晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

馳 星周 『鎮魂歌(不夜城Ⅱ)』

2009-10-03 | 日本人作家 は
「不夜城」では、新宿、歌舞伎町に暗躍する北京系、上海系、
台湾系、香港系などのグループの抗争を描き、騙し騙され、
裏切りなどといった人間のダークな部分がこれでもかと出て
きて、この本を読み終わってしばらく、新宿に行っても3丁目
から靖国通りの向こうは「悪の巣窟」なんだなあ、とビビッて
いました。

そしてその続編になる「鎮魂歌」。上海と北京の抗争はひと
まず収束しましたが、数年後、北京系の「四大天王」のひと
りが殺されます。殺された男はパチンコの偽造カード製造
で荒稼ぎをしていて、しかも当日、男の居場所を知っていた
のは北京系でも一部のみ。北京のボスは元刑事の日本人
滝沢に調べさせます。
犯人は、台湾系の大物、楊偉民の子飼いの殺し屋、郭秋生。
秋生は義理の父と姉を殺し、それを楊偉民が始末し、秋生は
台湾に戻って軍に入隊、その後歌舞伎町に戻り、殺人の仕事
を引き受けたのです。
しかし、今までは殺しが成功すればしばらくは東京から離れる
のに、今回の北京の大物殺害があっても、楊偉民は歌舞伎町
に留まるように秋生に告げ、さらに上海系のトップの愛人の
護衛(ボディーガード)をしてくれと頼んできます。

そんな中、秋生は楊偉民の「息子」、劉健一に会います。
二年前の抗争で、自分の恋人を銃で撃ち殺したことで上海と
北京との間の手打ちとした健一。
楊偉民はなぜ北京の大物殺害の後に上海トップの愛人のボ
ディーガードを秋生にさせるのか、その目的、意図が分からず
健一に訊ねますが、健一も楊偉民の目的は見えませんが、
しかしなにかを企んでいることは確かというのです。

秋生の仕事がふたたび上海と北京の争いの火種となるのか。
楊偉民の企みとは・・・
物語はやがて、「不夜城」の抗争よりも過激にえげつなくなって
いきます。元刑事の滝沢という男が、その場しのぎの言い訳や
日本のヤクザとトラブルを起こしたりして、より問題が複雑にな
り、前作よりもさらに明日が見えない。

愛が枯渇した人たち、とでもいうのでしょうか。
いとも簡単に一線を超えてしまう神経。しかし「生きたい」という
執念はすさまじく、しぶとさ、図太さは野生の獣のそれです。
コメント
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