドリィ・ポムを過
剰なまでに誉めちぎった内容が書かれていたのです。
なんでも、その記事のせいで、もともと評価の低かった
ティドリィ・ポムの人気が上がって倍率がどんどん下が
って、馬主にとってはまだ倍率が高かった時に賭けてい
ればよかったというのもあるのですが、まだレースまで
20日以上あるというのにこれはおかしいというのです。

オフィスに戻ったタイローンは、同僚に取材の件を話し
ますが、そこで同僚は「じゃあ僕はその馬を本命にはし
ないな」と言うのです。
どういうことか聞くと、過去にもチェコフが本命にあげ
た馬は、出走取り消しになっているケースが多いのです。

これは、たんにチェコフの馬を見る目が節穴だったのか、
それとも彼の死の直前に語った例の「忠告」が関係して
いるのか・・・

ということは、ティドリィ・ポムは、レースの4日前、
つまり出走取り消しの違約金を支払う期限の以後に出走
が取り消されることになり、もしこれに賭け屋が絡んで
いたとすれば立派な詐欺になります。

さっそくタイローンはティドリィ・ポムの馬主に連絡を
して、馬を別の場所に避難させてくれとお願いをし、さ
らに「調教師、ティドリィ・ポムの出走を確認、掛け金
は本当に安全なのか?」という記事を書きます。
それから数日後、別の取材で出かけていたタイローンに
「俺らの邪魔をするな」とふたりの大男が襲い掛かり・・・

タイローンを襲ったのは賭け屋なのか、チェコフは金を
もらって彼らの詐欺に加担していたのか。

そういえば、昔たまたま見た深夜テレビの麻雀のアニメ
があって、そこで「真面目に働きたくないから雀士にな
ったのに、実際は勤め人のように研究熱心なのでアンタ
等は不思議な人種だ」みたいなセリフがあって、うーむ
なるほどと未だに印象に残っています。

近い将来、日本にもカジノができるそうですが、まあほ
どほどに。
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ケン・フォレット 『モジリアーニ・スキャンダル』

2017-09-24 | 海外作家 ハ
久しぶりの海外小説です。というよりは時代小説以外の
本を読んだのが久しぶり。どのくらいぶりかというと5月
のはじめ「万城目学『偉大なるしゅららぼん』」以来
ということで、というか、今年に入って今日現在まで
45冊分の投稿をしていて、うち時代小説ではない現代
小説(海外作品含む)は8冊。

このブログに(時代小説専門)というサブタイトルを
付けないためにも、ちょくちょく現代や海外の作品を
読まねば。

さて、ケン・フォレットですが、けっこう好きです。
まだ日本で発売されている分をコンプリートしている
わけではありませんが、未読の作品を見つけたらとり
あえず買います。先日も今回読んだ作品ともう1冊購入。

モジリアーニとは、アメデオ・モジリアーニという
イタリア人の画家。20世紀初めにパリで芸術活動。
35歳という若さで亡くなっているのですが、生前の
評価は低く、ゴッホのように、死後に評価が高く
なり、あとがきによれば、1989年に大阪市が購入
した「髪をほどいた横たわる裸婦」がなんと20億
円。「20円置くんちゃいますよ」と思わずトミーズ
のネタが出てきてしまいます。

まあ、酒とドラッグと貧困と結核によって夭折した
伝説的画家ということでだいぶ過大評価されたよう
ですが。

物語は、パリに夏季休暇で滞在している芸術学で
博士論文を書こうとしている女子学生のディーが、
モジリアーニの(幻の作品)がどこかに存在する
と知ったことから始まります。

これを、ディーの叔父でロンドンの画廊のチャールズ
・ランぺスに手紙で報告します。
姪からの手紙を見たランぺスは、ちょうど良いタイ
ミングだと(モジリアーニ展)の開催を計画します。

これに怒ったのが若手芸術家のピーター・アッシャー。
自分の個展を延期してモジリアーニ展をやると聞いて
パーティーの席でランぺスを罵ります。

アッシャーの作品は、ほんの前までは高値をつけたの
ですが、最近は1枚も売れず、現在は美術学校の講師
をしています。

家に帰ると友人のミッチが来ていて、恋人のアンが
何気なく「贋作を描くのは原作者と同じくらいの
才能がないとダメなの?」と質問すると、アッシャー
とミッチはサラサラとゴッホの絵を描きます。
アンは冗談で「もし失業してもこれで生活できるわね」
と言ったのですが・・・

一方、ディーは友人で女優のサマンサにも「これから
イタリアに行ってモジリアーニの幻の作品を探しに行く
わ!」と絵葉書を送っていて、これをサマンサの知人で
画廊経営をこれから始めようとしているジュリアンという
男がたまたま見ます。
ところで、サマンサは女優業で問題を抱えていて、そん
な時に出会ったトムという男にたちまち惹かれます。
じつはこのトム、詐欺師だったのです・・・

ディーは恋人のマイクとふたりでイタリアにいます。そこ
で、イギリス人の男に声をかけられます。その男は「ある
絵を探しています」と言うのですが・・・

ジュリアンもディーより先にモジリアーニの絵を見つけて
やると追跡します。

アッシャーとミッチ、アンはロンドンじゅうの有名画廊に
ゴッホやムンクの(贋作)を売ろうとして・・・

ディーは追っ手より先にモジリアーニの幻の作品を見つける
ことができるのか。
アッシャーとミッチ、アンは贋作を売って得たお金である事
をしようとしますが・・・

関係のなさそうな話が徐々ににつながって、最終的に「おー」
と驚くこと間違いなし。

この作品は、フォレットの出世作「針の眼」の前に書かれて
いたそうで、当時は別名義のペンネームだったそうです。
書かれた順番どうりに出版されるとは限らないもので、以前
読んだある海外作家の作品は、シリーズ3作目が国内初出版で、
1,2作目はその当時で発売未定という酷いものもありました。

いずれにせよ、裏表紙のあらすじでは「野心作」と評している
ように、その後書かれたフォレットの作品に比べるとプロット
に気を使いすぎてる感が強くて、作品にのめり込むまで時間が
かかりましたが、それでものめり込み始めたと思ったらあっと
いう間に読み終わってしまいました。


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フレデリック・フォーサイス 『アフガンの男』

2014-08-27 | 海外作家 ハ
長い間、当ブログをほったらかしにしてしまいました。すみません。
関東では昨日あたりから涼しくなりましたね。
秋の夜長、読書が進みます。楽しみ。

この作品は、記憶がたしかならば、作者のフォーサイスが断筆宣言をした
あと、2001年9月に同時多発テロが起こって、引退撤回をして書いたもの。

東西の冷戦が終わって、西側自由陣営には明確な”敵”と呼べる存在が
いなくなったわけですが、新しいタイプの”戦争”が出てきたわけで、
これにはフォーサイス、いてもたってもいられなかったのでしょう。

2006年、パキスタンで、前年に起きたロンドン自爆テロの犯行グループ
を見つけ、その潜入先に突入、しかしその際に幹部とされる男は死亡。
彼の持っていたパソコンを解析すると、そこには、アルカイダのある
”作戦”が残っていました。

しかし、イギリスとアメリカの諜報部はアラビア語の解釈に手こずり、
コーランの専門家を呼びます。

パソコンにあった「アル-イスラ」とは、専門家によれば、ムハンマドの
”啓示”を指していて、学者の間でも、これは神聖な奇跡なのか、あるいは
夢(空想)だったのか議論が続いているところ。

それが、何らかのテロの作戦だとしたら、何を意味するのか。

ロンドン大学のコーラン研究の第一人者、テリー・マーティンは、この問題は
現地に行ってアルカイダに潜入でもしないと分からないだろう、と言いますが、
原理主義者の中に入ってバレないような”人材”などそう簡単に見つかりません。

テリーは車の中でボソッと「自分の兄だったら・・・」とつぶやきます。

それをCIAは聞き逃さず、テリーの兄を照会、マイクは元英国軍特別空挺部
の大佐。現在は除隊して、イギリスの田舎で廃屋を買い取り、修理にいそしんで
いるところ。

そんなマイクのもとに米英の諜報部が訪れます。弟のテリーの外見は白人なのに、
マイクの肌は褐色。というのも兄弟の祖母はインド人で、その血がマイクだけに
濃く遺伝したのです。

かくして、マイクはアフガン人になりすまし、「アル-イスラ作戦」の内容を
知るために潜入することに・・・

「原理主義」とは何なのか、ソ連のアフガン侵攻からタリバン、アルカイダは
どう関係してきたのか。作中で「多くの人はイスラムのことを知ろうともしない」
という言葉があり、まあ知ったからといってテロを許すとかそういうわけでは
ありませんが、決め付けで否定したくはないので、そういった意味で、この本を
読んで良かったな、と。

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ウィリアム・フォークナー 『サンクチュアリ』

2014-06-05 | 海外作家 ハ
一般に古典や名作と呼ばれる作品は、そんなに読んだことはありませんが、
我が家の書棚にはディケンズ、ブロンテ姉妹といったイギリス文学があり、
でもアメリカ文学はヘミングウェイぐらいです。あと「赤毛のアン」も。

前からフォークナーやスタインベックなど読んでみたいとは思っていたの
ですが、いよいよ買ってみました。

関係ありませんが、「がんばれ元気」というボクシング漫画で、主人公の
友達が夏期講習のため上京し、その友達がフォークナーがどうのこうの、
でも主人公はプロボクサーになるため勉強から遠ざかって話が合わないよ、
というのがありましたっけ。

さて『サンクチュアリ』ですが、裏表紙のあらすじによると「自分として
想像しうる最も恐ろしい物語」と著者が語ったとあるように、ノワール
(暗黒)小説というんですか、まあ簡単にいってしまうと、残酷な話。

冒頭、ホレス・ベンボウという弁護士が、藪や木々が生い茂る奥のほうで
ポパイという男と出会います。ポパイは酒を密造しているギャングで、
ベンボウは「きみを酒の密造で訴えたりはしないから」と言いますが、
ポパイはピストルを胸にしのばせていて、帰してくれません。
密造酒のアジトへ連れていかれ、それからなんだかんだでベンボウは
トミーという男に案内され、町へ帰ります。

それから後日、テンプルという女子学生が、男友達とドライブしている途中に、
この密造酒のアジト近くで車が壊れ、そこをトミーに発見され、ふたりは
アジトへ。そこでテンプルはポパイに襲われてしまいます。しかし後に
わかることですが、ポパイは性的不能者。さてどうやってテンプルを襲った
のかというのは話のキーとなるので書けませんが、精神に支障をきたして
しまったテンプルはメンフィスのある売春宿に連れてかれて、そこでレッド
という男と同室にさせてポパイはそれを見てニヤニヤ。
しかしレッドはポパイによって射殺されてしまいます。

トミーが頭を撃ち抜かれていた死体となって見つかり、テンプルも行方不明
でしたが見つかり、その容疑でグッドウィンという男が捕まります。

そのグッドウィンの弁護士となったベンボウ。

トミーを殺したのもテンプルを襲ったのもポパイなのですが彼は見つからず、
やがて裁判になり、検事はグッドウィンを有罪にするべく汚い手を使い、さらに
テンプルは嘘の証言をし、なんとグッドウィンは有罪に。

そのグッドウィンは、町の人たちに留置場から出されて焼き殺されます。

ポパイは、自分のやっていない殺人事件の容疑者で逮捕されてしまい・・・

ざっとあらすじを書きましたが、まあ無茶苦茶です。

ボストン・テランの「神と銃弾」やエルロイのLA三部作、ドン・ウィンズロウの
「犬の力」などを読み終えたときの放心状態や衝撃の度合いに較べればいくぶん
か弱いですが、「ただの残酷な暗黒小説なんじゃないの」と敬遠されている方には
入門編としておすすめ。


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