晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

池波正太郎 『仕掛人・藤枝梅安2 梅安蟻地獄』

2016-12-29 | 日本人作家 あ
さて、シリーズ第1作を読んだのが、当ブログで書いたのが
「2015年5月13日」とあり、あれからなんだかんだで1年半。
ようやく2作目を読みました。

そういえば松本清張の短編で「一年半待て」という作品が
ありましたね。まあ何も関係ありませんが。

ざっとおさらいを。
品川に住むひとり暮らしの鍼医者、藤枝梅安。近所での医者
としての信頼は厚いのですが、しかし、そんな梅安にはもう
ひとつの顔が。それは「仕掛人」という、殺し屋。

アウトローの世界での大物のもとに「殺し」の依頼がまず入り、
これを「起り」と呼び、次にこのミッションにうってつけの
殺し屋のもとに依頼をします。これを「蔓」と呼びます。

で、梅安たち「仕掛人」は「起り」がどんな事情で対象人物に
死んでもらいたいかは聞かないのが暗黙のルールで、ようは
ミッションが成功したら「蔓」から報酬をもらうだけ。

「春雪仕掛針」では、梅安なじみの料理屋で、ある老婆が
斬られて瀕死の状態でいるところを知り合いの医者に診て
もらいます。この老婆はさる大名家の武士の母親で名を
「松永たか」といい、息子の嫁をある武士に斬られて、
その仇討ちをしようとしたのですが返り討ちにあってし
まったのです・・・

表題作の「梅安蟻地獄」は、なじみの料理屋「井筒」を
出た梅安が浪人に襲われそうになります。しかしそれは
人違いだったようで、調べてみると、宗伯という町医者
と梅安を間違えたようで、宗伯という医者は、伊豆屋
長兵衛という蝋燭問屋と待ち合わせをしていたようなの
です。
翌日、殺しの依頼が。その相手とは、蝋燭問屋の
伊豆屋長兵衛・・・

「梅安初時雨」では、梅安のもとに、大坂の暗黒街の
大物からの依頼が。この大物とは義理のあることで、
梅安は大坂に行こうとしていたところ、「梅安蟻地獄」
で梅安を襲った浪人、小杉十五郎が、品川の梅安宅へ。
なんでも十五郎の剣術道場で後継者争いが起こり、
あやうく殺されかけた十五郎は刺客を返り討ちに。
そして、梅安は十五郎を連れていっしょに大坂へ・・・

「闇の大川橋」では、梅安が大川橋(現在の吾妻橋)
を渡ろうとしたところ、斬られて瀕死の男を助けます。
この男は御用聞きで、死ぬ間際に残した言葉は
「あ、あべ、くやしい、ちくしょう・・・」。
この御用聞きが追っていた「あべ」とは何者なのか。
そして次の日、梅安に殺しの依頼が。その相手とは、
大身旗本の安倍長門守とその息子、主税之助というの
ですが、これはあの「あべ」なのか・・・

「梅安初時雨」で、梅安と浪人の小杉十五郎が大坂に
向かう途中、駿河の藤枝宿に寄ります。梅安の苗字で
ある「藤枝」とは、梅安がここ藤枝生まれでつけた
のですが、ここで彼の出生の説明があります。

なんといいますか、悪を退治する痛快感はありつつも、
読後になんともいえないモヤモヤが残る、不思議な魅力
がこの「藤枝梅安」にはありますね。


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葉室麟 『川あかり』

2016-12-17 | 日本人作家 は
直木賞作品「蜩ノ記」を読んだのはいつだったっけ
と当ブログをさかのぼって調べてみたら、1年前に
読んでました。

この作家さんの次の作品を読みたいなあと思いつつ
はや1年。時の過ぎるのがはやいですねえ。

さて、この作品の舞台は、綾瀬藩という架空の藩、
そして主人公は、伊東七十郎という軽輩の侍。

伊東は、川を渡りたいのですが、水位が上がって
流れも急になっていて、川止めとなっています。

そこに、豪右衛門と名乗るふんどし姿の自称・武士が。
宿を紹介するというので行ってみると、そこは木賃宿
という最下級の安宿。

もし川止めが長引いたら宿代飯代やらで手持ちの金も
減っていくので、仕方なくこの宿に泊まることに。

案内されたのは2階の間。そこには、徳元という坊主、
弥之助という猿廻し、お若という女芸人、千吉という
遊び人、1階には、洪水で住めなくなった村の名主の
佐次右衛門、その孫のおさとと五郎の姉弟が滞在して
います。

ところで、伊東は、なぜこんなところにいるのかというと、
実はある人物を討つため、つまり刺客なのです。
その人物とは、綾瀬藩家老、甘利典膳。

綾瀬藩では藩内改革の急先鋒の甘利派と、保守の稲垣頼母派
による派閥の対立があり、頼母が何者かに斬り殺されたこと
で対立は激化、藩内の若い武士たちは、藩政改革を訴え党を
結成し、寺に立てこもります。

そんな中、伊東のもとに、稲垣派の重臣から呼び出しがかか
ります。
重臣は伊東に、甘利が江戸から綾瀬に戻ってくる途中で斬れ
というのです。
しかし、伊東は「藩で一番の臆病者」と不名誉なレッテルが
貼られていて、とてもとても自分は・・・と断りますが、
甘利の暗殺ができそうな若い侍たちはみんな寺に立てこも
っていて、お呼びがかからなかった伊東ぐらいだというの
です。
ですが、この重臣は、伊東の今は亡き父親と昵懇で、父親は
剣術の達人で、きっと息子に「秘技」を伝えているはずだ、
とにらんで、武芸もからっきしダメな伊東にこんな大役を
やらせようとしますが・・・

川止めは続き、宿に泊まっていた客たちと伊東との間に
不思議な関係性ができてきて、自分は刺客だと打ち明け、
豪右衛門に剣の訓練を受けることに・・・

はたして伊東は甘利を討つことができるのか。宿にいる
彼らの正体とは。

ところで、主人公の名前は、山本周五郎の「樅の木は残った」
に出てくる若い侍と同じですね。
たしかこちらの伊東七十郎は血気盛んな若者だったと記憶して
いるのですが、まあオマージュなのかは分かりませんが、
こういう部分で「お!?」とニヤリとできるのは、なんとなく
嬉しいですね。
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平岩弓枝 『新・御宿かわせみ』

2016-12-09 | 日本人作家 は
当ブログでは、「御宿かわせみ」シリーズの感想を、途中ぐらい
までは投稿したと思うのですが、ちなみにシリーズは34巻です。

ざっと説明しますと、主人公の神林東吾は町奉行与力、神林通之進
の弟。兄夫婦には子がいなく、いちおう兄は与力の跡継ぎを弟にと
考えています。

東吾は「冷や飯食い」と自嘲しているように、気ままな次男生活。
といっても幼馴染の同心、畝源三郎の捜査の手伝いをしたり、剣術
道場の先生をやったりしています。

そんな東吾ですが、こちらも幼馴染でるいという女性と恋仲。
るいは「鬼同心」と呼ばれた父亡き後、家督を相続せずに、大川端
で「かわせみ」という小さな旅宿をはじめます。

東吾としては、るいと結婚して神林家を継ぎたいところですが、
旅宿の女将と与力職というれっきとした武家とでは身分違いだと
結婚を躊躇するるい。

るいが東吾と結婚に踏み切れない理由のもうひとつは、東吾の
義姉、香苗の実家で旗本の麻生源右衛門の家にいる香苗の妹、七重
という女性がいまして、源右衛門が七重の夫に東吾を、と願って
いるのです。

とまあ、なんだかんだで七重は東吾の友人で医者の宗太郎と結婚し、
婿入りすることで麻生家のほうはオーケー、兄の通之進夫婦には
麻太郎という養子が来てこちらもオーケーで、ようやく東吾はるい
と結婚することに。

ちなみにこの麻太郎という子ですが、父親は東吾。

こんな感じです。で、新シリーズでは、東吾とるいの娘、小春と、
通之進の養子、麻太郎と、畝源三郎の息子、源太郎と、宗太郎の
娘、花世がメインとなります。

東吾は、江戸末期には軍艦操練所に勤めていて、その後の戊辰戦争
では幕府側で海軍として出兵した船が行方不明となります。
源三郎は、何者かに銃で撃たれて死亡、麻生家では凶賊に襲われ
源右衛門、花世、長男の小太郎が殺されます。

明治新政府になって通之進は町奉行を失職、香苗と狸穴に引っ越します。
宗太郎も狸穴に引っ越し、医院を開業。麻太郎は医学を勉強しにイギリス
に留学します。

で、麻太郎が留学から帰ってきたところからスタート。

旅宿「かわせみ」は、明治になっても営業は続けています。るい、番頭の
嘉助、女中のお吉は健在。娘の小春は宿のお手伝いで、主人、東吾の帰りを
待ち続けています。

源太郎は父を殺した犯人と、麻生家惨殺の賊を探しています。花世は
「かわせみ」に居候して、築地の外国人居留地にできた女学校に通っています。

「御宿かわせみ」シリーズのほうに思い入れが強いと、ちょっと読むのが
辛いかもしれませんね。
ですので、そういう方は、リセットして真っ新な気持ちで読んだほうがいいかも。


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