晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

平岩弓枝 『水郷から来た女』

2013-06-22 | 日本人作家 は
「御宿かわせみ」シリーズ3作目。やっと3作目まで読んだ、という気持ち
なのですが、このシリーズは20か30くらいあるので、まだまだ遠い道のり。

江戸の大川端にある宿屋「かわせみ」の女将るい、八丁堀の与力、神林
通之進の弟、東吾は、夫婦同然の仲。るいの父親はかつて鬼同心と呼ば
れた人で、るいと東吾は幼馴染みなのですが、るいの父親が亡くなり、
世継ぎがいないことから家督を譲って、るいは宿屋をはじめます。
東吾は、与力の兄の家に住み、見習いのようなことをしています。

ふたりは結婚はしていないので、東吾が「かわせみ」に通うようなかたち。
そこでまったりしていると、兄の部下の源三郎が事件の話を持ってきたり、
または東吾やるいが事件に遭遇する、といった話が基本です。

さて、表題作「水郷から来た女」は、両替商の5歳になる息子が誘拐され、
犯人は三百両の身代金を要求。引渡し場所には、犯人を捕まえようと岡っ引き
や下っ引き、さらに剣士までもが隠れていたのですが、それがバレてしまい、
金は持ち去られ、5歳の息子は殺されます。

またも似たような事件が。こんどは3歳の女の子が誘拐されますが、両親は
誰にも知らせずに金を約束の場所に置いてきて、翌日、娘は無事帰ってきま
した。

これには八丁堀はメンツ丸つぶれ状態で、なんとしても犯人を捕まえてやろう
としますが、なんと半月で5件もの誘拐地面が発生。

犯人は、どうやら侍ということがわかり、さらに最近、江戸の町道場に道場
破りをして回ってる女剣士がいるとの噂を聞きつけます。

そんな中、東吾の通う道場にも、噂の女剣士があらわれ、ふたりは立ち合い
をすることに。この女が犯人なのか、誰を探しているのか・・・

基本的に東吾は捜査権はないので、もっぱら兄の部下である源さんと行動
するのですが、たまにみせるひらめきもあったりして、さしずめ江戸版の
浅見光彦(お兄さんが警察庁キャリア)といったところですかね。

それにしても、るいと東吾の仲は進展しません。まあ最終的に結婚する
というのは分かってしまっているのですが、もうこれは読者も気長に
見守っていくという心境になります。
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海堂尊 『マドンナ・ヴェルデ』

2013-06-14 | 日本人作家 か
この作品は、「ジーン・ワルツ」と話が前後しているというか
交差しているような内容で、まだ両方とも読んでないという方は
セットで読むと、より分かり易いかと思います。

帝華大の講師で、非常勤でマリア・クリニックという産婦人科医院
に通ってる曾根崎理恵は、久しぶりに桜宮市にある実家に帰ります。

理恵は父を早くに亡くし、上京するまでは母のみどりとふたり暮らし
をしていて、母娘とても仲良しと思いきや、みどりはどこか理恵に
たいして、遠慮ぎみ。

さて、実家に帰ってきて、理恵は突然、母親に代理母になってほしい
と相談してきます。

いきなり何を言い出すのかと驚くみどり。よくよく話を聞いてみると、
夫の伸一郎はアメリカに単身赴任していて、夏休みに夫のところへ
行ったとき、妊娠したのですが、理恵は子宮に奇形があることが分かり
ます。

昔から、みどりの性格を見透かすようなところのあった理恵。「ママって
冷たい」という言葉は、みどりの心に突き刺さり、それが呪いのように
まだ残っていて、一番辛いのは理恵なんだ、と自分に言い聞かせ、承諾
するのです。

ところが、肝心の伸一郎には代理母の許可はもらってないというので、
みどりはアメリカに手紙を出します。

さっそく、東京にあるマリア・クリニックに出かけるみどり。
そこで、妊娠できる体にするためにホルモン治療を受けることに。

さて、家に戻ったみどりですが、伸一郎からの手紙に衝撃を受けます。
そこには、伸一郎は精子を採取された記憶などない、と書かれていて・・・

その後、理恵から「次にこの病院にくるときはなるべく素性を隠して
ほしい」と言われます。なんでそんなことをするのと聞くと、「代理母
は日本では正式には認められてないから」というのです・・・

みどりは妊娠するのですが、はたして出産はできるのか。

「ジーン・ワルツ」にもちょっと出てきた、みどりと同時期にマリア・
クリニックに通う、お腹の赤ちゃんの相手が誰だかわからない、遊び半分
で妊娠したユミという少女がいるのですが、『マドンナ・ヴェルデ』では
ユミとみどりの交流が描かれていて、それが、みどりが理恵にとって思い
もよらぬ行動に出ることになります。

ここでも、官僚や医学界の権威たちは、誰のために法整備をしているのか、
という辛辣なメッセージが込められています。
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ケイト・モートン 『リヴァトン館』

2013-06-06 | 海外作家 マ

ここ最近、本を買うといえばもっぱら文庫で、移動の途中や寝ながら
読んでたのですが、久しぶりにガッツリぶ厚いハードカバーを読んで、
軽く疲れました。

この『リヴァトン館』という作品は、2006年に作者の母国オーストラリア
で発売されてベストセラーに、翌年イギリスでもベストセラーとなり、
なんと2008年には図書館貸し出しランキングでハリー・ポッターに次いで
2位だったそうです。

ちなみに内容はというと、ハリー・ポッターのようなファンタジーではなく、
けっこう正統派なサスペンス。

老人介護施設に入所している98歳のおばあさん、グレイス。彼女のもとに、
手紙が届きます。送り主はアメリカの映画監督のアーシュラ・ライアン。
グレースがかつて女中として働いていたロンドン郊外のアシュベリー卿の
住む「リヴァトン館」で起こった悲劇を映画化したい、というもの。

その”悲劇”の生き証人はグレイスただ一人。しかし、もう思い出したく
はない、あの出来事は墓に持っていく、と誓っていたのですが、ふと気が
変わり、アーシュラに会うことに。

グレイスは、娘のルースの付き添いで、映画スタジオへ向かいます。そこ
には、「リヴァトン館」のセットが組まれています。
そこで、アーシュラは、映画の主要キャストであるアシュベリー卿の2人の
娘、ハンナとエメリンについて聞きますが、話している途中にグレイスは気分
が悪くなり、帰ります。ルースは、そもそも母が外出することに反対していて、
だからいわんこっちゃない、と連れてきたことを後悔します。
が、グレイスはというと、心は過去に戻っていたのでした・・・

グレイスの孫で作家のマーカス(ルースの息子)は、妻を亡くして傷心の旅
に出かけています。たまに絵葉書がとどく程度でどこにいるか分かりません。
グレイスは1924年に起きた悲劇までの経緯を回想し、語りながら録音しはじめ
ます。
そしてそのテープを、届くかどうかわからりませんがマーカスに送ろうと決めます。

1914年、グレイスは14歳でリヴァトン館のメイドとして働きはじめます。
じつは、グレイスの生まれる前、母親がリヴァトン館で女中をしていて、
当主の妻、レディ・ヴァイオレットから「お母さんは元気?」と聞かれ、
執事のハミルトンやコック長のタウンゼンド、そしてメイドの先輩ナンシー
も母のことをよく知っています。
どうやら、母を知る人たちはみんな母を優秀なメイドだったと褒めますが、
では、子育てをしながらでもメイドは務まるのに、なぜ母は妊娠したから
といって暇を出されたのか。このことはグレイスは聞いたことがありません。

リヴァトン館の住人は、当主のアシュベリー卿とその妻レディ・ヴァイオレット
のふたりだけですが、息子の長男ジョナサン少佐と次男フレデリックはそれぞれ
結婚して他所に家庭を持って暮らしていて、たまにリヴァトン館に帰ってきます。
次期当主のジョナサン少佐には子どもはおらず、フレデリックには息子デイヴィッド
、そしてハンナとエメリンの2人の娘がいます。

ハートフォード家は戦争の功績でアシュベリー卿の爵位をいただき、ジョナサンは
軍に入って少佐になりますが、フレデリックは事業で一旗あげようとしています。

さて、グレイスがメイドとなって最初の夏、ジョナサン夫婦とフレデリック一家が
リヴァトン館に来ます。
そうして、はじめてグレイスはハンナとエメリンに出会うのです。

ちょうどこの時代、ヨーロッパ大陸で戦争が勃発し、イギリスが参戦するかが話題
となっていて、ジョナサンはすぐにでも戦地に赴きたい様子。ですがフレデリック
は、戦闘機の生産工場を作る計画。

その冬、戦争はまだ続き、ジョナサンは戦地へ、そしてデイヴィッドもいつの間に
か軍に志願していたのです。
クリスマス休暇でフレデリックの3人の子どもたちがリヴァトン館に来たとき、デイヴィ
ッドは、友人のロビー・ハンターを連れてきます。
このハンターという男が、1924年に起きたリヴァトン館の悲劇の主人公その人です。

のちに第一次世界大戦と呼ばれる長い戦争はようやく終わりますが、ジョナサン少佐、
デイヴィッドは戦死してしまい、リヴァトン館の従僕は生きて帰ってきましたが重い
後遺症に苦しみます。
ジョナサンが亡くなったことでアシュベリー卿はフレデリックになりますが、事業は
苦しく、アメリカの銀行家の手を借りなければなりません。
その銀行家、シミオン・ラクストンの息子、テディと、ハンナがなんと結婚することに
なるのです・・・

グレイスはハンナとは”メイドとお嬢様”という関係以上に深くなり、やがてハンナの
専属の女中に。思えば、ハンナのためにいろいろ尽くしてきたからこそ、あの悲劇が
生まれてしまったのか・・・

真相は最後のほうで明らかになりますが、グレイスの回想の中でちょくちょく小出しに
伏線が忍ばせてあって、例えていうならジグソーパズルのような、完成系の絵ははじめに
分かっていて、はじめに外枠、それから風景だったり人物のピースが出来上がっていく、
そんな楽しみ。

読んでいる最中、20世紀前半のイギリスにタイムスリップしてしまったかのような
描写は素晴らしいですね。

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