晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

宇江佐真理 『余寒の雪』

2015-07-27 | 日本人作家 あ
さて、宇江佐真理の作品も気がついたら増えてきました。で、「髪結い伊三次」シリーズ以外の作品もちょくちょくと読んでいきたいと思っとります。

『余寒の雪』は短編集で、中山義秀文学賞を受賞したそうです。

「紫陽花」は、お直という女性、今は太物商「近江屋」のお内儀ですが、元は吉原の遊女。ある日、吉原時代の知り合いの遊女、梅ヶ枝が死んだと聞き、野辺送り(葬式)に立ち会いたいとお直は夫に相談するのですが・・・

「あさきゆめみし」は、染物屋の息子、正太郎が女浄瑠璃の竹本京駒の「追っかけ」というか「親衛隊」の話。

「藤尾の局」は、元大奥女中が備前屋という店の後妻になる話。前妻の息子二人は酒を飲むと暴れて困った様子・・・

「梅匂う」は、小間物屋のあるじ、助松が、ふらっと入った見世物小屋で、怪力の女、大滝太夫に惚れてしまう話。

「出奔」は、幕府御庭番、川村修富の甥、勝蔵が家出という話。御庭番の役職では一泊ぐらいは無届け外泊は許されますが、さすがに十日以上となると監督不行き届きで何かしらのお咎めが・・・

「蝦夷松前藩異聞」は、松前藩では歴代藩主のうち数人に奇行というかちょっとおかしいというのがあり、当代藩主もその兆候が・・・という話。

表題作「余寒の雪」は、仙台の女剣士、知佐の話。知佐は仙台藩の御殿女中に武芸を教える役職になろうとしますが、知佐の父は、普通に結婚してほしいと知佐に内緒でお見合いをセッティングします。江戸にやってきた知佐は鶴見俵四郎という同心宅にお世話になることに。ところがその俵四郎が見合い相手だったのです・・・

いずれの作品も短編ながら奥深い、思わず「ほう」とうなってしまいます。

時代小説で、女剣士の話というのはちょくちょく出てきますね、池波正太郎「剣客商売」でも息子、大治郎と結婚するのが女剣士ですね。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

宇江佐真理 『黒く塗れ 髪結い伊三次捕物余話』

2015-07-20 | 日本人作家 あ
気がつけば、このシリーズも5作目。前に投稿したのを確認してみたら、3作目「さらば深川」は投稿しているのに、4作目「さんだらぼっち」は投稿してない・・・何故だ。
というわけで、4作目の投稿をすっ飛ばして、後日覚えてたら書きたいと思っとりますハイ。

「蓮華往生」では、最近、浅草の天啓寺にある大きな蓮華の中に入ると極楽往生できると、年寄りたちが順番待ちしているとの噂。しかし、まったく健康な人までも蓮華に入ると死んでしまうというのがどうのも解せないと、奉行所は隠密廻りの同心、緑川に様子を探るように命令。そのうちに、緑川の妻が熱心に件の天啓寺に通っていると聞き・・・

「畏れ入谷の」では、両国の広小路で侍が酔っぱらってるところを伊三次らが発見。彼の藩の同僚たちも「まあ酔って暴れたいのも気持ちは分かるから放っておいて」という感じ。のちに聞いた話では、その侍の妻、おたきが大奥に女中奉公に上がっているのですが、どうやら将軍に見初められたというのです。しかしおたきは自分には夫がいると拒否。ところが大奥の年寄からはありがたくお受けしろと言われ、さらに夫の勤めている藩の上司にもその話が伝わり、妻に去り状、離婚届を出せと・・・

「夢おぼろ」では、伊三次が知り合いの大工から、富突き、今でいう宝くじの話を聞き、買ってみることに。たまたま伊三次の客である八丁堀の与力の息子に富突きの話をしたら一緒に行きたいと。当たったら、ある女性にぎやまんの高価な簪を送りたいというのです。ところで、八丁堀同心、不破の息子、龍之介の通う剣の道場に、女性の剣士がいるのですが、親に見合いをせっつかれてしぶしぶ受けて破断、相手の男からぎやまんの簪をもらったというのですが・・・

「月に霞はどでごんす」では、男女の心中の水死体が見つかり、その捜査の中で、ある太鼓持ちが浮かんできたのですが、どこにいるのかわかりません。調べていくうちにその太鼓持ちは元武士ということがわかり・・・

表題作「黒く塗れ」では、伊三次の客のお内儀が奇妙な行動をしているというので、調べてみると、そのお内儀は店の金を盗んで、こっそり出かけてある寺へ行き、そこで謎の男に手渡していたのです。ところが、伊三次が別件で女性が謎の行動を取っているとの話を聞いたのです。その共通点は「黒く塗れ」という言葉なのですが・・・

「慈雨」では、伊三次の知り合いで巾着切りの直次郎が登場。直次郎は掏摸で、あるカタギの女に惚れて掏摸から足を洗い、今は花屋をやっています。そんな直次郎の消息を伊三次は久しぶりに知り、まだ惚れた女への想いはあるのですが、その女とは伊三次の知り合いの娘さんで、いくら足を洗ったとはいえ元掏摸を紹介していいものか悩みますが・・・

今作で伊三次とお文のあいだに男の子が産まれます。さてこれからどうなっていくんでしょうか。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

大石直紀 『武士の献立』

2015-07-09 | 日本人作家 あ
この本は、映画のノベライズ版です。ので、「作者」ではなく、正確には「著者」ですね。

ちなみにこの本を本屋で手にしたときは「あ、これ映画であったな」ぐらいの興味で、著者名をしっかりとは見てなかったのですが、あれ、どっかで見たことあるな・・・と表紙の裏にある著者の来歴を見ると

【九八年『パレスチナから来た少女』で日本ミステリー文学大賞新人賞~】

とあり、家の書棚を見てみると「パレスチナから来た少女」がありました。なんとなく話はおぼえてるな・・・ぐらいだったので、このブログで確認してみると、7年前に投稿してました。

江戸時代、加賀藩江戸屋敷の見習い奉公女中、春という女性が主人公。
春は、藩主の側室、お貞の方の居室で食事を作っています。ある日のこと、江戸屋敷で宴席があり、そこで出された料理の材料当てクイズがあり、そこで春は食材を言い当てます。
それが加賀の国許で料理方を勤める舟木伝内が春のことを気に入って、息子の嫁にというではありませんか。

しかし春はバツイチ。しかも原因は春の気の強さ。さらに話を聞けば舟木の息子は春より年下。それでもというので、お貞の方もそうしたほうがよいと言ってくれたこともあり、春は加賀へ。

そこで、夫の安信と会うのですが、安信は料理に無関心。料理方をいづれ継ぐのですが「包丁侍」とバカにされるのが心底嫌で、剣術の稽古に熱心な様子。このままでは埒が明かないので、春は安信に料理対決を申し込みます。春が勝ったら料理を教わる、安信が勝ったら離縁・・・

ちょうど時代は「加賀騒動」のゴタゴタの最中。舟木家はもちろんのこと、お貞の方まで巻き込まれるので加賀騒動の中身は書けません。

読み終わってちょっとあとに、新聞で、東京都板橋区にあった加賀藩の下屋敷のことが特集されていて、今でもこの辺りには「加賀」「金沢」という地名や学校名として残っていて、その面積は今の地図にあてはめてみたらとてつもないデカさでビックリしました。
そもそも上屋敷が今の東京大学本郷キャンパスのあの土地ほぼ全部ですから、それを考えたら加賀藩って凄かったんだなあと妙に感心してしまいました。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする