晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

宇江佐真理 『お柳、一途 アラミスと呼ばれた女』

2022-11-27 | 日本人作家 あ

今までコーヒー党だったのですけど、ここ最近、というわけではありませんが、今年に入って梅昆布茶にハマっております。ちょっと前にホテルに泊まった時に部屋にあったアメニティっていうんですか、一杯用の梅昆布茶を飲んだら「あれ、こんなに美味しかったっけ」と感動しまして、それ以来、スーパーに行って梅昆布茶を買って飲んでおります。まあ普通にコーヒーも飲んでますけどね。

焼酎の梅昆布茶割り、ちょいと、その、うまいものだ。

 

さて宇江佐真理さん。この話はあとがきによれば子母澤寛の「ふところ手帖」の中に、幕末に男装してフランス語の通詞(通訳)をしていた女性がいたというのがあったそうですが、公式の記録には残っていません。しかし田島勝という女性はどうやら実在したそうでして、この話にも実在の歴史上の人物は登場しますが田島勝との関係性はフィクション。

幕末の江戸。オランダ人は将軍に謁見するために毎年春に長崎から江戸にやって来ます。ヨーロッパから持ってきた宝石を簪に加工してもらって長崎の馴染みの芸者へのお土産にするために江戸の錺職人にお願いするのですが、平兵衛という職人はとても腕がよくオランダ人から評判で、そのうちに平兵衛は通詞を介さずにオランダ語を理解できるようになります。それが幕府の役人の耳に入り、なんと通詞として幕府に召し抱えられることに。もともと語学の才能があったのか、出世して、とうとう「出島詰役」となり、妻のおたみと娘のお柳を連れて長崎に引っ越します。しかしこの時代、ヨーロッパではオランダは強豪国とはいえず、平兵衛は「これからはフランス語だ」と勉強し、お柳も父から教わります。

ある夜、家に帰ってきた平兵衛はおたみに「榎本の坊っちゃんが長崎に来る」と言います。榎本釜次郎は海軍伝習所の生徒として来るというのですが、おたみとお柳の記憶している釜次郎坊っちゃんはイタズラ好きで勉強嫌い。平兵衛は江戸にいた頃、近所の御家人の榎本円兵衛にたいへん世話になっていまして、その円兵衛から息子の釜次郎が長崎に行くのでよろしくと手紙をもらったのです。

しばらくして、お柳が家に帰ると「お柳ちゃんか、大きくなったなあ」と釜次郎が平兵衛と酒を飲んでいます。そしてお柳が英語やフランス語を勉強してることを聞いた釜次郎はそんなの覚えてどうするんだと訊くとお柳は「うち、通詞になりたかとよ」と答えます。釜次郎と平兵衛の会話の中で、土佐の漁師が漂流してアメリカで10年間暮らして帰国して土佐藩家臣から江戸の旗本になりペリーとの通訳をするまでになった中浜(ジョン)万次郎の話が出て、お柳は夢中になって聞き、釜次郎は「いつの日か身分も性別も関係なく立派になれる日が来るだろう」といい、お柳はそういう人になりたいと思います。

やがて釜次郎は江戸に戻りますが時代は上を下への大騒ぎで釜次郎はオランダへ留学。しかしその間に平兵衛が攘夷運動の浪人に斬り殺されます。平兵衛の知り合いを頼って江戸に戻りますが知り合いは江戸におらず途方に暮れたお柳は生計のため芸者になります。

釜次郎が帰国したとの知らせをお柳は耳にしますが、まさか会うわけないだろうと思っていたところ、幕府の軍艦奉行の勝安房守(海舟)といっしょになんと釜次郎が酒席に。見つからないようにしていましたがすぐバレてしまい、平兵衛が長崎で殺されたこと、母娘が江戸に帰ってきて仕事がなく芸者をやってると聞いて釜次郎は「横浜に行ってフランスから来てる軍事顧問の通詞をやってくれ」と頼みます。ただし、幕府の役人に女性は雇えないので男装してくれ、と・・・

ここまでで歴史好きで察しのいい方ならお分かりでしょうが、釜次郎はのちの榎本武揚。お柳はフランスの軍事顧問から「アラミス」というあだ名で呼ばれます。ある日のこと、ブリュネという教官がお柳の人物画を描きます。その絵には「初めてフランス語を話す日本人・アラミス」と書いてありました。アラミスとはデュマの小説「三銃士」の一人で、原作では中性的な人物として描かれていたのです。

しかし大政奉還、戊辰戦争となって釜次郎こと榎本武揚は「賊軍」となり・・・

あとは史実通りにいきますと榎本ら幕府軍は軍艦で箱館(函館)に行って新政府軍に負けて捕まりますが黒田清隆の助命嘆願で新政府の役人になります。じつは箱館にお柳も同行していたのですが、さてどうなったのでしょうか。

今まで幕末の動乱期の作品(映像でも小説でも)はけっこういろいろ見てきて、正直あまり好きではなかったのですが、この作品の「お柳目線の幕末」を読んで、なんだかちょっと考え方が変わりました。

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ジェフリー・ディーヴァー 『スキン・コレクター』

2022-11-19 | 海外作家 タ

この前、久しぶりにスーパーで魚を切り身でなくまるごとのまま買ってきまして、家でウロコとワタを取って調理したのですが、ウロコってけっこう飛び散るもんですね。非常にめんどくさかったです。たいていのスーパーの魚売り場ではウロコとワタ取りや三枚におろしてくれるサービスがあるので素直に頼めばよかったのですが、別に誰も見てないのに「料理好き」の変なプライドが邪魔したんでしょうね。次に買うときは頼みます。

 

以上、貴方への愛こそが私のプライド。

 

さて、ジェフリー・ディーヴァーさんのリンカーン・ライムシリーズ。単行本ですと2段組み(1ページに上下2段)でけっこう分厚いので読むのにけっこう時間がかかりますが、手に持ったときのズッシリ重い感じ、読み進んで残りページ数が少なくなっていくときのさみしい感じ、読み終わったときの充実感。読書の醍醐味を思い出させてくれます。

クロエというブティックの店員が店の地下室で死体で発見されます。一報を受けたニューヨーク市警の刑事ロン・セリットーは科学捜査官のリンカーン・ライムの自宅に出向いて報告。犯人は地下のトンネルに被害女性を連れ込んで殺害したとのこと。ニューヨークのソーホー一帯の地下にはトンネルが迷路のように広がっていて、かつてこの地域が工場だらけだったときの地下通路の名残り。

被害者には怨恨トラブルなど特になく、身体にはタトゥーが彫られています。かなりの腕前のようで、なんとインクの代わりに毒物が使われています。アメリア・サックスが現場に向かって捜査をはじめます。遺体に乱暴された形跡はありませんが、首に「the second(第2)」と青く彫られたタトゥーが。その数字の上下には波模様の飾り線。

検出された成分を分析した結果、タトゥーに使われた毒はドクゼリという植物に含まれる猛毒成分。そこであるタトゥーの店の主人に話を聞くのですが、タトゥーを殺人に使用するとは許せないと怒りますが、被害女性のタトゥーの写真を見ると「これだけの技術を持った人ならニューヨークのタトゥー業界で有名にならないはずはない」とのこと。さらに字体はオールドイングリッシュというものでニューヨークで最近流行りのスタイルではないそう。

現場にあった破られた本のページは重大犯罪捜査について書かれた本で、そのページはライムが担当した「ボーン・コレクター」事件の章でした。もし犯人がボーンコレクター事件に影響を受けてライムに関心を持ったとしたら、この本に登場するサックスの身にも危険が。

一方、かつてライムをさんざん悩ませた「ウォッチメイカー」ことリチャード・ローガンが刑務所内で死亡します。ライムはウォッチメイカーの葬儀に花を贈ると言いますがその真意は。

そんな中、また事件が。次の被害者も女性で、現場はレストランの地下にあるトイレから奥に繋がっている昔の地下通路。そして女性の皮膚には「forty(40)」のタトゥーが・・・

はたして犯人の目的とは。数字の意味とは。そしてライムとサックスに身に迫る危険とは。

 

シリーズの前の作品が出てきて「あれ、どういう話だったっけ」と思い、当ブログで過去に投稿した「ウォッチメイカー」「ボーン・コレクター」関連の内容を探して読み返したので、途中で意味がわからず読むのやめたという事態にならずによかったです。昔の自分に感謝。

そしてラストにまたなにやら含みを持った感じで終わります。

 

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ポタリングでさまよえる湖と出会った

2022-11-07 | 自転車

先月久しぶりに自転車の投稿をして、それからまたずいぶんと間隔があいてしまいました。手首をぶつけたかひねったかして痛かったので、といっても病院に行くとかそこまでひどくはなかったのですがちょっと自転車はお休みしてました。

で、手首の痛みもだいぶ良くなってきたので、でかけましょうか。といっても特に目的地も決めず、とりあえず北上して行けるとこまで行ってみましょう。ポタリングっていうんでしたっけ。ぽたぽた。

家を出てだいたい10kmくらい走りましたかね、川沿いに木がズラッと並んでました。河津桜だそうです。桜の咲く季節はキレイでしょうね。機会があったら行きたいと思います。こういう書き方したらまず行かないでしょうけど。

そんなこんなで1時間くらいフラフラと走ってそろそろ休憩したいなと思ってたところ、道路標識に「→公園」が。公園だったらベンチもあるし座って休憩できますね。

着きました、ザ・公園という公園。遊具もあって親子連れがいて遊んでました。案内板を見ると水辺があるみたいなのでちょっと行ってみることに。

ところが着いてみると柵で周囲をめぐらせた場所はありましたが、水はありません。あれおかしいな。

今から2000年ほど前のシルクロードの経由地、中国のタクラマカン砂漠に楼蘭という小さな国がありまして、20世紀に入ってスウェーデンの探検家が砂漠の真ん中に都があった痕跡を見つけますが、文献によれば近くにロブ湖という湖があるはずなのですがありません。しかしその後の調査でロブ湖は近くを流れる大きな川の土砂の堆積と強風によってできた浅瀬の水域で、なんと1500年周期で南北に移動するということがわかり「さまよえる湖」と呼ばれ、痕跡から水路が発見されて楼蘭の場所が特定されます。ちなみに三蔵法師玄奘は西暦640年ごろにインドに行った帰りにこの時すでに廃墟の楼蘭に寄ったとの記録があるそうです。

きっとこの公園内にあった水辺も「さまよえる湖」なのでしょう。近くに川も無く、どこに行ったか知りませんが。

まあそんな与太話はさておき、Googleマップによれば家からこの公園は22km。往復で44kmですか。ほぼ平坦。ゆっくりでしたので片道1時間半くらいでした。

帰りになってポツポツと雨が降り出してきましてそのうちけっこうガッツリ降ってきたので途中でリュックから携帯用レインジャケットを出して着ました。備えあれば憂い無し。

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井上靖 『風林火山』

2022-11-05 | 日本人作家 あ

寒いですね。といってもまだ関東南部は霜が降りたり氷点下になったりはないので寒冷地にお住まいの方たちからすれば「生意気言うな」ってなもんですが。お鍋とかシチューとか美味しいですね。二十代くらいの若かりし頃は鍋とかすき焼きだと肉、肉、肉とまさにミートファーストでしたが、歳を重ねますと、白菜、ネギ、豆腐、きのこといった感じのベジタブルファースト。おでんも練り物や卵も好きですが、コンニャクと結び白滝と大根と昆布がスタメン起用。東京っ子なもんでちくわぶが大好きです。

以上、えせベジタリアン。

さて、井上靖さん。一生のささやかな目標として井上靖さんの作品を全部読むというのがありまして、まだ道のりは長いですが、まあささやかなんでゆるくいきましょう。

タイトルと文庫の表紙の絵の座ってる甲冑姿に赤い陣羽織の武士で兜には白いフサフサの何かでクワガタみたいな角が二本、右手に軍配とくればアノ人しかいないですが、主役は山本勘助。ヤマカン(山勘)の語源として有名な軍師ですね。

戦国時代の駿府(現在の静岡県)城下の破れ寺にひっそりと住む浪人の山本勘助。もともと三河牛窪の出らしいのですが、九年前に駿府へやって来ます。仕官を申し出てはいるのですが採用されず、今川家家老に助けてもらってます。顔は傷だらけで斜視、肌は黒く、足は跛行、右手の指を一本失うといった容姿ですが、全国各地を旅して兵法軍法を学び剣術も達人、とされていますがそれが本当なのかどうか誰にもわかりません。

そんな勘助のもとに、甲斐、武田家から仕官の要請があり、了承して古府(現在の甲府市)へ。武田の居城で城主の晴信にお目見え。しかし家臣たちは疑いの目。合戦に参加したことが一度もないというのですから無理もありません。ところが城主の晴信は勘助をいたく気に入ります。

この頃、甲斐の武田は信濃を攻略しようとしていて、諏訪家との合戦に勝利し、城に入るとそこに城主の娘の由布姫が。晴信はこの姫を側室に迎えることにします。この由布姫と晴信の間に生まれた長男がのちの跡継ぎとなる勝頼。正室にふたりの男子がいたのですが、長男は病弱で次男は目が不自由。

勘助は、武田家と相模の北条家、駿河の今川家の三家と縁戚関係を結んで同盟を画策します。しかしそんな中、北条と争っていた武蔵、上州の上杉憲政がいきなり甲斐に攻めてきます。それに勝った晴信は、続いて信濃の村上家と合戦、これにも勝利します。村上家は越後の長尾景虎に助けを求めることに。今まで甲斐の武田家と越後の長尾家は信濃を挟んで争うことはなかったのですが、戦国の世、好むと好まぬに関わらず対決をしなければならなくなります。とうとう景虎が信濃に攻めてきますが、しかしこの段階で両者が激突すれば下手すれば負けるかもしれず、勝ってもかなりの損失がありそうと勘助は予想し、初対決は様子見で終わります。

ところで武田家内での話ですが、勘助は由布姫とその息子を可愛がり、後継ぎはこの子しかいないと思っていたところになんと晴信、また側室を迎えようとするではありませんか。こいつはまずいと勘助は晴信に出家させようとして勘助もいっしょに剃髪して、晴信は信玄とあらためます。

一方、上杉憲政は越後に逃げて景虎を養子にして関東管領を譲ります。この頃には名前が輝虎になってて、上杉輝虎に。で、こちらも出家して上杉謙信に。いよいよ上杉が攻めてきて、迎え撃つ武田。決戦の地は川中島・・・

史実通りですと、この両者の争いは決着がつかず、そうこうしているうちに信玄が亡くなって謙信も亡くなって天下取りレースは東海地方を中心に進んでいきます。タラレバですが、もし上杉と武田が争わずに連合していたら天下取りはこの連合軍がなっていて、そうなると幕府は新潟か甲府になって、という説を唱えるひともいたりしまして、日本の歴史もだいぶどころか大幅に変わってきますね。

ただ、歴史というのは「最終的に辻褄を合わせるもの」でして、例えば過去にワープして少年時代のヒトラーを殺害したとしても他の誰かがユダヤ人のジェノサイド政策をやっていただろうというのがありまして、日本でも結局は明治維新的なことがあってそして欧米列強と戦争して負けて戦後復興して、となるんでしょうね。

まあただ空想というか想像は自由ですので、それこそが小説の楽しみというか醍醐味ですので、結局何が言いたいのかといいますと、この小説は面白かったのです。

 

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