晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

宮本輝 『月光の東』

2013-12-23 | 日本人作家 ま
この時期はなにかと忙しくて(忙しくなくても周りにつられて忙しい気持ちになる)
趣味の読書の時間くらいは楽しみたいので、気楽にサーっと読める本を読みたい
のですが、大掃除で書棚の整理をしたくても未読本が積まれてる状況をはやいとこ
どうにかせねば、と上から順番に読むことに。

杉井純造は、久しぶりに生まれ育った糸魚川に。その目的は「塔屋よねか」の消息
を知るため。糸魚川時代から付き合いが続いていた友人の加古がパキスタンのカラチ
で自殺して、それから、加古の奥さんが杉井宅に訪れて、杉井の名前で加古宛に
送られた手紙の説明を求められますが、杉井はそんな手紙など送ったことはありません。
すると奥さんは「塔屋よねかという女性は知っているか」と・・・

よねかと加古は不倫関係だったのか?

最後の手紙には「月光の東」という謎の言葉が。杉井は知らないと答えますが、じつは
中学生のときに杉井はよねかから「月光の東まで追いかけて」と言われていたのです。

今さらよねかと会ってどうこうなるというわけではないのですが、手がかりとして
糸魚川へ向かう杉井。中学時代から神秘的な美しさだったよねか。障がいを持つ妹、
何やら”訳あり”な両親と複雑そうな家庭環境で、彼女の変な噂が立ったりもして、
いろいろなことを思い出しながら、彼女の消息を訪ねます。

塔屋の家族は糸魚川から大町に引っ越して、それから北海道に越したことが分かります。
よねかは北海道で競争馬の牧場でアルバイトをして、牧場の家族の長男と恋仲になって
東京へ行くのですが、よねかが17歳、牧場の長男が大学3年生のとき、よねかのほうから
「夢を叶えるため」と別れを告げられます。その直後、長男は事故死してしまうのです。

よねかのいう「夢」を叶えるために、父親ほど歳の離れた男に援助してもらって、京都の
美大に進学します。

杉井がよねかの消息をたずねる話と交互に、自殺した加古の妻の話が日記形式で書かれて
います。彼女は夫の自殺で心が病み、カウンセリングを受けて、叔父が社長をやってる会社
に就職させてもらうことに。
はじめのうちは、よねかのことを夫を自殺に追い込んだ酷い女と憎しみを持っていたのですが、
そのうち、塔屋よねか個人に興味を持ち始め、こちらも消息をたずねることに。

はたして「月光の東」とは何なのか。その言葉の持つ意味とは。

読み終わって頭に浮かんだのは、有吉佐和子の「悪女について」です。塔屋よねかが悪女
というわけではないのですが、当人が出てこなくて他者の人物評で描写していく、その人との
関わり方で印象が違ってくる、そうやってさまざまなことが浮き彫りになってくる、といった
ような。
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東川篤哉 『放課後はミステリーとともに』

2013-12-16 | 日本人作家 は
12月はブログ更新ラッシュだと前々回に宣言したのですが、もう月の
半分を経過した時点でようやく3回目の更新とは。

べつにプライベートなどうでもいい話なんですけど、12月に入って、
あったかくて軽い羽毛布団にしてから、よし寝ようと布団にもぐって
ストンと寝落ちするんですね。だから1日に短編1つ読むのが精一杯。

というわけで、この作品は、出版された順でいうと、本屋大賞を受賞
した「謎解きはディナーのあとで」のあとということですが、裏にある
初出誌を見ると第一話は2003年となっており、設定自体は初期に書
かれたんですね。

東京の西部、国分寺の西側、恋ヶ窪のある架空の私立校「鯉ヶ窪学園」
が物語の主な舞台。

そこの「探偵部」に所属している霧ヶ峰涼という生徒(某エアコンを彷彿
とさせる)が、まあ顔を出すところ事件に巻き込まれ、というか遭遇
し、それを解決、といきたいところですが、解決するのはほとんど他の人。

ちなみに、第一話「霧ヶ峰涼の屈辱」で、この話の鍵というかトリックのネタ
ばらしになってしまうのですが、文中で霧ヶ峰は「僕」と読んでいるけど、
じつは女子。

8作品が収められてるのですが、いずれもトリックが明かされたとき「ううむ、
なるほど」と唸るよりは、そりゃちょっと強引だろ、と笑ってしまいます。

が、話の全体的なタッチからいうと、逆にそれくらいのトリックのほうが
良かったりもしますね。

自称ミステリマニアの女子高生が学園内やその近辺で起きたちょっとした問題
(殺人とかではなく)に、わちゃわちゃと関わって、推理して、でも真相は・・・
といったような、肩肘はらずに読めるいい感じの作品でした。






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池波正太郎 『鬼平犯科帳 3』

2013-12-09 | 日本人作家 あ
ここ最近、テレビを見るといえば、もっぱらニュースか旅番組で、たまに
面白そうな映画があれば見るくらいで、ドラマはもうここ数年まったく見て
ません。たぶん最後に見たドラマは阿部寛の「結婚できない男」。

というくらいなので、時代劇もほとんど見たことがないのですが、時代小説
の面白さに気づいてからは、読んだ本が原作のドラマや映画は見てみようか
な、なんて思ったりしてます。

さて、鬼平にハマったといいながら、ようやくシリーズ3作目。

ここでは、6篇が収めてられてるうち平蔵の京都での話が2つ、旅の途中での
話が2つと、火付盗賊改方の”鬼の平蔵”ではなく、プライベート寄りの「
人間、長谷川平蔵」が描かれています。

とはいっても、旅先で事件に遭遇して、というか巻き込まれて解決の手伝いを
したりと大変。

道中である老人から盗賊にスカウトされそうになったり(盗方秘伝)、若かりし
頃の平蔵を知る女、お豊の話(艶婦の毒)、殺されそうな女を助けたことが
きっかけで謎の組織に狙われたり(兇剣)、途中で旅に合流した平蔵の幼馴染み
の岸井左馬之助の同郷の男の話(駿州・宇津谷峠)などなど。



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スティーヴン・キング 『デッド・ゾーン』

2013-12-06 | 海外作家 カ
未読品をかたっぱしから読んで、年内にはなくさないと。というわけで
12月はブログの更新ラッシュ(の予定)。

さて、キングです。キングの小説はいつも買うときに「面白いんだけど、
長いんだよなーどうしようかなー」と迷った挙句、結局買ってしまうの
ですが、そして読み終わって「あー面白かった。まだ読んでないのあった
ら買おう」の繰り返し。

ジョン・スミスという少年は、小さい頃に氷の地面に頭をぶつけて、その
ときは大事に至らなかったのですが、ほんの小さな”予感”が当たったり
(ラジオを聞いてて、次にかかる曲が分かる程度の)します。
やがてジョンは大きくなって学校の教師になります。同じ学校のローラと
いう女性の教師と、ある晩、カーニバルへ出かけることに。
そこで、屋台のルーレットでなんと500ドルを当てることに。気分が悪く
なったローラを家まで送り、ジョンはタクシーに乗って帰りますが、そこで
大事故に遭い、それから4年間も昏睡状態に。

話しは変わって、グレグ・スティルソンという聖書のセールスマンが、とある
農家へ売り込みに。しかし家の人は留守。飼い犬がグレグにむかって吠えたて
ると、グレグはその犬を蹴り殺してしまいます。そして一言「おれは狂って
なんかいないぞ」と・・・

ジョンの父親ハーブは大工、母親のヴェラは”かなり”厳格なバプテスト。
ひとり息子の事故で、入院費は払い続けていかなければならず、ハーブは
苦しみます。しかし悩みのタネはもうひとつ、ヴェラが狂信的ともいえる、
宇宙船がどうのこうのという宗教にハマってしまいます。

ジョンが昏睡状態のあいだ、ローラは別の男性と結婚。4年間の長い眠り
から目覚めたジョンですが、奇妙なことが起こります。ジョンの担当の医師
に、ナチスのポーランド攻略の際に亡くなったはずのお母さんは生きていて、
アメリカの西海岸に住んでいる、と伝えるのです。

ただでさえ4年間の昏睡状態から目覚めただけでもニュースなのに、口さがない
看護婦によってジョンの”不思議な能力”は拡がり、やがてマスコミの知る
ところになってしまい・・・

ジョン・スミスの話とクロスして、グレグ・スティルソンの話が描かれていて、
この何やらやばい男とは。そしてジョンはグレグの”未来”が見えてしまう
のですが・・・

ところで、タイトルである(デッド・ゾーン)とは、ジョンは体に触れると
その人の未来や過去を”ある程度まで”は見えるのですが、それ以上見ようと
すると、黒い何かがあらわれること。

手紙や裁判の問答といった”無機質”な話の終わりと思いきや、最後の最後で
そうきたか、といった幕の引き方が、うまいなあと思わず唸ってしまいます。







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