晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

浅田次郎 『月島慕情』

2014-12-23 | 日本人作家 あ
表題作をはじめとして全7作の短編集。この本を買ったとき、
すべて舞台が月島の短編集かと思ってました。

「月島慕情」
明治、大正時代の吉原が舞台。ミノという田舎の女の子が人買いに
連れられて着いたのは東京の吉原。
やがてミノは”生駒”という源氏名をもらい、太夫に。
そんな生駒に、身請け話が。身請けとは、客が女郎の借金を肩代わり
して、妻や愛人にして女郎を「引かす」(辞めさせる)こと。
もう三十になる生駒の身請けをする男とは、博徒、駒形一家の平松
時次郎。
生駒は客のなかでも「時さん」に惚れていて、こんなうまい話が・・・、
と半信半疑。
今日は一の酉で、鳥越神社で時次郎が待ってると聞いた生駒は、急いで
向かいます・・・
自分は幸せになるんだ、良い奥さんになると誓った生駒ではなくミノ。
ミノは時次郎の住む月島へ。しかしそこで見たものとは・・・

「供物」
初枝は、離婚した前の夫の訃報を知ります。葬式には出ず、家に線香をあげに
行くことに。辛い記憶がよみがえってきます。
酒を飲み暴れて初枝に暴力をふるった前夫。そんな前夫への供物は上等なワイン。
家の中にいた見知らぬ若い女。女は姑を「祖母」と、死んだ前夫を「父」と呼ぶ
この女は・・・
お茶を淹れると女はいうのですが早く帰りたい初枝。
すると、最寄の駅に向かう初枝の後を追いかけてきた青年が・・・

「雪鰻」
北海道の自衛隊駐屯地。ある雪の夜、当直していた”私”のもとに、電話が。
電話は裏門からで、師団長の三田村陸将が酔って帰ってきて、雪の中を徒歩で
隊舎に向かっていると連絡が。
裏門から隊舎までは1キロはあり、私は急いで師団長の迎えに外に出ます。
すると師団長は私に、持っていた風呂敷包みを渡します。
その中身は、鰻の蒲焼。
しかし師団長は「俺は食わない」の一点張り。そこで、師団長が話しはじめる
のですが・・・

「インセクト」
悟は都内に住む大学生。しかし、入内は学園紛争まっただなかで、学校は暴れる学生と
機動隊で大学はロックアウト状態。
そんな悟は喫茶店でバイトをしています。
クリスマスイブの日、悟はプレゼントを買うために喫茶店のチーフから金を借ります。
悟の住むアパートの隣の「みいちゃん」にあげるプレゼントでしたが・・・

「冬の星座」
医大の先生、北村雅子のもとに訃報が。研究室に残っていた学生に「これから通夜に行く」
と言いますが、その学生は「自分は葬式に出たことがないので、いっしょに通夜に行きたい」
と。
人の死というものが実感がないので、解剖実習が苦手で拒食症になってしまったこの学生は
じつは雅子が二十年前に付き合ってた医局の先輩の息子。
さて、亡くなった人とは雅子にとっては大おばさんで、両親の離婚調停のときに預かってもらった
のでした。そんな通夜のお香番をすることになった雅子と学生でしたが・・・

「めぐりあい」
温泉街の、目の不自由なマッサージ師、とき。ときは、奥湯の一軒宿へ向かいます。
そこであろ男性客のマッサージをはじめるのですが、ときは、昔の恋人のことを
思い出し・・・

「シューシャインボーイ」
塚田は社長のお抱え運転手。そのボスの持ち馬「シューシャインボーイ」が勝って、
塚田が買った馬券が的中。
ボスは足早に競馬場から出て、新宿に行ってくれ、といいます。
新宿で車を降りたボスは、ガード下へ向かい、そこで靴磨きをしてもらいます。
しかし、なぜか車に戻ってきたボスは沈んだ表情で・・・
のちに塚田が聞いたボスと新宿ガード下の靴磨きとの関係は・・・

いずれも、すばらしい話。心がほっこりとしたり、うーんと考えさせられたり、
色とりどりな短編集。




コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

宮部みゆき 『ぼんくら』(再読)

2014-12-07 | 日本人作家 ま
そういや今、NHKでドラマやってますよね。岸谷五朗主演で。
主人公の同心、平四郎っていうのは覚えてて、これはナイスな
キャスティングだなと思いましたが、肝心の話の内容が完全に
忘れてて、ドラマをちらと見たんですが「あれ、こんな話だった
っけ・・・」なんて状態。

じゃあ本を読み直そう、ということで。

深川にある「鉄瓶長屋」。名前の由来は、昔、井戸から鉄瓶が
出てきたからだと。
それはさておき、この長屋に暮らす八百屋一家、お父さんの
富平は寝たきり、兄の太助と妹のお露の3人暮らし。
この八百屋一家で殺しが。

夜中に、誰かが走ってる足音を聞いた鉄瓶長屋の住人、煮売屋のお徳
は、外へ出てみると、差配人の久兵衛の部屋の明かりが。
お徳は、久兵衛の部屋にいた、血まみれのお露を見つけます。
とうとう富平さんが・・・と思ったお徳ですが、死んだのは兄の太助
でした。
「殺し屋がきて、兄さんを殺した」と、お露。

さて、本所深川方の同心、井筒平四郎がお徳の煮売屋に顔を出します。
太助殺しの捜査は、お露の「殺し屋がきた」という証言に疑いを。
お露がいうには、その殺し屋というのは、久兵衛に恨みを持つ正次郎
とか言う男で、前にも正次郎は久兵衛を襲いにきたことがあったそうで、
今回は太助が殺された、というのですが・・・

しかし、お露には「返り血」が付いていて、殺し屋というのは造り話
なのではないか、と。

そのうちに、じつは太助には恋人がいて、結婚するには寝たきりの父が
邪魔だったので、富平に対する殺意を持っていて、それを知ったお露が、
兄に父を殺させるわけにはいかないと、お露が太助を、という話が出て
きます。

そんな中、差配人の久兵衛が、太助が殺されたのは自分のせいだといって、
鉄瓶長屋から消えるのです。

そして、鉄瓶長屋の地主である湊屋という大店の主人がよこした新しい
差配人は、元植木職人の佐吉という若者でした・・・

お徳は、佐吉を「若くて頼りない」と信用しません。そのうちに、
鉄瓶長屋から店子が次々といなくなり・・・

湊屋の主人は何を考えているのか、消えた久兵衛の行方は。
太助殺しの真相は・・・

あらためて読んでみて、ああこれは面白かったと満足しました。
平四郎や岡っ引きの政五郎の手下の”おでこ”や美少年の弓之助
が登場する続編もたぶん内容覚えてないのでまた読んでみましょうかね。

上巻を読み終わって、ドラマのほうを見たら、ちょうどそこらへんの
話をやっていて、おおナイスタイミングと思って、ドラマは原作に
忠実に作ってありましたね。

たまに小説を原作にした映像化で「原作にはない”豪華”オリジナル
キャストが!!!」みたいな売り文句ありますでしょ。
あれ、ホントやめてほしいんですよね・・・
NHKの「ぼんくら」はオリジナルキャストは出て無さそうなので
安心して観ることができそう。


コメント (2)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

山本周五郎 『さぶ』

2014-12-06 | 日本人作家 や
こちらも入院中に読んだ作品。

ある雨の日。両国橋を渡ろうとする男と、それを追いかける男。
ふたりは、江戸の経師屋(表装)、芳古堂に住む職人のさぶと栄二。
なにをやっても不器用で仕事の遅いさぶ。奉公先に入ってから何年たっても
いまだに糊を混ぜる仕事しかさせてもらえません。
一方、男前で仕事もよくできる栄二。

ふたりは同い年で、栄二とさぶは仲良く、ふたりでともに励まし合い、
成長していくところですが、栄二は、得意先で主人の大事にしていた
ものを盗んだという濡れ衣を着せられ、店を出されます。

やけになった栄二は酒を飲み酔っ払って、得意先に自分の無実を証明に
行くのですが・・・

栄二は暴力沙汰を起こしてしまい、人足寄場へ・・・

人足寄場とは、かの鬼平こと長谷川平蔵がアイデアを出した、無宿人の
ための職業訓練所。

そんな栄二のために、面会に訪れるさぶですが・・・

栄二は、なぜ盗人に”させられて”しまったのか、そして人足寄場で出会った
人々との交流で栄二の心は・・・

小説のタイトルは「さぶ」ですが、文中の内容は栄二に関することのほうが
多いです。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする