晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

ディーン・クーンツ 『ドラゴン・ティアーズ』

2013-03-31 | 海外作家 カ
久しぶりにクーンツを読みました。なんでもあとがきによれば
この『ドラゴン・ティアーズ』が日本で発売される前に出版権
でなんかいろいろあったそうで、それまで文春文庫から出ていた
のが、「超訳」でお馴染みの出版社から出て(「インテンシティ」)、
そしてこの作品は新潮から。

まあ、読むほうとしては面白ければ別にいいんですけど、そういえ
ば他にも「超訳」の出版社から出ることになって遺憾、みたいなのが
ありましたね(グリシャムでしたか)。

それはさておき、『ドラゴン・ティアーズ』という作品タイトルから
ドラゴンつまり龍的なのが出てくるかと思いきや、出てきません。
まったく関係ないわけではなく、ある登場人物の話す格言として龍が
出てきます。

カリフォルニア警察の特別プロジェクト警官であるハリーは、パートナー
のコニーとパトロールの途中に昼食に寄った店で、突然、従業員を殺して
銃を乱射する男に遭遇。応戦しますが、男は裏のキッチンからビルの上階
へ逃げます。

ビルの上階には、マネキンがずらっと並んでいて不気味。男はどこに隠れて
いるかわかりません。なんと犯人の男は手榴弾を投げつけてきて爆発。
すると、どこかから「エルヴィス!」という叫び声が。
そして、エルヴィス・プレスリーの有名な歌のタイトルを叫びだします。
「ドント・ビー・クルエル(冷たくしないで)」、「アー・ユー・ロンサム・
トゥナイト?(今夜はひとりかい)」といった、まるで犯人の男のメッセージ
とも受け取れます。
そこにコニーが同じくプレスリーの歌のタイトルで返事をします。
しばらくそんなやりとりがあって、男はハリーめがけて銃を発射、しかし
間一髪助かって、男はその場で撃たれて息絶えます。

この事件現場に「野次馬立ち入り禁止」のテープが貼られますが、ハリーが
野次馬たちを見ていると、一人の青年がふらふらとテープをくぐって中に
入ってこようとします。それを乱暴に押し戻すハリー。

そんな、とんでもない事件が片付いたあと、ハリーは不気味な浮浪者に出会い
ます。その浮浪者は人間ぽくなく、「チクタク、チクタク、お前は夜明けには
死ぬ」などと意味不明なことをハリーに向かって言い放ち、突然目の前から
消えます。
あんな事件の起こった後で心がどうかしたのかとハリーは思い、かつてのパー
トナーで友人のリッキーの家に行きます。

その浮浪者は神出鬼没、リッキーの家から帰ろうとしたハリーの車の中、警察の
オフィスにいきなり現れて、例の「チクタク、チクタク」という声。
とにかくハリーに何か恨みを持ってるらしく、「お前の大切にしてるものを片づ
けてやる」と・・・
そして、ハリーが家に帰ったとき、その浮浪者が家に現れます。銃を撃つハリー。
しかし相手は撃たれたはずなのに倒れず、それどころか家に火を放ちます。

さて、この”不気味な浮浪者”ですが、じつはカリフォルニア界隈にすむサミー
というホームレスと、ジャネットとマーコというホームレス親子のもとにも現れて
おり、ハリーに言ったのと同じように「お前はもうすぐ死ぬ」と・・・

家が燃えてしまったハリーは、コニーに謎の浮浪者のことを話します。はじめは
まったく信じなかったコニーですが、嘘をつくような性格ではない彼を信じることに。
家を燃やされ、次に「お前の大切にしてるもの」は何か考え、ハリーは家族のもとへ
向かおうとしますが、その頃、リッキーの家では奇妙なことが起こって・・・

いったい「チクタク、チクタク」という浮浪者は何者なのか。その謎を解く、一人の
女性が。その女性は目が不自由で入院していて、そこに見舞いに来るブライアンという
青年がいるのですが、女性の担当看護師は、好青年に見えるブライアンを女性がなぜ
そんなに恐るのか分かりません。

このブライアンは、幼い頃から、ある「特殊な能力」があったのですが、それは・・・

もう、怒涛のホラーといいますかスリルといいますか、強烈。小説で超能力とか
宇宙人が出てくると「んなアホな」と思いがちですが、その前に物語にのめり込ませ
気持ちを萎えさせずに最後まで読ませきる、クーンツの力。

物語の重要な部分として、コニーのバックグラウンド、そしてジャネットとマーコの
ホームレス親子の飼っている犬、これらが話に深みと面白さを加えています。

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平岩弓枝 『御宿かわせみ』

2013-03-20 | 日本人作家 は
ここ最近は時代小説ばっかり読んでます。別にイヤなわけでは
ないですが、あれを読んだら次はこれ、というふうになってし
まっておりまして、今回読んだのは『御宿かわせみ』。
ドラマをやってたとき、「おんじゅく」と読むもんだとずっと
思っていたのは、千葉ケンミンの悲しい性。

江戸の大川端、といいますから、今でいうと「リバーシティ」とか
いう高層マンションが建ち並んでるあたりですね、そこにある宿屋
「かわせみ」の女主人、”るい”と、その恋人の神林東吾が主人公
の話で、2人の背景を軽く説明しますと、るいの父親はかつて鬼と
呼ばれた八丁堀の同心で、父が亡くなり、役宅を返上して、宿屋の
女主人になります。
東吾は、与力の兄、通之進と、その妻(東吾の義姉)香苗の世話に
なっています。こちらも父を亡くし、子のいない兄夫婦は家督を弟
にゆずると言っています。

るいと東吾は恋人同士、まだ結婚はしていません。東吾は”足しげく”
「かわせみ」に通い、そこでるい、番頭の嘉助、女中のお吉から、かわ
せみに泊まってる妙な客について聞いて、その客がなにがしかの事件
をおこし、それを東吾と彼の友人で八丁堀の役人、源三郎が解決してい
くのですが、番頭の嘉助という老人はるいの亡父の部下で、いまだに
当時の眼力は衰えていません。

短編になっていまして、いちばん好きな話は「秋の蛍」で、ここ最近、
江戸では旅籠荒らしが多く、その手口も残忍で、どうやら犯人グループ
は人探しをしている様子。
まだ「かわせみ」は被害に遭ってはいませんが、雨の夜に泊まりに来た
老人と娘の客が、どうにも怪しいとにらむ嘉助。
ある日、老人はどこかに出かけます。あとをつける嘉助。そこに娘が
「お父ちゃんが仲間を殺しに出かけた」と・・・
結局老人は捕まるのですが、お沙汰はどのようになるのか。

すでに家の書棚にはシリーズ6巻まで並んでいます。次読むのが楽しみ
です。



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池波正太郎 『鬼平犯科帳』

2013-03-16 | 日本人作家 あ
この前「剣客商売」を読んで、まあ次は当然「鬼平」でしょ、
ということで、シリーズ1巻を買ってきました。

もう今さら書く必要もないですが、江戸時代の「火付盗賊改方」
の御頭、「鬼」こと長谷川平蔵、人呼んで「鬼平」が、大都市
江戸の治安を守る(ときには江戸の外でも捕物があったりしますが)
といった話。

若い頃は遊びまくって、それでも剣の腕は超一流の平蔵。

この時代の盗賊は、かつてのような「忍びに入った家が困るほどの
金盗らない、家の人を傷つけない、殺さない、女性に乱暴をはたら
かない」という、いわば不文律といいますか、”義賊”としての
”心意気”が失われ、大金をせしめるわ、一家惨殺するわ、女中に
乱暴はするわで、凶悪化していたのです。

短編になっていて、それぞれに大盗賊あるいはその一味が登場しま
すが、自滅するものあり、鬼平らの捜査で捕まるものあり、彼ら盗賊
一人一人のバックグラウンドも細かく描かれていて、ちょっと同情
したりもします。

鬼平の手下には、”元・盗賊”というのがいて、これは同心、与力と
いった今の警察組織を描いた時代小説を読むと、その下に「岡っ引き」
だの「下っ引き」というのが出てきて、彼らは大抵は元盗賊。
まあ”蛇の道は蛇”ということで、ワルの気持ちはワルがよく分かる
ということでしょうか。

中には、権威をカサにきて庶民に威張り散らしてる岡っ引きなども
いたそうですが、基本的には命拾いしてもらった人への恩義もあって
あえて”狗”になる、その代わり盗賊側に知られたら命の保証はない
という危ない状態。

平蔵が若い頃、剣術の練習に励んだ良きライバルである岸井左馬之助
という男が登場する「本所の桜屋敷」は切なくて、好きな話ですね。
名主の孫娘のおふさに淡い恋心を抱いた平蔵と左馬之助。
しかし、おふさは大店の女房になって、それがひょんなことから、その
大店とは離縁して、今では賭場を開いてる悪御家人の女に・・・

はやく2巻を買ってこないと。
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吉田修一 『悪人』

2013-03-12 | 日本人作家 や
国際映画祭であれだけ話題になったというのに、まだ原作を読んで
ないからという理由で映画を見るのをガマンして、とはいってもけっ
こう時間はあきましたが、ようやく読みました。

まあ、あれだけ宣伝をされると、いやでもチラリと内容は聞こえて
しまうわけで、なんでも、主人公?の金髪の男が逃げていて、それを
匿う女性?そのくらいの前知識は持っていました。

物語の舞台は九州北部、福岡と佐賀と長崎。佐賀と福岡を結ぶ国道に
ある三瀬峠で、福岡市在住の保険外交員、石橋佳乃の死体が発見され
ます。

久留米の理容店の娘で、彼女がどうして福岡で働くことになったのか、
そして、殺される直前までの行動が、警察の調書ばりに、心理描写など
ものすごく事細かに描かれています。

保険会社の寮に住む同僚2人とギョウザを食べに行って、その帰り、
佳乃は男と待ち合わせしているといって2人とは別行動に。

長崎に住む土木作業員の祐一は、出会い系で佳乃と連絡を取り合って
会い、そしてこの夜、福岡市内で再び会うことになっていました。
車を飛ばして、福岡に着いた祐一。待ち合わせ場所の公園沿いの道
に停めて待つと、向こうから佳乃が。クラクションを鳴らす祐一。

殺された佳乃の生前の交友関係から、祐一のもとに警察の聞き込みが。
しかし、いっしょに暮らす祖母は、その日の夜は車で出かけていない、
と言うのです。
警察の話では、もう犯人の目星はついている、とのこと。後日ニュース
で知るのですが、ある大学生が行方不明になっているのです。

佳乃は、その大学生と付き合ってるんだかそうでないんだか、とにかく
脈アリみたいなことを同僚に話していて、その彼が行方不明・・・

さて、話は変わって、佐賀の紳士服量販店の女性店員、光代が登場します。
ある日、出会い系で気になる男性を見つけます。その男は長崎に住む
土木作業員の男。

光代は、休日に祐一と会うことに。佐賀まで車で来た祐一。ふたりは
ドライブへ。そこで祐一は衝撃の告白をするのです・・・

話のはじめの部分で、佳乃を殺した犯人は大学生ではなく祐一だと書いて
あるので「いったい犯人は・・・」と書く必要もないのですが、件の大学生
は、じつは逃亡する相当の理由があったのです。

先述しましたが、佳乃と祐一と光代のバックグラウンドの描写がハンパない
ほど事細かに描かれていて、もう「恐れ入りました」の一言。

そして、この3人の周囲の人たちの描き方も”仔細漏らさず”といいますか、
ああ、こうやってこの登場人物たちが”出来上がった”んだなあ、と思わさ
れます。

久しぶりに「よくこんなすごいの書けるなあ」と感心してしまいました。
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山本一力 『菜種晴れ』

2013-03-07 | 日本人作家 や
この作品は、千葉の勝山(現在の安房郡鋸南町)の菜種農家
に生まれた次女、二三(ふみ)が、5歳になって、江戸の深川
にある油問屋に養女になり、強くたくましく生きてゆく、とい
った、女性一代記的な内容です。

女性一代記「的」と書いたのは、二三が30歳になって話が終わる
からで、そういえば先日読んだ「だいこん」も、江戸屋の女将の
話も、生まれてから途中までの半生の作品が多く、若干の物足り
なさ感はありますが、いずれの主人公も魅力的です。

房州の勝山にある菜種農家に女の子が誕生します。1月23日に生ま
れたので、はじめは名前を「一二三(ひふみ)」にしようとします
が、菜種を扱っているので何よりも火は縁起悪いということで、一
を抜かして「二三」にします。

兄の亮太、姉のみさきと、そして飼い犬の”くろ”といっしょに畑や
海で遊び、健康的ですくすくと育ちます。
そして二三が5歳になり、江戸から油問屋「勝山屋」の主人、新兵衛が
家にやって来ます。しかし、兄は複雑な心境、姉は不機嫌。

地元でとれた新鮮な魚介で母が作る天ぷらは絶品で、二三も母から
教わって天ぷらを揚げて、それを新兵衛が食べて大絶賛。

ところで、なぜ亮太とみさきが不機嫌だったのかというと、じつは
二三が江戸に養女にもらわれていくということを兄は知っていて、姉
は、二三だけが江戸に遊びに連れて行ってもらえることにふくれてい
たのです。

5歳の女の子にいきなり「明日からうちの子じゃないよ」というのも
酷な話で、新兵衛は「江戸見物に行かないか」と誘います。

しかし、家族の様子が違うのを二三は感じ、そして、じつは江戸に
養女に行くことを知りますが、「ここで私がごねてオジャンになって
はいけない」と気丈にふるまいます。

さて、二三にとって”新しい家”である勝山屋に来て、ここでも気丈に
ふるまいますが、朝ごはんを食べたあと、庭に植えられた菜の花と、
勝山屋で買われている犬を見て、勝山のことを思い出し、ひとり泣きます。

新しい母のみふくは30歳を過ぎても子どもができませんでしたが、娘の
母親になれたことが嬉しく、「費えはかまいません」といって雛人形を
誂えます。
優しいみふくと新兵衛、そして女中のおみののおかげで、だんだんと不安
は消えていきます。

ある日、外に遊びに出た二三は、天ぷらの屋台があることに驚きます。
そして興味を持って、買って食べてみて、母の作った天ぷらとの味の
違いに愕然とします(母の作ったほうが数倍美味しい)。

そこで、新兵衛とみふくに、おみのに手伝ってもらいながら二三は
母に教わった天ぷらを揚げて、あまりの美味しさに新しい両親は大喜び。

この子の料理の腕をもっと上げさせたいと新兵衛は、加治郎という職人
に料理を教えに来てもらい、そして躾は、元辰巳芸者の太郎に教わります。

そして、深川に来て10年、二三は15歳になります。

ここから、さまざまな試練が二三に襲いかかりますが、両親の愛情、姉
代わりになって可愛がってくれたおふみ、加治郎と太郎の教育のおかげで
人間的に素晴らしい女性になります。

そして、30歳になった二三は・・・

主人公の強い生き方に、勇気をもらえますね。そして、江戸における「油問屋」
の重要性といいますか、当時は電気なんてものはありませんでしたから
油は揚げ物だけではなく、夜の灯りとしての生活必需品であり、また当時は
当たり前ですが木造住宅で、なにより怖いのが火事ということで、江戸時代
の「人々と油」という歴史にも触れて、勉強になりました。
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高杉良 『虚構の城』

2013-03-03 | 日本人作家 た
だいぶ前ですけど、「金融腐蝕列島」や「濁流」を読んで、あとがきに
「デビュー作が話題に」云々という説明があって、しかも中に出てくる
石油会社が実在する会社の内実に近い、というか元社員か関係者じゃない
の?などといわれるくらいリアルに描いていた、とあり、そりゃ面白そう
だ、読むしかない、と思いつつ、ずいぶん経ってしまいました。

大和鉱油の技術職で入社7年目の田崎は、乾式排煙脱硫装置の研究開発
の功績で、表彰式で社長から賞状とお褒めの言葉をいただきます。

この大和鉱油という会社、財閥系とは違い社長が一代で築き上げて、
従業員1万人、売り上げは年間1兆5千億の業界最大手。
「大家族主義」という会社の方針で、これだけの大企業でありながら
労働組合が無く、その他にも「定年なし、出勤簿なし、解雇なし」の
「人間尊重主義」を標榜していますが、じっさいには老害ともいえる
上が詰まってしょうがないのに居座られて、一応9時5時の勤務時間は
決められていますが、どの社員も7時半には出社して、”自主的に”
残業し(もちろん残業手当など出ない)、そして、解雇はないとはい
っても、居づらくなって”自主的”に退職。

さて、そんな田崎のもとに、後輩が訪ねてきます。後輩は、この会社
はおかしい、とまくしたて、労働組合を作りましょう、そのさい、
ぜひ代表に田崎さんを、と。

話を聞けば、数年前に”自主退社”した、田崎も認めていた後輩社員
がいたのですが、彼は労働組合立ち上げを画策していて、それが上に
バレて、あれやこれやの嫌がらせを受けて、実質”辞めさせられた”
というのです。

しかし、現在の待遇その他会社に不満がこれといって無く、田崎は、
いきなり組合という話はよくないので、まずは懇親会といったかたち
からはじめれば、と提案。

後輩が帰り、それにしても前にいた後輩にそんなことがあったとは
知らずショックで、同じ社宅に住む同期に聞いてみます。
ところがこの同期、バリバリの”大和イズム”の持ち主で、田崎が
帰るやいなや、上司に「田崎が労働組合に感化されている」と報告。

翌日、上司に呼ばれた田崎は「組合に関心を持つとは、けしからん」
と叱責され、さらに、”根性を叩き直す”という名目で、東京本社に
飛ばされ、「企画部調査課」に配属、ここで田崎は情報収集のために
通産省に日参、という仕事に。

通産省に日参、とはいってもようは接待で、そこで宮本というノンキャ
リアと親しくなり、もともと酒は弱いのですが無理やり喉の奥に流し
込み宮本と飲みに付き合います。
一方社内では、田崎に大和精神を叩き込んでやってくれということで
屈辱の言葉を浴びせかけられます。

田崎は現在結婚していて子はいません。が、妻とは在り来りな言葉
ですが「価値観の違い」で毎日ウンザリ。
組合の話を持ってきた後輩の女子社員からの手紙を勝手に開けて、
これには田崎も怒り、離婚を切り出します。

そんな中、「美保」という銀座のクラブにいる雅子というホステス
と仲良くなり、ドライブデートをして、そして体の関係に・・・

先述の手紙をくれた後輩の名前は「広瀬政子」、そしてホステスの
雅子と、ここでの章の題名は「二人のマサコ」。洒落たタイトルですね。

それはさておき、ある日、通産省の宮本と昼食の約束があったのですが、
宮本は急に行けなくなり、かわりに外資系の陽光石油の上林という男と
いっしょに昼食に。そこで上林からヘッドハンティングの話が・・・

今でこそ冷遇の田崎ですが、いつの日か組合もできて、まともな会社に
なるのではと心の奥では期待していますが、そんな日は来るのか。

宮本と上林の引き抜き工作はどうなるのか、そして雅子との関係は・・・

山崎豊子の書く企業小説もそうですが、きちんと人間が描けているので、
堅苦しくなく読みやすいですね。

この小説のラストは衝撃的ですが、あとがきで佐高信さんは「アッ」と
いう表現でしたが、いざ自分が田崎だったらと考えてみると「うぎゃーっ!」
ぐらいですね。
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