晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

宮本輝 『森のなかの海』

2012-03-29 | 日本人作家 ま
去年の震災以降、作家さんたちの言動が新聞や雑誌に載ったり
していましたが、まあ「天罰」とのたまった人は放っておいて、宮本
輝が東日本震災について何かを述べられた、というのは、調べが
足りないのか、あるいはどこにも語っていないのか、見ていません。

さて、『森のなかの海』ですが、冒頭、阪神・淡路大震災のシーンから
はじまります。
希美子は、朝方、近くに飛行機が落ちたと思って、しかしこれは地震だ
と気づきます。たまたまその日の夜は別の部屋で寝ていた夫の猛史は無事
のようで、ふたりでなんとか家から抜け出します。しかし外は酷い有り様
で、家の前の神社の鳥居が倒れて、ご近所さんが下敷きに。ガスの匂いも
して、遠くでは火事が。夫は、とりあえず大阪方面へ逃げようと希美子を
引っ張ります。

夫の会社の同僚が住む大阪のマンションまでなんとかたどり着いた希美子。
猛史は、同僚と会社へ行くことに。希美子は、ふたりの息子を預かってもら
っている夫の実家に電話をかけますが、そのときに、空耳か、義母が希美子
の悪口を言ったように聞こえます。

夫は残ることにして、希美子はひとまず夫の実家に。電話で悪口を言われた
のが空耳ではなかったかのように、なぜか、大変な目に遭った希美子に対して
冷たく当たります。気が昂ぶっていた希美子はふたりの息子を連れて、横浜の
妹のマンションに。希美子の両親は、ドイツへ旅行中でしたが急遽帰国。

夫は大丈夫なのか、会社に電話をかけますが、ご主人は会社に来ていません、と。
夜に夫から電話があり、子どもを連れていってしまったことで母が怒っている、
早く帰れ、と希美子を叱ります。向こうは向こうで、同僚を亡くされたり、会社
もしっちゃかめっちゃかで大変なんだろうと希美子は思いますが、それにして
も夫の様子は変。

そのうち、夫には愛人がいるのでは、と想像してしまい、とうとう、興信所に
依頼をして、じつは猛史には愛人がいることが分かり、しかも義母までそのこと
を知っていたことで希美子も妹も両親も怒り、離婚することに。

そんなゴタゴタ劇のなか、希美子がまだ独身の若いときに遊びにに行った奥飛騨
でひょんなことから出会って仲良くなった毛利カナ江というお婆さんが倒れた、
と電話が。
このお婆さんはひとり暮らしで身寄りもなく、連絡先には希美子とあと何人か
しか書いてなく、希美子は奥飛騨まで見舞いに行くことに。
そこで、カナ江から、家と財産を希美子さんに相続して欲しいと言われ・・・

そんなこんなで、飛騨の土地と家を受け継ぐことになった希美子。ふたりの
息子を連れて、さらに、関西に住んでいたときにお世話になった家の3人娘が
生きていることを知って、その3人を引き取り、飛騨の家で生活することに。
さらに、3人娘と避難所で知り合った、それぞれに複雑な事情を抱える不良少女
グループ7~8人も家に押しかけて、奇妙な大人数の集団生活がはじまるのです。

希美子の妹の元婚約者でなぜかまだ関係は恋人という、小料理屋の主人、マンボ
ちゃんがとてもナイスキャラです。

文中のはしばしに、震災での政府の対応に、怒り、失望といった感情がモロに
描かれています。「もうこの国はおしまいだ」という言葉が何度も出てきますが、
幸か不幸か「この国」は残ってますね。

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エラリイ・クイーン 『Yの悲劇』

2012-03-25 | 海外作家 カ
十代のころから文学青年で名作を読み漁っていればよかったの
ですが、生憎、数年前から本の面白さに目覚めたので、「読んで
おかなければ」いけないような名作をほったらかしにしてきて、
そんなわけで、今さらですが『Yの悲劇』を読むことに。

ニューヨークでは有名な、頭のおかしい一家という意味で有名な
「ハッター家」のひとり、ヨーク・ハッターが水死体になって発見
されます。
ヨークの妻でハッター家の中でも悪名高いというか、この家の中で
もっとも「頭のおかしい」エミリー夫人は、夫の死にこれといって
悲しいそぶりもみせず「あ、そう、死んだの」くらいの態度。

ヨークとエミリーのあいだには1男2女の子どもがいて、長女の
バーバラは詩人、ハッター家にあって唯一“まとも”とされてい
ます。長男のコンラッドは、マーサとのあいだに2男をもうけま
すが、母の頭のおかしさを色濃く受け継いだように、常に酔っ払い
評判は悪く、次女のジルも兄に負けず劣らず評判が悪い、といった
ところ。

そしてこの家には他にも、エミリーが前夫(ヨークとは再婚)との
あいだに生まれたルイザ・キャンピオンという、耳と目が不自由な
女性がいて、そのルイザの住み込み看護婦、家政婦と夫、コンラッド
の子どもたちの家庭教師がハッター家に住んでいます。

こんなハッター家で事件が。ルイザが飲もうとしていた卵酒の中に
毒が仕込まれていたのです。ルイザはそれを飲むことなく無事だった
のですが、コンラッドとマーサの子どもジャッキーが悪ふざけで飲み、
ゲエと吐いてしまって、毒が混入していたことが分かったのです。
何者かがルイザを殺害しようとしている・・・?

警視は、元俳優で探偵のドルリイ・レーンにこの事件の捜査協力を
依頼。ヨークの死からルイザの殺害未遂といった中、なんとエミリー
が殺されてしまうのです・・・

凶器は、楽器のマンドリン。犯人はこんなものでエミリーの頭を殴り、
それが直接の死因ではなかったにせよ、なぜ部屋の中には暖炉の火かき
棒など殺傷力のある凶器もあったのにマンドリンなのか。
そして、部屋の床じゅうに巻かれたパウダーのため、誰かが歩いた足跡
が。その靴の型からコンラッドの靴と判明はしたのですが彼にはアリバイ
があり、ルイザのために用意された果物カゴの中には、家政婦が見たとき
には洋なしが2つしかなかったのに、現場には3つ。そのひとつを調べて
みると、毒が混入してあったのです・・・

どこまでも奇怪な事件。それを探偵レーンはひとつずつ解明していくの
ですが、ちょっと展開に強引さがあるにはありますけど、それにしても
あまりにも複雑な筋をスッキリと読ませる、収納の達人のような構成の
力には、さすがミステリの金字塔と評価されるだけのことはありますね。

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天童荒太 『悼む人』

2012-03-19 | 日本人作家 た
3~4年前でしたか、天童荒太『悼む人』が直木賞を受賞した
というのがけっこう大きなニュースになって、もうすでに作家
としての地位を確立していたところに、新人の登竜門でお馴染
みの賞ということで「え、今さら?」なんて思ったものでした
(その後に北村薫も受賞して、さらに思いましたけど)。

そして、NHKの「クローズアップ現代」だったと記憶してるん
ですが、『悼む人』に影響を受けて、登場人物のように、全国各地
で、知らない人の亡くなった現場に赴き、追悼をする若い人たち
が当時けっこういたそうです。

蒔野というフリーの記者が、北海道で死後かなり経過した死体が
出てきたという事件の取材をするのですが、この第一発見者は、
千葉で野宿をしていたときに浮浪者から、北海道の山中に女性が
埋められてると聞いて、実際に行って、掘り返してみると白骨死体
が出てきた、という奇妙なもの。

第一発見者の静人という青年は、生前に面識の無かった死者を
(悼む)旅をしているというのです。それも全国各地、お金の
節約のために基本は歩きで、そして基本は野宿。
気になった蒔野は、宗教の類か何か?と聞きますが、静人は、
そうではない、ただ(悼ませていただく)だけだ、と。

亡くなった人は、どういう人生を送ったのか、人に感謝される
一生だったか、などを生前を知る人に聞いたりして、それらの
情報とともに(悼む)のですが、時には怪しまれたり迷惑がら
れたりもします。
しかし、静人は、新聞や雑誌、テレビで情報を得て、現場へ赴き、
(悼む)ことを続けます。

こんなのは偽善だ、あるいは頭がアレなのでは、と蒔野は思い
つつも、東京に戻ってから、静人のことが気になります。そして
ネットで「全国各地の歩き回って、死亡現場で追悼をしている
青年を知っている、見たことがある人がいたら情報を求む」という
書き込みをします。

ところで、静人は、この長旅の費用は、それまで働いていたときの
貯金をはたいているのですが、はじめの(悼む)旅は、年末には家に
帰ってきていたのですが、ここ数年は戻ってこず、家族は怒りという
か、呆れているというか。
静人の母親、巡子は、末期のがんで、在宅での治療を選び退院します。
自分が生きている間に息子に会えるかが気がかり。

この旅に、夫の殺害の罪で、出所したばかりの倖世という女性が同行
することに。倖世は、まるで仏のように心優しい寺の住職である夫を
殺したのですが、倖世は前夫からの暴力から逃れるために、駆け込み寺
(シェルター)に入り、そこで働かせてもらい、住職と結ばれます。
しかし、そんな夫をなぜ殺すに至ったのか・・・

この世の中で辛いことは、「死」が忘れ去られていくことだ、と静人は
思い、せめて自分が(悼む)ことで、忘れない「努力」をし続けるのです。
この行動には矛盾、葛藤もあり、たとえば、「死んだほうがまし」といった
人も(悼む)のか、事故で大人数が亡くなったりしたら、一人一人に対して
(悼む)ことができるのか、など。

(悼む)旅と交互に父、妹、従兄弟など静人の家族関係が描かれます。
なぜ、静人はこんなことをするようになったのか、そして、家族は彼を
どう思っているのか。

たぶん、蒔野や倖世のように、はじめは懐疑的な見方をしていた人と同じ
スタンスで読みはじめるのと、純粋に静人という人物をバイアス抜きで見
られるスタンスで読みはじめるのとでは、全体的(途中~ラストちょっと前)
の印象がずいぶん違ってくるでしょう。
どちらにしても「心が洗われた」帰結にはなりますね。

「号泣」「感動の嵐」といったキャッチフレーズは意外と心に残らなかったり
します。
『悼む人』は、そこまで思い切り心を揺さぶられるようなことはありませんが、
良い本というのはこういう作品のことをいうんだよと、後世に残したいですね。
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ロザムンド・ピルチャー 『九月に』

2012-03-12 | 海外作家 ハ
(自分の無知を棚に上げて)知らない作家の知らない作品を
買って読むというのはある種「冒険」で、たとえ帯や背表紙に
「大ヒット作」「どこそこから映画化決定」などと売り文句が
あっても、読み終わってガッカリ感しか残らなかった、という本
もあったりしました。

で、このロザムンド・ピルチャーという、スコットランドの
女性作家、代表作「シェルシーカーズ」が200万部超の大
ベストセラーとなって、『九月に』も同じく200万部のヒット
作なんだそうで、さて当たりか外れかというと、大当たり。

スコットランドの片田舎で、スタイントン家の娘の誕生日ダンス
パーティーを開催するところから話がはじまり、このパーティー
をきっかけに、ロンドンや外国に住む家族が帰省することになり、
再会に喜ぶだけではなく、昔の忘れたい記憶がほじくり出された
り・・・などと、家族をテーマに描かれていて、とにかく話は淡々
と進み、ぶっちゃけ地味な内容なのですが、不思議と引き込まれて
ゆきます。

ストラスクロイ村の領主アーチーは軍隊所属のときに北アイルランド
で片足を失い、義足での生活となり、古くて大きな屋敷「クロイ館」
でのこまごまとした仕事をこなす毎日。それだけでは食べてはいけず、
妻のイザベラが、アメリカからの観光客をもてなす仕事でお金を稼い
でいます。
娘のルシラはパリに住んでいて、アーチーの妹パンドラは18歳で
アメリカに移住、離婚してスペインに渡って、20年以上クロイ館に
戻ってきていません。そんな折、ルシラがスペインに遊びに行きたい、
パンドラおばさんの住所を教えてくれという手紙が届き、ついでに
誕生日パーティーの招待状を同封します。一応、パンドラにも。

もうひとつの家族、クロイ館の家族と仲の良いエドマンドの一家の
話も出てきて、妻のヴァージニアは後妻で、最初の妻との娘アレクサ
はロンドン在住で、料理のケータリングの仕事をしています。
ヴァージニアとのあいだにはヘンリーという男の子が生まれて当年
8歳ですが、どうにも内気で繊細。
エドマンドの母ヴァイオレットは小さなコテージでひとり暮らし、
アレクサとヘンリーの乳母エディーとは今でも仲良し。
さてアレクサですが、容姿はいまいちで、色恋もあまり得意ではあり
ませんが、そんな彼女にノエルという恋人ができるのです。
ヘンリーを寄宿学校へ入れたいエドマンド、ですがヴァージニアは
猛反対、勝手に手続きを済ませてきてしまった夫に妻はとうとう怒り
が爆発、なんとか納得したものの、学校へ連れて行く当日はエドマンド
に送りを頼んでいたのを、急な出張で行けなくなり、ヴァージニアが
連れて行くことに。
息子との別れに悲しみにうちひしがれ、夫への信頼も薄らぎ、そんな
タイミングでヴァージニアの古い男友達のコンラッドと出会い・・・

ルシラはパリで出会ったジェフという恋人とともにパンドラの家に。
スタイントン家のパーティーの話題になると、なんとパンドラは「私も
行く」というのです。そして3人はスコットランドへ。

かつては親友とだったアーチーとエドマンドですが、ある出来事がきっか
けで、かつてのような交流は無くなります。その原因とは・・・

心配事といえば、エディーの従姉妹にあたるロティーが精神病院から退院
してエディーが引き取ることに。しかしこのロティー、かつてクロイ館で
女中として働いていたことがあって、大迷惑をかけて辞めさせられたこと
があり、ゴシップ的な話が大好きで、他人が迷惑がろうがお構いなし。
このロティーが帰ってくることになって、みながエディーを心配します。
ある日、ヴァージニアを捕まえたロティーは、あんたの旦那はパンドラと
愛人だったんだよ、と余計なことを言うのです・・・

なんやかやでそれぞれ問題を抱えている2つの家族。それらが一同に集まる
ことになるのですが・・・

スコットランドの風景、そこに暮らす人々の描写がすばらしく、行ったこと
が無い人でも、どこか懐かしいと思えるような感じ。
久しぶりに読後に疲れたなあというくらい長いですが、不愉快な疲れではなく、
心地よい疲れ。良い本に出会いました。
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パトリシア・コーンウェル 『サザンクロス』

2012-03-06 | 海外作家 ハ
コーンウェルの「検屍官」シリーズとは別の、警察小説
「スズメバチの巣」の続編にあたる『サザンクロス』は、
シャーロット市の警察署長ハマー、署長補佐のウェスト
(ともに女性)、そして前作では警察担当記者で、警察の
イメージアップのために捜査の同行をさせてもらっていた
ブラジルが、記者を辞めて警官になり、ウェストと恋仲に
なって、この3人がシャーロットからリッチモンドに転勤、
というところから話がはじまります。

殺人の発生率は全米2位、その他にも強盗、車上荒らし、
暴行、レイプなど治安の悪さに「定評」のあるリッチモンド
市に、新しい捜査用のコンピュータシステムが導入されます。
新署長のハマーはこのデータ化を推進しようとしますが、あま
り歓迎はされない様子。

あげく、就任してそうそう、「大人の犯罪を犯す子供はもはや
子供ではない・・・」というコメントが関係各方面から反感。

そんな中、ハマーの無線に、犯罪の計画を匂わす会話が混線で
入ってきます。この地にいまだ根強くはびこる人種差別が絡ん
でいるようで、放っておけません。

そして話は変わって、スモークと名乗る不良が、ウィードという
少年を仲間に入れようと脅します。

ウェストとブラジルですが、ブラジルが住んでいるアパートの
家主の女性と恋仲になっているとウェストは怒り、ブラジルと
距離を取ることに。

さらに厄介なことに、市内の犯罪発生システムにバグが発生、
魚のマークがあらわれます。これは「フィッシュ」とか何とか
の犯罪の隠語なのか。

たびたび登場する、ババというタバコ工場に勤める男は、基本的
に犯罪者などではありませんが、途中まで、このババの物語が本筋
とどのように絡んでくるのかよく分かりません。
最終的にスモーク、ウィードの少年ギャング、システムの魚のバグ、
ババの話はつながりますが、けっこう飛び飛びで話が変わり、読んで
いて多少のもどかしさがあります。
話が変わるときの「ジョイント部分」といいましょうか、その描写は
面白いなあ、と思いましたが。

リッチモンドといえば、ケイやマリーノは出てくるの?と期待しました
が、ケイがほんのちょっとだけ登場します。
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柚月裕子 『臨床真理』

2012-03-02 | 日本人作家 や
「このミステリーがすごい!大賞」の受賞作品はとりあえず
読んでおこうと決めているのですが、まだぜんぶは読みきれ
ておりません。

というわけで、この『臨床真理』は、2008年の大賞受賞、
知的障害者の施設で入所者が手首を切り、意識不明と通報を
受けて、救急車が「至誠学園」へ急行。
風呂場で倒れている女性を運ぼうとすると、入所者の男が、
自分も救急車に乗せろ、と車の前に立ちはだかり、仕方なく
乗せることに。しかし、病院に着く前に女性は死亡、すると
男はいきなり同乗していた施設長に襲いかかり、救急車は横転、
というスタート。

藤木司は、傷害、公務執行妨害、器物破損の罪で起訴されました
が心神耗弱で不起訴、医療機関に入院となりました。
臨床心理士の美帆は、司の担当となり、カウンセリングをはじめ
ようとしますが、突然「あか・・・」とつぶやくなり、吐いてし
まいます。

その後のカウンセリングでは「しろ・・・」とつぶやきます。する
と、それまで黙っていた司が、美帆の質問に答えはじめ、施設で
自殺を図って救急車で搬送途中に死亡した彩という女性のことを
語りはじめます。
そのときに、なぜ「お前が彩を殺した」といって施設長に襲いかか
ったのか、司は、他人が話す言葉に色がついて見えるというのです。

正直な言葉は白、嘘は赤、悪意のある言葉は、泥のような濁った色
に見えて、不快な匂いも感じて、たまらず吐いてしまう、と。

彩のことを話し始めたのは、美帆が「今日は」正直に話をしている、
と“見えた”からだったのです。
あの施設では、何か良からぬことが行われていると訴える司。
気になった美帆は、高校の同級生で警察の栗原に、至誠学園のこと
を調べてもらうのですが、調べていく途中に施設長がビルから飛び降り・・・

身内(弟)も心の病で、自分が放っておいたせいで自殺してしまった
ことを、美帆は罪の十字架を背負いつづけ、臨床心理士になったのも
それがきっかけ、という人物背景は、この手の話では前に見たような
定石パターンですね。
美帆にきつくあたり、司のことを何故か嫌っている女性看護士も、
途中まで悪者に描き過ぎたせいか、かえって「ああ、この人は一連の
犯罪とは関係ないや」と分かってしまいます。

それはともかくとして、だんだんと真相が分かってくるにつれての
緊迫感とスピード感はすばらしいと思いました。
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