晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

井上ひさし 『不忠臣蔵』

2024-06-10 | 日本人作家 あ
気がつけばもう六月。今年に入ってそれなりに充実した時間を送っているので時が過ぎるのが早いとはあまり感じませんね。年齢を重ねると時が過ぎるのが早く感じるのを「ジャネーの法則」といって、堅苦しい言い方をすれば「人生のある時期に感じる時間の長さは年齢の逆数に比例する」ということだそうです。あくまで(感じる)であってそこらへんはひとそれぞれですからね。そんなんじゃねー、などとくだらないダジャレを言いたがるのは確実に年を取った証拠です。

以上、年は取りたくないですね。

さて、井上ひさしさん。もうタイトルからして面白そう。

「忠臣蔵」といえば雪の夜に消防士のコスプレをした人たちが他人の家の門をぶっ壊して中にいたおじいさんを殺害するという、これだけザックリ書くとちょっと頭のアレな人たちの話になってしまいますが、四十七士といいますが、じつはけっこう直前まで脱退者が多くて、招待状のご出席・ご欠席のところの(ご)に二重線を、(欠席)にマルをつけて、みたいなことをした元赤穂藩士がいたわけですね。
この時代は庶民の間に閉塞感といいますか、なんかいやな時代だなアとため息もつきたくなるようなもんで、特に「生類憐みの令」は日本史上に燦然と輝く天下の悪法として有名ですが、現代的解釈だとあれは動物愛護法の先駆けとして考え方としては素晴らしい、だたちょっとやり過ぎた(最終的に蚊や蝿にも及んだ)、そんな中で、勧善懲悪のスーパーヒーローアイドルグループAKO47(エーケーオーフォーティーセブン)が登場して、当時の人たちの熱狂ぶりはすごかったようで、となると、このイベントに参加しなかった人たちは不忠者、卑怯者、人でなしなどと蔑まれていたとか。
しかしそんな彼らにも事情があったわけで、そんな十九人を描いています。ひとりひとりを紹介すると大変なのでかいつまんで書くと、中にはみずから嫌われ役になることを買って出て参加しなかった者、例えば第一陣が不首尾に終わった場合の第二陣、それから頼まれて遠方に行ってて当日に江戸にいなかった、こういうケースもあったわけで、これらの人たちはつまり参加したくても物理的あるいは時間的な問題でできなかったわけですね。のちに調べたらそういう事情があったのねと判明しますが、そもそも釈明する機会も与えてもらえません。

だいたい殿様からして「この間の遺恨覚えたか!」とかいうくらいならなぜ脇差しなんかじゃなくて太刀で斬るか突き刺すかしなかったのか。殿中でそんなことをすればただちに切腹そして御家取り潰しになること必定で、「癇癪持ち」「短慮」でけっこうひどい目にあってたという家臣もいて、そんな「すぐキレるパワハラ社長」に忠臣もへったくれもありません。

資料や文献に基づいた部分と想像の部分とがうまい具合にミックスされてシリアスとユーモラスのちょうどよい加減になっています。そしてこの時代の脚本家や放送作家は歌舞伎、落語、浪曲、講談が素養としてあるので、読んでてリズミカルです。

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