晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

ディーン・R・クーンツ 『ファンハウス』

2011-05-29 | 海外作家 カ
この作品は、クーンツが「オーウェン・ウェスト」名義
で書いた、映画のノベライズ版なんだそうです。
というか、そもそも映画の「ファンハウス」というのも
知らないのですが、あとがき解説によると、名作ホラー
とか。

しかし、映画での話は、この小説では第3部のところだけ
で、前の1~2部は、クーンツの創作となっているそうで
す。

カーニバル「移動遊園地」の中にある“ファンハウス”の
オーナー、コンラッドと妻エレンの間に子どもが産まれる
のですが、その子はまるで怪物の様相で、日頃エレンは夫
から暴力を受けていて、怒りが我が子に向けられ、ある夜、
エレンは子どもを殺してしまいます。
怒り狂うコンラッドですが、エレンを追い出すだけにとどめ
るのです。

それから年月が経ち、エレンは過去を隠したまま、おとなしい
男と再婚し、姉エイミー、弟ジョーイの2人の母となります。
エレンは母親からキリスト教の教えを強迫的に受けていて、そ
れに嫌気がさして家出してカーニバルの一員となりコンラッド
と結婚したという経緯があり、子どもたちには同じ過ちをくり
返してほしくないと教育熱心になるのですが、しかしエレンの
子どもに対する思いは自分がかつて受けた苦しみと同じものを
与えていたのです。

そんな中、エレンの住む町に、カーニバルがやって来るのです。
コンラッドは、エレンが再婚していたとして、10代の子ども
がいるであろうと推測し、移動中にそれらしい少年や少女を探
すのですが、なかなか見つかりません。

しかし、コンラッドは、かつての妻、我が子を殺した憎い女に
面影のある少年(ジョーイ)を見つけます。一方、エイミーは
高校の友達たちとカーニバルへ行くのですが・・・

映画には無かった“伏線”を見事に付け足して、さらに恐怖を
煽りまくります。
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山本一力 『あかね空』

2011-05-24 | 日本人作家 や
山本一力の作品を読むのはこれがはじめてで、たまにNHK
の歴史関連、江戸風俗の番組でゲスト出演されているのを見
かけることが多く、読んでみようかなあと興味はあったので
すが、悪いクセで先延ばし先延ばし。

というわけで、第126回直木賞受賞作品『あかね空』を
読んでみました。

舞台は江戸、深川。時代は宝暦十二(1762)年八月から
はじまります。
京都で豆腐作りの修行をして、江戸へ出てきた永吉は、紹介
により、深川の長屋に住むことに。
それまでの江戸で一般に食べられていた豆腐は、現代でいう
ところの木綿豆腐をさらに固くしたような、「ゴワッと」した
感じだったそうで、一方、永吉の作る豆腐は絹ごしでフンワリ
とした食感。
しかも、江戸で多く流通している大豆では永吉の求める味は出
せず、商屋に頼み込んで、わざわざ上方から取り寄せてもらう
ことに。
同じ長屋にすむ桶職人のひとり娘の“おふみ”は、そんな永吉を
応援します。

なんとかかんとか「京や」という店名で開店。初日こそご近所が
祝いも兼ねて買ってくれて、売り上げ目標の分は売り切れます。
ところが、次の日、その次の日と、豆腐は売れ残ります。

味には絶対の自信がある永吉は、今さら江戸スタイルである、固くて
ゴワゴワした豆腐を作る気はなく、心配したおふみは、方々駆けまわ
って、地元にある名刹、永代寺に売れ残った豆腐を喜捨させてもらう
許しを得ることに。

あまり人間が上等でない平田屋の主人、庄六は、そんな京から来た
男の豆腐が評判になることを嫌います。

やがて、なんとか売り上げもそこそこ順調になってきて、永吉とおふみ
は夫婦になることに。

・・・と、ここから「京や」はさらに売り上げも伸び、二男一女ももう
けて幸せ、という永吉一家の話となるところが、話は永吉おふみの3人
の子ども達へと引き継がれる二代記となってゆくのです。

というのも、軽いネタバレですが、永吉はアッサリと、コロリと死んで
しまいます。さらに話は戻りますが、おふみの両親も、これまたアッサ
リと相次いでこの世を去ります。
まあ、だからといってアッサリ死んでその後の展開には関わってこない
なんてことはありませんけど。

永吉一家はもちろんのこと、他の登場人物の描き方も細かいところまで
かといって目立たせ過ぎずにバランス配分が素晴らしいですね。
物語全体として、この当時の実際に起きた事件などが市井に生きる人々
とうまく織り込まれています。

なぜ今まで読まずにいたのかと反省させられてしまうくらいに面白い
作品です。読み終わったあとに、美味しい豆腐が食べたくなること
請け合いです。
コメント (4)
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山崎豊子 『大地の子』

2011-05-21 | 日本人作家 や
山崎豊子の作品はこれで2作目。はじめて読んだ「沈まぬ太陽」
には衝撃を受けまして、読後、いろいと考えさせられて、しまい
には頭がぐわんぐわんしてしまったのですが、この『大地の子』
もそうなること請け合い。
だいぶ前にNHKでドラマ化されましたね。小劇団の役者だった
上川隆也がこれで映像デビューしたんじゃなかったでしたっけ。

話は、第2次大戦の満州からはじまります。大日本帝国による
傀儡政権により誕生した満州国、日本から数多くの人が満州に
渡ります。
その中には、当時の政府の政策で、上役に頼み込まれて、仕方
なしに渡ったという人も少なくなかったようで、特に地方の
農家では「口減らし」の一環も。

「まさにパラダイス」といわんばかりの宣伝文句に誘われて
入植したものの、世界史の基礎知識でご存知のとおり、日本は
戦争に敗れます。終戦の1週間前、ソ連軍が満州に侵攻。満州
に駐留する関東軍はソ連の侵攻をあらかじめ知っていたにも
関わらず、国民を置き去りにして逃亡、しかも、追いつかれない
ように、逃げる先々で線路や橋を破壊するといった“手の込み
よう”。丸腰の、ほとんどが農業従事者は、いわば人間の盾に
させられます。

捕まれば射殺。殺されなくとも強制収容所行き。松本一家も
そんな中にいて、長男の勝男と妹のあつ子は生き延びますが、
ほんの子どもが日本まで帰れるはずもなく、こうやって、戦争
の悲劇「中国残留孤児」が生まれるのです。

人買いによって妹と離された勝男は、貧農に買われて、家畜
同然の働きを強いられます。勝男はそこから逃げて、ある教師
に助けられ、そこから“陸一心”という名前で育てられていく
のです。

「小日本鬼子」と苛められますが、中には一心の人間性を認めて
くれる中国人もいて、彼は育ての親である陸徳志、淑琴の夫婦の
おかげで大学まで行かせてもらうのです。

卒業後、工場に就職した一心。しかし、ふたたび彼に不幸が訪れ
るのです。時は文化大革命の真っ只中。一心はいわれのない罪で
収容所送りとなってしまうのです・・・

出自を恨むときもあれば、収容所で出会った日本育ちの華僑に
「自分の故郷の言葉を知らないのは恥」と言われて、自分の心
の中の“日本人”をつなぎとめます。
しかし、そのせいで辛酸をなめ続けられて生きてきたのもまた
事実であり、なんとかして一人前の中国人だと認めてもらいたい
とも思うのです。

松本勝男こと陸一心は、生き別れた肉親と会える日は来るのか。
彼は生きて忘却の祖国の土を踏めるのか。

満州国からの引揚げ者たち有志が、残留孤児の家族を手弁当で
探し回ります。本来であれば政府の仕事なのですが、時の政府は
棄民政策の責任を取ろうとしません。
「守るべき国民を人間の盾にしてまっ先に逃げた軍人には恩給が出てる」
と引揚げ者が憤る一文に胸が締め付けられます。

そして、表題である『大地の子」の意味が重く、深いですね。
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スティーヴン・キング 『ミザリー』

2011-05-16 | 海外作家 カ
20年ほど前でしょうか、『ミザリー』の映画が公開されて、
記憶がたしかならば、銀座のみゆき座だったと思うのですが、
観に行って、当時の印象は、とにかく怖かった、というだけ。
後日、アニー役を演じたキャシー・ベイツがアカデミー賞の
主演女優賞を受賞したと何かの雑誌で知って、びっくり。
こりゃ原作を読まないと、と思い、思ったものの、あれから
20年が過ぎてしまい、ようやく読みました。

あとがき解説によると、この作品を書くきっかけとなった
出来事があったそうで、1978年に、自分はあなたの
ナンバーワンのファンだという“ある男”が写真とサイン
をせがんできて、その男の名前を写真に書き込んだのです
が、キングの書いた“ある男”の名前とは、その2年後に
ジョン・レノンを射殺した「マーク・チャップマン」だった
のです。

ポール・シェルダンという“売れっ子作家”が、ある雪山で
車を運転しているとスリップし、谷に転落。

それを助けたのは、近くにひとりで住むアニーという女性で
した。意識が戻ったポールはアニーの家の狭い客間で寝かさ
れていて、両足は激痛。
アニーはポールに「あなたのナンバーワンの読者」と言い、
鎮痛剤を飲ませてもらいます。
元看護婦と聞いて、ポールは安心するのですが、すぐに、この
アニーという女性は(まともじゃない)と気付くのです・・・

アニーは、ポールの作品「ミザリー」の大ファンで、主人公の
女性が死んでしまったことに納得がいかず、続編を書いてほしい
とお願いします。
ポールはそれを拒むと、アニーはだんだんと豹変し凶暴に・・・

まったく動けず、逆らうと酷い目にあうので、しぶしぶ「ミザリー」
の続編、つまり主人公は実は“死んでいなかった”という物語
に変更する、という原稿を書くことに。

このままでは危ないと感じたポールはアニーの外出しているスキに
逃げようと試みますが、家じゅうの窓、ドアは鍵がしまっていて、
ガラスを突き破って外に出ようにも車椅子なので、そこから這って
道路まで辿りつけたとして、山奥の一本道で車が通るのか、そして
現場をアニーに見られたら・・・

映画は今でも克明に覚えていて、シーンに若干の違いがあるのです
が、原作を読むと、ああ、こんなの映像化するのは残酷すぎて無理
だわ、と。もっとも映画のほうもじゅうぶん「残酷」でしたけど。

基本、舞台設定は、アニーの家の中、それもポールの“監禁”され
ている部屋が中心で描かれているのですが、変わり映えのしない状況
下でこれでもかと文章に引きつけられるのは凄いですね。

そして、映画でアニー役を演じたキャシー・ベイツ。原作を読んで
いると20年前に観た映画の記憶がふつふつとよみがえり、彼女の
演技がいかに素晴らしかったかと、長い時を経てようやく分かりま
した。憑依ですね。

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恩田陸 『ユージニア』

2011-05-13 | 日本人作家 あ
自分の中で勝手に「困ったときの恩田陸」という、まあ一見して
意味不明なキーワードがありまして、たとえば本屋さんに行って、
これといって読みたい作品が無かったりして、でも何かしら買って
帰りたいときに、たいてい恩田陸の作品を手にします。

あ、別に否定しているわけではありません。

外れのない、いわゆる「買って損はない」作家というのは稀有でし
て、ズバ抜けて面白いほどハマってはいませんが、気がつくと書棚
には恩田陸作品がけっこう並んでるんですね。

前に読んだ「QアンドA」という作品に似ていて、インタビュー
形式になっています。さらに例えるなら、有吉佐和子の「悪女に
ついて」とトルーマン・カポーティの「冷血」をたして2で割った
とでもいいましょうか。

文中では北陸の古都と紹介されている(石川の金沢市でしょうけど)
街で、代々住民に親しまれまた尊敬されてきたお医者さんの家での
パーティーの日、何者かが運んだ酒やジュースの中に毒物が仕込ん
であり、出席者のほとんどが死亡。生き残ったのは、お手伝いの女性
と、この医院の目が不自由なお嬢さんだけ。

この事件を取材し、のちに本にしたのが、事件当時、近所に住んで
いた、真喜子という、当時大学生の女性でした。

この「忘れられた祝祭」という本は、発売当時センセーショナルを
巻き起こしましたが、真喜子は表に出ることはせず、彼女の文才を
高く評価した出版社の人間も期待していたのですが、これきりで本
は2度と出さないというのです。

真喜子、彼女の大学時代の後輩で、「忘れられた祝祭」の取材のため
助手として同行した男性、医院のお手伝いの女性、真喜子の兄弟、こ
の事件当時、捜査に当たった刑事、病院関係者、などなどの“証言”
をもとに物語は構成されています。

誰が、どういった理由で、こんな陰惨極まる事件を起こしたのか。
当時の捜査で、犯人と思しき男は突き止めるのですが、真犯人は
別にいるのではないか・・・当時捜査に当たっていた刑事は、ドラマ
や映画のような「刑事の勘」なるものをあまり信用してはいなかった
のですが、一目みて「こいつが犯人だ」と分かったのですが・・・

ちゃんと時代を追ってインタビューが構成されているわけではなく、
時系列という意味ではバラバラだなあと感じるのですが、でもその
バラバラ感が“いい味”になってるんですね。

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アルトゥーロ・ペレス・レベルテ 『ナインスゲート』

2011-05-11 | 海外作家 ラ・ワ
この作品は、もともと「呪いのデュマクラブ」(日本語訳タイトル)
だったのですが、映画化にともない、タイトルも映画と同じになった
そうです。

ところで「デュマ」とは、説明も不要ですが「三銃士」の原作者。
まあ、オマージュとまではいかくとも、このミステリーに欠かす
ことのできない要素。
だからといって、あらかじめ読んでないとチンプンカンプンでもな
く、きちんと(ざっくりとですが)紹介されています。

スペイン人のレア本を探すという職業のコルソは、大金持ちのレア
本収集家から、中世イタリアで出版されたという悪魔関係の書「
九つの扉」が、その収集家が持っているのが本物かどうか、また
贋物であれば、本物を探してきてほしいと依頼されます。

さらに、友人から、“自殺”した出版社の社長が持っていた、アレ
クサンドル・デュマの「三銃士」の一部原稿も、本物かどうかの
調査も頼まれます。

経営もこれといって拙くはなかった社長の死は不審ではあるもの、
ひょっとして、原稿欲しさに自殺に見せかけて・・・などという
おだやかでない事がなければいいのですが、その原稿を持ち歩く
コルソは明らかに何者かに尾行されています。

まず「九つの書」は、今までポルトガルの同じく収集家、そして
フランスの財団、コルソの依頼された計3冊があることは確認さ
れており、しかし詳しく調べていくと、そのうち1冊だけが本物
ということで、まずはポルトガルに向かいます。

道中の電車で、ある女性と出会うのですが、何やら意味深な、
それでいて「あなたとは関係なくてよ」という雰囲気もありつつ、
その場は別れるのですが、コルソがポルトガルの収集家を訪ねた
後、コルソの泊まっている宿に、その女性が「収集家の命が危険
よ」と教えに来るのです・・・

急いで駆けつけると、部屋の中の暖炉には、燃えかけた「九つの扉」
の本物と思われる3冊中1冊があり・・・

ここから、フランスへと渡るのですが、女性も同行します。が、
聞いても身分を明かそうとしません。そしてコルソを尾行してくる
謎の男もフランスへ。黒いマントで顔に傷のあるヒゲの男は、まる
で「三銃士」に出てくるリシュリューそのもの。
はたしてこの男は、呪われた「九つの書」に関係あるのか、それとも
「三銃士」の原稿を奪おうとしているのか。

「三銃士」はあらすじというか基礎知識程度しか知らなかったのですが
この『ナインスゲート』を読めば、たまに話が並行したりして、なんだ
か2冊読んだ気分。
なのですが、本文で重要なのは悪魔書のほうで、そこら辺が詰め込みすぎ
な感があります。


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海堂尊 『ジーン・ワルツ』

2011-05-08 | 日本人作家 か
ただ今、某公共放送でやってるドラマ「マドンナ・ヴェルデ」
の原作が海堂尊と新聞で知って、さっそく見てみるも、いつも
のお馴染みの桜宮も東城大も、ましてや田口も白鳥も出てこな
いので、ああ、「チーム・バチスタの栄光」からのシリーズの
ほうじゃないのね、と思い、そういえばそっちのシリーズ以外
の作品もけっこう出てるのにあまり読んでないや、ということ
で、さっそく本屋へ出かけて購入。

田口、白鳥コンビの流れは直接くんでないものの、この『ジーン・
ワルツ』に出てくる曽根崎理恵という女性医師、帝華大学医学部
の講師は桜宮出身で東城大卒ということで、ちょびっとだけ関わり
があります。

帝華大で発生学、産婦人科の学問に付随するもので、人間が赤ん坊
として生まれるまでの変化を学ぶもので、この講師を任されること
になって数年目。
厚生労働省のお達しのせいで地域医療の崩壊が叫ばれる現在、理恵も
黙ってはいられず、中央に意見書を出そうにも、上司にあたる清川
准教授や産婦人科学の権威、屋敷教授にとっては中央に睨まれるこ
とは避けたく、マークされているのです。

そもそも、理恵の怒りの発端は、理恵が非常勤で通っている地域の
産婦人科病院「マリアクリニック」の院長の息子が、某市で出産の
手術に失敗、なんと息子は業務上過失致死で逮捕されてしまうので
す。

そんなマリアクリニックなのですが、かつては清川も理恵と交代で
非常勤で通っていて、しかし理恵が今もそこで勤務しているのは、
瀬絵核には違反なのですが、担当している不妊治療患者と妊婦を
最後まで担当して、その後マリアクリニックは閉院というはこびと
なるわけで、クリニック院長の三枝茉莉亜は息子逮捕ショックから
か、ここ数年は具合が悪く往診はできずに安静状態ということで、
それを知る清川も止めることはできません。

が、しかし、理恵はこのクリニックに通い続ける、他の理由があった
のです・・・

不妊治療、代理母出産、地域医療崩壊、といった、現役医師でもある
作者の視点は鋭く辛らつで、しかし重々しく描かずに一般素人読者に
も分かり易く、読み終わったあとには国の対応に怒りを覚えるくらい
なのですが、作者の文中で出している代替案も、国の政策よりは数百
数千倍はマトモではあるものの、それはちょっと無理が・・・といった
印象。

国も、産めよ増やせよというのなら、その前に無事に産める環境すら
整ってないという現状を知るべきですね。
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エド・マクベイン 『警官嫌い』

2011-05-03 | 海外作家 マ
世間でいうところの「翻訳ミステリ好き」とはどの程度
なのかわかりませんが、そりゃあもう上には上がいるの
でしょうけど、まあそういった方たちには敵いませんが、
翻訳ミステリのなかでも名作といわれるものを、たまに
読んでいこうかと。

というわけで、警察小説というジャンルでいいのでしょう
か、他の本のあとがき解説などで「エド・マクベイン」と
いう名前は見たことがあって、先日、某古本屋の書籍コー
ナーにある、段ボールやケースに入って「どれでも1冊
50円、3冊で100円」という、まあ何と言ったらいい
のか、最終処分に回されてしまったカワイソウな本チャン
達、しかし、その中にはまさに文字通り「掘り出し物」が
あったりするわけでして、この『警官嫌い』も、ケースの
下のほうにありました。

それまでの「ミステリ」の定番といえば、ザ・探偵といった
人や、ザ・刑事といった人がバシバシ難事件を解決してゆく
といったものだったのでしょうが、この「警察小説」という
のは、まあいっぱしの評論家気取っていわせてもらえば、
この小説に登場する架空のアイソラという街、そしてその中
にある87分署そのものが主役、とでもいいましょうか。

とはいうものの、スティーブ・キャレラという87分署の刑事
が物語の主軸で、『警官嫌い』の後、このキャレラとその近辺
の人たちを中心にシリーズ展開されています。

まず、のっけから、キャレラの同僚が何者かに撃ち殺されます。
連絡を受けて現場に急行するキャレラと87分署の刑事。
はじめから刑事とわかっての殺害なのか、それとも、どこかの
イカレたやつが銃を撃ち、たまたまそれが刑事だったのか、
87分署の刑事たちはあらゆる方面から捜査をはじめます。

が、またもや87分署の刑事が、しかも同じ銃によって殺害
されてしまったのです・・・

この殺されたふたりは、かつてパートナーを組んでいて、この
ふたりによって逮捕された逆恨みの犯行かと思いきや、今度は
別の3人目の犠牲者が出てしまっては、これはただの偶然が続
いたわけではなく・・・

しかし、シリーズ最初の作品でありながら、キャレラの近辺の登場
人物たちが次々と死んでいってしまい、おいおい大丈夫か?なん
ていらぬ心配もしてしまったり。
近年の“進化系ミステリ”に比べたら正直タネもシカケもあっさり
なのは仕方ないですが、それでもこういった昔の良作にはどんどん
触れていきたいですね。
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