晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

池井戸潤 『下町ロケット』

2018-09-13 | 日本人作家 あ
池井戸潤さんのデビュー作で江戸川乱歩賞受賞作「果つる底な
し」はだいぶ前に読んだのですが、それ以降の作品は読まずに
いました。

ドラマの「半沢直樹」が巷でブームになってた時でしょうか、
原作が池井戸潤さんと知り、これはぜひ読んでみたいと思った
のですが、ミーハーだと思われるのが嫌だという塵芥のような
プライドが邪魔をして買わず、それからも読まずにいました。

まあ、そんな塵芥のようなプライドをいつまでも後生大事に抱
えてるのもアレですし、買ってみるかと。半沢直樹の原作とは
違いますが・・・

さて、この作品は第145回直木賞を受賞しています。

ロケットの発射準備のシーンから物語はスタート。宇宙科学開
発機構の研究員、佃航平は新開発エンジン「セイレーン」が無
事に発射できるか見守っていますが・・・

それからいきなり舞台は京浜工業地帯の町工場。佃は宇宙科学
開発機構を辞めて実家の佃製作所の社長を継いではや7年。
主要取引先から取引終了され、このままだと赤字になるので、
銀行から融資をお願いしようとしたのですが、佃製作所は会社
の売り上げの大半が研究開発費にまわっていて、このままでは
融資は出来ないと断られ、さてどうしようとしている中、会
社に訴状が届きます。

訴状の中身は、ナカシマ工業という大企業が、佃製作所の製造
している小型エンジンの特許侵害で、なんとその損害賠償額が
90億円。

こんなのは理不尽ないいがかりであることは分かっているので
すが、相手は大手、おそらく特許訴訟専門の弁護士を用意して
いるはずで、勝算が無ければ裁判にはしません。これはまずい
です。

佃製作所のお世話になってる弁護士は高齢で技術系はちんぷん
かんぷん、案の定、第1回口頭弁論では時間稼ぎが関の山。

これで敗訴となれば銀行の融資どころか会社じたい存続の危機
ですが、そこに救世主が。それは佃の別れた妻で、なんでも新
聞でこの訴訟を知り、もしよければと、企業の特許訴訟に強い
弁護士を紹介されます。

裁判が長引けば、これはもう体力勝負で、会社の体力といえば、
つまり資金。メインバンクからは融資を断られ、ベンチャーキ
ャピタルからはそれなりの支援を受けてなんとか当面はしのげ
そうですが・・・

話は変わって、東京、大手町。日本を代表する「帝国グループ」
の帝国重工の、宇宙航空部宇宙開発グループではある問題が。
グループ主任の富山のもとに、新型エンジンの特許出願が認め
られなかったと報告が。富山は上司の財前のもとに行き3ヵ月
前に同じ内容の特許を出願したのがまったく無名の中小企業と
知り驚きます。
帝国重工では社長肝いりの「スターダスト計画」プロジェクト
が進行中で、すべて自社開発製品の方針で行けば別のエンジン
開発をしなければならずプロジェクトは大幅に遅れます。

財前と富山は佃製作所を調べると、現在特許関連で係争中との
ことで、これはきっと喉から手が出るほど金が欲しいはずだと
いうことで、財前みずから佃製作所に赴き、いきなり「御社の
特許を譲ってください」とお願いします。

特許の譲渡であれば巨額の譲渡金が会社に入ってきて資金繰り
は当面は安泰しますが、佃にとってもせっかく社員たちと苦労
して開発し特許まで取ったエンジンをハイどうぞと手放すわけ
にはいきません。

使い道のない特許はさっさと売って当面の資金を確保した方が
いいと主張するのは会社の営業。というのも、自分らが稼いで
きた金をいつも研究費にまわされ、会社は赤字でさらに訴訟ま
でされてこれで会社が潰れれば元も子もありません。

しかし佃製作所はあくまで研究開発企業で、特許の売り買いで
儲けるようなことはしたくありません。そしてなにより、社長
である佃自身の夢でもあり・・・

これが映像化されたものを見てないので、ストーリーは知らず
に読みました。はじめは、町工場の技術者が集まってロケット
を作って飛ばすという話なのかと勝手に思っていたのですが、
それは大坂の町工場が人工衛星を開発する話でしたね。

そういえばボブスレーもなんかゴタゴタがありましたけどいつ
の間にかオリンピックも閉幕しちゃって、アレ結局どうなった
んでしょうか。


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森絵都 『カラフル』

2018-09-03 | 日本人作家 ま
なにげにこの方の作品結構好きです。まだ全部読んだ
わけではありませんが。

もとは児童文学作家としてデビュー、その後は直木賞
受賞作品など一般文学なども書いていますが、今回読
んだ作品は、児童文学と一般文学の中間みたいな感じ。

違うもの、正反対のものがミックスされたときの相乗
効果ってありますよね、たとえば「甘酸っぱい」です
とか「あったかい+冷たい」みたいな。
これも配分やタイミングを間違うと悲劇になってしま
うのですが、この『カラフル』は、児童文学と一般文
学をちょうどいい配分でミックスしたような。

(ぼく)は、なんらかの理由で死んで(あの世)にい
ます。そこに天使がやってきて「あなたは本来は生ま
れ変わりが許されないのですが今回は特別チャンス」
というのです。

しかし(ぼく)は、なぜ死んだのかその理由を覚えて
おらず、そればかりか自分がどこの誰で名前も思い出
せません。ですが、生きていたころの(あっちの世界
には戻りたくないな)という思いだけはあります。

しかし天使、名前は「プラプラ」というのですが、こ
の(再挑戦)の決定は覆せないというのです。決定し
たのは天使のボス、つまり神。神の決定を覆せるはず
はありません。

ところで(再挑戦)とは何なのか。
・(ぼく)はどうやら前世で大罪を犯したらしいので
本来は生まれ変わりが出来ないが、抽選により生まれ
変われる、らしい。
・下界に戻って、見ず知らずの誰かの体を借りて一定
の期間をその(誰か)として過ごす
(この(誰か)の家族と過ごすことを天使の業界では
「ホームステイ」というらしい)
・一定期間を過ごすと、前世の記憶を思い出すことが
でき、そのときに自覚して悔い改めれば終了、今度は
正式に輪廻できます

さっそく(ぼく)はプラプラに連れられて下界へ。

(再挑戦)は「小林真」という、睡眠薬自殺を図った
中学生の体を借りることに。(ぼく)は目を覚ましま
す。するとベッドの横にいた男性と女性が「真ー!」
「真が生き返った!」と大騒ぎ。
じつはこの何分か前に医者に「ご臨終です」と宣告さ
れた直後だったので大騒ぎ。

(ぼく)のホームステイ先の小林家は、目覚めたとき
に横にいた男女、つまり真の両親と、兄の満。
「優しそうな人たちだな」と思ったのですが、天使の
プラプラのガイドによると、父は自己中心な人間で、
母はフラメンコ教室の講師と不倫中、兄の満はいつも
真を「お前はちびで不細工でバカだ」と見下します。

ところで、真は現在、中学3年生で、半年後には高校
受験があります。退院して自宅療養して、いよいよ学
校に行く(ぼく)こと小林真。
そこで気付きます。小林真には友達がいないというこ
とを。自殺未遂ではなく病気で入院ということにして
いたのですがクラスに入ってもだれも話しかけてきま
せん。さらに明るめの声であいさつをしただけで教室
がざわざわします。

昼休み。いきなり知らない女子生徒が話しかけてきま
す。どうやら極端に内向的だった小林真が明るくなっ
た秘密を探りたいようですが、まさか別の人間だとは
言えません。真はプラプラにあの女子は誰か聞きます
が、ガイドブックには掲載されていません。

放課後。どうやら真は美術部員で絵を書くことは好き
で才能もあるらしいのです。美術室に行くと、そこに
は女子が。そして「真くん、ひさしぶり」と。
プラプラのガイドによると、この女子は(ひろか)と
いって、真はひそかに好きだったらしいです。
(ひろか)は、真の製作途中の作品を心待ちにしてい
るらしいのですが、するとそこにさっきのうるさい女
子が・・・

真は(ぼく)も驚くほど勉強ができません。進路も、
自分が行けそうな高校ならどこでもというスタンス。
ところが父親から「満が医学部を受験するのでお金
がないから私立ではなく公立にしてくれ」と頼まれ
てしまったので、受験勉強をはじめますが・・・

小林真が自殺未遂をした原因とは。それによって真
と家族の関係、さらに学校での人間関係がどう変わ
ってゆくのか。そして、(ぼく)はいったいどこの
誰で、前世で犯した(大罪)とは。

話のオチこそ「おおっ!」とはなりましたが、それ
にしても、学生の辛い現実みたいなのを描くのは、
それが(リアル)なのでしょうが、ぶっちゃけ食傷
ぎみ。気晴らしというか少しでもハッピーな気分に
なりたい、スッキリしたいから(小説)を読むので
あって、(リアル)を求めるならルポルタージュや
ノンフィクションがありますし、気の滅入るような
話題を見たければ、新聞やニュースでじゅうぶん。
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