晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

宇江佐真理 『深川恋物語』

2015-08-30 | 日本人作家 あ
この本とは違うのですが、別の本のあとがきで、北海道在住の作者に対して「江戸の時代小説を書くなら東京の浅草辺りの下町に住まないと」という手紙をもらったことがある、というのを思い出して、もう難癖や揚げ足取りを通り越した”余計なお世話”をわざわざ有料で送るという神経が理解できんなあ・・・作家さんってそういう類の手紙とかもらってるんだろうなあ、と思うと、なんだかなあと。

ちなみに、前述の手紙の送り主がどこに住んでるのか知りませんが、生まれが東京、浅草の私から見ても宇江佐真理さんは下町の情景や人情はすごく丁寧に描いてるなあと思ってるのですが。

それはさておき、深川を舞台にした、恋愛小説の短編の6編。この作品は、吉川栄治文学新人賞を受賞しています。

「下駄屋おけい」は、深川、佐賀町にある反物の大店「伊豆屋」のお嬢さん、おけいが主人公。店の向かいにある小さな下駄屋「下駄清」の下駄をすり減るまで履いています。というのも、下駄清の長男、巳之吉に恋心を抱いていたのですが、巳之吉は悪い仲間とつるむようになり、家出。そんな中、おけいに見合い話が。相手は履物問屋の倅というのですが・・・

「がたくり橋は渡らない」では、花火職人の信次は、おてるという恋人がいたのですが、病気の母のために商屋の隠居の世話になると言い残し別れることに。諦めきれない信次はおてるを刺して自分も死のうと匕首を懐に忍ばせておてるの帰りを待ちますが、帰ってきません。すると裏店の別の住人夫婦が家に入るよう促します。そこで信次はこの夫婦のなれそめを聞くのですが・・・

「凧、凧、揚がれ」では、凧作り職人の末松のところに女の子が凧作りを覗きに来ています。その子は、末松の息子の奉公先のお嬢さんとのこと。「越後屋」のお嬢さん、おゆいはさっそく末松に凧作りを習いに行くのですが・・・

「さびしい水音」では、大工の佐吉と絵を描くのが趣味の妻、お新の話。夫婦の暮らしは佐吉の稼ぎだけでなんとかやってゆけたのですが、お新の絵がだんだんと評判になり高値で売れるようになり、お新はたちまち売れっ子女流絵師に。裏店からもっと広いところへ引っ越すことに。家賃も上がり、お新の着物代も増え、佐吉は気が大きくなって後輩を連れて飲み食いに。すると佐吉の義姉から金の無心が・・・

「仙台堀」は、料理屋「紀の川」の主人が、出入りしている乾物問屋の手代、久助に、娘のおりつを紹介されます。ですが久助は奉公先の問屋のお嬢さんに気があるようで、紀の川の娘との話はどうするか迷って・・・

「狐拳」は、材木問屋「信州屋」の主人の再婚相手のおりんは元芸者。前妻とのあいだに生れた長男は吉原遊びにはまって朝帰りもたびたび。おりんは夫に相談すると、長男の遊び相手の小扇という振袖新造を身請けすればあいつの遊びも収まるというのですが・・・

ハートウォーミングな淡い恋の話や、悲しい恋の話など色とりどりで、読み終わったときに「ああ、良い本を読んだなあ」とひとりごち。





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葉室麟 『蜩ノ記』

2015-08-22 | 日本人作家 は
直木賞を受賞して映画化されて、などといういわゆる有名な作品はだいぶ時間をおいてから読むことにしていましたが、今回はやや早めに読むことに。

豊後、羽根藩の壇野庄三郎は、山の中の向山村へと歩いています。
そもそも、藩の武士がこんな村に向かっているのにはある訳が・・・

ある日のこと、ほんの些細なことがきっかけで庄三郎と友人、
水上信吾と喧嘩をはじめて、庄三郎は居合で友人の足を斬って
しまいます。
この沙汰の処分は、足が不自由になった信吾は武士を辞めて
江戸へ出て学問の道に進むことに。
庄三郎は、切腹を免れるかわりに、向山村に行くことに。

向山村には、戸田秋谷という羽根藩の元郡奉行、江戸屋敷の
中老格用人が、ある事件があって幽閉されているのですが、
七年前、江戸屋敷で側室と不義密通し、小姓を斬ったという
のです。

本来であれば家禄没収で切腹でしたが、当時の藩主のはからい
で、家譜の編纂をするように、ただし十年後に切腹をすると
命じられたのです。

その件が七年前ということは切腹は三年後。

そこで庄三郎に、秋谷の監視と、七年前の事件をどのように
家譜に残すのかを調べてこいということになったのです。

やっとのことで庄三郎は戸田秋谷が住む家に着きました。
そこでは、秋谷の妻、織江と、娘の薫、息子の郁太郎と
暮らしています。

家譜とは別に秋谷は「蜩の記」という日記をつけているのですが、
そこには天気や読んだ資料などが書かれているだけで、七年前の
側室との密通、小姓を斬った事件のことは書かれていません。

さて、庄三郎は戸田秋谷の家に住んで表向きは家譜の手伝い、
実際は秋谷の見張りとしての暮らしがはじまります。

ここで、秋谷の清廉な人柄にふれて、庄三郎はこの人があんな
事件を起こすはずがないと思いはじめます。
しかし、この村にある寺の住職は「秋谷が側室と一夜を過ごして
小姓を斬ったのは事実で切腹しなければならない」と言うのです。

かつて秋谷が郡奉行だったとき、向山村は領地で、農民は武士を
忌み嫌っていたのですが、秋谷は別で、今も彼を慕っています。
農民たちのことを親身に考える姿勢にやがて庄三郎も感化されていき
ます。

しかし、藩から来た人が村内で殺されるという事件が起こり・・・

七年前の事件の真相は何なのか。当時の正室の秘密とは・・・?

いやあ、久しぶりに心の底から「面白かったー」と思える作品でした。



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山本一力 『たまゆらに』

2015-08-19 | 日本人作家 や
山本一力の作品はずいぶん久しぶりなような気がしてまして、
当ブログで前に投稿したのを調べてみると去年の5月でした。

朋乃という若い娘は、青菜の棒手振り(天秤棒で担いで売る人)。
ある朝、仕入れに出かける途中、橋の上に落ちてた財布を拾います。

落し物を拾えば、自身番(今でいう交番みたいなもの)に届けなければ
なりませんが、取り調べが面倒なので、しかも、場合によっては盗んだ
など疑いをかけられることもあるので、「触らぬ神になんとやら」で、
真っ正直に財布を拾って届けるなんてことはあまりしません。

しかも、朋乃は仕入れに行くところでしたので、面倒ごとは避けたいところ。

ですが、自身番に届けることに。

自身番にいた目明し(岡っ引き)の五作は、財布の中身を確認すると、
中から、二十五両の包みが二つ、つまり五十両。しかも包みには
「三井両替店」の封紙が・・・

幕府の公金を扱っている三井の包みの小判なんて、普通の町人は手にすることはありません。
こうなってくると、五作は取り調べに時間をかけなければいけません。
すると、財布の中に紙が。

その紙には「日本橋室町 堀塚屋庄八郎商店」と。

それを聞いた朋乃は「ええっ!?」と驚きます。

というのも、その堀塚屋は、なんと朋乃の生家だったのです・・・

堀塚屋は日本橋の鼈甲問屋。朋乃の母、静江は堀塚屋の旦那に見初められ
結婚しますが、姑は実家が下町の魚屋である静江と息子との結婚に反対。
嫁いで産まれたのが朋乃でしたが、それから数年後、旦那と妾との間に
男の子が産まれたので、あんたは用無しとばかりに静江は朋乃を連れて
追い出され、それから母娘と長屋暮らしをしています。

そんな身の上話をする朋乃。ですが、堀塚屋の誰かが落とした(と思われる)
財布、しかも五十両もの大金を、堀塚屋が実家だという朋乃が拾うとは
偶然にしては話ができすぎてるなと五作は思い、それなら、堀塚屋では
誰かが財布を落として、お金を無くして大変ということになってるはずで、
堀塚屋に行ってみようということになるのですが・・・

早朝に大金入りの財布を拾うと見て、これは「芝浜」じゃないかと思いました。
もっとも朋乃は働き者ですけどね。しかも、夢ではありません(笑)
読み終わって、なんだか落語を聞いたような気持ちに。

朋乃の青菜の仕入れ先に、「研ぎ師太吉」にも登場した「青菜の泰蔵」が登場します。
相変わらずいい味出してます。
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平岩弓枝 『御宿かわせみ23 源太郎の初恋』

2015-08-12 | 日本人作家 は
この時期、いつも天気予報で「暦の上では秋ですが・・・」というフレーズをきくたびに「そんな気休めはいいんだよ」と軽くイラッとしてたものですが立秋から数日、千葉県では秋の気配とまではいかないですが、ちょっと涼しくなりました。

これから本も読みやすくなりますね。読書の秋。

さて『御宿かわせみ』ですが、前回ブログに投稿したのが5月で、15巻。東吾が次男の冷や飯食いから幕府の役職に就いて、さらに「かわせみ」の女将で東吾の恋人るいとめでたく結婚した、という巻でした。

そこから飛ばして23巻・・・

「虹のおもかげ」では、東吾が師範代をつとめていた道場へ行こうとすると、少年がセミ捕りをしています。それを東吾は何気なく手伝います。それから、どうにもあの少年のことが気になって仕方ありません。そんなある日、知人の葬儀に出かけると、故人の隠し子騒動があり、兄は「お前も気を付けろよ」と冗談でからかうのですが東吾は妙に胸騒ぎが・・・

「笹舟流し」では、岡っ引きの蕎麦屋の長助が、築地本願寺である女性を見つけ、「かわせみ」に連れてきます。その女性は記憶喪失らしく、江戸に来た用事を忘れてしまっています。川に面した部屋へ案内すると、その女性は突然怖がり・・・
この話の中で、るいが妊娠していることがわかります。

「迷子の鶏」では、「かわせみ」の庭に、鶏がいます。どこかから飛んできたのか分かりませんが、女中のお吉はその鶏を飼うことに。そんな中、江戸の郊外では寺の釣鐘の盗難が相次いでおり・・・

「月夜の雁」では、東吾が兄嫁の使いに同行します。行先は唐墨を扱う店なのですが、後日、そこの主人が毒入りの鯉こくを食べて死ぬという事件が。そういえば東吾が行ったときに女中がお茶を運んできたときにこぼしたのですが、それが東吾にはわざとこぼしたように見えて・・・

「狸穴坂の医者」では、六本木、飯倉、狸穴にかけて大火になり、麻布にある東吾が通っていた道場が心配で駆けつけると道場も道場に住む人たちもびじでした。そこで、狸穴坂に住む火傷の名医という医者を見ます。十兵衛という医者は、五十を過ぎていて、女房は三十も年下というのですが・・・

「冬の海」では、るいの妊娠中の運動ということで、お吉と近所を散歩に。すると稲荷橋という橋の上で女性が海を眺めています。別の日に散歩に行くと、また同じ女性が橋の上に。すると「財布を落としましたよ」と。それはお吉の財布で、橋の上にいた女性が拾ってくれてたのですが、女性が海を眺め続けている理由とは・・・

「源太郎の初恋」では、畝源三郎の長男、源太郎が、新年のあいさつに医師、宗太郎の家に。娘の花世と子供同士で遊びますが、花世は歯痛で苦しんでいて、おやつで出されたカステラも食べようとしません。後日、源太郎は歯痛に効くという神社の話を聞いて、花世のことが気になって本所に見勝っている途中、父の宗太郎に歯を抜かれるのが怖くて逃げだしてきた花世に遭遇、ふたりは件の神社に行くのですが・・・

「立春大吉」では、るいが出産します。産まれたのは女の子で、これで東吾もお父さん。兄に名付け親を頼みます。
るいの出産という一大イベントなのですが、ここでは別の話にスポットが。「かわせみ」に、長野から来た女隠居とそのお付き女中の計8人が泊っているのですが、その中のひとりが、「深川の蕎麦屋の長助さんはお達者でしょうか」と・・・

結婚のときもそうでしたが、今回も「かわせみ」ファンからすれば大イベントも案外サラリと書いてますね。まあまだまだ続きは長いのでこれから、ということで。





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東川篤哉 『館島』

2015-08-07 | 日本人作家 は
暑い。暑過ぎます。寝しなに本を読んでいるわけですが、ベッドサイドの
灯りが熱いから点けたくないので、なかなか読み進めることができません。

そんな中、東川篤哉の小説は、ライトタッチで笑えて、ササーと読めるので、
夏の夜の読書には向いているのかな、と。

十文字和臣という建築家であり工務店の社長が、瀬戸内海の小島にある別荘で
謎の死をとげます。

この別荘、形状がいささか変わっていて、四階建ての六角形になっていて、
真ん中に螺旋階段で、各階は部屋が六つ、つまり六角形の一辺が各部屋に
面しています。
屋上にはドーム型の展望室があって実質五階建てではあります。

さて、その十文字和臣ですが、螺旋階段の下で転落死していました。が、
螺旋階段で転落というのもおかしな話で、しかも階段には血の跡も無く、
当時、捜査にあたった県警の刑事は、どこか別の場所から転落し、そして
死体を階段の下に運んだのではないか、と他殺の線でも捜査していましたが、
そのような高い場所は島内には無く、捜査は行き詰まり。

この事件は一月に起き、そして八月。岡山県警捜査一課の刑事、相馬は
この別荘に向かっています。というのも相馬は死んだ和臣の妻、康子の遠縁で、
康子から招待されます。

途中、電車の中で、事件当時に現場に居合わせた吉岡という医師と会い、二人は
別荘のある島行きのフェリーに乗ります。

そのフェリーに、県議会議員、野々村淑恵も乗っていることに吉岡は気づきます。
その傍らには、奈々江という17歳の娘もいます。

さらに、鷲尾という十文字工務店の副社長、そして康子夫人の知り合いである沙樹
という女性私立探偵、そしてジャーナリストの栗山。

別荘には康子と3人の息子(信一郎、正夫、三郎)、管理人の青柳、そして招かれた
7人(相馬、吉岡医師、野々村の母と娘、鷲尾、沙樹、栗山)が宿泊することに。

そこで、新たな殺人事件が・・・

相馬は県警を呼ぼうとしますが、台風が接近してきて、フェリーは欠航。上司からは
「とにかく現場の保存と混乱を避けるように」とのこと。
しかし、そうこうしているうちに第2の殺人が・・・

はたして、十文字和臣と新たに起きた連続殺人の犯人は同一人物なのか。その目的は。
そして、この別荘の奇妙な形状は何を意味しているのか。

ずいぶんと大掛かりなトリックですが、それが分かったときには「おおー」となりました。






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宮部みゆき 『お文の影』

2015-08-04 | 日本人作家 ま
年をとったせいなのか、最近テレビドラマをまったく見なくなりました。
もし面白くなかったときに「時間を返せ」とぶつけるあての無い怒りの
ようなものが込み上げてきたりするのです。
まあ、タダで見させてもらってその言い分はなんだ、と思うでしょうが、
なんといいますか、有意義な時間を過ごしたいんですね。

ラッキーなことに、いまだ小説を読んで「時間を返せ」と思ったことは
ありません。この『お文の影』は、正直、読後スッキリはしませんでしたが、
無駄な時間だったとは思わなかったです。

短編で6編あり、江戸時代の怪談話です。

江戸でコロリ(コレラ)が発生し、材木問屋「田屋」の主人、重蔵が
私財で患者の身内を助ける「お救い小屋」を建てます。そこで家族を
コロリで失くしたおつぎという女の子がお救い小屋の手伝いをしている
うちに田屋の女中となります。ある日、重蔵に、ある掛け軸を見せて
もらうのですが、おつぎには不気味なお坊さんが見えて・・・
という「坊主の壷」。

隠居の佐次郎のもと、長屋の子供が集まり、そこでみんなで影踏み遊び
をしていたところ吉三という大工の息子がどうも様子がおかしいので、
佐次郎が聞いてみると、自分は怖がりじゃないんだが何かが怖い、という
のです。影踏みをしていると、人数より”一人分多い”影がある、しかも
それは女の子の影のようで・・・という表題「お文の影」。

醤油問屋「近江屋」で朝ごはんの最中、突然主人が「わっ」と大声を上げ
ます。そして「政吉兄さんが死んだ。”あれ”が来る」と言うや、男どもに
蔵を空けさせ、女子供は家から出るなと命令します。そこに不気味な音と
大きな揺れが起きます。主人の長女、お美代は、近所の男の子から、今朝、
近江屋に飛んで来た”大きな黒いもの”は何だと聞かれますが・・・という
「博打眼」。

手習所(今でいう学習塾)の先生、青野利一郎は、紙問屋「大之字屋」の番頭
からある相談をされます。大之字屋の息子、信太郎は青野の習子(生徒)で、
なんと番頭は、青野に信一郎を「斬ってくれ」と頼み・・・という「討債鬼」。

小間物商「伊勢屋」の若夫婦、お志津と婿の佐一郎は、箱根へ旅行に出かけ、
その帰り、東海道の戸塚で一泊します。宿の人から、相部屋をお願いできないか
と頼まれます。そこへ松という老女が入ってきます。その夜、松が布団の中で
泣いているのを佐一郎は見て、その涙のわけを聞くのですが・・・という
「ばんば憑き」。

傘貼りの内職をしている柳井源五郎右衛門に、娘の加奈が「父さまは、化け猫は
お嫌いですが」といきなりたずねてきます。
どういうことかと聞けば、この父娘の住む長屋にいる猫のタマが、化け猫だと
いうのです。ある夜、女が訪ねて来ます。「加奈ちゃんにお頼みしていたんです
けど」というではありませんか。さて、そのタマのお願いとは・・・という
「野槌の墓」。

怪談話というくらいですから、幽霊的なものが出てきて、幽霊になった”いきさつ”
も描かれているのですが、つまりこの世に強い恨みや悔いがあって成仏できない
わけで、これが悲しい。切ない。
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小川洋子 『ミーナの行進』

2015-08-02 | 日本人作家 あ
小川洋子の作品を読むのはこれで3作目。まだ本を読む習慣の無かった十年くらい前、
もらった図書券があったので「本でも読んでみっかな・・・」となぜかそのとき思いついて
本屋に行って買ったのが「博士の愛した数式」でした。
そこから読書が趣味になったのですから(その前にも年に一冊は読んでいたんですけど)
個人的に感謝してます。

この本を買う前から、タイトルは妙に気になってたんですよね。

「私」こと朋子は、まだ小さいときに父と死別し、母が東京に洋裁を習いにいくことになり、
住んでいた岡山から芦屋に住む伯母の家に預けられることに。

はじめて新幹線に乗って、新神戸で降りると、伯父が迎えに来ていました。
ハンサムで、紳士的で、外国車の乗り心地も良く、坂を登っていって着いたのは、
大きなお屋敷でした。

伯父さんのお父さんがドイツへ留学し、そこでローザさんと結婚し帰国。
清涼飲料水「フレッシー」が売れて、芦屋に豪邸を建てたのでした。

ローザさん、今はローザおばあさんと伯父さん、伯母さん、そして朋子とは従妹にあたる
ミーナ、お手伝いの米田さん(家事全般)と小林さん(庭師)が住んでいます。
あと、コビトカバのポチ子もいます。伯父さんの10歳の誕生日プレゼントといいますから、
けっこうな高齢カバになります。かつてはこの屋敷の庭はもっとたくさんの動物がいて、
「フレッシー動物園」として近所の子供たちに開放していたそうです。

ミーナは喘息持ちで、体は細く、発作が起こると家じゅうの人が大騒ぎになりますが、
逆にいつ発作が起きてもいいように準備は怠っていません。
そんなこんなで朋子は中学に、ミーナは小学6年生に。学校に行こうとすると、玄関のところに
小林さんがポチ子を首輪につないで、ミーナはポチ子の背中に乗って、学校へ行くのです・・・

ミーナがひそかに集めているマッチ箱。それをくれるのは、フレッシーの配達の青年。
どうやらミーナはこの青年に恋心を抱いてるのか?

ちょうど時代はミュンヘンオリンピック。朋子とミーナは男子バレーボールに夢中。
テレビを見ていると、武装組織がイスラエル選手団を人質にしているとの事件が起こり、
それを見ていたローザおばあさんが・・・
なぜローザおばあさんは、家族との写真をたくさん持ってるのに、ある年を境に一枚も
無いのか・・・

朋子は芦屋での一年のあいだに、いろいろな経験をすることに。恋だったり、ちょっとした
冒険だったり。

ここ最近、時代小説にハマっていて、こういった現代のほっこり系な作品は久しぶりだったので
なんだか読んでて嬉しかったです。いや別に時代小説がほっこりしないというわけじゃない
んですけどね。



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