晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

マイケル・クライトン 『ロストワールド』

2008-11-30 | 海外作家 カ
一応、前作『ジュラシックパーク』の続編というかたちにはなっていますが、
通常続編といえば、前作の主人公がまた登場するのが定石なのですが、今回の
『ロストワールド』では、前作の主人公は名前のみしか登場せず、脇役的存在
だった人をメインに話が展開してゆきます。

とはいっても、やはり主軸は、恐竜が現在によみがえることの危険性であるこ
とに変わりはありません。
ただ、今作品は、よみがえった恐竜が現代の地球環境に適応してしまい、それ
に巻き込まれるといったストーリーです。

そして話は、今からおよそ6500万年前になぜ地球を支配していた恐竜が絶
滅してしまったのか、という古生物学ミステリーを解析。
一般的に有力な説は、隕石落下による気候大変動説。しかし、それによって大
気が上がったり下がったりして致命的なのは、冷血動物なのであって、現在の
研究では、恐竜は温血動物で、現代のは虫類や両生類とはまったく別の進化系
で、しかも途絶えてしまったという見解がなされているのです。

地球が、とても生命が住めないような過酷な環境になってしまい、そして恐竜
が絶滅したのであれば、それと同時期に、哺乳類の祖先であった生き物も絶滅
してしまった可能性もあり、また6500万年という期間は、いったん大絶滅
した地球上の生命が再び多種に繁栄するには短すぎます。

つまり、6500万年前に、恐竜自身が何がしかのきっかけで絶滅への道を選
んでしまったのではないか、というのです。
あまりに繁栄し過ぎてしまった。そして、地球がその繁栄をもはやこれまでと
食い止めるかのように、自滅させたのではないか。
そして文中では、これこそが現在のわれわれ人類にあてはまるのではないか、
と結んでいます。

前に読んだ『ホット・ゾーン』という小説があるのですが、映画『アウトブレイク』
の原作で、アフリカに発生したウィルスの話なのですが、その中に、
むやみやたらと乱開発をした地域からこのウィルス(エボラ、エイズ)が発生
したというのは、地球という生命体が、人間という凶悪なウィルスから身を守
るために出した特効薬がこのエボラやエイズなのではないか、というものです。

そこら辺のへたなエコ論を聞くよりも、ずっと重く考えさせられます。

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マイケル・クライトン 『ジュラシックパーク』

2008-11-24 | 海外作家 カ
2008年11月4日、アメリカの作家、マイケル・クライトン死去、
というニュースを新聞で知って、原作が映画化やドラマ化された作品は
見たりしていたのですが、本は読んだこと無い ヾ(;´▽`A``

というわけで、某全国チェーンの古本屋(ブッ●オフ)に行って、
『ジュラッシクパーク』『ロスト・ワールド(ジュラシックパーク2)』
『ディスクロージャー』を購入。3冊で250円。激安∑o(*'o'*)o ス、スゲー

『ジュラシックパーク』は、昔、外国に留学していたときに現地で見ました。
当然吹き替えも字幕もなし、オール英語バージョン。
英語の理解力もそんなにあるわけでもなく、ただ見終えた印象としては、
恐竜がリアルだった、ということが第一。
ストーリーは、ほんと漠然としか頭に入ってませんでした。
パークで何かしらのトラブルがあって、開演前に招待された人たちが
暴走した恐竜に襲われて、逃げて云々・・・

本を読んでみると、最終的には、人間の倫理観や哲学といったものが
主テーマ。人間が生命をコントロールするなぞおこがましい、と。

問題が起こる。そして解決はするが、なぜこんな問題が起こったのか、
この問題を放置したままでは、この先の社会や人間はどんな間違った
未来を歩むことになるのか。さあみんなで考えよう。
これは、クライトンの作品全般における主テーマなんだそうです。

久しぶりに、この作家が書いた本はあますことなく片っ端から読んで
みたいぞ、と思わせる作品に出会えました。
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宮部みゆき 『魔術はささやく』

2008-11-20 | 日本人作家 ま
我が家には、買うだけ買っておいて、気が向いたときや、本屋に行っても、
これといって読みたい本が見つからなかったとき用に、何冊か本棚の肥やし
状態で置いてある(ほとんど文庫)のです。

例を挙げると、宮部みゆき、ジョン・グリシャムがそうなのですが、まずそ
の条件として「この作家はほぼハズレが無い」というもの。
文学賞を受賞していたり、映画化やドラマ化しているからといって必ずしも
面白いとはいえず、結局は自分に合う合わないの話になってくるんですが。

その「買うだけ買っておいた」本、宮部みゆき『魔術はささやく』を読みま
した。
人物描写、心理状態、状況説明はバツグンに上手いですね、この人は。
最後のほうで解き明かされる謎は、松本清張『砂の器』を思い出させました。
というか、もしも清張の出現以前に、宮部みゆきがデビューしていたのなら、
社会派推理小説というジャンルの旗手はこの人になっていたのではないか、と
すら思わせてくれます。

この物語には、現代社会の歪みから生まれたビジネスといっていいものに以前
関わりを持っていた人たちが事件に巻き込まれます。
そこに、そんなビジネスとは別の道を歩んでいた少年も巻き込まれるのですが、
絡ませ方が巧み。

最後のほうで解き明かされる謎というものは、私は正直いって、眉唾ものです。
ただ、そこら辺のユルい小説なら、不完全燃焼で読み終わってしまうのですが、
信じる信じないはともかくとして、物語として面白ければ、焚き火の後始末で水
をかけたにもかかわらず、小さな火種がぽつんと残っているようなもどかしさは
ありません。

これで本のストックが一冊減りました。
また補充しておかなければ。

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馳星周 『不夜城』

2008-11-19 | 日本人作家 は
先日、NHKで、あなたの一冊がなんとかいう番組をちらりと見まして、
そこで国生さゆりさんが紹介したのが、この本。

なんでも、以前はまったく本を読まずにいたら、先輩に「本を読みなさい」
と言われたらしく、それで読み始めたらハマッタ、とのこと。

正直、読まず嫌い。というか、マフィアとかヤ●ザの小説っていうのは
どうも読む気になれず、どんなに書店に平積みされてようがベストセラー
だろうが、素通りでした。

ただ、本を読む習慣の無かった人がオススメする、というのに興味を持ち、
さっそく購入。

舞台は新宿、歌舞伎町。中国系マフィアの暗躍。
北京系、上海系、台湾系、香港系などがお互い勢力を拡げようと争う。
主人公は、台湾と日本のハーフ(半々「バンバン」という)。
この主人公の親友と呼ばれる男が数年ぶりに歌舞伎町に戻ってくる、
というところから話は始まります。この男は数年前、大物を殺して
逃亡していて、それが帰ってきたということで大騒ぎ。

ギリギリの駆け引きや取引き、裏切り、蔑視・・・
これでもかというほど、人間の薄汚い部分や残虐性が出てきます。
明日が見えない人達。いや、見ようとしないのかも。

一時期、マスコミでも歌舞伎町の中国系マフィア戦争が取り上げられて
いました。
そのもっとディープな部分を見せつけられた気がします。
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小池真理子 『恋』

2008-11-15 | 日本人作家 か
まず、このタイトルで、うら若き純情乙女が年上の殿方に恋をして云々、
と想像されて買ったら大間違い。
もっとも、単行本の表表紙には女性の裸が薄ぼんやりと描かれているの
で、そんな勘違いはないのでしょうけど。

掻い摘んであらすじをいうと、大学闘争華やかかりし頃の女子学生が
ある大学助教授の下で翻訳のアルバイトをします。
女子学生は革命思想に燃えてはいなかったのですが、ブルジョワジー
的存在には嫌悪を抱くのです。そしてその大学助教授とその妻という
のがプチブルジョワジーみたいな生活。

はじめこそ嫌悪で見ていたものの、だんだん夫婦とその暮らしに魅了
されてゆく。3人の関係は刹那的な、頽廃的な、エログロな、そんな
ただならぬものに。
そこで、助教授の妻がある若者に恋をします。3人の関係を崩壊に導
きそうな予感。
そして、なんだかんだあって、女子学生は猟銃で若者を射殺。
折しもその日は浅間山荘事件の日だったので、紙面で大きく扱われる
ことは無かったのです。

そんな事件を、あるライターがひょんなことから知り、服役して出所
してからは身を隠すように生活して、やがて病魔に犯され入院してい
た、その元女子学生に全容を聞くのです。

まず、これを「ミステリー」というジャンル分けしてよいものなのか。
歪みまくりの愛憎の果ての殺人。ある事件の起因を説明する、という点
では立派なミステリーなのですが、なんか違うような気がするのです。

文中に、カミュの「異邦人」で、主人公が殺人をする、しかもそれが、
これといって動機の無い殺人で、よもや自分がそうなろうとは、という
シーンがあるのですが、「異邦人」はミステリーではありません。
ちなみに、「異邦人」の主人公の殺人の動機は(太陽のせいだ)です。

推理を楽しむといった感じは読んでいてありませんでした。
素直な感想は「あ~あ、殺しちゃった」。
やるせなさが残った…
でも、かといって、サスペンスのようなドキドキ感があったか、と
聞かれると、無いんですよね。

極めて非日常な、倒錯した生活。
そんな生活を打破するには、毒には毒、さらに倒錯した思想をもって終焉。
それが殺人だったというだけで、これはミステリーですよ、とするのは尚早
なのではないか、と。

売る側も買う側もジャンル分けされてるほうが何かと都合が良いのですが、
たまーに、それが邪魔というか、先入観持っちゃって物語に気持ちを投入
しにくくなるんですよね。

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北村薫 『リセット』

2008-11-12 | 日本人作家 か
これは、「時と人」3部作シリーズの第3弾。
その前の『スキップ』、『ターン』はまだ読んでいません。

本来は、順番どおりに読んでいくのが「スジ」というものなのでしょうが、
続編というわけではないそうですから、そこらへんは大丈夫かと。
(とんでもないオチ(結末)を先に知ってしまった!みたいなことにはならない)

物語は、兵庫の芦屋に住む、女学校に通う少女が、戦前から戦中にかけて
友人との触れ合い、勤労奉仕、そして、友人の親戚に抱く淡い想いなどが
描かれています。

なんだか、ここまでは『少年H』を思い出します。

そして、突然話は変わるのです。
ある男性が入院して、病床で子供のころの思い出を記録に残すように
録音してゆく、という話に。

あれ、どうなっちゃったの?
しかし、ちゃんと後から、女学校に通う少女の話が繋がってきます。
そのつながりとは、ひらたく言うと「輪廻、転生」なんですが、この
類の話は、進行次第ではただのありふれたファンタジーに終わってし
まいがちなのですが、ともすると無理やりこじつけて話を終わらす、
というものではなく、そこはちゃんとまとめ上げられていました。

話のキーワードのいくつかある内のひとつが、しし座流星群。
これが出てくる小説が、けっこう多い。やや食傷ぎみ。
30数年おきに地球にやってくる天体ショー、というのが
ロマンチックで、ストーリーに盛り込み易いのか。

ほかにもキーワードはあるのですが、輪廻、転生には、話を進めて
いく上で大事な部分。何を持ってくるかで、その話の深さが決まる
といっても過言ではないでしょう。

例えば、歌。この話では、あるドイツの歌が使われました。
あまりに誰も知らないのではだめだし、かといって、ありふれ過ぎ
ていてもだめ。ネットや文献で調べて、割合容易に調べ出すことの
できるくらいの知名度の具合が望ましいかな。
童謡や唱歌もよく引用されます。メジャー級な有名曲を出さずに、
ちょいマイナーな辺りを使うのがテクニックですかね。
輪廻とは関係ないですが、福井晴敏の『終戦のローレライ』で
引用された「椰子の実」は、実に素晴らしい使い方でした。
その作者の知識の広さをうかがえるとともに、読者の見識も広がる
ので、チョイスは重要。

そもそも不自然な事柄を、どう自然に読ませるか。
これは、作者の力も大事ですが、読者の創作や虚構との付き合い方
のほうが必要だと思います。つまり想像力。

ホグワーツやキングズクロス駅9と3/4番線は、読んだ人の頭や心の
中にあるのですから。
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乙川雄三郎 『冬の標(しるべ)』

2008-11-08 | 日本人作家 あ
時代小説です。

時代小説といえば、山本周五郎。山周の小説は江戸時代に暮らす
人々の息遣いが聞こえてくるような丁寧な描写ですが、おそらく
それに匹敵するくらいの筆の力です。
乙川雄三郎という人はこの本を読むまで知りませんでした。
直木賞作家なのね。勉強不足。
他の作品も是非読んでみたいと思わせる力がありますよ。

物語は江戸末期。武家の子女として生まれた明世(あきよ)は、
幼くして絵画、それも南画に興味を持ち、近所の画塾に通わせ
てもらいます。
【南画-Wikipedia-】
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%8D%97%E7%94%BB

しかし、武家の子女であることは、自由に趣味を満喫できると
いう身分ではなく、やがては嫁いで他所の家の人間となり、主
や舅姑の世話、そして子が生まれれば母として子育てに勤しむ
という柵の中で生きてゆかなければなりません。

やがて、縁談→結婚を期に絵画の道は諦めます。
それでも趣味で絵画を続けるのですが、周り(姑)は理解す
るどころか、非難します。
そして時代は江戸から明治へ。政変の中で奔走する男たちを
よそに、当時の女性がどのように生きていたか。

結婚すれば亭主と家のために生き、子が生まれれば母として生
きる。自由を与えられず、道理を引っ込めてでも無理を押し通
さなければ自分のやりたいことなど出来なかった、そんな時代
を生きた女性が主人公の作品は、東西問わず多いですね。
(ジェーン・エア、赤毛のアンなど)

アメリカ大統領選挙で、共和党の副大統領候補であったペイリン
アラスカ州知事が選挙活動中に着ていた服がニューヨークの一流
デザイナーズブランドだぞ、という報道というかゴシップが出ま
したが、それをいうなら男性候補者だって、それなりの高級スー
ツでしょうに。
女性だからという理由でそんな些細なことをあげつらう。
男女平等への道のりはまだまだ遠いのか。

もっとも、アメリカの男女平等論は極端ですけどね。
重い物を運んでいて、手伝おうとすると、見下したということで
セクハラ。そんなバカな ┐(´ー`)┌ マイッタネ
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遠藤周作 『深い河』

2008-11-07 | 日本人作家 あ
遠藤周作といえば、年齢いってる人には「♪ダバダ~ダ~」の
コーヒーの人でお馴染み。あと、竹中直人氏のモノマネ。

正直、遠藤周作と五木寛之は読まず嫌い。
機会があれば、いつでも読めるし、いつか読もう、と。

月に1回か2回は本屋に行って、そのつど5冊くらいまとめ買い
をするのですが、たまたま目に止まった「深い河」という作品。

早速読み始めました。のっけから妻が病床に伏せて残り少ない命
を共に過ごす中年男の話。そして、妻は他界。うーん、最初の章
ですでにいい話だぞ。

その男はインドのガンジス行きのパック旅行に参加。
パック旅行にはさまざまな人がいて、その人たちはそれぞれの
目的があって、旅行に参加するのです。
旅行に参加するに至った経緯が、各章で説明されるのですが、
文中の世界に引き込まれる。

中に、決して押し付けがましくない程度に「神とは何ぞや」と
いう問いが読者に投げかけられます。
敬虔な信者と無神論者では、この問いには赤道直下と南極くら
いの温度差があります。
ヨーロッパの宗教観と、一般的な日本人の持つ宗教観の違いと
いうのもさらりと理解できます。

神をありふれた存在として「玉ねぎ」と表現する日本人のキリ
スト教の信者で、フランスの修道院で修行する男が出てきます。
一方、信仰というものを眉唾で見る、物質的豊かさを享受され
つつも、心の充足感は満たされない女が出てきます。
男は、なんやかやいろいろあって、ガンジスにいるという事を
女は知るのです。

「玉ねぎ」と表現することが冒涜なのか、親近感からくるもの
なのか。解釈の違いで人は人を貶めることもあるし、殺すこと
もあります。

ガンジス川は、沐浴をするし、死体を流します。
それをどのように捉えるかは解釈の違いでしょう。

異文化の理解。
以前、某カフェで、熱い紅茶をズズズ、と音を立てて飲んでいる
年配の女性を、汚物を見るような目で見ていた外国人。
おいおい、ここは日本だぜ、熱いものを熱いうちにいただくのが
この国では礼儀なのだよ、と説明してあげようと思いつつも、こ
ちらは時間が無かったので断念。残念。

そんなことを思い出したのでした。
コメント (2)
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