晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

リチャード・ノース・パタースン 『ダーク・レディ』

2009-10-25 | 海外作家 ハ
リチャード・ノース・パタースンと同じく、法廷サスペンス小説で
デビューし、その後も同ジャンルで活躍する作家といえば、まず
ジョン・グリシャムが思い浮かぶのですが、最近は法廷を飛び出し、
CIAだのFBIだのが出てきたり、あるいは国際情勢に絡んでき
たりと、そのフィールドが広くなり、まあそれはそれで作者もマン
ネリを打破したいのか、別な毛色の作品も楽しめるということで、
賛否あるとは思いますが、私としては歓迎。

『ダーク・レディ』も、それまではデビュー作の登場人物のスピン
オフ的な続編を読んできたのですが、ここにきてがらっと作風が変
わり、つまりそれまでの手に汗握る法廷劇から、こちらはまったく
法廷シーンが出てきません。

舞台はアメリカ中西部オハイオ州の架空の都市スティールトン。
検察局の殺人課課長のステラ・マーズのもとに事件の報告があり、
現場にかけつけると、被害者は目下スティールトンで着工中の、
新球場建設の責任者トミー。そのかたわらには、ヘロイン中毒と
おぼしき黒人娼婦がやはり息絶えています。

おりしも、スティールトンでは市長選挙のただ中にあり、現職で
新球場建設推進のクラジェク、対するはステラの上司で郡検事の
アーサー・ブライト。ブライトはこの新球場建設は無駄と糾弾、
ブライトが市長に当選すれば、郡検事の椅子が空くことになり、
ステラにとっては出世のチャンスだったのです。
そんな中での新球場関係者の死亡事件の担当となったステラは、
事件解明に動きますが、新たな事件が舞い込んできます。
それは、かつてのステラの恋人であり、弁護士のジャック・ノヴァク。
ジャックは自分の部屋で、変死体となって発見されます。
ジャックはブライトと交流があり、またブライトに献金をしてお
り、この連続した変死体の事件は当然市長選挙に絡んだものと
メディアは騒ぎます。

トミーの死因は急性ヘロイン中毒、ジャックは革ベルトによる
首吊り。しかし両者とも自殺の要因が見当たらず、捜査は難航。
しかしステラには、ジャックに関する秘密があり、それが露見
してしまうと、自分の郡検事出世も危うくなり・・・

トミーとジャックは自殺か殺されたのか、殺人とすればそれは
なぜなのか。そしてステラの知るジャックの秘密とは・・・

警察と検察の捜査、政治の腐敗、地方都市の栄枯盛衰などと
いったさまざまなテーマが複雑に交錯し、そしてパタースン
の小説にはある意味おなじみといってもいい、親子の愛憎も
絡んできて、重厚ながらも読みやすい。

作者も明かしているのですが、スティールトンという架空都市
は、同じオハイオ州のクリーブランドをモデルにしています。
確かに、地方都市でかつては鉄鋼で栄えてその後衰退、街中には
マフィアや麻薬、売春、そして殺人がはびこり、誇りであった
インディアンズは身売りの危機。
しかし、見事にクリーブランドは立ち直り、インディアンズは
メジャー屈指の強豪チームになり、400試合以上も連続して
ホームゲームが満員になるほどの復活を遂げます。

都市の再生は一筋縄ではいかないことは日本でもそうですが、
変革の意思が一部の政治家や企業でとどまると腐敗となります。
誰の幸せの為に政治があるのか、地方の疲弊や悲鳴はそんな
シンプルな問題を解くことにこそ前進の第一歩があるのでは。


コメント
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