晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

ジェフリー・ディーヴァー 『魔術師(イリュージョニスト)』

2020-12-29 | 海外作家 タ
今年「も」ではなく「は」ですね、本当にいろいろありましたね。個人的な今年一年としては、振り返ってみれば上半期は「人生の第2章」のために動き出すための準備期間で、資格を取得するために四半世紀ぶりくらいに真面目に勉強し、無事合格。そして下半期は「人生の第2章」いよいよスタート!というわけで、通信制ではありますが、大学生になりました。
仕事しながらですので(社会人学生)ですか。(苦学生)でもいいですけど。
そもそも通信制なので大学のキャンパスに行く機会はほぼ無い(3年か4年に実習はありますが)ですし、ましてやこんな状況ですので、大学の図書館やその他施設は利用制限があるので、キャンパスの並木道を歩いてあの娘に会って・・・みたいなのは無し(涙)。

充実した毎日を過ごせるということが「当たり前ではなかった」と深く感じたこの一年、そういう思いを大事にしないといけませんね。

さて、ジェフリー・ディーヴァーさん。いつ以来だろうと当ブログで調べたら、なんと2011年の2月以来。
この作品は、首から下が麻痺状態の鑑識のスペシャリスト、リンカーン・ライムのシリーズ第5作目。8年以上も間をあけてようやく読んだのにはべつだん意味はありません。忘れてたわけでも飽きちゃったわけでもなく、本屋にいくたびに探してはいたのですが、なかなか出会えませんでした。ネットで本を買ったときに思い出し、シリーズ5作目から8作目まで買っちゃいました。現在では14作目まで出ていますね。

元ニューヨーク市警の鑑識官で、事故により首から上と片手の指1本しか動かなくなってしまったリンカーン・ライムと、現場を捜査するアメリア・サックスとのコンビが難事件を解決していくというこのシリーズ、今作ではサックスが刑事の昇進試験を受けるところからスタート。

音楽学校の学生が校内で殺され、現場に駆け付けるサックス。無線でライムに状況説明をしますが、警備員の話によれば不審な人物は通らなかった、と。鑑識でわかったことは、マジシャンがよく使うグッズが使用されたということで、手品グッズ店の店員のカーラというマジシャンの卵に捜査協力を依頼。
次の殺害は若い男性で、アパートの部屋の手足をテーブルの足に縛られて体が切断されていました。鑑識の結果、馬が関係する「何か」が見つかり、近郊の馬術クラブを探し、会員の女性が見知らぬ男と話していたとの目撃証言があって、捜索すると、今まさに女性が殺される寸前で、どうにか助け出します。被害者は弁護士。不審な男は車に乗って逃げますが車は川に墜落。しかし男は行方不明。

犯人は「なぜ次の犯行が警察にバレたんだ?」と不思議に思います。そして、どのように調べたのか、ライムの家に犯人が侵入し・・・

この犯人のプロファイリングの結果、本名、経歴(元マジシャン)などがわかりますが、犯行動機がわかりません。

そして、このマジシャンが繋がってるとされる極右組織との関係とは。伝説のマジシャン、フーディーニの手品を殺人の手段として再現する目的とは。

シリーズものでは往々にして、回を重ねるにしたがって敵側がだんだん人間離れしていく、というのがあって、「検屍官ケイ・スカーペッタ」シリーズでも、犯人がもはや超能力者レベルになっています。このリンカーン・ライムもそのような傾向にあるにはあるのですが、それでウンザリするという気持ちをはるかに上回るストーリー展開の面白さで、最終的に「読んで良かった」と思えて「シリーズ続編をはやく読みたい」と思わせてくれます。

これで今年の投稿は最後になります。お世話になりました。来年は良い年になりますように。

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宇江佐真理 『髪結い伊三次捕物余話 雨を見たか』

2020-12-19 | 日本人作家 あ
冬ですね。

もはや本筋に入る前のどうでもいい話すらどうでもよくなってしまいました。じゃあそんなこと書かずにいきなり本筋から書き出せばいいだろって話なのですが、それだとあまりにも味気ないので、まあせめて時候のあいさつぐらい。

さて、髪結い伊三次シリーズ。ずいぶん久しぶりに読みました。当ブログで調べたら前の巻の投稿が2019年2月。

おおまかなあらすじを。
伊三次という髪結いはフリーランスの髪結い。しかしこれは法律違反だったのですが、江戸町奉行の同心、不破に見逃してもらうかわりに毎朝不破の頭を結うこと、さらに同心の手先つまり岡っ引きの真似事(十手は預かってないので)をやらされることに。伊三次には深川芸者のお文という恋人が。やがてふたりは結婚、子もできますが、伊三次の安給料では食べて行けず共働き・・・

江戸町奉行の与力、同心という職業、公式には「一代限り」なのですが、実際は代々継いでいます。とはいえちなみにですが、平岩弓枝さんの「御宿かわせみ」シリーズでは宿屋の女将(るい)の「鬼同心」といわれた父親が亡くなって廃業、娘のるいは宿屋をオープン、恋人の東吾は兄が与力で子がいないので自分が与力継承権第一位なのでるいと結婚できずにズルズル引っ張っていました。

前作から不破の息子の龍之進含む6人の同心見習い(研修期間でこの期間は無給)がならず者集団の「本所無頼派」との対決を描いていて、今作もそれを中心にお届け。

「薄氷」
伊三次はまだ若い女の子に「わたしを買わない?」と売春を誘われます。心配になった伊三次は彼女を家に招き入れ話を聞くと名前はおよし、年齢は13歳。親の借金で遊女にされるので、予行練習で伊三次に声をかけたのでした。数日後、不破の娘が行方不明に。しかにすぐに娘は見つかりますが、なんとその手引きをしたのがおよしで・・・

「惜春鳥」
ある夜、お文が呼ばれた宴会の席で、一人の客が「年増なのにご苦労だね」「付き合いとはいえこんな宴会出たくない」と文句を垂れます。ところが後日、また別の宴会でその嫌味な客に会いますが「先日はすみませんでした」と。話は変わり「本所無頼派」の犯行と思われる事件が起こり、龍之進らは捜査しますが、そのときお文の口から「そういえば、先日の宴会の帰り、走ってた男を見た」と・・・

「おれの話を聞け」
龍之進の仲間で同心見習いの一人には姉がいるのですが、不治の病で実家に戻されています。そこに姉の夫で同心が来て「離婚はしたくない」と表明しますが・・・

「のうぜんかずらの花咲けば」
同心見習いの宿直の夜、岡場所の取締りがあり、何人かの遊女が捕まって、奉行所の牢屋に入れられます。しかし、そこに龍之進の見知った女が。ところが龍之進には別の心配事が。それは先輩の梅田という同心が遊女たちを狙っていて・・・

「本日の生き方」
呉服屋が襲われた事件は、同心見習いが「本所無頼派の仕業に違いない」と調べてはいますが、決定的証拠は見つからず。そんな最中にも辻斬りが頻発。そんな中、龍之進と、やはり同心の息子である緑川のふたりが勝手に寄りのパトロールに・・・

「雨を見たか」
龍之進は、父と仕事の話で「無罪で裁きを受けたという人も中にはいるのでしょう」と聞きます。そのとき不破の脳裏に浮かんだのは、職人の男が大家を殺害し金を盗んだという事件で、あのときの職人の男の「おれはやってねえ、旦那、助けてくれ!」という叫びが・・・

このシリーズでは、タイトルに曲名がつくことがあります。シリーズ5作目「黒く塗れ」は、ローリング・ストーンズの楽曲。これに関しては、作者の宇江佐真理さんがあとがきで解説されていました。
今作でも、曲名ではありませんが「おれの話を聞け」は、きっとクレイジーケンバンドのアレですよね。そして「雨を見たか」は、CCRの「Have you ever seen the rain」なのでしょうか。
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安部龍太郎 『等伯』

2020-12-13 | 日本人作家 あ
12月は古い呼び名で「師走」ですね。この師とは僧つまりお坊さんであるという説が有力ですが(ただの当て字という説もありますが)、そういえば12月にお坊さんが忙しそうにしているシーンを見たことがありません。まあ年始に向けてやることはたくさんありそうですが。傍目で見て忙しそうなのはお盆かお彼岸の時期ですよね。

車を運転していて気付くのは、12月になるとなんだか周りの車が焦ってるというか急いでるように見えます。寒いし日が落ちるのも早くなるし気持ちはわかりますが、くれぐれも安全運転で。

さて、そんな話はさておき。

安部龍太郎さん。今年に入って初めて読んでこれが2作目。この作品は直木賞受賞作です。

能登(石川県)七尾に住む、絵仏師の長谷川信春。「絵具の買い付けに出かける」と妻に嘘をついて行った先は実家の兄の奥村武之丞のもと。信春はもともと武家の生まれだったのですが、染物屋の長谷川家に養子に出されます。この出来事は「おまえは武士失格だ」と烙印を押されたようにいつまでも信春の心に残ります。人目をしのんで兄に会うと、主家の畠山家の再興のために浅倉家まで手紙を届けてほしいというのです。この当時の七尾は畠山家が「七人衆」と呼ばれる重臣たちに追放され、七人衆が領地争いをしていて、畠山の者は表立って動けません。武之丞は信春に「お前も奥村の血が流れている、武士の血だ」といって養家に行った弟をパシリに使おうとします。はじめこそ気乗りがしなかったらあるいは無理な頼みだったら断ろうと決めていた信春でしたが、いざとなると兄に逆らえません。

家に戻って妻と幼い子、優しい養父母と会うと決心がゆらぎ、やっぱり兄の頼みは断ろうと思います。が、ある夜、家に戻った信春の目に映ったのは血を流して倒れていた養父母でした。急いで妻と子を探す信春。するとどこかから「あなた、あなた」と声が・・・
兄に話を聞こうにも家督を譲って行方不明。もしかして逃げるために自分を囮にして・・・

この件で、信春は追放されることに。妻と子を連れて都に行くことにします。ところがこの頃、尾張の織田信長が近江にいて若狭~近江の北国街道を封鎖しているので都まで行くことはできません。しかし山道ならどうにかなるということで、妻と子は知り合いの寺に預かってもらい、信春は山道を歩いて比叡山に着きます。ところが信長軍が攻めてくるというではありませんか。逃げる信春でしたが、足軽が幼い子を抱いた僧を取り囲んでいます。その子が自分の息子に見えた信春は、岩を足軽に向かって投げ落とし、ひるんだ隙に長刀を奪い、足軽らを蹴散らし、僧と子を逃がします。

それから半年、信春は扇に絵を描くという仕事をもらってどうにか生き延びています。信春は比叡山で足軽をやっつけたということで信長から「お尋ね者」扱いされてこそこそ隠れています。ある日、歩いているとお坊さんから声をかけられます。これがきっかけで、なんと時のスター絵師の狩野永徳の父親である狩野松栄の弟子入りを許されます。さらに自分を守ってくれる庇護者的な人もあらわれ、どうにかこうにかで妻と子を迎えに行きます。

それからというもの、京の都で暮らせなくなり、堺に逃げますが、妻の具合が悪くなり、西洋の医者に診てもらうと肺炎と・・・

史実通りですと、信長は本能寺の変で死んで、天下取りの先頭は秀吉に移ります。そして秀吉は信春に恩赦を与えます。つまりいつでも京の都に戻れるのです。
狩野永徳との対決、息子が狩野派に弟子入り、信春の再婚、いろいろあって「等伯」という名前をいただいて(はじめは「等白」だったのですが、あとで白に人偏が付きます)、利休と付き合ったばかりに信春まで処刑されそうになったり、そしてとうとう、もとは狩野派に書いてもらうはずだった、秀吉から依頼された絵を書くこととなるのですが、もし秀吉の目にかなわなかったら処刑されるという命を懸けた勝負に・・・

作者本人のあとがきにもあるように、等伯の人生において「日蓮宗、法華経」がものすごく重要なのですが、文中では、宗教じみて説教くさくなく、ですが読後に印象に残るような、絶妙な塩梅で説明されています。

この小説を読み終わって、ネットで「松林図屏風」を検索して、脱力したようにしばしぼうっと眺めてしまいました。そして文中でこの絵を見た家康が泣いたのもなんだか分かるような気が。
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北村薫 『街の灯』

2020-12-04 | 日本人作家 か
12月ですね。今年を振り返るにはまだちょいと早いのですが、まあ今年は世間的にも個人的にも「激動」でした。
来年の目標は「風呂上りに飲むハイボールのツマミで食べるイカの姿フライを控える」にします。イカの姿フライ美味しいですよね。割れて値段の安いヤツを買うんですけど、気が付いたらあっという間に無くなってます。つまり食べ過ぎ。イカンイカン。

はい。

北村薫さんの「ベッキーさんシリーズ」の第一弾です。じつは最初に読んだのが第三弾の「鷺と雪」で、ついこの前、第二弾の「玻璃の天」を読むという、わざとそうしたわけではなくて、結果的にそうなってしまっただけでして。でも別にそれで話がチンプンカンプンってことにはなりませんでした。
スターウォーズもはじめの3部作がエピソード4~6で、だいぶあとになってエピソード1~3が公開されましたしね。
そういうことで。

昭和初期、士族の出である花村家。娘の英子は宮家、華族の通う学校に通っています。もちろん、お車で通学。父親は会社の社長。英子には大学生の兄がいます。そんな英子の「専属運転手」に新しく来たのは、なんと女性。名前は別宮(べつく)みつ子。ある小説の登場人物にちなんで「ベッキーさん」と呼ぶことに。このベッキーさん、文学の素養もあり、武術もできる「スーパーレディ」なのですが、はたしてその正体は!?となるのですが、こちとら先に続編を読んでしまっているので今作では登場シーンを見ることができて満足。

自分で穴を掘って自分を埋めたという奇怪な事件が新聞に載り、興味を持った英子はこの謎を解こうとしますが・・・という「ベッキーさん」と呼ぶ由来となった、サッカレーの小説が作品名の「虚栄の市」。

英子の学校で流行ってる(英子の周囲だけで)暗号遊び。それを兄の友人が兄にある品物を送るのでそれをヒントに指定された場所に来い、というのですが・・・という「銀座八丁」。

避暑で軽井沢に訪れた英子は、誘われて映写会に行きますが、そこで見ていた女性が死んでいて・・・という表題作の街の灯」。

この作品は、昭和7年となっております。すでに続編を読んでしまっているのであれですが、日本はすでにきな臭くはなってはいますが、まだこの時点では「嵐の前の静けさ」といったところ。
そういった時代背景で、主人公を(市井の人)ではなく(お嬢さま)にした意図は、まあこれもすでに続編を読んでしまっているのであれですが、ふむなるほど、と。
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