晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

ジェフリー・アーチャー 『ゴッホは欺く』

2009-10-10 | 日本人作家 あ
この作品は、あるイギリス貴族の家にあった名画をめぐる
サスペンス的で、さらに話にスピード感があるアクション
エンタテインメント要素もあり、あっという間に「あれ、もう読
み終わっちゃったの」と思ってしまうくらいでした。

たとえば、ダン・ブラウンの大ベストセラー「ダヴィンチコード」
や「天国と地獄」は、さまざまな素材を盛り込んで、複雑な
テイストに仕上がっているのですが、『ゴッホは欺く』は、そこ
にある必要最低限の素材を使う、シンプルな味わい、とでも
いいましょうか。シンプルながらもそこには余裕と技量が垣間
見え(といっても、ダン・ブラウン作品を否定するわけではない)
、そして肝心なのは、翻訳の永井淳さんの絶妙な言葉のチョイ
ス。ジェフリー・アーチャーが全幅の信頼を置いているようで、
英語のユーモアやウィットを見事に日本語の「洒落」に置き換え
るテクニックは名人芸。

莫大な借金に苦しむイギリスの田舎に住む貴族は、家宝ともい
える、ある絵画をアメリカの金融業者に抵当に出します。
しかし、貴族の末裔の当代家主である女性は夜に何者かに殺さ
れてしまうのです。
話はニューヨーク、あくどい金貸し業者フェンストンの美術コンサ
ルタント、アンナは、突然クビを宣告され、会社を出てゆこうとした
そのとき、オフィスビルに大きな衝撃が。どうやら飛行機がビルに
突っ込んだというのです。その日は2001年9月11日。
命からがらビルから逃げ出せたアンナは、フェンストンの悪行をつ
かんでおり、このままだとイギリスの貴族の抵当に出してある絵画
が悪用され、さらにその持ち主の女性の身に危険があると感じ、
なんとかイギリスの女性とコンタクトを取ろうとしますが、アンナは
女性が殺されている事実をまだ知りません。

さらに、アンナは行方不明、推定死亡者として国際貿易センター
ビル崩壊の犠牲者に名前が挙がっていたのです。
フェンストンと取引をした顧客のうち数名は不審死で、アンナは
フェンストンの差し金だと気付き、このままだと自分の命も危ない
と心配しますが、当面はビル崩壊で死亡したことになっており、
生ける幽霊状態で、なんとかイギリスに渡ろうとするのですが、そ
のアンナを追う男の影が・・・

アンナ、それから暗殺者、アンナを追う男はイギリスからルーマニ
ア、さらに東京へと旅します。成田空港や東京のホテルあるいは
丸の内界隈の描写は、ちょっと事実と異なる部分もあるのですが、
それでもジェフリー・アーチャーのファンとしては、日本を舞台にし
てくれたことに嬉しくなりました。

ちなみに、イギリス貴族の所有していた絵画とは、ゴッホの「自画像」
だったのですが、それが何十億円という金額で取り引きされようとは
生前数枚しか絵が売れなかったゴッホとしては、天国からどのように
見ているのでしょうか。バブル全盛期、日本人が西洋絵画や彫刻を
金にもの言わせて買い漁っていた時は同じ日本人として恥ずかしか
ったことを思い出してしまいました。
コメント
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