晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

ロバート・ローレンス・ホルト『グッド・フライデー』

2018-08-25 | 海外作家 ハ
相変わらず暑いです。

もはや前置きのくだらない与太話すら考える余裕がありません。

さて『グッド・フライデー』。
昔、たけし軍団が襲撃した週刊誌とは何の関係もありません。
イエスキリストが処刑された日が13日の金曜日とされてい
まして、映画のタイトルとしてあまりに有名になった、一般
に「不吉な日」ですが、一方で「人間の罪を背負って処刑さ
れたことで人類は救われた」ということで、イースターの2
日前が「聖金曜日」になります。

で、1990年代のいつか、イラン軍はイラクとクウェート
に侵攻、いよいよサウジアラビア国境にきたところでイラン
軍の兵士がインフルエンザに集団感染、緊迫した中、ソ連の
戦闘機がサウジに向かって飛行してきて、前年に就任したば
かりのアメリカ大統領はどうするか・・・という話。

この作品が書かれたのが1987年ということで、史実では
翌1988年にイランイラク戦争が終結して、1990年に
イラクがクウェートに侵攻します。

というわけでして作者が描いた近未来予想とは若干の違いは
ありますが、それでも一歩間違えばこうなった可能性も十分
考えられる内容です。

ソ連の狙いはサウジの油田であることは明らかなのですが、
アメリカ大統領スタイナーは、ソ連のデレベンコ書記長に
電話で聞きますが相手は「は?なんのことかさっぱり」と
すっとぼけます。それだったら米軍が先にサウジを侵攻し
てしまえばいいということでホワイトハウスはサウジ国王
に「今から米軍が侵攻します」と連絡。ただしこれは偽装
作戦で、サウジの空軍基地の横っちょに爆弾をちょいと落
として米軍がソ連より先に入っちゃおうというもの。
サウジ国王はしぶしぶ作戦を承諾しますが、サウジの国家
警備隊司令官でもあるサリーム皇太子が「アメリカだろう
がソ連だろうがすべての異教徒を追い払う!」と猛反対。

いよいよソ連機が迫ってくるといった状況で、サウジ側か
らアメリカへの通信手段がシャットアウトされてしまいま
す。
アメリカ海兵隊中佐のトム・ヘミングウェーは、米国人の
居留地に向かいますが、ここでも電話は使えません。
しかし、ある双子の男の子と女の子が「ハム無線が・・・」
と話しているのを聞き・・・

サウジアラビアといえば、中東でゴタゴタがあった際、米
軍隊が足がかりにしていることで、そういうニュースを見
ていると、なんとなく「西側自由陣営、民主主義側の味方」
というイメージがあり、アラブ諸国の中でも比較的「自由」
なのでは、と思う方もいるでしょうが、じつは文中でも出て
きますが、この当時は女性が車を運転してはいけなかった
のです。ちなみにサウジで女性の運転が解禁になったのは
なんと今年。2018年。
オリンピックでも女性選手が出場できるようになったのは
確かリオかロンドンから。

そういえば「イケメンすぎて国外退去」なんてのもありま
したっけ。
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海堂尊 『極北ラプソディー』

2018-08-19 | 日本人作家 か
この作品は、いちおうシリーズとしては「極北編」という
括りにはなっていますが、バチスタシリーズも関係してく
るし、「バブル3部作」という括りの、ドラマで話題にな
った「ブラックペアン1988」の登場人物も出てくるし、こ
れを読む前にいろんな作品を読んでおくと、より深く理解
できると思います。

さて、「極北」とは、北海道にある架空の街「極北市」。
第3セクターの失敗により巨額の財政赤字を抱え、ついに
自治体として経営破綻。・・・と見ると「ああ、メロンで
有名なあの」と思い浮かべますが、架空。

「極北クレーマー」では、極北市民病院に大学から派遣
されてきた今中という医師が、赤字病院の運営、地方医
療の現実、そして医療事故裁判という難しい問題に関わ
りますが、今中が所属する大学の医局から戻ってこいと
命令があったのですが、戻らず市民病院で医師を続けま
す。

そんな市民病院の新しい院長に「地方医療の再生請負人」
の世良という人物が就任します。大胆なコストカットと
リストラで一時期は注目を集めますが、患者数の減少や
救急の受け入れをしないなど各方面からの不平や不満が
湧き出てきて、そこで世良は、今中を隣の雪見市にある
救命救急センターに派遣することに。

ここで登場するのが、元・東城大付属病院の救命救急医
「血まみれ将軍(ジェネラル・ルージュ)」こと速水。
速水は雪見市の救命救急センターの副センター長になっ
ています。なんで東城大の医師が北海道に、というのは
「ジェネラル・ルージュの凱旋」に書かれていますが、
まあいろいろあって北海道にやってきます。

救急医としての腕は素晴らしいのですが、なにせあだ名
が「将軍」というくらいですからワンマン独裁で、周り
の医師やドクターヘリ会社の人たちとうまくいってない
様子で・・・

ちなみに、世良は「ブラックペアン1988」に登場した、
当時はまだ研修医。で、ここに大学生として出てくる
のが、バチスタシリーズでおなじみ田口、放射線科の
島津、そして速水。

医療費未払い患者を受診拒否し、その人が急死すると
いう事件が起こり、メディアの姿勢や医師の厳しい現
実を描いています。

クレーマーやバッシング体質も良くないですし、一方
の医師側の隠ぺい体質もまた良くないですし、この
「甘やかすな」「甘えるな」のやりとりが続けば医療
が良くなるとは思えませんが、他者に厳しくではなく
自分たちに「甘やかさない」「甘えない」に変われば
いいですね。
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宇江佐真理 『おちゃっぴい』

2018-08-09 | 日本人作家 あ
毎日毎日暑いです。立秋になると天気予報で「暦の上では
もう秋ですね」なんて言いますが、なんの気休めにもなり
ません。

さて、宇江佐真理さんです。この作品はあとがきによると
デビュー間もない頃に書かれた短編集です。

「町入能」は、大工の初五郎の話。
初五郎が長屋に帰ると、そこには大家が。長屋の住人を集
めると、御城内で行われる能を江戸の町人たちが招待され
て見物することができる「町入能」に、この長屋の住人が
招待されたというのです。大工として御城内をいつか見て
みたいと憧れていた初五郎は喜びますが、なにせ貧乏長屋
だもんで、御城に着ていく上等な着物なんて誰も持ってま
せん。そちらは借り着で済ますとして、初五郎は同じ長屋
に住む花井という浪人に能について聞きますが・・・

表題作「おちゃっぴい」は、札差のお嬢さん、お吉の話。
武士が支給される俸禄米を換金したり、その米を担保に
金貸しもやる札差「駿河屋」のお嬢さん、お吉は朝から
不機嫌。というのもお吉の父が再婚するのです。ふたり
目の母なんていらないと家を飛び出すお吉。それを追う
のは駿河屋の手代でお吉の見守り役の惣助。お吉は惣助
も気に入りません。というのも父がお吉の将来の婿とし
て惣助を見込んでいるのです・・・

「れていても」は、薬種問屋「丁子屋」の長男、菊次郎
の話。
風呂屋の二階にある座敷で菊次郎は浮かない顔。それと
いうのも、父親が病気で店の跡継ぎになったはいいもの
の店の帳簿を調べると赤字続きで倒産寸前。そこで同業
から「持参金つきでうちの娘を・・・」という縁談話が。
しかしその娘の容姿がどうにもこうにも。それよりも、
菊次郎にはお龍という書の先生に片想い・・・

「概ね、良い女房」は、「町入能」の長屋に新しく引っ
越して来た夫婦の話。
前に住んでいた花井という浪人の夫婦が引っ越して、そ
こに新しく入るのもまた浪人夫婦とのこと。無口だけど
慕われていた花井さんのような人だといいねなどと井戸
端で女房だちが話しているところに挨拶もせずずかずか
割り込んでくる女が。女の名はおすま、亭主は浪人。
ものすごく世間知らずな亭主と図々しいおすまという、
変わった夫婦ですが・・・

「驚きの、また喜びの」は、岡っ引きの伊勢蔵の話。
正月。起きると外は大雪。家には娘はいません。女房
に聞くと、お友達と初詣に出かけたとのこと。伊勢蔵
は家の外の雪かきをしていると、キャッキャはしゃぐ
娘とその横には男が見えます。男は鳶で火消しの龍吉
で、しかし長くこの界隈の岡っ引きをしている伊勢蔵
は知らない顔。さっそく火消しの頭のところに行って
龍吉のことを聞くと・・・

「あんちゃん」は、ふたたび「れていても」の菊次郎
の話。
さて、なんだかんだで(いわくつき)の女房をもらっ
た菊次郎。今日も行きつけの風呂屋の座敷で顔馴染み
とだらだら世間話。するとそこに噺家と名乗る男が。
それからどういうわけかその「あんちゃん」と呼ばれ
る噺家は菊次郎の周囲に現れるように・・・

全体的に、コメディータッチです。あとがきによれば
ずばり「テーマは(笑い)」だそうです。
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ディック・フランシス 『罰金』

2018-08-04 | 海外作家 ハ
今までに、競馬場に付き合いで行ったのは2回か3回、
賭けたお金は1レースでせいぜい数百円、ネットで馬券
も何回か買いましたが、こちらも賭けるのは数百円。
パチンコに関しては、人生で一度もやったことはない
というくらいに、ギャンブルとはほぼ縁が無く生きて
きたわけですが、今回読んだディック・フランシスと
いう作家さん、元競馬騎手だそうです。

「競馬スリラー」というシリーズだそうで、この『罰金』
は7作目、アメリカ探偵作家クラブ賞(MWA賞)の長編賞
を受賞しています。

初めて知ったのは、イギリスでは競馬のレースの開催日
のだいぶ前から賭けていいんですね。
もっとも、正規の(馬券)ではなく、ブックメーカーと
いう(賭け屋)ですけど。ちなみに日本ではノミ行為は
別にして競馬では特定のレースは前日から買えるそうで
す。
まあイギリスはサッカーW杯の優勝予想からロイヤルフ
ァミリーの赤ちゃんは男の子か女の子かなんてのも賭け
の対象になるくらいですから、文化が違うんでしょうね。

新聞の競馬担当記者のジェイムズ・タイローンは、「ラ
ンプライター・ゴールド・カップ・レース」に関する記
事を書くことに。
その日、タイローンは、知り合いの同業者バート・チェ
コフに会います。待ち合わせの場所に行くと彼はすでに
べろべろに酔っていて、何を話しているのかよく分かり
ません。
仕方なくタイローンはチェコフをオフィスまで送って行
きますが、するとチェコフがいきなり「忠告だ」と言う
のです。

さらに「頼まれても引き受けるな」「記事を金にするな」
と言いますが、タイローンがどういう意味だと質問しても
答えてくれません。
どうにかチェコフをオフィスまで連れて行き、そこで別れ
てタイローンは帰ろうとすると背後から叫び声が聞こえま
す。引き返すとそこにはチェコフが路上に横たわっていた
のです・・・

ビルの7階の窓から転落したらしいのですが、まともに
歩けないほど酔っていたので自殺ではなく事故死。

さて、タイローンはランプライター・レースに出走する
ティドリイ・ポムという馬の取材に出かけます。
すると馬主は「バート・チェコフを知ってるか」とタイ
ローンに尋ねます。
どういうことか逆に質問すると、バートもランプライタ
ー・レースの取材をしていて、どうやら馬主は彼の書い
た記事に怒っている様子。
雑誌を見せてもらうと、そこにはティドリィ・ポムを過
剰なまでに誉めちぎった内容が書かれていたのです。
なんでも、その記事のせいで、もともと評価の低かった
ティドリィ・ポムの人気が上がって倍率がどんどん下が
って、馬主にとってはまだ倍率が高かった時に賭けてい
ればよかったというのもあるのですが、まだレースまで
20日以上あるというのにこれはおかしいというのです。

オフィスに戻ったタイローンは、同僚に取材の件を話し
ますが、そこで同僚は「じゃあ僕はその馬を本命にはし
ないな」と言うのです。
どういうことか聞くと、過去にもチェコフが本命にあげ
た馬は、出走取り消しになっているケースが多いのです。

これは、たんにチェコフの馬を見る目が節穴だったのか、
それとも彼の死の直前に語った例の「忠告」が関係して
いるのか・・・

ということは、ティドリィ・ポムは、レースの4日前、
つまり出走取り消しの違約金を支払う期限の以後に出走
が取り消されることになり、もしこれに賭け屋が絡んで
いたとすれば立派な詐欺になります。

さっそくタイローンはティドリィ・ポムの馬主に連絡を
して、馬を別の場所に避難させてくれとお願いをし、さ
らに「調教師、ティドリィ・ポムの出走を確認、掛け金
は本当に安全なのか?」という記事を書きます。
それから数日後、別の取材で出かけていたタイローンに
「俺らの邪魔をするな」とふたりの大男が襲い掛かり・・・

タイローンを襲ったのは賭け屋なのか、チェコフは金を
もらって彼らの詐欺に加担していたのか。

そういえば、昔たまたま見た深夜テレビの麻雀のアニメ
があって、そこで「真面目に働きたくないから雀士にな
ったのに、実際は勤め人のように研究熱心なのでアンタ
等は不思議な人種だ」みたいなセリフがあって、うーむ
なるほどと未だに印象に残っています。

近い将来、日本にもカジノができるそうですが、まあほ
どほどに。
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