晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

藤田宣永 『愛の領分』

2013-11-22 | 日本人作家 は
最近、本をまったく読めてません。このブログの更新を楽しみにして
いただいてる方(そんな方いるんでしょうか・・・)には申し訳なく
思っとりますハイ。

本を読んでないにも関わらず、本屋に行くことは好きでして、そうやって
家にはどんどん未読本が積まれていくわけです。

さて、この作品『愛の領分』ですが、タイトルからして恋愛小説。うーん、
あまり恋愛小説は好きじゃないのですが、なんで買ったんでしょう。

主人公の淳蔵は、東京の白金台で仕立て屋「テーラームサシ」の店長をして
います。妻を病気で亡くし、今は大学生の息子とふたり暮らし。
そこに、昔お世話になった高瀬が訪ねてきます。

もう高瀬とはだいぶ疎遠になっていて、昔の面影はなく、老けたというより
は「衰えた」ような印象。

なんでも、高瀬の妻、美保子は難病にかかって、家で療養中とのこと。そんな
美保子が、淳蔵に会いたがっているので長野まで来てくれ、と。

週末、淳蔵は自分の故郷でもある長野へ。電車の中で、淳蔵の実家の温泉旅館
で働いていた太一と偶然再会します。

太一は今はタクシーの運転手をやっていて、淳蔵の実家「田山旅館」は、淳蔵
の父の代で高瀬の父に経営を譲り、借金で田山旅館は人手に渡ってしまいます。

あとで太一の家にお邪魔すると約束して、淳蔵は高瀬の家へ。そして久しぶりに
美保子と会うのです・・・

淳蔵がまだ独身で二十代の頃、東京で高瀬と毎夜ごと遊びに付き合っていて、
そんな”遊び人”の高瀬が当時付き合っていたのが美保子でした。

高瀬は美保子のことは真剣に考えていると行っていたのですが、遊びぐせは
抜けず、別の女に手を出してしまい、淳蔵は美保子のフォローに。
そのうちに、淳蔵の心の中に美保子に対する愛情が芽生えはじめ、やがて
淳蔵と美保子は高瀬に内緒で関係を持ってしまうのです。

ある夜、淳蔵は美保子に「このままふたりでどこかに行こう」と誘いますが、
待ち時間になっても美保子は来ません。それからしばらく経ち、高瀬は美保子
と結婚する、との知らせが。

そのことを高瀬は知っていて、淳蔵と美保子を30年ぶりに会わせたのか・・・

ところで、高瀬の娘の絵の家庭教師をやっているという女性と合ったのですが、
この佳世という女性、なんと太一の娘だったのです。

淳蔵と佳世はちょくちょく会うようになり、2人は惹かれあうようになります。

高瀬は淳蔵に背広の仕立てを頼み、淳蔵が来ると美保子が元気になるから顔を
出してくれ、ということで、淳蔵は週一のペースで長野へ。

淳蔵と佳世の関係は、いずれは美保子の知るところとなるのですが、そのとき
美保子は・・・

久しぶりに読んだ恋愛小説ですが、食い入るように読んでしまいました。
登場人物はみんないい歳なのでガツガツしてなく、かといってドロドロもして
なく、でもどこか背徳感みたいなものが漂っている、なんとも”大人”のお話。

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真保裕一 『奪取』

2013-11-13 | 日本人作家 さ
真保裕一の作品は今まで3~4作品くらい読んだのですが、この『奪取』を読んで
それまで持っていたイメージがガラリと変わってしまいました。

といっても、読んだのが出版された順番ではなくバラバラなので、こちらが
勝手に間違ったイメージというだけなんですけどね。そう、例えば奥田英朗の
「オリンピックの身代金」を読んだあとに「空中ブランコ」を読んだ、そんな
感じ。

手塚道郎という男。22歳。ある夜(仕事)に出ようとすると、怪しい男に呼び
かけられます。どこからどう見ても”ザ・やくざ”は、西嶋雅人を知っているか、
と聞いてきます。どうやら雅人は自分の名前を保証人にして金を借りたようで、
彼らのベンツに乗せられて事務所に着くと、奥からボコボコに殴られた跡で顔が
膨れた雅人が。

その返済額はなんと一千二百万円。

一週間以内に全額返済できなければ「ちょっとした荷物の受け渡し」という、なん
とも素敵な仕事を斡旋(どう考えても”ブツ”の運び屋)してくれます。

これから一週間、2人で寝ずに働いたとしてもさすがにそんな金額を稼ぐのは無理
なので、道郎の思いついたのは、ニセ札作り。

ウダツの上がらない毎日から、ここらで一発デカイことをやりたいと考えていた
道郎。ニセ札とはいっても、アタッシェケースの札束の上だけ本物で下は新聞紙
のようなセコい手ではなく、どうせやるなら一千二百万全額”ホンモノ”を手に
してやろう、と・・・

まずは、田舎にある人通りの少ない場所にあるキャッシュコーナーに狙いを定め、
板金で働いてる雅人にバーナーを借りてきて焼き切って、中から現金の識別機を
頂戴しよう、と計画。

もちろんこれには危険が一杯。日本の警察のレスポンス・タイムは世界一優秀な
ので、近くの信号機に発火装置を仕掛け、そちらに警察が出動している最中に
終わらせて逃げよう、と。

第一の計画はなんとか成功。ついでにキャッシュコーナーに入っていた現金数十
万円もいただきます。
さて、ここからが本番。盗んだ識別機がきちんと識別するようなニセ札を作るこ
とに。返済期限は明日、どうにかニセ札は完成します。

いよいよ実行に移りますが、その最中、ちょっと気になることが。とある銀行の
支店で道郎は、謎の老人に声をかけられます。そのあと、別の支店でもその老人に
ふたたび遭遇。バレたのか・・・?

あとほんの少しというところで失敗に終わり、ヤクザに捕まってしまう雅人。
道郎も捕まりそうになりますが、なんとそこにさっきの老人が助け船を・・・

老人はいったい何者なのか。そしてヤクザの追っ手から逃れるために名前を
変える道郎。どうにかして雅人を助け出さなくては・・・

テーマこそ重苦しそうですが、全体的にライトタッチで端々にユーモアもあって
スラスラと読み進みました。そしてラストは、まさかまさかの大どんでん返し。

しかしまあ、この作品を読んでの収穫は、真保裕一ってこんな一面を持ってたのね、
ということと、ニセ札を作るにはそれなりの資金も必要で、結局は「いってこい」
じゃん、ということ。



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中山七里 『おやすみラフマニノフ』

2013-11-03 | 日本人作家 な
「このミステリーがすごい!大賞」の受賞作品はほぼ読んでるのですが、
もちろん大賞受賞作は数多くの候補の中から選ばれているだけあって
(賞金額も国内トップですから選ぶ方もプレッシャー凄そう)クォリティ
は高くてどれも読み応えあります。

が、2作目を読みたいかどうか、となると、これがどうにも。

デビュー作「おやすみドビュッシー」を読み終わって、ああもう次の作品
が読みたくていてもたってもいられない、なんて気持ちになったのは、「この
ミス」受賞作では久しぶり、というか海堂尊以来。

前作で見事に事件を解決した新進気鋭の若手ピアニストの岬洋介が、今作では
名古屋にある音楽大学の臨時講師として登場します。

物語は、この音大で、時価2億円といわれるチェロが、侵入不可能の密室(防音
の練習部屋」から消えた、というところから始まります。

主人公は貧乏音大生の城戸晶。城戸は学費滞納で前期分を納めなければ学籍抹消
させられてしまいます。ぶっちゃけ音大なんて卒業してもプロになれるのは国内
や海外のコンクールで優勝したりできるひと握りの人たち、あるいは特別なコネ
のある人。教職で音楽の先生も狭き門。そんな中で音大中退なんて、苦労して
学費を工面してくれた母親に申し訳ありません。
トンカツ屋で夜遅くまでバイトをしていますが、店長から「良かったら社員に」
なんて言われて、嬉しい半面、音楽家としての自分の進路が見えない自分に苛立ち
ます。

さて、この音大ですが、学長は国内トップピアニストの柘植彰良。学長の孫の初音
もこの音大に通っていて城戸とは仲良し。
年に1回、定期演奏会が開催されるのですが、もう高齢で現在はコンサートで弾いたり
しない柘植学長が演奏会で弾くとあって注目度が高く、この演奏会に選ばれる学生は、
卒業後にプロの楽団に就職できたりするのです。

さらに城戸にとってはありがたいことに、ここに選ばれれば学費免除という特典が。

バイトで練習時間もありませんがオーディションを受け、なんと第一ヴァイオリンに
合格。さらにコンサートマスターに選ばれます。

ところが、定期演奏会の練習がはじまろうかというときに、チェロが紛失したのです・・・

犯人の目的は金か、あるいは定期演奏会を妨害しようとしているのか。学校側は警察には
届けず、学校内に調査委員会を作るというのです。というのも、初音がいうには、祖父の
柘植彰良は芸術院に入ることが確定していて、変なスキャンダルは起こしたくない、との
こと。

演奏会のオーケストラの指揮をする教授は調査委員会に入ってしまい、代わりに来たのは
嫌われ者の准教授。これによってオケの雰囲気は最悪、仲間同士でもいがみ合い。
コンマスとして城戸はなんとかしようと、音楽講師の岬洋介と犯人探しをしようとしますが、
第2の事件が学内で起きて・・・

文庫のあとがき解説でプロも認めるほど、この作品の演奏描写は息を呑むほど臨場感に
あふれてグッと引き込まれます。

そして、岬洋介の素性も明らかに。3作目はどこか舞台でどんな事件が起こるのか。
はやく読みたい、と思ったら今年の1月に「いつまでもショパン」という作品が出てる
ではありませんか。わー。


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