晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

宮部みゆき 『レベル7』

2009-05-30 | 日本人作家 ま
とりあえず本屋に足を運ぶと、まず書棚の「宮部みゆき」から
チェックし、まだ読んでない本あるかなあ、と探すのですが、
『レベル7』は、初期の作品で、作者の好きなゲーム系作品
(ブレイブストーリーとか)に属するのかなあと勝手に想像して
しまったのですが、実際はミステリー。

記憶を失った男女がマンションの一室で自分の素性やこの部
屋に来た経緯を思い出そうとして部屋を探し回ると、拳銃と5
千万円の入ったカバンが。

マンションの隣に住む自称ジャーナリストの男に協力してもらい
男女は数年前に千葉の別荘で起きた殺人事件の被害者家族
であることが判り、部屋にあった地図に書かれていた電話番号
は都内の精神病院からファックス送信されていて、その病院へ
向かいます。

一方、主人を過労で亡くした一人娘を育てる女は保険会社の
電話なんでも相談で相談員として働いており、仲良くなった女子
高生から「助けて」と電話が。
彼女の家に訊いてみると数日前から帰宅しておらず、母親は捜
索願いを出すばかりか心配もしていない様子。女子高生の周辺
の人間から情報を聞き込み、都内の病院に彼女がいることが判
ります。そして、彼女の手帳には「レベル7までいったら戻れない」
という、不思議な言葉が・・・

記憶を失った男女、不自然なほど協力的なジャーナリスト、そして
行方不明となった女子高生。これらを結ぶのは・・・

「レベル7」とはいわゆるゲームの面とかキャラクターの経験値とか
を想像し、作中人物もゲームか何かだと思うのですが、無関係と
思われるそれぞれの物語が最終的に結ばれて、正義は勝ちます。

宮部みゆき作品の特徴として、荒んだ世の中でも人間はそれでも
前を向いて明るい未来へと向かって歩いてゆくのだという人間愛が
根底にあり、どの作品も決して読後に虚しさが残るようにはしてい
ません。
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ディーン・R・クーンツ 『ウォッチャーズ』

2009-05-28 | 海外作家 カ
文学批評などで「まるで映画を観ているような・・・」とあったり
しますが、これは好意的にとらえれば、容易に頭の中に情景
が思い浮かべられるといったことであり、ちょっと批判的にとら
えると、立体化した映像のほうが表現としては優れているとい
う間違った解釈。
とはいっても、作品そのものを批判しているわけではなく、読み
やすさがあっての評価ってことです。

『ウォッチャーズ』は、アメリカの某政府系実験施設で極秘に行
われていた、ある動物実験の対象が脱走。元軍人で妻に先立
たれ、生きる希望を見出せない男が、この対象である犬と出会
うところからはじまります。
この犬は人間の言語を理解できる能力を持っており、男はこの
犬との出会いによって人生が好転しますが、そうそう良いことば
かりともいえず、施設から脱走したもうひとつの対象である凶暴
な生き物「アウトサイダー」が犬になみなみならぬ憎しみを抱い
て追走。さらにこの実験の関係者を殺害、実験対象を見つけ出
したい暗殺者もこの犬を追走。

人間の言語を理解するゴールデン・レトリーバーはアインシュタイン
と名づけられ、男は、アインシュタインのおかげで仲良くなった女性
とともに暮らし始めます。
この話の一方、アウトサイダーによる被害が多発、隠密で事件を収
束させたい政府筋と、真相をつかみたい地元警察の衝突もあり、
この話にまつわるこういったサイドストーリーもあるんだよ、という
のが幾筋も設けられ、それらが上手い具合に絡み合って邪魔をせず
に物語の幅を持たせていく、まさに作者の編集技術の巧みさ。

人間と人間の作った組織の愚かさ滑稽さが辛らつにそして冷笑的に
描かれ、また、犬の愛嬌、動物愛、人間の相互愛もあり、読みごたえ
のある作品に仕上がっています。
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藤原伊織 『テロリストのパラソル』

2009-05-26 | 日本人作家 は
ハードボイルド、ミステリーにお誂えの人物として、寡黙、
後ろ暗い過去を持つ、フットワークが軽い等々挙げられま
すが、『テロリストのパラソル』の主人公、アル中でバーの
マスター島村はそういう意味においては人物設定として、
非常にマッチしています。

朝の新宿中央公園で、ウイスキーを飲んでいた島村は、突然
爆発音を耳にします。その爆発で死傷者が出て、その中には
かつてともに学生運動を闘った友人、その当時同棲していた
女性も含まれていました。
学生運動をしていた時に爆弾を作り、爆発させて死者を出した
ことのある島村と友人は現在も逃亡中であり、友人は海外に逃
亡、島村は国内を転々と逃げ回り、警察には当時の証拠品から
島村と友人の指紋を持っていて、今回の爆破事件で島村が飲ん
でいたウイスキーのビンから同じ指紋が出て、警察は島村を疑い、
一方島村は、爆発現場でちらりと見たサングラスの男が気になり、
調べようとしますが、夜に突然襲われ、何も見なかったことにしろ
と脅され・・・

学生運動、暴力団、ホームレス、ニューヨーク、俳句といった、
一見関連性の薄そうなこれらを繋げて、最終的には、ちょっと
無理やり感は否めませんでしたが、意外性のある人物が真
犯人として出てきまして、事件はなんとか解決。

島村の働いているバーでは、食べる物はホットドッグのみ。
物語のキーマンで暴力団の男がこれを食べて絶賛するのですが、
こういった辺りがハードボイルド小説好きにはウケ良さそう。

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ジョゼフィン・ハート 『ダメージ』

2009-05-25 | 海外作家 ハ
たんなる「恋愛小説」とはひとくくりにできないのが、評価の高い
恋愛小説になるのでしょうけど、恋愛という普遍のテーマに取り
組むのは、容易と困難の表裏一体ではないか、と思うのです。

物語は、イギリスの田舎町、商店経営の事業に成功した家に生
まれた男が、ケンブリッジに進学し、医者になり、故郷で診療所
を開設し、そして国会議員の娘と結婚、一男一女をもうけ、やが
て義父の勧めにより男は国会議員となります。

ここまでは順風な人生、まったくもって理想的な人生となる「はず」
だったのですが、ある日成長した息子が勤め先の新聞社で出会った
年上の女性と恋に落ち、家族に紹介したいと家に連れてくるのです。

男は、あろうことか、息子の恋人と関係を持ってしまいます。

この女性は弟の自殺、両親の離婚という境遇を経験し、一方の男は
順風な人生の中にもどこか空虚感があり、その充足を彼女に求めま
すが、深入りを認めません。

この先は、男の転落人生となるのですが、自業自得といってしまえ
ばそれまでなのですが、この男側の視点に立つのか、女性側の視
点に立つのかで、この作品の意見が分かれるでしょう。
といっても、男と女の差異を論じることは的確ではなく、あくまで「視
点」を考えることが興味深いのではないかと。
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福井晴敏 『Op.ローズダスト』

2009-05-23 | 日本人作家 は
福井晴敏のデビュー作『川の深さは』から第2作『Twelve Y.O』、
そして『亡国のイージス』はストーリー的に繋がっていて、防衛庁
(まだ省じゃない)の秘密組織「DAIS(ダイス)」が出てくるのです
が、今回の『Op.ローズダスト』はその流れを汲む作品です。

前述の3作品を「3部作」と呼ばせてもらいますが、基本設定は、
終戦後、アメリカの支配下に置かれ、独立はしたもののいまだに
独り立ちできていない日本という国家を憂い、いい加減に自立し
ようよ、といった感じ(かなり乱暴ですが)なのですけど、3部作は
ピンとテンションの張り詰めた弦楽器を丁寧に奏でるといった例え。
あまり強く弾くと弦が切れてしまい、だからテクニックを要するので
すが、今回の『Op.ローズダスト』は、そんなに張り詰めなくてもい
いじゃん、弦緩めて弾こうよ、といった、肩の力がいい具合に抜けた
ような、なんか文章に遊びを入れたりといった余裕が垣間見られま
したね。

ネット財閥の役員が早朝出勤時に爆発死。カルト教団の関与が囁か
れる中、警視庁公安所属の並河は防衛庁の丹原とともに、警察の
捜査とは別に調査をします。中東のテロが日本上陸か、北朝鮮が
関与しているのか、調べてゆくうちに、第2の犯行が起こります。
そこで並河と丹原はこの事件の犯人グループの正体、さらに丹原と
犯人グループには接点があり、「オペレーション・ローズダスト」
という名の日本国内におけるテロ活動が明らかに・・・

それにしても、肉厚な作品。読後は満足感というよりは、胸焼けの満
腹感、といったほうが感覚は近いかも。
敵方も魅力的に描ける、というか、そこには単純な正義と悪という関係
では推し量れない、複雑な感情だったり因縁だったり立場だったりが
交錯して、登場人物みんなが存在感を持っています。
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カズオ イシグロ 『わたしを離さないで』

2009-05-21 | 海外作家 ア
イギリス文学界の最高峰の賞のひとつであるブッカー賞を
受賞した作家ということであれば、さぞかし面白いだろうな
あ、という単純な想像をしてしまうのですが、カズオ・イシグ
ロはまだ読んでおらず、ブッカー賞受賞作『日の名残り』は
映画だかドラマだかを以前テレビで見ただけ。

表紙デザインのカセットテープがまずインパクト大(文庫は
わかりませんが)。そして物語の内容なのですが、序盤部
分から謎めいた世界観。登場人物のキャシーという女性が
介護職なのはわかるのですが、その介護される対象はとい
うと「提供者」という表現をされていて、なにを提供してなに
を介護するのか。

そして話は、キャシーの子ども時代になり、同年代の子ども
達が住む施設での友情や暮らしが描かれます。
そして、彼ら彼女らの残酷ともいえる運命が待ち受けている
のですが、ちょっと残酷なのかなと思うのですが、文章があま
りにも淡々と流れるように進み、だんだんとその世界観も露わ
になってきます。

完璧なサイエンス・フィクションということでもなく、かといって
完全なアナザー・ワールドでのお話でもなく、今の現実の世
の中がそれこそ指1本分だけ横にずれていたらこうなっていた
かもしれない、といった世界。

なんだか読んでいる最中、ずっと曇り空の中を歩いていた、と
いったような感覚になりました。かといってそれが不快でもな
かったんですけど。
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宮部みゆき 『模倣犯』

2009-05-17 | 日本人作家 ま
なんでも、『模倣犯』の映画はけっこう不評だったそうで、
まああれだけの大作を2時間で編集すると、え、ここカット
したの?とか架空の登場人物を出したりとか、賛否両論
あるでしょうが(どちらかというと「否」のほうが多いかな)、
読書という極めてアナログ的作業ではありますが、実際には
まだまだそれを望んでいる人も大勢いるし、また、表現方法
においてもアナログを選択するのは、多少の困難を乗り越え
た先にある幸せというか快感みたいなものがDNAに刷りこま
れているからなんでしょうね。

あらすじを書こうとすると、登場人物が多すぎて、それぞれが
重要なファクターを握っているので、それこそ長編になってし
まいかねません(汗
とにかく、タイトルの『模倣犯』とは何なのか、何をさしている
のか。最終的に、ああそういうわけだったのねと合点がいき
ますが、最終的に推理小説でいうところの大団円つまり犯人
逮捕となるわけですが、ここでおしまいという方法はとらず、
これは作者の作品をたくさん読んで思うことなのですが、どん
なに絶望的なテーマに取り組んでも、最後には希望的観測で
締めくくる、つまり「それでも未来は明るい。そうでなくてはなら
ない」というメッセージ。

犯人側にも被害者的側面があって、ここに関しては、さらりと
書くにとどめたのは、他にもっと重要なテーマがあって、それを
強調させるためなのか、それとも犯人の動機の一端は別に重要
ではないのかがちょっと気になりました。

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ジョン・ル・カレ 『ナイロビの蜂』

2009-05-14 | 海外作家 カ
この前読んだフォーサイスの作品のあとがきで、フォーサイスのパートナーである
女性とのやりとりで、この女性が違う作品名をフォーサイスに尋ねるという失態を
してしまい、それでも、さすがハードボイルドなフォーサイス、その作品は私のでは
ないよ、まるでジョン・ル・カレに「ケインとアベル(ジェフリー・アーチャーの作品)」
のことを聞くようなものだ、と答えたというのです。

ル・カレ?聞いたことはあるのですが、まだ読んでいないので、古本屋に行って探し
てみたら、なんとこの『ナイロビの蜂』が上下巻セットで50円で売ってたので、こりゃ
ついてると購入。

アフリカのケニア、ナイロビに外交官として駐在するジャスティンは庭いじりの好きな
穏やかな中年。ある日、子どもほどの年の離れた妻テッサが、ナイロビから遠くにあ
る湖のほとりで殺されているのが発見されます。しかも、その隣には、まわりからは
不倫関係なのではと噂されるほど仲の良かった医師も同じく殺害されていました。

テッサは生前、ケニア大統領の政治腐敗による国民の貧窮を問題視しており、イギ
リス外交官の妻として赴任地の政治批判は避けるべきことなのですが、見過ごせず
に大々的に活動。
彼女が残したメモを頼りに彼女がなぜ湖に赴いたのか、なぜ殺されなければならな
かったのか、ジャスティンは使い物にならないケニア警察をあてにせず、独自で調査
をはじめます。

そして、調査を進めていくうちに、テッサがかつて妊娠中に入院していた病院(しかし
流産してしまう)で、同じ病室のケニア人女性の死に不審なことを感じたテッサと医師
は、結核治療薬の副作用による死亡なのではないかと思い、しかしその薬はまだ世界
的に流通しておらず、調べていくうちに、かなりずさんな実験や治験で強引に販売許可が
下りたことが判明、世界的に有名な製薬会社スリービーズ(3匹の蜂)は、ケニアで人体
実験をしているのではという告発文を作ろうとしていたのです。

その矢先の殺害事件。ジャスティンはイギリスに戻り、それからテッサと生前交流のあっ
た人を訪ねにドイツに行きますが、ホテルに帰ると数人が部屋にいて、暴行を受け、これ
以上調べるなと脅されます。さらに、かつてスリービーズで新薬の開発をしていた医師を
訪ねにカナダへ行くと、ここでも襲われるのです・・・

正直に書きますが、読みづらかったです。訳者の問題か、文章が頭に入ってこず、次の
ページをめくるのが億劫になることさえありました。
あと、原題は「THE CONSTANT GARDENER」ですが、ジャスティンが植物を愛でたり庭
いじりをしたり、というのがあまり印象的に描かれていなかった。
うーん、ストーリーは素晴らしかったのですが・・・
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宮部みゆき 『ブレイブ・ストーリー』

2009-05-11 | 日本人作家 ま
面白い本だから売れる、面白くないから売れないという方式は
単純に小説などには当てはめてはいけないとは思うのですが、
それにしても、この『ブレイブ・ストーリー』が累計50万部しか売
れていないというのは、ちょっと残念というか驚き。

推理小説、時代小説の書き手としてすでに国内の文学賞をあら
かた受賞し、知名度もバツグンな著者が、ファンタジー系という
これまでになかったジャンルということで、固定ファン以外の食い
つきが悪かったのでしょうか。

それはさておき、この作品はおもしろい。
ファンタジーとはいっても、全体の3分の1は実生活での話。
日常に入り込むかたちで別世界が存在するというファンタジーでは
たいてい、というかほとんど少年少女が主人公となって、最終的に
愛とか勇気が大切だよ、というのがセオリーですが、『ブレイブ・スト
ーリー』の展開もまあだいたい同じ。

小学5年生のワタルは、ごく普通の家庭に育ち、学校の成績も普通。
しかし、幸せに見えていた家庭が父の家出に端を発し崩壊。
別な人生を送りたいと心の底から願う者だけが行くことのできる別な
世界があり、ワタルは母親の無理心中未遂から命拾いして、その別
世界、通称「幻界」へ行くのです。

ここまで書くと、なんだか子どもにとっては酷な話で、まるでかつての
大映ドラマ「赤いシリーズ」のようなドロドロ愛憎劇みたいですが、そこ
までえげつなくないことはありません。
「幻界」に行く扉は、家の近所にある建設途中で不気味な様子の通称
「幽霊ビル」の階段途中にあり、この幽霊ビルはふだんから幽霊目撃
情報が多数あって、子どもたちにとってこの手の話はトップニュース。
こういった小学生の“他愛のない”日常よくある話とパラレルワールド
を結びつけるのに、読んでいて強引さというのは感じられず、ここが著者
の巧みな部分。
「幻界」に行くと、魔導士、妖精、トカゲやら猫やらと人の中間みたい
な種族、しゃべる鳥、ドラゴンなどが出てきて、旅の仲間と冒険し、
最終的に願いをひとつだけ叶えてくれる場所に行く、といった、まるで
ゲームの世界。

この「願い」で、ワタルは自分の家族をもう一度幸せなかたちに戻すのか
「幻界」が崩壊の危機にさらされるのを防ぐのか迷うのですが、そもそも
ワタルが「幻界」に来た理由は前者を求めるため。さあどちらを選ぶのか、
というのが最大のテーマ。
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池井戸潤 『果つる底なき』

2009-05-07 | 日本人作家 あ
こちらの作品は江戸川乱歩賞を受賞しており、まあご多分に漏れず
面白かったわけでありますが、話は、銀行員が謎の死を遂げて、そ
の友人が死因を突き止めるべく調査するのですが、そのうちに銀行
内の陰謀に巻き込まれて・・・といった内容です。

とかく、銀行というところはこのような推理小説の舞台になりやすく、
金銭欲や出世欲が複雑に入り組んでいるあたり、人の命が我欲に
軽んじられる、といったような、外部の人間は想像してしまうのです
が、もちろん、全員がそうであるわけもありません。

不渡り企業の回収を担当している行員が、同じ銀行に勤める友人に
「これは貸しだ」という謎の言葉を残し、その日の午後、車内で不審死
となって発見されます。死因はアナフィラキシーショックで、蜂に刺され
たことが分かり、彼の死に疑問を持った友人は、彼のパソコンなどを調
べていくうちに、あるデータが消されていたり、書類が無くなっているこ
とを発見、行内の何者かが操作していると気付きます。

そのうち、彼の回収業務に関する書類を調べようとして、その書類を
持ち去ったのが、上司にあたる副支店長だと分かり、追い詰められた
副支店長はこれ以上調べるなと脅しますがあえなく失敗、その日の夜
に車ごと海に飛び込んで死んでしまいます。
副支店長は操られて、行内に残っていたデータを消してまわっていただ
けであり、真の黒幕はいったいどこの誰か・・・

さすが、元銀行マンという経歴を持つ著者だけあって、銀行内部の
人間関係、業務といった描写は見事でした。

ちなみに、この作品の舞台となっている「二都銀行」という架空の銀行
ですが、旧財閥系の、系列に商社と重工業があり、といったような、
まあ社会人ならずともピンとくる某グループがモデルとなっているのです
が、数年前にこの系列のトラックのリコール隠し問題で、CM打ち切りな
どで社会的信頼が落ちたのですが、大赤字にはならなかったのです。
なぜか?それは、系列の銀行、商社などがこの会社の車を買い換えたり
して売上げに貢献していたからなんですね。
互助精神?馴れ合い?まあどちらでもいいですが、これを「きたない!」
と思える清廉な人は、銀行での出世は望むべくもないでしょうね。
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