晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

ネルソン・デミル 『王者のゲーム』

2023-07-17 | 海外作家 タ

暑いです。と書いたところで涼しくなるわけもないのですが。

 

さて、ネルソン・デミル。この作品は「ジョン・コーリー・シリーズ」の第2作目でして、だいぶ前に3作目の「ナイトフォール」を読んで、主人公はいっしょでもそれぞれ独立した話で順番はバラバラでも別に構わないということでようやく6年越しに手にしました。「ナイトフォール」に出てた「妻のケイト」とはこの作品でジョンと初めて出会って結婚したんですね。

元ニューヨーク市警の刑事、ジョン・コーリーは、連邦統合テロリスト対策特別機動隊(ATTF)のエージェントで、中東セクションに所属してます。ニューヨーク市警の刑事だった時に銃撃戦に巻き込まれて撃たれて、その後退職、刑事の学校で教員をしていましたが、連邦政府が警察での勤務経験がある人材をATTFで募集していると聞き、入ることに。

チームのメンバーは、CIAのテッド・ナッシュ、FBIのジョージ・フォスター、ニューヨーク市警のニック・モンティ、FBIのケイト・メイフィールド。

 

パリのアメリカ大使館に、アサド・ハリールというリビア人が亡命を希望してやって来ます。アメリカやイギリス、フランスなどの捜査機関が調べたところ、ハリールが訪れた西ヨーロッパ各地で爆破事件やアメリカ空軍士官殺害事件、アメリカ人小学生が銃撃されて殺された事件に関与が疑われているのですが、どれも立証されておらず、監視対象になっていたのですが、なんとパリのアメリカ大使館に堂々とやって来ます。

ハリールを保護勾留してパリからニューヨークの飛行機で連れてくるのですが、空港について車に乗せて無事にマンハッタンまで送るまで見届けるというのが、今回のミッション。

ニューヨークの航空交通管制センターで、パリ発トランスコンチネンタル175便が無通報状態になっていると責任者が報告を受けます。しかしこれはよくある話で、周波数を間違えてたり、自動操縦にしてフライトクルーが眠っていたり。何度交信しても応答なしで、ケネディ国際空港の管制塔に連絡して、救難サービス隊に警戒態勢をとってもらうことに。もしやハイジャックされてるのでは。

結局、なんの応答もないまま、トランスコンチネンタル175便はケネディ国際空港に着陸。パイロットに交信しますが、応答なし。ATTFのチームにもハリールを載せた飛行機が滑走路上で止まったままになっていて、無通報状態で着陸したと報告が入ります。

機内に火災の兆候は見られず、救難サービス隊は中に入ってみることに。物音ひとつせず、乗客は全員死んでいたのです。しかし、乗客の顔は毒ガスや煙、無酸素のような悶え苦しんでいる状態ではなく安眠しているよう。トイレに行きたくなり化粧室を開けると中に男が。お前は誰だと聞くと「私はアサド・ハリール」といって・・・

様子がおかしいので、ジョンとケイトは飛行機に向かいます。そこで、死体運搬車と医学検査官の出動が要請されていると知ります。中に入り、亡命者のリビア人と両隣のFBI職員の席に行くと、真ん中の男はアラブ系の男ではありますがハリールとは別人。パスポート、身分証明書、財布の中の金は取られておらず、銃だけが盗まれていました。他の乗客を確認すると、毛布に覆われた男を見つけ、額にマスクがかけてあるので持ち上げると額には銃口が。最初に機内に入った救難サービス隊の隊員でした。

ジョンは、なぜアサド・ハリールは銃(だけ)を盗んだのか、何かがおかしいと思いFBI職員の手を見てみるとふたりの指が切断されています。「まずい!」と急いでATTFの作戦本部に戻ります。指紋認証のドアを開けると女性職員とニック・モンティの死体が・・・

アサド・ハリールはどこに消えたのか。飛行機の乗客300人を殺害してまでアメリカに来たかった理由とは。ジョンはハリールを捕まえることができるのか。

文庫の上下巻とも700ページを超える厚さで、つまり合わせて1400ページの大長編。他にやることがあったとはいえ読み終わるまで1ヶ月かかってしまいました。しかし面白いです。ものすごく面白いです。児玉清さんのあとがき解説で「僕が好きな作家のトップに迷わず推すのがデミル。だが残念なことに日本では人気度がいまひとつ」とありますが、本当になんでしょうね。

内容的には重苦しいといいますか陰惨な部分もあったりしますが、オフザケにならない程度に笑える、特にジョンとケイトのやりとりは最高。

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村瀬孝生 『おばあちゃんが、ぼけた』

2023-07-09 | 日本人作家 ま

今年度から、学校のほうのレポートやらなんやらであまり本を読めておりませんので、投稿は5月6月と1回のみ。ひどいもんです。今月にはどうにか今読んでるけっこうな長編を読み終わればいいなあと思っております。

さて、この作品は小説ではありませんが、いちおう「読書した」ということで。

村瀬孝生さんという方、老人ホームで働いてのちに現在は宅老所の代表をされていまして、谷川俊太郎さんと交流があり、あとがきを書かれています。

施設に入所されている入所者のおじいさんおばあさんの面白おかしいエピソードや時に悲しいエピソードが書かれています。あれは吉本隆明さんでしたっけ、「良いことをするときはコソコソと悪いことをやってると思いながらやるのがちょうどいい」ってありまして、大っぴらに「ワタシは善行をやってます!」ってなると、ともすれば自分は偉い、立派と思ってしまうので、というもの。ただの承認欲求ですからね。

認知症の知能検査で物品テストというのがあり、5つの鉛筆とかパイプとかを出して「覚えてください」といって1分後に隠して「何があったか思い出してください」というやつなのですが、あるおじいさんはこれに激怒。なぜなら「何があったか聞くぐらいなら最初から隠すな」という言い分。まったくその通り。

年配になればなるほど「人様に迷惑をかけてはいけない」という教育と家庭での躾の中で育っているので、介助も容易にできません。

「あなたらしく生きてください、生きがいを持ってください」と言いながら、何時から何時まで食事、何時から入浴、何時に就寝、という施設側の作ったスケジュールについてこれない入所者を「問題を起こす」と扱う。おじいさんおばあさんはひとりひとりの「時間」があって、自分たちのペースがあるのですが、そのペースを待てないのは職員のほうで、菓子パンが好きな人は誤嚥しないため少量ずつ鳥のようについばんで食べると何時間もかかるからミキサーでペーストにしてスプーンで口に入れる。雲を眺めるのがすきな人はいつまでも眺めているので時間を決めて中に入れる。読書が趣味の人は同じページを繰り返し繰り返し読んで食事や入浴時間を守らないので本を隠す。

「あなた」って誰ですか。

具体的な話は書けませんが、入院していたおばあさんが生まれ故郷の西日本にある離島の病院に転院することになりました。何十年も前に家族の都合で関東にやって来たのですが、もう会話もしなくなって亜空間を見てるだけ。ところが島の病院からの報告で喋るようになったそうです。やっぱり空気感といいますか、聞き慣れた方言を耳にしたからか。

介護保険制度って、できた経緯は「住み慣れた家や地域で余生を送ってもらう」だったのですが、姥捨て山状態。これじゃイカンということで食事とベッド代は自己負担に変更。

「老い」とか「ぼけ」は、いずれ誰でも来ることですが、現状は社会からの隔離と抑制。そして施設間のたらい回し。このような状態で「一生懸命生きる」ってできますかね。

決して小難しい話ではなく、ライトタッチで書かれています。挿し絵もコミカル。ポップなメロディで警鐘を鳴らしています。

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