晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

井上靖 『石濤』

2024-05-18 | 日本人作家 あ
いつの頃からかものすごい心配性になってしまい、出かけるときにカギ閉めたっけな、ストーブ消したっけな、と不安になって家に戻るのはしょっちゅうで、でも今までカギが開いてたりストーブが点けっぱなしだったことはないんですが。あとは特に「時間」ですね。仕事に行くのに職場までに通勤時間だいたい1時間くらいなんですが、2時間前には家を出ます。学校に行くのも10時なんですが8時半には最寄りの駅に着いて、早すぎるので駅前のカフェでコーヒー飲んで時間を潰します。遅刻するよりマシですからね。もう心配性っていうより不安神経症のレベルかもしれませんが。

以上、お父さんは心配性by岡田あーみんさん

さて、井上靖さん。この作品は短編集です。といっても物語というよりはエッセイというか紀行文というか。すべて晩年の作品。

ある日、出かけてて家に帰ると応接間に風呂敷包があって、開けてみると中国、清朝初期の画人、石濤の作品。お手伝いさんに聞くと、背の低い痩せた老人が置いていって数日後に取りに来る、というのですが、その老人はどこの誰か見当がつかず、約束の日になっても現れません。妙にその絵に惹きつけられて、夜になると絵を眺めながらウイスキーを飲んでいると、ちょうどその頃アレルギーの痒みに悩まされていたのですが、その絵を見ていると不思議と痒みがおさまります。そして絵を置いていった謎の老人と想像で会話をして・・・という表題作「石濤」。

シベリアのレナ川、オビ川、エニセイ川、そしてアフガニスタンのカブール川、など、川の思い出や行ってみたい場所について語る「川の畔り」。

また川の思い出話なのですが、インダス川の話になったときに、急にジェラル・ウディンのことが浮かびます。13世紀はじめにアフガニスタン・イラン一帯を収めていた人物で、モンゴルの侵略で滅ぼされて、その後、ゲリラ戦でモンゴル軍と戦うのですが・・・という「炎」。

パキスタンのカラコルム山脈に行き、フンザを目指してジープに乗っていると、現地の少年がジープの後ろにしがみついて、それをはがそうとしたら、その少年の顔が孫に見えてきて・・・という「ゴー・オン・ボーイ」。

食道がんの手術をして、「老い」を意識するようになり、人生観が変わったというかそれまでの人生を出来事を見つめるように・・・という「生きる」。

年を取るというのは別にネガティブに捉えなくてもいいのでは、と思わせてくれます。



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