晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

山本一力 『はぐれ牡丹』

2014-05-27 | 日本人作家 や
ちょっと前ですけど、なんの気なしに夜中テレビを見ていたら、山本一力さんが
出ていて、へえ、深夜の民放のバラエティに出るんだと思って、なんでも、最近の
”こじゃれた”洋食が気に入らないという話で、昔ながらのオムライスを食わせろ
と怒っていました。

ということを思い出しまして、買って来たのが『はぐれ牡丹』。

深川の長屋に住む鉄幹、一乃の夫婦。鉄幹は近所の寺子屋の先生をしています。
一乃は、じつはこんな長屋住まいなどする女ではなく、日本橋両替商の大店
「本多屋」の娘なのです。ひょんなことからぐたりは出会い結婚となったの
ですが、一乃の父親は猛反対、娘を勘当します。

が、一乃が幹太郎という男の子を産むと、孫を見たいと気がかりな父は、お抱えの
占い師、白龍を近所に住まわせ、占いで本多屋に帰ってこさせようと企みます。

ところが一乃は深川での暮らしが性に合ってるらしく、鉄幹の給金が少ないという
ことで、天秤棒を担いで、野菜の担ぎ売りをしています。

ある日のこと、野菜を仕入れにいくと、農家のお婆さんが腰を痛めたということで、
竹林のタケノコの収穫を一乃は手伝うことになり、そこで、一分金を拾うのです。

庶民にとっては一分金など目にする機会は少ないのですが、そこは両替商の娘、
この一分金はどこかおかしいと見抜いて、実家に持っていくことに。

鑑定の結果、これは贋金ということが判明します。贋金作りは死罪。だれが作った
のか・・・

さて、深川での話に戻り、鉄幹一家の近所にお加寿という産婆がいまして、そこで
おかねが出産しますが、夫の清吉は数日前から帰ってきません。さらにその夜、
お加寿の手伝いをしていたおあきが突然誘拐されるのです。さらに家の中は荒らされて
いました。

残された本が一冊、鉄幹の手元にありますが、草書で書かれていて読めません。
さらに気がかりなことが。清吉は、出産費用として、一分金をお加寿に渡していた
というのです。

実家に持っていき、本に何が書かれていたか、さらに一分金は本物なのか、見定めて
もらうことに。本には、清吉はどうやら渡世人に命令されて、大判の偽造を手伝いを
させられているようです。さらに、清吉が渡した一分金は本物でした。

賭場を仕切る寅吉一家と、謎の松前藩の商人が贋金作りに関わっているようですが、
しかし大判というのは製造枚数が少なく、一般に流通していません。そこに5千枚もの
贋大判を作るというのですから、何がどうなっているのか。

さらにおあきの誘拐はこれにどう絡んでくるのか。

そこで、一乃はピンときて、なんと寅吉の家に一人で乗り込むのですが・・・

山本一力作品おなじみの深川の裏店の人たちの互助精神で、この謎の事件は解決する
わけでありますが、松前藩がロシアと密貿易をしていたことや、幕府と松前藩は微妙な
関係だったことなどの歴史の一幕も学べて、”ためになる”一冊です。






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池波正太郎 『鬼平犯科帳4』

2014-05-24 | 日本人作家 あ
ところで、鬼平こと長谷川平蔵の役職「火付盗賊改方」とは、江戸の
警察機構的なものは遠山の金さんや大岡越前でおなじみの北町、南町
奉行所で、こちらは日中の治安を守る部署。で、火盗改メは、夜。

というのも、強盗や殺しなどは、たいていは暗くなってからで、現行犯
逮捕でとっ捕まえてしまおうというもの。いわば「ナイトレンジャー」
ってところですね。

といっても、強行犯の捜査は昼でも行ったりするので、時間での線引き
というわけでもなく、今の警視庁でいうと刑事部捜査一課が火盗改メ、二課、
三課が奉行所って感じですかね。四課の組織犯罪取締りはどっちでしょう。

ちなみに奉行所は「お裁き」つまり裁判も兼ねて行っていたので、仕事量が
多くて大変だったでしょう。どうりで北町も南町もトップがけっこうコロコロ
変わるのは、心労がすごかったんでしょうね。

さて、シリーズ4巻、なんかいろいろ強敵が登場します。

そして、なんといっても事件解決に動いて、話に(面白み)を増す存在が、
火盗改メの密偵(いぬ)。

彼等は、元は盗賊であった場合が多く、命は助けてやるかわりにこちらの密偵
になれ、と。

たびたび登場する小房の粂八、伊三冶、岩五郎といった面々は、蕎麦屋だったり、
他に職業を持っていて、いざ鬼平の声がかかると、情報をかき集めに奔走します。

これは奉行所管轄の岡っ引きも、元は悪の組織であった場合が多く、良い人も
いたんでしょうけど、中には、「見守ってやってるんだから」といって
食べ物やで飲み食いをタダにしてもらったりというのもいたそうですね。

そんな”密偵”のおまさが登場する「血闘」では、平蔵が一人で「化物屋敷」
と呼ばれるアジトへ乗り込むという話。とても面白い。

最後の「夜鷹殺し」という話はとても切ないですね。




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平岩弓枝 『狐の嫁入り 御宿かわせみ〔六〕』

2014-05-18 | 日本人作家 は
ようやくシリーズの6巻まで読みました。でもゴールはたしか
本屋でチラッと見た記憶だと25巻くらいだったので、まだまだ
遠い道程ですね。

ざっと説明しますと、奉行所与力の神林道之進の弟、東吾と
旅館「かわせみ」の女将、るいのまわりで起こる事件や出来事
の短編。
東吾は与力の家で”いちおう”後継ぎとされていて、でも兄夫婦
の家に厄介になっている状態。
るいはもともと同心の家で、父の死後、同心を廃業して旅館を
はじめます。
東吾とるいは幼なじみで恋仲なのですが、るいのほうが歳上で、
お互いの立場的なものもあって、結婚には至っていません。

大店の娘が家の金を盗んだ騒動の「師走の月」、加納屋という
高級鼈甲のお店の奥さんが絶世の美人で、しこの主人が殺される
という話「迎春忍川」、東吾が見かけた女スリの話「梅一輪」、
勤皇志士を名乗る盗賊の話「千鳥が啼いた」、表題作の、本所の
界隈で婚礼の日に火の玉騒ぎがあって狐の仕業かという話「狐
の嫁入り」、そして道之進の妻、香苗に待望の赤ちゃんが、という
話「子はかすがい」の6編。

表題作「狐の嫁入り」は、謎解きに大掛かりな”しかけ”をして、
ある不幸な娘を助けるという痛快な話で、お気に入りの一作。
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篠田節子 『ゴサインタン-神の座-』

2014-05-13 | 日本人作家 さ
篠田節子の作品は直木賞受賞作の「女たちのジハード」を読んで面白いなあと
いうことで、その後いくつか読んだんですけど、宗教とかそういう話のやつで、
なんか「重いなあ」と思って、それから読まずにいました。

が、山本周五郎賞の過去の受賞作を調べてたら、この『ゴサインタン』があった
ので、ちょっと気になってはいたのですが、文庫で600ページ超、しかも裏表紙
のあらすじを読むと、またまた「重いなあ」と。

まあでも山本周五郎賞は今まで読んでハズレは無い。ということで読んでみました。

東京近郊で実家の農業を継いでいる結木輝和。家は地元では旧家・名家として
知られています。父は病気で寝たきりになり、母はその介護に、40歳になる
輝和は今まで40回以上お見合いをしてきましたが全部失敗、いよいよ業者に
頼んで外国人とお見合いをすることに。

そこで出会ったのが、ネパール人のカルバナ。母も彼女を気に入ったようで、
いちおうお見合いは成立ということで、家に連れてきます。

「これから彼女を日本人の嫁として育てる」と母は意気込みます。輝和もカルバナ
のことを”淑子”と呼ぶことに。しかしこの名前は輝和の過去に好きだった女の子
の名前。

日本食が口に合わないようで、しかも環境の変化やその他もろもろで心身に異変が
現れ、”淑子”はとうとう入院することに。

やがて、輝和の周囲で奇妙なことが起こりはじめます。

父が死に、そして母も死に、久しぶりに再開した淑子(こっちは輝和の好きだった人)
も交通事故で死に、それだけではなく、日本語がまったく上達しない”淑子”は
ある日突然、流暢な日本語で話したりします。

それから”淑子”は、だんだんと奇妙なことになっていきます。結木家の所有
していた貸家を勝手に人にあげたり、預金を勝手に下ろして人に配ったり。
どうやら、結木家の資産を全部無くしてしまおうとしています。

病気を治したり、お金を無保証無担保で貸したり(実質あげてる)しているので、
神のように崇める人も出てきて、宗教じみてきます。

そしてとうとう実家の土地も売ってしまった輝和は住むところが無くなってしまい、
山小屋で凍えているところを、かつて結木家の貸家に住んでいた女性が助けます。

輝和と、”淑子”を慕う何人かは、狭い家に暮らしはじめ、輝和は林業をはじめ、
間伐材で小屋を建て、養鶏をはじめ、鶏ふんで野菜を作りはじめます。

ところがある日突然”淑子”は消えてしまったのです。
どうやらネパールに帰ったらしく、輝和は妻を探しにネパールへと旅立ち・・・

「ゴサインタン」とはカルバナこと”淑子”の出身地で、「神の住む地」という意味
なのですが、別の言葉では「牛も作物も育たない場所」と呼ばれている辺境の地。

土地に縛られたように身動きが取れなくて、結木家を継いで農業をやっていることに
まったく希望を見出せない輝和。覇気がありません。
「日本の女はダメだ」と決め付け外国人と結婚するも妻に日本人名を勝手につけます。
しかも前に好きだった人の名前を。うーん、最低。

ネパールの格差、貧富、男尊女卑などにも触れていて、考えさせられます。

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鷺沢萌 『君はこの国が好きか』

2014-05-07 | 日本人作家 さ
これで鷺沢萌の作品を読むのは3作目。ここまで読んで感じたのは、
もっと若いころに読んでおけばよかったな、ということ。

なんといいますか、もっと多感な時期に。

『君はこの国が好きか』ともう1作「ほんとうの夏」では、ともに
在日韓国人3世が主人公。

「ほんとうの夏」は、大学生の俊之が、付き合ってる彼女を大学に
車で送っていくところからはじまります。うっかり事故を起こして
しまいますが、俊之は彼女に早く降りろと怒るように言います。
その剣幕に泣き出し、車を降りる彼女。
警察がきて、俊之は免許を出します。そこには「氏名 朴俊成、
国籍 韓国」とあります。

俊之は今まで生きてきて在日だという”負い目”は感じたことは
ありませんが、同じ在日の友人に事故の件を話すと、やはり俊之
には潜在的に”引け目”があるのだと指摘されますが・・・

そして『君はこの国を好きか』では、在日3世の木山雅美、李雅美
は日本の大学を卒業してアメリカに留学。そこでルームメイトに
なった韓国人に「私は韓国人だ」と自己紹介しますが、まったく
韓国語を喋れないことにルームメイトは不思議がります。

雅美も自分が何者なのか考えることになり、ハングルを教わって
その魅力にとりこになって、アメリカ留学を終えると今度は韓国に
留学します。

そこで出会った在日のクラスメイトたちとの交流、そして「近くて
遠い」日本と韓国の文化の違いを肌で感じて・・・

これは私事ですが、海外留学をしているときにたくさんの韓国人と
交流を持ち、その関係すべてが上々だったというわけではありませんが、
今にして思えば総合的に良かったと思います。
彼等はこうだと決め付ける前に、最終的には人対人。

あるマンガでの印象に残っているセリフで

「すべての問題が愛情で片付くとは思わないけど、愛情抜きで片付く
問題はおそらくない」

この言葉は心の拠り所ですね。







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浅田次郎 『沙高樓綺譚 草原からの使者』

2014-05-04 | 日本人作家 あ
この作品は、「沙高樓綺譚」のシリーズ2作目。

ざっとあらすじを説明しますと、東京の青山にある高層マンションの
一室にある「沙高樓」という、地位、名誉、金のある人ばかりが
集って、他では言えない話を語る場。

その話は、自己申告ではありますが、けっして嘘や誇張してはならない、
そしていっさい他言してはならぬというルールがあります。

刀剣の商売をしていた「私」は知り合いの刀鑑定家である小日向賢吉に
誘われて、「沙高樓」へ行くことに。

今回も、貸しビル王と呼ばれる女装が趣味のオーナーが司会進行をし、
一流と呼ばれる人が話をはじめます。

「宰相の器」では、ある有名政治家の秘書が登場。与党の総裁選に出馬
し、選挙で敗れた時の裏話を披露します。それは、豪放磊落と思われて
いるその政治家はじつは究極の小心者で、総裁選にも占い師に頼んでも
らおうとし、秘書が占い師のもとへ・・・という話。

「終身名誉会員」では、三杷グループの当主、第十九代三杷儀右衛門こと
三杷晴樹の、「ぼくは無一文になってしまった」という一言からはじまり
ます。秘書の用意したイギリスへの旅で、格式高いホテルに泊まり、
そしてとあるカジノへ出向いて大当たりするのですが・・・という話

表題作「草原からの使者」は、大馬主が登場。祖父のはじめた牧場を
父が継ぐのですが、その息子である現在のオーナー、鶴岡勝政がどの
ようにして父から牧場を継ぐことになったのか、昭和48年の日本
ダービー、ハイセイコーが出場したレースに話は絡んでくるのですが
・・・という話。

そして最後の「星条旗よ永遠なれ」は、元アメリカ陸軍大佐、アレク
サンダー・トーマス・ラッセルが登場。GHQの統治時代に来日し、日本人
のハルコさんと結婚、その後アメリカに移住し、退役後は東海岸に住み、
退役軍人の集うカフェで彼らと語り合う、ちょっと下ネタな話。

外部に他言してはいけないというルールのもと、話がはじまるのですが、
どれも、他人に話したとして、信じてはもらえないだろうな、という
エピソードですが、そこがまた面白い。

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