晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

東川篤哉 『完全犯罪に猫は何匹必要か?』

2023-01-28 | 日本人作家 は

移住促進や移住体験のテレビ番組がけっこう好きでたまに見たりしますが、まだ先の話ではありますが、予定どおりにいけば2年後に学校を卒業するので、ちょうどいい機会なので移住を考えています。といって別に今住んでるところが嫌なわけではありません。いやむしろ快適で過ごしやすいです。

10年ほど前に人生が激変する出来事がありまして、それまでの人生がエグザイル的にいうと第1章とするならこの10年は第2章、次の10年に第3章ということで、いっそのこと環境をガラッと変えてみようかと。さすがに海外移住は現実的ではないので国内で。近くに温泉のあるところがいいなあ。

ハービバノンノン。

さて、東川篤哉さん。この作品は「烏賊川市シリーズ」と呼ばれるもので、架空の都市(千葉の東、神奈川の西)での市警察の警部と私立探偵が謎解きに奔走するというふうになってます。この作品はシリーズ3作目。

10年前、飲食店経営の豪徳寺豊蔵氏の自宅ビニールハウス内で、医師の矢島洋一郎、48歳が殺されているのを発見されます。しかしこの事件は犯人を逮捕することができず、迷宮入りとなります。

烏賊川市に探偵事務所を開業している私立探偵の鵜飼杜夫と弟子(?)の戸村流平は猫を探しています。それも三毛猫。この「猫の捜索」の依頼をしたのは、豪徳寺豊蔵。豊蔵は大の猫好きで、店舗の前に巨大な招き猫がいることで有名な回転寿司チェーン「招き寿司」の社長である豊蔵は、飼い猫の三毛猫「ミケ子」を探してくれと依頼。

夏のある日の朝、烏賊川署の砂川警部と志木刑事を乗せたパトカーが豪徳寺家に到着。敷地内にあるビニールハウスへと向かいます。殺害された被害者は豪徳寺豊蔵、第一発見者は妻の昌代と息子。ビニールハウスの中には殺人の現場にはふさわしくない、巨大な招き猫。家族が現場に着いたとき、娘の真紀は気を失っていてロープで縛られていました。検死の結果によると死亡推定時刻は前日夜の午前0時から2時ころ。真紀が目撃したのは、猫のお面を被った犯人。家族全員と豪徳寺家に住む使用人と豊蔵の友人はみなアリバイがあります。

豪徳寺豊蔵氏の葬儀が行われ、鵜飼と戸村、ビルの管理人の朱美は会場に向かいます。豊蔵氏の依頼の継続を家族にお願いするため。すると会場に鵜飼の知り合いの通称(なんでも屋)の岩村がいるのを不思議に思います。葬儀が終わり、戸村が着替えのためトイレに入ると、そこには岩村の死体が・・・

はたして豊蔵を殺した犯人は誰なのか。10年前の事件との関係は。岩村の死は関係があるのか。そして三毛猫ミケ子は見つかるのか。

 

松本清張は「仕掛け箱」の中で行われていたミステリを外に出すためにいわゆる「社会派推理小説」を書いた、とどこかで読んだ記憶があります。ですが東川篤哉さんの一連の作品を読みますと、けっこう古典的なトリックが使われています。とはいっても古臭いといった印象はなく、むしろかえって新鮮に映ります。ファッションでも昔に流行ったファッションが再流行することがありますので、そんな感じですかね。

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井上ひさし 『花石物語』

2023-01-15 | 日本人作家 あ

ついこの前までなにかとお騒がせだった青い鳥がシンボルのSNSですが、その代替として「マストドン」というSNSが話題ですね。青い鳥とマストドン、似てるようで全然違う、全然違うようで似てます。そんなことを言い出したらSNSじたいが多かれ少なかれどこかしら似てるもんだろという話なのですが。今まで、流行るとすぐに「○○疲れ」という言葉が出てきますが、これから出てくるSNSもそうなるのでしょうか。

おつかれさまです。

井上ひさしさんの名前はもちろん存じてましたが去年初めて井上ひさしさんの作品「手鎖心中」を読んで感動しまして、とりあえず数冊買ってみました。そのうちの一冊。

昭和20年代後半、大学生の夏夫は、東北の太平洋側の海岸沿いを走る汽車に乗っています。目的は母親の住む花石へ向かうため。夏夫は高校まで東北に住んでいて、大学進学のため上京。本命は銀杏のマーク(東大)、他にも稲穂(早稲田)とペンのぶっちがい(慶応)を受験しますが撃沈、鷲のマークの大学(上智)を受けて合格します。なんでも定員20名の枠に殺到した受験生は16名を数えた、とか。

夏夫は強烈な東大コンプレックスがあり、さらに被害妄想に拍車がかかり「他人と会話をしない」という自己防衛を身につけます。やむを得ず話をしないといけないときは言葉がうまく出てきません。つまり吃音症。というわけで気晴らしに夏休みを母と過ごすことに。

そんなこんなで花石に到着します。巨大な製鉄所があって、街は意外と賑わってます。母親は花石で一旗揚げようと屋台で飲み屋をはじめます。母親の住まいの真横が娼家になっていて、窓の外から娼婦と客の会話が丸聞こえで夏夫はびっくりします。のちにこのかおりという娼婦と交流することになります。

はじめこそ気晴らしで花石にやってきた夏夫でしたが、娼婦のかおり、「タイガー」という店の岩舘老人、母親の屋台のライバル店で働くニセ東大生、母親の屋台の常連客の鶏先生とマドロス先生、といった人たちと触れ合うことで徐々に被害妄想や自己否定の呪縛が解けてゆき、そのうち吃音も治ってきます。夏休みもそろそろ終わり、夏夫は東京に戻るのかそれとも花石に残るのか。

井上ひさしさんの来歴をどこかで見れば、この話はおおまかにですが夏夫は放送作家・劇作家になる前までの井上ひさしさんのことだということがわかります。で、花石とは岩手県釜石市。この小説の花石は、まるで山本周五郎「青べか物語」の舞台(浦粕)のよう。浦粕とは千葉県浦安市のことなんですけどね。

鶏先生が柳田国男「遠野物語」のパクリを書こうとするあたり、どこか民話というか逸話というか、ファンタジー感が漂ってます。そういえば宮沢賢治も岩手でしたね。岩手はファンタジーが生まれやすい土壌なのでしょうか。千葉県も「ジャガー星から来た」「こりん星のりんごももか姫」となかなかどうしてファンタジーですけどね。

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井上靖 『わが母の記』

2023-01-10 | 日本人作家 あ

学校の今年度分の科目を年明け早々にすべて終わらせてしまい、次の学年になる4月まで授業がありません。その間に今まで勉強した科目の復習でもすればいいのですが、そっちのほうは1日1時間くらいにしまして、ここぞとばかりに読書にいそしまないと。それにしてもあれですね、小学生の頃は夏休みの宿題を8月31日に泣きながらやってたようなヤツが大人になって期限のだいぶ前にすべて終わらすようになるとは、結局やらなければいけないことを後回しにしてもいいことありませんものね。招待状の出欠席の返信もすぐ出しますし。

以上、大人の階段登る君はまだシンデレラさ。

さて、井上靖さん。「あすなろ物語」「しろばんば」は(半自伝小説)で、この作品は(私小説)というふうになっています。

一人称の「私」はもちろん井上靖さんご本人。伊豆で生まれて、転勤の多かった軍医の父と母とはいっしょに住まずに曽祖父の妾といっしょに土蔵で暮らすというなかなかヘビーな環境で幼少時代を過ごしたのですが、国立大学を出て新聞社に就職して小説家になったのですから、しかもその幼少時代を小説にして代表作になるのですから人生わかりません。

父が退勤して、郷里の田舎で隠遁生活を送ることに。そんな父も亡くなって、母は80歳になって物忘れがひどくなって、というところから始まります。東京に連れてきてもすぐに帰りたがったり、同じ話を繰り返して「壊れたレコード」と家族が例えたり。まるでそれまでの人生を消しゴムで消してゆくような。

80歳のときの母が描かれた「花の下」。その5年後つまり85歳になった母の「月の光」、そして89歳になった母の「雪の面」の3部作構成になっていて、不思議と悲哀はありません。

以前、ネットで見かけたのですが、母親が息子に「もし私がボケてあなたを忘れちゃったらどうする」と聞いたら息子が「そしたら友だちになろうよ、きっと仲良くなれるよ」と言った、というのがあって、まあ実際にはそんなこといってられないくらい大変なんでしょうけど、素晴らしい息子さんですね。

 

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宇江佐真理 『酔いどれ鳶』

2023-01-05 | 日本人作家 あ

昨年は当ブログの素人書評にお付き合いいただきありがとうございます。今年もお目汚しとは思いますがお付き合いの程を。

さて、宇江佐真理さん。この作品はサブタイトルに「江戸人情短編傑作選」とあり、ストーリーも登場人物もバラバラですが、もちろん江戸と人情という共通点はあります。

長屋に住む元武士の総八郎と(なみ)の夫婦。松前藩の家臣だったのですが、藩は国替えとなり、御役を解かれます。ある日のこと、家に戻った総八郎は大きな鳥を持ってます。それは鳶。じつは総八郎は藩士のとき「鷹部屋席」という藩主が鷹狩りに使う鷹を飼育する役だったのです。なんでも鳶を見かけたらげえげえ吐いていたそうで、なんと植木の肥料の酒粕を食べたというのですが・・・という表題作の「酔いどれ鳶」。

おろく医者(検死医)の美馬正哲は妻のお杏といっしょに植木市にでかけます。そこで盆栽の小さな梅の木を気に入りますが、あれは室に入れて咲かせた梅なので寒さですぐ枯れると教えてもらいがっかりします。そこに見かけた顔が。米屋の手代の美代治で、植木屋の友人に頼まれて店番をしているんだとか。それからしばらくして、その米屋で事件が・・・という「室の梅」。

ある秋の夜、両国広小路の傍で(聞き屋)をしている与平のもとに依田覚之助という江戸詰めの武士が来ます。顔には大きな痣が。姉と弟にも顔に痣があり、なにかと苦労をして育ってきたのですが、そんな覚之助に縁談が・・・という「雑踏」。

幕府小普請組の村松五郎太は学問所の試験になにがなんでも受かるため猛勉強。勉強の合間に字が書けない人のために文を書く(代書)の内職をしているのですが、意味のよくわからない内容の依頼を受けます。それは(浅草の二階家)で名前が(すで吉)と(ふで吉)とあったのですが・・・という「魚族の夜空」。

古道具屋の女房、お鈴は、店に来た姉弟に声をかけると「簪を買ってほしい」と姉が言い、袱紗を開いてみると銀細工でびいどろの上等の品。お鈴はちょうど夕飯の支度をしていて、ふたりにこんにゃくの田楽をごちそうします。あっというまに食べたのでおかわりを取りにに台所に行って店に戻ると姉弟の姿は無く・・・という「びいどろ玉簪」。

幕臣の娘、杉代は小納戸役の村尾仙太郎のもとに嫁ぐ予定でしたが、ときは幕末。仙太郎は杉代の家にやってきて、いきなり縁談の反故を伝えて帰ろうとしますが、それを盗み聞きしていた杉代は急いで追いかけます。すると仙太郎は彰義隊に入ると・・・という「柄杓星」。

読んでて、あれ、この登場人物知ってると思い、あとがき解説を読んで「ああそうだった」とようやく思い出すといった感じで、まあそれだけ過去に宇江佐真理さんの作品をたくさん読んできたのでそりゃ忘れてるのもあるよねドンマイと自分を慰めました。

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