晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

ディーン・クーンツ 『アイスバウンド』

2009-12-30 | 海外作家 カ
『アイスバウンド』は、それまでのクーンツ作品の定石とも
いってよいファンタジックあるいはB級テイストのホラーで
はなく、硬派なサスペンス。

近未来、地球上では水不足が深刻化し、とうとう国連の対策
チームは、グリーンランドの氷を割って、北米大陸まで運んで
水を確保するという大事業に乗り出します。
運悪く海底地震に遭遇し、チームのメンバーは爆破を行う前に
自分たちのいる場所が氷山となって切り離されてしまいます。

しかも、ここ数年で一番強い暴風雪という悪天候で、近くの
船も近づけず、ダイナマイトは奥深くに時限セットされていて、
このままではメンバーは吹き飛ばされて海の藻屑に・・・

しかし、その時、グリーンランドの海中には、ロシアの潜水艦
が機密航海をしていて、国連のチームとアメリカ海軍との無線を
傍受。船長は本国モスクワに「人助け」の許可を要請するの
ですが・・・

本の後部に、「読者のみなさんへ」という筆者のコメントがあり、
潜水艦の描写はトム・クランシーにはじめから勝とうなんて思って
ない、といったような文があり、なんとも謙虚というか。

物語が時系列で章分けされていて、迫りくる恐怖やその他と戦う
臨場感と緊迫感が伝わってきて、スリル満点。
当然、こんなシンプルな一筋縄では終わらず、国連チームの中に
暗殺された元大統領の親戚がいて、作業中にチームの何者かに
後ろから頭を殴られます。一体誰が彼を襲ったのか・・・
こういったサスペンスも織り交ぜて、さらにスリル倍増。
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藤本ひとみ 『聖戦ヴァンデ』

2009-12-27 | 日本人作家 は
1789年の7月、パリのバスティーユ監獄が市民たちの手に
落ち、これをただの「暴動」とするか「革命」とするか、結果
これは革命ということになり、ヴェルサイユの王侯貴族たちは
こぞって亡命、近衛兵たちは王政を守るために戦います。

パリ市内の修道院寄宿学校の生徒ジュリアンは、「バスティーユ
陥落は取るに足らない、王座を打倒すべき」というビラを書き
ます。そのビラは、市民の中で演説をうつロベスピエールのもと
へ届き、ロベスピエールはこのビラに感銘を受け、書き主を探そう
とします。

一方そのころ、国王近衛騎兵隊将校の貴族アンリは、腹心の部下
二コラと袂を分かちます。兵隊たちは国王や貴族のためではなく
市民のために戦うと意気込み、ニコラも誘いますが、ニコラは
アンリに恩義があり、板挟みとなりますが、アンリはそれを察して
ニコラに市民兵側に行けと命令。そのとき、ニコラはアンリの家宝
の刀の鞘をアンリに渡し、ニコラはその刀を受け取ります。

パリでは、市民側に政治の主役が移り、ジャコバン修道院に集まる
ジャコバンクラブと、豪華な部屋(サロン)に集まるジロンド党の
2大派閥が主導権を握ろうとしており、ジャコバンクラブはロベス
ピエール、ジロンドはロラン夫人が台頭します。
ついに国王ルイ16世と王妃マリー・アントワネットは国外に逃亡
を企て、その際に近隣諸国に革命運動を潰すよう要請。
国内は革命軍と王政復活を望む貴族が対立、国境では隣国が攻めて
きて政治は紛糾。

アンリは、故郷のヴァンデ地方にある城に戻り、王政復活を望む
農民たちを連れて、反革命軍を結成。ヴァンデ地方では次々に
反革命ののろしが上がります。

政治の中心は、ジロンド派が駆逐され、ジャコバンクラブが実権
を握り、国王ルイ16世と王妃アントワネットをパリに連れ戻し、
ギロチンにかけて処刑。さらにジロンド派の人たちも処刑。ここに
恐怖政治がはじまります。

ジュリアンはイギリスに渡り、帰国後ジャコバンクラブ党員となり、
足早に出世。ロベスピエールの腹心となるべく動きますが、その思い
はロベスピエールには届きません。

革命軍として、隣国プロイセンと戦っていたニコラは、その戦果を
買われ、ヴァンデの反革命軍と戦うことに・・・

もはや大河ドラマです。ものすごい重厚感。
物語の重要人物ロベスピエールは、はじめこそ革命に燃え、市民が
主役の政治、民主政治を実行しようとしますが、その実、裏切りや
意見の合わない側を次々と断頭台送りにします。
挙句、自分を敬愛するジュリアンに、ダークでマイナスなイメージ
をおっ被せようとする始末。

物語は革命の途中で終わり、その後革命軍の若手砲兵だったナポレオン
・ボナパルトが実権を握り、周辺諸国と戦争。
しかしフランスの快進撃はロシアでの敗戦で尻すぼみとなり、やがて
ウィーン会議で、フランス革命は「無かったことに」して、革命以前
のフランスに戻すことを約束。王政は復活します。
そのフランス全権団の中心人物は、この物語でちょい役として登場
する、ジュリアンがイギリス留学中に出会うタレーランという人物。
タレーランははじめジロンド派、次にジャコバンクラブに入り、
恐怖政治をなんとか生き延びます。
革命側は大量虐殺、恐怖政治というフランス史に残る暗部となりま
すが、タレーランのような抜け目ない、機を見て敏な人が最終的に
勝つ、なんだか現代の政治模様と変わらないような気がします。

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川崎草志 『長い腕』

2009-12-24 | 日本人作家 か
『長い腕』は、第22回横溝正史ミステリ大賞受賞作で、
過去の怨念が現代のコンピュータで甦る、というような
あらすじなのですが、ミステリーというよりは、どちら
かというと、ホラー要素が大きいです。
犯人は人間なのか、それとも得体の知れないなにか、と
いったドキドキ感が楽しめます。

ゲーム会社勤務の島汐路は、もうすぐ会社を辞めて海外の
会社に転職するまで、新商品開発に忙殺されます。
そんな中、彼女の同僚であるふたりの女性が、会社のビル
の屋上から飛び降り自殺します。
自殺したうちの一人の机の上には、見たことのないキャラ
クター人形がおびただしいほど多く置かれており、汐路は
気になり、調べてみると、あまり人気のないアニメの中の
「ケイジロウ」というキャラクターだと知ります。

会社を辞めて、次の転職まで期間のある汐路は、実家のあ
る四国へと帰ります。
しかし実家のある町は、彼女にとって、両親を事故で無くした
悲しい土地。
ネットでこの町を調べてみると、ある事実が浮かんできます。
それは、他の地域と比べて、異様に殺人事件の件数が多いこと。

調べてゆくうちに、家出をしたふたりの女子中学生がいて、その
うちひとりはもうひとりに殺されて、片方は未だ行方不明。
そして、彼女たちのカバンには、前の会社で自殺した人の机の
上にあった「ケイジロウ」の人形が・・・

ここから話は、思いがけない方向へと進み、最終的にはファンタ
ジックなホラーではなく、ちゃんとミステリー形式の締め方とな
ります。
ストーリーのアイデア、情景描写なども巧み。
ただ、作者の思い入れのある登場人物とそうでない登場人物との
差がけっこう見られましたね。なんていうか、主人公との多少の
絡みはありつつ、あとはほったらかし扱いにしてしまうというか。
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パトリシア・コーンウェル 『遺留品』

2009-12-22 | 海外作家 カ
『遺留品』は、検屍官ケイ・スカーペッタが主役の
シリーズ3作目で、引き続きリッチモンド市警の刑事
であるマリーノとのコンビで難事件を解決します。

1作目でのケイとマリーノは、男性上位の権化のような
マリーノを嫌うケイと、女性の指図はごめんだと態度に
表すマリーノがお互い忌み嫌うような間柄で、それでも
仕事そのものには手を抜かず、犯人を捕まえるという目的
は同じなので、微妙な均衡を保ちつつも2作目では、
やや進展が見られ、お互いに気を使いあうといった一幕
も垣間見られたりもします。

そして、3作目『遺留品』では、マリーノの家族という
プライベートな話題も出てきて、もはやこのコンビは、
気軽に悪態をつきあえる夫婦か、夫婦漫才のような掛け
合いが面白いですね。

バージニア州内で、立て続けに起こっているカップル殺人
事件。その被害者の中に、次期副大統領候補と目される
女性大物政治家の娘もいたのです。
いずれの事件の被害者も、長期間、森林の中に放置されて
いて腐食がひどく、検屍もままならない状態。

事件を調べていくうちに、ワシントンに移ったケイの友人で
記者のアビーが訪ねてきます。
彼女はワシントンポストの記者で、この事件を記事にしたい
けれど、警察はこの事件の詳細を教えてくれないとのこと。
じつはケイは、FBIの人間から、この事件を漏らさぬよう
にと口止めされていたのです。

アビーは独自の調査をはじめ、その過程である政府機関の敷地
近辺に迷い込んでしまい、それからというもの、盗聴や尾行を
されていると疑います。
さらに、ケイとマリーノも調べますが、ここでもFBIから
余計なことはするなと釘をさされるのです。

女性大物政治家に対する間接的な攻撃で娘は殺されたのか、
政治的な圧力なのか、あるいは政府機関のCIAの誰かが
この猟奇殺人を起こしたのか・・・

物語の終盤で、ある怪しい男が逮捕されるのですが、遺留品
の中にある血液と、この男の血液もDNA型も一致せず、釈放
されます。
ここからとんでもない展開となり、そして真犯人もわかるの
ですが、それにしても、犯人は心の病気というアメリカのミス
テリー界における定石といいましょうか、ちょっと食傷ぎみ。

人物描写や情景、ストーリー展開は面白いので読むんですけどね。
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坂東眞砂子 『狗神』

2009-12-19 | 日本人作家 は
高知県の山奥にある村で、和紙を作っている女性、美希。
悲しく辛い過去を引きずり、四十を越えても独り身で、
兄夫婦と母と暮らします。

そんなある日のこと、村の学校に新しい男性教師が赴任
してくることに。美希はその教師の晃と出会い、やがて
お互い惹かれあいます。

一方、村では、村人たちが不気味な夢にうなされ具合を
悪くし、美希の母もどこか様子がおかしくなり、なにか
村全体が不穏な空気に包まれたかのよう。

そしてとうとう、美希に想いを寄せる男の母親が、美希
に対して暴言を吐いた直後に容態が悪くなり、死んでしま
います。
そこで美希は、自分の一族が「狗神筋」と呼ばれ、村人から
腫れ物に触るかのように扱われていたことを知り、ショック
を受けます。
母に問いただすと、一族の女にだけ、狗神の特殊な力がもた
らされ、そして母は娘の美希に、継承者になれと告げ、ある
壷を渡されるのですが・・・

たんにおどろおどろしくない、神秘的なホラーとでもいいま
しょうか。美しい文体、情景描写が、まるで文中に引きずり
込まれるかのようで、登場人物と同時に恐怖を味わっている
錯覚にとらわれます。

「狗神」とは、平安時代の昔に都を跋扈していた妖怪の足の
魂というか霊で、おお、そこにこの話を結びつけるか!と、
驚きいっぱいです。

さらに、冒頭の高知の山奥とは関係のない場所から話がはじまり、
村で起きた神秘的で恐怖、そして凄惨な事件が描かれ、終わりに
事件からしばらく後の話となるのですが、この構成が個人的には
大好きです。
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ピーター・エイブラハムズ 『ザ・ファン』

2009-12-17 | 海外作家 ア
『ザ・ファン』は、ロバート・デ・ニーロ主演で映画化され、
たしか公開は10年以上前でしょうか、とても面白かった
と記憶していたのですが、つい先日、本屋で物色してい
ると、原作の小説を発見。
まだ読んでいなかったというのと、映画とは少し内容が
違う部分があるということに興味ひかれて、購入。

アメリカの(舞台は明らかにされてませんがおそらくボストン)
ナイフ会社に営業として働くギル・レナードは、街の野球チーム、
ソックスの病的なほどの大ファン。
厳しいノルマで心が腐りかけていたときに、ソックスに大物選手
ボビー・レイバーンが入団することに。
ある日ギルは、大事な得意先の営業をソックスの開幕戦に行って
すっぽかしてしまい、会社を解雇されます。
さらに、開幕戦には元妻と暮らしている息子と出かけており、試合
途中で息子を球場に置いたまま営業先に行ってしまい、球場に戻
るとすでに試合終了、息子は親切な人に家まで送り届けてもらって
おり、元妻からは息子に会わせないと告げられます。

荒んだ気持ちのギルは、リトルリーグをやっていた少年時代を心の
拠り所とし、故郷に戻ると、かつてのチームメイトと再会します。
しかし、そのチームメイトは窃盗を生業としていて、それに加担
してしまったギルは、とうとう自暴自棄になってしまい・・・

一方、鳴り物入りで入団したボビーは、開幕戦以降まったく打てず
とうとうスタメンから外されることに。
前のチームでつけていた背番号11はすでにソックスの他の選手が
つけており、譲ってもらおうとしますが断られ、そんな些細なことも
気にしてしまいます。
カウンセリングや医者に診てもらっても特に異常はなく、なかなか
スランプから抜け出せません。

ソックスは遠征でカリフォルニアに移動、そこで、試合終了後、球場
のシャワー室で、ボビーに背番号11を譲ってくれなかった選手が、
何者かに刺されて殺されてしまい・・・

ギルとボビーのそれぞれ別の人生と、やがて現れてくる接点を描い
ていて、ミステリーはほんのサイドメニューくらいの役割。
じつはソックスの選手を刺殺した犯人はギルなのですが、それから
チームは追悼の意もあって快進撃。
やがてギルはボビーにじわりじわりと近づいてゆくのです。

物語の合間に、ギルがよく聴くラジオ番組があり、リスナー参加で
ギルはたびたび番組に電話出演しています。
これが話の「ちょっと一服」的な役割を果たし、さらに物語上、事件
を解決するための「道具」しても使われていて、とても効果的。


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遠藤周作 『海と毒薬』

2009-12-14 | 日本人作家 あ
先日、アメリカとの開戦に至るまでの経緯や、戦後の海軍
将校たちの回顧記録音声などのドキュメント番組をやって
いたのですが、当事者たちのどことなく他人事のような言葉
や、集団催眠にかかったかのような当時の日本人はどこか
恐ろしく、将校クラスでも市民レベルでも、戦争を回避する
術は持ち合わせていなかったのではないか、あるいはだれも
持とうとすらしなかったのではないでしょうか。

『海と毒薬』は、終戦の直前、九州の病院で捕虜を生体実験
した事件をベースにかかれた作品です。
東京郊外に家を買った男は、肺に持病があり、家の近くにあ
る病院で気胸(肺に空気を送り込む)をやってもらうために訪
れますが、そこの医者は風貌は気味悪く、無口ですが、前の
病院でやってもらったよりも技術は上。
ふたたび病院に行くと、医者の卒業名簿があり、九州の大学
付属病院の卒業であることがわかり、おりしも、男の義妹の
結婚式でその大学のある街へ行くことになっていて、男は行っ
たついでに調べてみることに。
すると、かつてこの病院で、恐るべき捕虜に対する生体実験が
行われていたことが分かり、さらに件の医者は当時研究生で、
実験に加担した罪で、懲役刑となっていたのです・・・

話はここから、戦争末期の大学付属病院での、生体実験に至る
までが描かれ、さらにこの実験に参加したもう一人の研究生と
看護婦の回顧もあり、この暴走はなぜ起こったのか、止めること
はできなかったのか、といったことがとてもグロテスクに描かれて
います。

先の戦争での人体実験といえば石井中将率いる「七三一部隊」が
あまりにも有名ですが、じつは彼らが戦犯として裁かれなかった
のは、アメリカやソ連側が、人体実験の資料を欲しがったために
彼らを不問とした、といわれております。

戦争の真の悲劇とは、人が人でなくなること。
こんなことを痛切に感じました。
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藤本ひとみ 『バスティーユの陰謀』

2009-12-11 | 日本人作家 は
『バスティーユの陰謀』は、1789年のフランス革命前夜
から、バスティーユ牢獄の陥落までという、世界史の授業
でもけっこう重要な部分を描いた作品です。

「ベルサイユのばら」は、王室ならびに近衛兵側を中心に
描かれていいますが、『バスティーユの陰謀』は庶民側
の日々の苦しみから暴動に至る経緯が、それこそ街の
裏路地にフォーカスをあてているかのような描き方。

パリの孤児院で育ったジョフロアは、成長して家具職人
の家に住み込みで働きますが、すぐに逃げ出し、整った
容貌を武器に、さまざまな女性の家に転がり込み、カフェ
で給仕として働きはじめます。

ある日、街中でガスパールという少年と出会います。田舎
者丸出しで、愚直で騙されやすいガスパールを、ジョフロア
はどこか放っておけずに、いっしょの部屋に住まわせます。

この当時のフランスは、冷害、雨不足と農業に大打撃で、
麦の値段は高騰、パンは庶民の1日分の給料では買えな
いほど。
パリでは、庶民も政治に参加できる「三部会」開会の話題
で持ちきりとなりますが、どうやらそれで庶民の生活が改善
されるような事になりそうもなく、金持ちの陰謀説があちこち
で囁かれはじめるのです。

市内に漂っていた不穏な空気はついに爆発し、暴動が起こり
ます。金持ちの家が襲われ、軍隊が出動し収まったのですが、
市民に発砲したことで庶民の国政に対する不信感はさらに強
まり、さらに大きな暴動が起こりそうな気配。

ガスパールは仲間の労働者とともに暴動に出かけ、死んでし
まいます。ジョフロアは日々周りの人間の顔色を窺い、決して
騙されまいと気を張った生活から開放される瞬間はガスパール
の純真無垢な心に触れる時で、そのガスパールを失ってから
というもの、投げやりになってしまいます。

三部会は機能せず、国王はパリの治安制定のため、外国から
傭兵部隊をパリ市州域に配置しようとしますが、それを知った
庶民の怒りはついに沸点に達し・・・

確か、世界史の授業での記憶には、バスティーユ牢獄に収監
されている囚人を救い出すために陥落させた、と思っていたの
ですが、実際には牢獄としての機能はあまり果たされておらず、
囚人も数人しか収監されていなかったのです。
ただし、王国の管轄する建物が庶民の手に落ちたということで
バスティーユ陥落は革命の象徴ということになったのでしょうね。

とにかく陰謀、陰謀が渦巻き、革命は必然だったのでしょうか。
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ジェフリー・アーチャー 『十四の嘘と真実』

2009-12-09 | 海外作家 ア
『十四の嘘と真実』は、文庫サイズで30ページほどの短編と、
あとは数ページしかない短編の計14作が掲載されていて、ど
れも最後には「うーん」と唸るような、短かいながらも奥深く仕上
がっています。

なかでもこれがオススメというのが、「死神は語る」という、短編
と呼んでいいのか、わずか1ページの作品で、オリジナル作品
ではなく、古くは戯曲などで使われたことのある話だそうですが、
ちょっとした落語とも、いやいやこれは立派な短編小説だともと
れます。

バグダッドの商人が、召使いを市場に買い物に行かせます。
すると、召使いは顔が青ざめて震えながら戻り、
「だんな様、市場の人ごみの中で女にぶつかり、振り返って
みると、その女は死神でした。そして私を脅かしたのです。
馬を貸してください。死神から逃れたいので、サマラの町ま
で行けば死神に見つからないでしょう」
商人は馬を貸し、召使いは馬にまたがりバグダッドから逃げ
出します。
商人が市場に行くと人ごみのなかに死神がいるのを見つけ、
話しかけました。
「今朝、うちの召使いを脅かしたのはなぜですか」
すると死神は
「あれは脅かすつもりではなかったんです。わたしはただ
驚いただけなんです。じつは今夜、サマラの町で彼と会う
ことになっているので、バグダッドにいるのを見てびっくり
したんですよ」

ジェフリー・アーチャーをして「ストーリーテリングの技術とし
て、これ以上の好例にはお目にかかったことがない」と言わ
しめる、ちょっとぞくっとくるような、こんなに短いのに感動すら
おぼえます。
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ジェームズ・レッドフィールド 『第十の予言』

2009-12-07 | 海外作家 ラ・ワ
この前、ラジオを聴いていたら、松尾貴史さんが超能力について
語っていたのが面白かったので聞き入ってしまいました。
まず、超能力とは、人間にとって有益であること。スプーンを念力
で曲げるというのは、人間にとってまったくの無益なので、これを
超能力と呼んではいけない、というのです。
さらに、鉄を曲げる力があるのなら、世界中の核兵器や拳銃の
ここを曲げられたら機能しないという部品を念力で曲げれば世界
平和に役立つし、それこそが本当の超能力である、と。

さらに、念力というのは、距離には関係ないんだそうです。つまり
遠隔で曲げることができる。しかし、その能力を持っているとされ
る人たちは、失敗すると、近くに疑っている人がいるから集中でき
ないと言います。が、距離に関係ないのなら、世界中に懐疑的な
人はゴマンといるはずなので、地球のどこでやっても集中できない
ことになり、矛盾なのです。

…とまあ、超能力であったり、スピリチュアルであったりといった俗
にいう「超常現象」(ひと括りにしてはいけないんですけど)に対して
懐疑的な人からすれば、そこには「ネタ」があり、矛盾が存在してい
る段階では信用できない、というのも分かりますけど。

『第十の予言』は、前作『聖なる予言』の続編で、前作では、古い
友人が突然「わたし」のもとを尋ね、ペルーで発見された古代の
予言が見つかったことを教えてくれ、「わたし」はいてもたっても
いられずにペルーに飛びます。旅の途中にさまざまな人と出会い、
予言を順番に知っていくのですが、その予言を隠蔽しようとする
組織の妨害などがあり、第九の予言を知った直後拘束され、「わた
し」は帰国せざるをえなくなるのでした。

そして、アメリカに戻って数ヵ月後、予言を教えてくれた友人が
いまだに消息不明と連絡が入り、彼女の残したメモをたよりに、
アパラチア山脈へと向かうのですが・・・

前作では、第一の予言から第九の予言まで紹介されて、スピリ
チュアルを前面に押し出しているというよりは、冒険小説風に話
が進行してゆくことで楽しめたのですが、『第十の予言』でも、
いちおうは冒険ぽく描いてはいると思うのですが、前作よりは
現代の世界あるいは人間社会に対する警鐘、そしてよりよい暮
らしをする提言が強く描かれています。

ただ、「こうしてこうなってこうすればみんな幸せに暮らせる」
という提言も、ちょっと考えると「あれ?」という矛盾点が見つかり、
一筋縄ではいきません。
幸せはこうだ、と断定すると、どこかで不均衡が生じる恐れもあり
ますね。
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