晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

ベンジャミン・ブラック 『ダブリンで死んだ娘』

2019-01-20 | 海外作家 ハ
このベンジャミン・ブラックという作家名、じつはペンネームで、
うしろにある解説をそのまま引用させていただくと
「現代アイルランドを代表する作家ジョン・バンヴィルの別名義。
(中略)2005年には『海に帰る日(The Sea)』で、カズオ・
イシグロ『わたしを離さないで』を抑えてブッカー賞受賞」
とのこと。

もともと純文学系の作品を書いていたのだそうで、ミステリーを
書くにあたってなぜ別名義にしたのかというのはあとがきにあり
ますが、まあとにかくこの作品はミステリー。

1950年代のアイルランド、ダブリン。(聖家族病院)の病理
医で検死官のクワークは、看護師の送別会で酒を飲み過ぎて意識
も明確ではない状態で、自分のオフィスである病理科に行くと、
そこに同じ病院の産婦人科医でクワークの義兄でもあるマルがい
ます。そしてその傍らには若い女性の遺体。名前は「クリスティ
ーン・フォールズ」とあります。

が、次の日、病院に行くと、昨夜の女性の遺体が消えています。
同僚に聞いても「知りません」とのことで、マルに話を聞きます
が、はぐらかされます。

しかし、遺体が病院に運ばれた記録は残っていて、そのファイル
を見ると、明らかに何者かが書き換えた跡が。あの夜、マルは何
をしていたのか。
ファイルによると、件の女性の死因は「出産時の出血死」。

クワークには死別した妻がいて、その妻の死因も同じ。だからと
いうわけではありませんがクワークはクリスティーンの生前の行
動を探ります。

そこで、生前、クリスティーンと同居していたドリーという女性
を探り当てて話を聞きますが、クワークが訪れた次の日、ドリー
は何者かに殺されます。
そして、クワークのもとに謎の男が来て「今あなたがしているこ
とをやめないと痛い目に遭いますよ」と忠告(脅迫)が・・・

クワークの死別した妻デリアはマルの奥さんサラと姉妹。マルと
サラの娘フィービは両親と揉め事中で、叔父であるクワークを慕
っています。
クワークの父はアイルランドの判事、マルとサラの実父はアメリ
カ・ボストン在住の大富豪。

ミステリのほうである「本筋」と、クワークの「家族関係」の話
が複雑に入り組んで、最終的にクワークは知ってはいけなかった、
開けてはいけなかった箱を開けてしまうのですが、まあなんとい
いますか、いやーな話です。

文体が全体的に「純文学と一般文学の中間」のようで、スコット・
トゥローの作品にもあったと記憶してるのですが、まあ向き不向き
といってしまえばあれですが個人的にどうにも読みづらく、数ペー
ジ読んでは寝落ちし、これ今月中に読み終わるか?と不安でした。

あ、でもそういえば、カズオ・イシグロの『わたしを離さないで』
と、話の内容こそ違いますが、おおまかな「方向性」は似てるよう
に感じます。
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服部真澄 『龍の契り』(再読)

2019-01-06 | 日本人作家 は
いちおうまだ松の内なんでハッピーニューイヤー。
今年も駄文にお付き合いいただけたらありがたいと
思っとりますです。

去年に投稿したのが43冊。このブログをはじめた
当初は「目指せ年間100冊」なんて思ってたもの
でしたが、まあのんびりいきましょう。

さて、再読です。
2008年12月8日に投稿していますね、この「
龍の契り」と他2冊。
ブログの編集画面にいきますとアクセスの多かった
ページ(前日分)というのがありまして、そこで割
とコンスタントに出てくるんですね。
で、そのページを見てみますと、本のあらすじすら
書いてなく、ただ「面白かった」的な。

年末、本棚の掃除アンド整理をしていましたらこの
本を手に取って「あれ、どういう内容だったっけ」
と考えること数分。思い出せません。
というわけであらためて読み返してみました。

1997年に香港の主権がイギリスから中国に返還
されたわけでありますが、じつはその裏で・・・と
いった話。

話はその15年前、ロンドンの撮影スタジオで火事
が起きて、この時ビルの3階ではファッションモデ
ルの撮影が、4階では政府関係?の撮影が行われて
いました。この火事で生き残った4階にいた、イギ
リス外務省の職員は、燃え盛る炎の中、重要な書類
を「何者か」に渡したか奪われたかしたのです。

当時のイギリス首相サッチャーは、中国との会談で、
あっさり香港の返還をオーケーします。
ですが、じつは「あっさり」ではなく、1997年
以降もイギリスの主権が続く「ある文書」があった
のですが、その文書が紛失してしまったので、条約
のとおりということになったわけですが、文書はま
だあるということが分かったのです・・・

話は変わって、イギリスに留学中の日本の外交官、
沢木のもとに、日本に戻って情報調査局に配置換え
の命が。それは、日本の金融恐慌は「ある見えざる
力」によって起こされたもので、それを探るのです
が、その(組織)の(資金源)は香港でマネーロン
ダリングされたブラックマネーということが分かり、
沢木は香港へ。

一方、アメリカの「ワシントン・ポスト」誌の編集
者、メイミ・タンは、お抱えのライター、ダナに、
「香港に取材に行ってほしい」と頼みます。その取
材というのは、ある(組織)に関することなのです
が・・・

さらに話は変わり、日本の(ハイパーソニック)社
の社長、西条のもとに、あるハリウッド女優がビジ
ネスの話を持ちかけます。そして女優と西条は中国
へ・・・

この3者の向かった先は、上海香港銀行。この銀行
を(支配)している(ある一族)も、来たる香港の
返還に頭を悩ませています。
じつはこの一族、香港がイギリスに割譲されること
になった「アヘン戦争」にも関わっているという歴
史もあるのですが、この一族にとって香港が返還さ
れることで何がしかの不都合が生じて、是が非でも
失った「文書」を見つけたいのですが・・・

この作品が出版されたのが1995年。つまり香港
がまだ返還される前ということですが、20数年後、
あの時に交わされた「一国二制度」は、守られてい
るとは言えません。
あらためて読み終わった感想としては、情報過多だ
なとは思いつつも、ものすごい肉厚なアクションエ
ンタテインメント。
メインテーマとしてはいささか中国を持ち上げすぎ
な感もありますが、まだこの当時は「眠れる獅子」
だったのでまあ仕方がないといえば仕方ありません。

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