晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

髙田郁 『みをつくし料理帖 美雪晴れ』

2020-04-30 | 日本人作家 た
この作品は『みをつくし料理帖』シリーズの9作目。

このブログ記事の3つ前、8作目を投稿したときに「全10作で残り少ないのでゆっくり読もう」なんて書いたのですが、あまり時間を置かずに読んでしまいました。
環境が変わった中で、自分なりに「時間の作り方」を見つけまして、それで本を読んでいます。よく「時間がない時間がない」が口癖の人がいますが、あれは忙しいアピールというだけで要は時間の作り方がわからないんですね。その人よりもはるかに忙しい人の方が「どこそこ行った」とよく遊びに出かけてたり「いついつなら空いてるからいいよ」とかんたんに約束できたりしますね。

澪にとっての育ての親ともいえる芳がプロポーズされるも返事を渋っている中、新メニューで蒲鉾を出そうとしますが、売られてる蒲鉾はとても高価なので、それでは自作してみようとしますが・・・という「神帰月 味わい焼き蒲鉾」。

「つる家」がふたたび料理番付に返り咲き、客が増えるもそのメニューは簡単に出せるものではなくせっかく楽しみに来てくれた客を落胆させますが、それが一流料亭の主には「わたしは番付の品を出すかと危惧していたのですがそれをしなかった」と感心し、澪に「あなたもそろそろ料理人としての今後の身の振り方を考えたほうが良い」と言われますが・・・という表題作「美雪晴れ 立春大吉もち」。

「つる家」に新しい助っ人料理人がやって来ることに。ところがその人は前に来たもののなんだかんだで「やっぱりいらない」と帰ってもらった人。新しい料理人が入ったところ、芳の身内だけのかんたんな披露宴をやることになり、その料理を澪が作ることに・・・という「華燭 宝尽くし」。

吉原で「鼈甲玉」を売って、(あさひ太夫)の身請け金四千両を稼ごうという途方もない計画をスタートした澪ですが、前途多難。そんな中、友人の美緒とばったり再会し、話を聞くと、嫁ぎ先の商いが再び出来ることになるもゼロからのスタートで大変とのこと。一方、澪も(吉原で商いをする暗黙のルール)を教わって・・・という「ひと筋の道 昔ながら」。

さて、のこりは最終巻。最後の方で医師の源斉となんだかいい雰囲気で終わりましたが、どうなるんでしょ。
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柳家小三治 『ま・く・ら』

2020-04-26 | 日本人作家 や
この「柳家小三治」は、当代(10代目)、人間国宝の小三治さん。いつのシリーズか忘れましたが「金八先生」に出演されてましたね。

落語には話の本題に入る前に「まあ近頃は~」といった感じで雑談といいますか四方山話といいますか、そこからはじまって、ごく自然な流れで本題に入っていく、その部分を「まくら」というのですが、いつだかテレビで見た小三治さんの落語、「芝浜」でしたか、まくらを入れずにいきなり本題に入ったのでちょっと驚いた(スタジオの解説の人も「珍しい」と言ってましたっけ)のですが、なんでも、独演会ではフリートークとばかりにまくらを話し、それが「めっぽう面白い」そうで、出版社の人がそれらを集めて文字にして書籍化したということで、厳密にいえば小三治さんの「著作」ではありません。

ニューヨークにひとりで行った話、サンフランシスコに3か月間(留学)した話、玉子かけ御飯の話、駐車場に居ついた浮浪者の話、寄席の今昔の話、林家彦六師匠の話、芸者の話、フランク永井さんの話、バイクの話、昭和天皇の話、仲間との句会の話、CDの話、旅の話、小三治さんのお父さんの話、塩の話、ミツバチの話、英語での返事の話、といった感じのラインナップ。

もともと多趣味で有名なんだそうで、そういや一流の料理人も料理だけ意識せずに、絵画や彫刻、映画や写真といった芸術や娯楽に触れて、他分野から学ばなければだめだ、というようなことを言ってましたが、小三治さんの「知的好奇心」はすごいですね。
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北村薫 『玻璃の天』

2020-04-21 | 日本人作家 か
北村薫さんの「鷺と雪」が直木賞を受賞したときに「へえ、すでに売れっ子でベテランの作家さんも受賞するんだ」と思ったものでした。そしてさらに、「鷺と雪」がシリーズものであることを知り、いつか1作目と2作目を読もうかなあと思って幾年月。

この『玻璃の天』は2作目。1作目から読まないのかよ相変わらずひねくれてやがるなこのスットコドッコイという声も聞こえてきそうなものですが、売ってなかったものは仕方ありません。

(お車)で学校にお通いになる、とても好奇心旺盛な(お嬢様)と、女性運転手ベッキーさんというメインの登場人物が真相を解明していくといった、まあミステリといえばミステリなのですが、そこまでゴリゴリのミステリでもありません。

舞台設定は、昭和初期。世の中が(負のオーラ)に包まれはじめてきた、そんな状況。不思議なもので、企業でもスポーツチームでも優秀な人たちがいるであろう組織なのに一度(悪い流れ)に乗っかってしまったら、傍から見ると「あんたたち自滅しようとしてんの?」と思わずにはいられないような悪い判断をして、結果ますます悪い状況に陥ってしまう、といったようなことはよくあります。

不仲で有名な銀行と電気会社の創業者兄弟。その孫息子と孫娘が互いに惹かれ合い、それがきっかけかどうか、ある政財界の集まりにその兄弟がそろって出席をすることになったのですが、一枚の「絵」が紛失する騒ぎが・・・という「幻の橋」。

ある(ご学友)が家に帰ってこないということで、その母親が相談に来ます。そこには(六曜)の羅列した意味不明な文章の手紙が。これはなにかの暗号か。(ご学友)のお筝の先生と何か関係があるのか・・・という「想夫恋」。

「ある財閥の大番頭の息子」の新築披露パーティーで、ある活動家が転落死。この(新築)というのがとても奇妙な造りになっていて、はたしてそれが死亡した人物を殺害するための周到な計画だったのか、それともただの偶然か・・・という「玻璃の天」。

いちおう、この2作目で「ベッキーさん」の素性といいますか正体が判明するのですが、その彼女のミステリアスな人物設定のキーがシリーズ1作目を読まないとよくわからないようで、まあそりゃ3作目をはじめに読んで次に2作目を読むといったゴールからスタートすればわからないことになりますよね。

ですが、それぞれ単体でも、シリーズを通してじゃないと理解不能といったことはありません。

そして相変わらず北村薫さんの文章は、何といいますか、とてもふんわりとしていて優しいですね。
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髙田郁 『みをつくし料理帖 残月』

2020-04-16 | 日本人作家 た
個人的な話ではありますが4月からガラリと環境が変わって、気が付いたら先週は1度も投稿できませんでした。ですがまったく本を読む時間すら無かったかというとそんなこともなく、ちまちまと読んでいました。
そんな環境の変化にもようやく対応できてきたと思っておりますので、これからは怒涛の投稿ラッシュ。
の予定。

さて『みをつくし料理帖』です。5巻から10巻までをまとめ買いし、今回投稿するのが8巻。あと2巻で終わってしまいます。それはとてもさみしいので、ゆっくりと読んでいくことにします。

吉原の火災で「つる家」にとって大切な人が亡くなり、またそれとは別に世間では伝染病が流行り、医師の源斉は診察にかけずりまわってふらふらの状態だったのですが、澪の料理を食べてようやく人心地がつきます。そこで源斉が「食は、人の天なり」という言葉の意味を説明すると、新メニューになやんでいた澪は・・・という「残月 かのひとの面影膳」。

もとは吉原の遊女で身請けされて今は大店の隠居の後添いとなった(しのぶ)。その夫婦が「つる家」に訪れ、澪らと会話をしていると、なにげなく「そういえばこの前、釣り忍売りが・・・」という話題になると澪と芳はびっくりします。というのも、芳の行方不明の息子、佐兵衛にそっくりの釣り忍売りを見かけたことがあるとの目撃情報が唯一の手掛かりだったのです。ですが、この話に(しのぶ)はなにか訳ありな事情があって真実を話せないような・・・という「彼岸まで 慰め海苔巻」。

「登龍楼」の店主から、澪に話があるというので行ってみると、なんと新店の料理長になってほしいというスカウトの話だったのです。澪は頭にきて「なら四千両出せ」と吹っ掛けたのですが、相手は「面白い。ならそれに見合う料理を考えてきたらその話を受けよう」と言うではありませんか。もう登龍楼と付き合うのは勘弁してほしい澪でしたが・・・という「みくじは吉 麗し鼈甲玉」。

「つる家」の常連の坂村堂から、知り合いの旅籠の主の宴会があるので、その料理を作ってほしいという依頼が。ですが、その旅籠の主というのは、名料亭「一柳」の亭主の親友。しかし一柳側は「うちは仕出しはしません」ということで「つる家」にこの話が回ってきたのはいいのですが、じつは坂村堂の実家は一柳、つまり亭主の子だったのです。宴会というメインテーマとは別に、久しぶりに顔を合わせる親子。澪の考える仕出し料理とは・・・という「寒中の麦 心ゆるす葛湯」。

いよいよ澪は、自分が野江ちゃんこと「あさひ太夫」の身請けをするんだと心に決めて動き出します。が、まっとうな商いでは一生かかっても稼げない金額。
「つる家」の主は、澪をこんな小さな飯屋の板前として縛り付けてはいけない、料理で大成してほしいと思うようになり、芳には縁談が持ち上がり、といよいよクライマックスに近づいてきた、なんだかそんな雰囲気ですね。

じつはまだ『みをつくし料理帖』シリーズの結末は知りません。耳に手をあてて「アーアー」と情報をシャットアウトしております。
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浅田次郎 『ブラックオアホワイト』

2020-04-04 | 日本人作家 あ
もう4月ですね。とはいっても春のウキウキ感はウィルス騒動でそれどころではありません。桜もお彼岸のお墓参りに行くときににまだ2分咲き程度でしたがチラ見したぐらいで。
外出も控えめにしてこういうときは本を読みましょう。

さて、浅田次郎さん。浅田次郎さんの作品はハチャメチャな内容と真面目な内容とがありますが、今回読んだこの作品は、うーん、真面目といえば真面目なんですが、まあおおまかに説明するなら「夢の話」となっております。

学生時代の友人の通夜の帰り、出席していた「都築君」に声をかけられ、家にお邪魔します。「都築君」は高級マンションに一人暮らし。都築君の祖父は元南満州鉄道の理事。コネで商社に入って、バブル時代に海外を飛び回っていました。

ヨーロッパ駐在員でスイスに行ったとき、ホテルで寝ようとしたら枕がどうも合わず、違う枕を持ってきてほしいとルームサービスに頼みます。すると従業員が持ってきたのは、黒い枕と白い枕。そして「ブラック・オア・ホワイト?」と聞くのです。

そんなの別にどっちでもいいから白と適当に選ぶと従業員は「グッド・ナイト・サー」と言って去ります。そこで見た夢とは、「都築君」の祖父が出て来て、謎の女性が出て来て、なぜか誰かに追われてるという、本人にとっては面白くても他人に話したら特に興味を持って聞いてくれなそうな内容。

翌日、仕事を済ませると、なんとなく昨夜の夢の続きが気になってルームサービスを頼むと、また同じ従業員が。手には黒と白の枕が。「都築君」は白い枕をお願いすると、なんと従業員は黒い枕を勧めてくるではありませんか。普通、ある程度の伝統と格式があって標準以上のグレードのホテルであれば、客の要望とは違うほうを勧めるということは有り得ず、逆に興味を持った「都築君」は「じゃあ黒で」とお願いして、眠りはじめると、確かに登場人物は昨日の夢と同じなのですが、シチュエーションが違います。はっきりいうと、悪夢。

「都築君」はスイスでの仕事をしくじって、エリート街道から外れる格好に。それから、パラオ、インド、北京、そして京都と、どこへ行っても白い枕と黒い枕が出てきます。しかも決まって、人生の(さらに会社内における)大きな転機のときに。これは夢なのかそれとも現実なのか・・・

落語が好きな方なら「夢」ときたら「芝浜」と出てくるでしょう。あの話も、最終的には「分」とか「了見」、簡単にいうと「立ち位置」が大事だよ、という裏テーマがあるような気がするのですが、バブル時代も海岸で大金を拾うのも同じ「あぶく銭」。
「分」や「了見」を間違えてはいけませんね。
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