晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

和田竜 『小太郎の左腕』

2017-07-02 | 日本人作家 ら・わ
先日、ボーッとテレビを見ていたら「忍びの国」
の映画が近日公開というコマーシャルをやってて
ちょっとびっくりしました。

というのも、和田竜さんは「のぼうの城」でデビュー
して今まで4作品、そのうち2作がすでに映画化、
そしておそらく「村上海賊の娘」も映画化あるいは
ドラマ化にむけてどこかで動いていることでしょう。

まあ別に小説が映像化されることが偉いとか成功とか
そういったことではないのですが。

戦国時代、弘治2(1556)年。この前の年に
織田信長が織田家の頭領になった、そんな頃。

西国、戸沢家の領国では、火縄銃が大ブームで、
鉄砲の大会が開催されると、武士はもちろん、領民
も、大人も子どもも関係なく参加できます。

11歳の少年、小太郎は祖父で猟師の要蔵とふたり
暮らし。小太郎は生まれてから髪を切ったことがない
くらいのボサボサの長髪で、身長は6尺といいますから
180センチ超、笑う以外の感情を表に出しません。
ので、周囲からは「小太郎の阿呆」と呼ばれたり。

そんな小太郎、近所の悪童といるところに要蔵が
「戦がはじまる」と呼びに来ます。

戸沢家の武将、林半右衛門は百騎の騎馬の先頭を
駆けています。すると半右衛門を呼ぶ声が。
藤田三十郎という老人は半右衛門の幼少時代から
の教育係で、他国の武将にも恐れられてる勇猛な
偉丈夫の半右衛門も三十郎には逆らえません。

さて、三十郎は「泉州は堺から取り寄せた左構えの
種子島じゃ」と鉄砲を半右衛門に見せびらかします。
日本に鉄砲が伝来してから10年ちょっと。戦場に
おける主力武器になるのはまだ先の話で、ゴリゴリ
の騎馬武者である半右衛門からすれば鉄砲など
(足軽の道具)扱い。戸沢家の鉄砲ブームも困った
もの。

「左構えの種子島」とは、珍しいサウスポー仕様。
三十郎は左利きなので、鉄砲試合も好成績を出せず
にいたので、これは嬉しいはず。

戸沢家と争っているのは児玉家。戦況は戸沢家の
不利。この戦を山の上から見ていた要蔵と小太郎。
要蔵は戦の途中で「戸沢の負け」と見て帰ります。
それもそのはず、戸沢家の陣頭指揮は現当主
の甥の図書。半右衛門は図書を(臆病で戦下手)
と見ていて、しかも児玉家には半右衛門も認める
強者、花房喜兵衛もいて、戸沢軍はボロボロになり、
半右衛門と三十郎は命からがら逃げます。

半右衛門は怪我の状態がひどく、山の中で意識を
失います。目が覚めるとそこは人家。要蔵と小太
郎の家だったのです。
すると要蔵、「あの戦は半右衛門殿の指揮では
なかったな」と見抜き、さらに三十郎の鉄砲を
見ただけで「それは堺の種子島」と当てます。
半右衛門は要蔵を(只者ではない)と思います。
(左構えの種子島)を小太郎が興味を持って触
ろうとすると要蔵が「触るな」と諌めます。

回復して帰ろうとする半右衛門と三十郎。あとで
礼をするというのですが要蔵は「ここで会ったこと
は忘れて口外するな」と礼を拒否。
ですが見送りにきた小太郎は「俺を鉄砲試合に出して
くれ」とお願いします。

この年の秋、鉄砲試合が開催されます。半右衛門は
あのとき山中で出会った少年を待ちます。
終わりごろになってようやく小太郎が飛び入り参加
しますが、2発とも的を外れます。しかしその2発
とも同じところに命中したと聞いた半右衛門は、
「ひょっとして」と三十郎の鉄砲を小太郎に貸します。
すると要蔵が「それで撃ってはならん」と叫びます。
しかし小太郎は銃を持ち、火薬を入れて弾をこめて
火蓋を閉じてという一連の動作を流れるように行い、
あっという間に2発とも的中させます。
さらにこれを見ていた戸沢家の領主は「飛んでる鳶
を撃てるか」と小太郎に聞き、鳶を撃ち落とします。

半右衛門は、要蔵が隠そうとしていたのは小太郎の
鉄砲の技術のことだったのかと気付くのです。

城に招かれた要蔵と小太郎。そこで戸沢家の家臣に
ならないかと誘われますが、要蔵は「この孫は少々
知恵が足らず、武家奉公はできません」と断り、
小太郎も「猟師のままがいい」と言います。

帰りに、要蔵は半右衛門に声をかけます。自分たちは
鈴木という姓だというのですが、半右衛門はピンと
きません。
「他国のものに分かりやすくいうと、雑賀だ」
それを聞いた半右衛門は驚愕し・・・

雑賀衆とは、紀伊の国、現在の和歌山県が本拠の、
鉄砲傭兵・地侍集団で、当時の戦国諸家が競うよう
に雇いたがっていたといいます。

そんな要蔵ですが、なぜ孫を連れて紀州を逃れて
西国の山奥に住んでいるのか。

戸沢家の城は児玉家の軍勢に囲まれていて、戸沢
は籠城します。
はじめこそ戸沢側は応戦しますが、そのうち危なく
なってきます。しかも児玉側は(忍びの者)まで
投入してきます。すると家臣の中から「鉄砲試合
で優勝したあの少年を」と言い出し・・・

出版順でいうとこの『小太郎の左腕』は「忍びの国」
と「村上海賊の娘」の間で、舞台設定もストーリー
も違いますが、古い順から「忍び」→「小太郎」→
「村上海賊」となっているので、その順番で読めば
よかったなと今さらですが。

最初に伝わった火縄銃は背が高く手の長いヨーロッパ
人仕様でして、当時の日本人は鉄砲の作り方のマニュ
アルも無く、分解して構造を理解して、そしてわずか
数年で小型の(日本式)に改良、大量生産し、戦国時代
後半には世界最大の銃保有国(50万丁)となっていた
といいますから驚きです。

ところでこのタイトルは「ひだりうで」なのか「さわん」
なのか迷いましたが、このブログを書いてるときに
表紙を見たら、右隅に小さくローマ字でKotaro no Hidariude
とあって解決。
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和田竜 『村上海賊の娘』

2017-05-21 | 日本人作家 ら・わ
読書が習慣となって趣味といえるようになった頃は
「文学賞を受賞したからといって必ずしも面白い
わけではない」などと、イキがった大学生のような
スタンスでしたが、やがて蔵書が百、二百冊と増
えていくと「なんだかんだいって文学賞を受賞した
作品は面白い」と心境の変化が。

中でも『このミステリーがすごい!』大賞と本屋大賞
は、本屋に行きますと、受賞作を優先的に探します。

『村上海賊の娘』は、2014年第11回本屋大賞の受賞作
で、第35回吉川英治文学新人賞も受賞。

たしか、この本が発売されて話題になったちょっと前に
国際ヨットレースの「アメリカスカップ」があって、
それを見てたときに「例えばこれ日本チームのクルーが
村上水軍の末裔だったらどうなんだろう」などと考えて
たちょっとあとにこの本が話題になってなんとなく個人
的に「おおー」なんて思ったのを思い出しました。

さて、この「村上海賊」ですが、起源は平安時代と古く、
彼らのホームタウンならぬホーム「シー」は瀬戸内海。

「因島村上」「能島村上」「来島村上」と三家に分かれて
いて、因島と来島は広島の戦国大名、毛利家の実質支配下
にありましたが、能島だけはどの大名の下にもつかず、
この地域の「海賊」といえば、能島村上家のことを指して
いたとか。

織田信長がいよいよ天下統一に向けて、プロ野球でいえば
優勝マジックが点灯といった状態。
そこで、信長は、大坂の一向宗の本願寺の立地の好条件に
目をつけ「ここを城にしたいからお前ら出てけ」とジャイアン
ばりのことを言ってきます。

出て行かないので、信長は無慈悲にも本願寺を兵糧攻め、
つまり周りを囲って食料の供給ルートをストップさせて、
降参させるという戦略。

そこで、本願寺門主の顕如は、まだ信長の支配下になって
いない広島の毛利家に物資の援助を要求。その量なんと
お米を十万石。今でいうと1万5千トン。
普通に考えて陸路で運ぶには困難で、じゃあ船でとなり、
村上海賊の手を借りることに。

ですが、本願寺を助けるとなれば、つまり毛利家は信長
の敵ということになり、それはまずいということで、もう
ひとりの天下統一の有力候補、上杉謙信が一向宗の味方
になって、謙信は北から、毛利は西から本願寺に向えば
いいと考え、ひとまず謙信の出方を待つことに。

能島村上家の当主、村上武吉の娘、景(きょう)は、
「悍婦(かんぷ。気性が荒い)にして醜女(しこめ。美人
ではない)」と評判で、背も高く色黒で、嫁の行き先
が決まらず、この海域を通る船から通行料を取る(仕事)
をしています。
ある怪しい船が通り、景はその船を止めると、乗っていた
少年が「こいつらは悪いやつだ」と叫びます。
景に歯向かってきた男らはあっという間に退治され、船内
にいた人たちを助けます。

彼らは(門徒)という一向宗の信徒で、大坂本願寺がピンチ
なので救援物資を積んで大坂に向かっている途中でした。

この門徒の中の老人が景のことを「見目麗しき姫」と言う
ではありませんか。当時の女性の美の基準といえば、小柄で
色白で、顔はのっぺりであっさり。景はというと、顔の彫り
が深く、目鼻口がハッキリしていて、大柄で浅黒い、つまり
(南蛮系のルックス)なのです。

老人の話によると、難波の南、泉州の堺は貿易港で、南蛮船
も出入りしていて、泉州に行けば、あなたは美人扱いですよ
と言われて、景は、そんなパラダイスがこの世にあったのか
ということで、勝手に門徒を大坂に送りに行きます。

難波海(現在の大阪湾)では、本願寺の兵糧攻めで海上から
木津川を通って兵糧入れをさせないため、泉州の武士たちが
船で海上封鎖をしています。
その陣頭指揮は、この地域の海賊、眞鍋家の当主、七五三兵衛。

景の乗った船は、難波海に入って、本願寺側の木津砦に向か
おうとすると、織田方の船が止めに入ってきますが、話し合い
どころか、景はいきなり織田方の武将、原田直政の首を斬って
しまい・・・

「えらいこっちゃ」と慌てふためく七五三兵衛。ですが数秒後
には「ま、ええわ」と恐ろしい気の変わりよう。

原田の首を斬ったのは、聞けば瀬戸内海の海賊(村上海賊)
の姫というではありませんか。そしてその姫は、なんという
ことでしょう、スーパー美人ではありませんか。

景は、門徒を送り届けただけで、ぶっちゃけ本願寺がどうな
ろうと知ったことではなく、なんだかんだで織田方の対本願寺
の前線基地である砦に行くことに。
今まで、いわば(海賊ごっこ)しかしてこなかった景は、ここ
大坂で、ホンモノの戦を目の当たりにします。

景に、どのような心境の変化があったのか。

そして、毛利家と村上海賊は、兵糧を運ぶことになるのか。

まず、和田竜さんの作品で面白いのが、登場人物の会話。
なんというか、いかにも時代劇といった口調ではないところが
たまらなく魅力なのです。

もっとも、五百年前の日本人の口調の音源なんてありませんし、
ましてや聞いたことあるなんて人もいませんので、書き言葉と
話し言葉にどのくらい違いがあったのか、言語学や歴史学に
詳しいわけではありませんが、まあ極端に言えば外国映画の
字幕とか吹き替えのような感じでしょうか。

読んでいてずっと気になったのが、景のルックス。
「美の基準の違い」でいうと、真っ先に思い浮かんだのが
アメリカのドラマ「ビバリーヒルズ青春白書」のドナ役
の女優、トリ・スペリング。
初期「ビバヒル」のファンは、まあ大抵がケリー派かブレンダ派
で、「俺はドナ派」という人は、日本人には少なかったのでは
ないでしょうか。
今にして思うとケリーは高慢ちきでブレンダは幼児性むき出し、
「いちばんいい子」はドナだったような気がします。
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和田竜 『忍びの国』

2017-01-20 | 日本人作家 ら・わ
「忍者」といえば、世代によって第一に浮かぶのが
違ってくるんでしょうけど、ハットリくんであった
り、ショー・コスギさんであったり、あるいはニン
ジャタートルズとかナルトあたりですか。
あと「キン肉マン」にザ・ニンジャっていましたね。

もっと古いのになりますと猿飛佐助とか赤影とかですか。

この作品の舞台は戦国時代の伊賀。忍者の故郷ですね。
ちなみに、ハットリくんは伊賀でライバルのケムマキ
は甲賀で、伊賀と甲賀は、史実では別に敵対関係には
なかったそうですね。

織田信長が全国統一を着々と進めていく中、伊勢国の
領主、北畠具教が義息の信親に討ち殺されます。
信親というのは信長の次男で、北畠家に養子に入り、
具教を討ったことで父の信長に認めてもらえると思い
ますが、信長は褒めるどころか声もかけてくれません。
そして、「伊賀には手を出すな」と命令をします。

伊賀は領主という者がおらず、地侍という小領主が戦国
時代には六十六人いて、その中で有力な十二家が集まる
「十二家評定衆」が実質的な政治を行っています。
が、この十二家も仲が良いわけではなく、評定衆どうしで
たびたび戦が起こります。

地侍の下には「下人」という、これがいわば家臣のよう
なもので、ただし主従関係というよりかは、傭兵のような
存在。

さて、伊賀の隣国である伊勢の北畠具教が討たれたと聞き、
「十二家評定衆」では、伊賀は織田家と戦わず支配下に
なると宣言。
しかし、これが伊賀に足を踏み入れさせないための幾重
にも張り巡らされた罠だったのです・・・

無門という自称「伊賀一の忍び」は、安芸から「俺と
夫婦になれ」と、お国という女性を連れ帰ってきます。
ところが、無門はお国の尻に敷かれています。
この無門という一見あまりやる気のない伊賀者が地侍
同士の戦で活躍したところから「罠」が始まります。

「忍者」というと、目出しの覆面に黒い装束、手裏剣
に水の上を歩いたり壁を登ったり、とこんなイメージ
ですが、もちろんこれらもやるにはやりますが、実際は
現代で言う「諜報員」で、アメリカのCIA、イギリス
のMI6,または旧ソ連のKGBのような、ひらたくい
えばスパイがメインの活動ですね。
百姓や大工、または侍に扮して相手国に侵入し、情報
収集をしたり、ときには嘘情報を流布したりします。
地侍にとって下人とは将棋の駒のような存在で、それ
を承知の下人も地侍を裏切るのは当たり前。
生き残るためには味方をも欺きます。

よって、いくら下克上の戦乱の世とはいえ、戦場において
名乗らなかったり、または主君を背後から襲ったり騙し
討ちしたりすれば、やはり白い目で見られたりする時代に
あって、「伊賀者は武士にあらず」という評価だったそう
です。

ネタバレにならない程度にしておきますが、ラストの信長
と無門のシーンは思わずゾクッとしました。

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和田竜 『のぼうの城』

2015-12-24 | 日本人作家 ら・わ
我が家の本のラインナップで舞台設定が古い時代の小説といえば市井の人々が主役の時代小説がほとんどで、歴史上の実在の人物や出来事を描いた歴史小説はあまり多くありません。
別にキライとかそういうわけじゃないのですが。

さて『のぼうの城』ですが、戦国末期、秀吉がいよいよ全国制覇となる前、関東の北条氏と戦をするのですが、本城である小田原を攻めているあいだに、石田三成らは支城である、現在の埼玉県行田市にあった忍城を攻めます。

この地域を治めていた武将の成田氏は、北条氏と組んだり上杉氏と組んだりと、のらりくらりと生き延びてきたという過去があり、北条の城主からはあまり信用されておらず、小田原には成田家の当主、氏長らが援軍に向かい、忍城に残ったのは成田泰季とその息子、長親。

この長親、ふだんからボーっとして、武士らしいことはできずに、しょっちゅう城を出て農民といっしょに野良仕事をします。いや、それも正確には違って野良仕事もまともにできず、ここでもただボーっとしているだけ。
いつしかついたあだ名は「のぼう様」。いちおう城主である成田家の血筋なので「様」はついてますが、「のぼう」とは「でくのぼう」のこと。武士の末端階級である足軽はおろか農民ですら彼を「のぼう様」と呼びますが、普通に考えれば他人に「でくのぼう」とは悪口ですが、どうやら長親の場合はそうではなく「まったく、のぼう様ったら、これだからしょうがねえなあ」といった感じで、むしろ親しみといいますか、そういうニュアンス。

三成率いる二万とも三万ともいわれる軍勢は忍城を包囲、まともに戦っても勝てるわけはなく、実は成田家は秀吉サイドに内通していて、無条件降伏しますから助けてくださいと事前に言ってあるのです。忍城に残ったうちでこれに不満なのが坂東武者の誇りを持って戦おうとします。そんな中、城代(城主が留守中の責任者)の成田泰季が倒れ、臨時の城代になんと長親が。降伏のタイミングはいつにしようだの会議をしていると、長親は「三成軍と戦う」と言い出すではありませんか。

この石田三成という武将、有名な話があり、彼がまだ少年のころ、秀吉が茶を所望して、飲んでみるとお茶がぬるく、二杯目はちょっと熱かったのです。はじめの一杯は喉が渇いているだろうとぬるめにしたこの配慮が秀吉の気に入り、家臣となります。
ところが、頭脳明晰で戦の費用計算などは素晴らしいのですが、武士として戦での功績となるとからっきしダメで、他の家臣から軽く見られ、これにはもちろん本人も気にしていているところで、今回の忍城攻めではなにがなんでも成功させたいと意気込みますが・・・

成田氏側は秀吉に戦わないと内通していて、しかし三成は知らされておらず、一方、城代の長親は「やっぱり戦う」となり、関係者の目論見は大きく崩れます。さて、どうなるのか。

史実どおりに描いているのですからネタバレでもないんですけど、三成の作戦(全包囲攻め、水攻め籠城)はことごとく失敗し、いよいよ三成軍の総攻撃となるところ北条氏は降伏し、それにともない忍城も明け渡します。

圧倒的不利でありながら城代の長親は、はたしてどのような作戦で抵抗したのか・・・

最近の日本史では、それまで悪く書かれていた、例えば徳川綱吉、吉良上野介など、汚名返上の動きがあるようですが、歴史家がどんなにがんばっても石田三成の名誉回復はまだのようです。


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綿矢りさ 『夢を与える』

2010-05-07 | 日本人作家 ら・わ
綿矢りさといえば、「インストール」という作品で、高校在学中に
当時最年少で文藝賞受賞、そして「蹴りたい背中」で、こちらも
最年少で芥川賞受賞と、華々しい文壇デビューとなったわけで
すが、『夢を与える』は、3作目となります。

母親の幹子は日本人、父親のトーマはフランスと日本のハーフ、
このふたりの間に生まれた夕子は、母の知り合いの紹介で、チャ
イルドモデルになります。そのうち、有名な食品会社のチーズの
CMに、夕子を子ども時代から大人になるまで、その成長ととも
に半永久的に出演し続けるという話がきて、夕子はCMに出演。

チーズのCMに出演している無名の子役は徐々に評判を呼び、
夕子のもとにくる仕事のオファーは増える一方、母親兼マネー
ジャーの幹子だけでは手が回らず、大手のプロダクションに
入ることに。

バラエティやドラマ、歌といったマルチな活躍の夕子、しかし
子育ての方針で母と父は対立、あげく父は日本語の勉強をしに
きたフランス人女性とマンションに住み、母と夕子は利便性を
考え都内のマンション住まいとなります。

やがて、夕子は高校に入学します。あらゆるプライベートな
事柄も夕子の一挙手一投足もワイドショーや週刊誌の話題に・・・

『夢を与える』という題は、作者が「違和感を覚えた言葉」「高飛車な
言葉」という印象を持ち、文中でもたびたび夕子の口から、あるいは
夕子の周りの大人たちの口から出ます。しかしその言葉は夕子の
本心ではなく、取り繕い的な、なんとなく聞こえの良いフレーズ
なのです。

確かに、プロ野球選手や俳優がこの言葉を口にすると、なんとなく
鼻持ちならないなこいつは。という気持ちになってしまいますね。

読み終わって感じたことは、「距離感」が絶妙というか、作者と登場
人物の距離感が、変に感情移入しておらず、かといって完全に他人事
でもなく、あと登場人物どうしの距離感もいい具合の均衡を保ってい
ます。

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