晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

ジェフリー・ディーヴァー『12番目のカード』

2021-01-20 | 海外作家 タ
新年初投稿からだいぶ間が空いてしまいました。
読んでた本がとにかく長くて、しかも単行本で買ったのでぶ厚くて重くて持ち歩けないので、読めるのは寝る前くらい。

というしゃらくせえ言い訳はさておき、ジェフリー・ディーヴァーさん。

ニューヨーク、ハーレムの高校に通う十六歳のジェニーヴァ・セトルは、「アフリカン・アメリカン文化歴史博物館」の図書室で調べものをしています。すると背後から物音が。携帯電話で誰かと話している男。するとその男が突然、棒でパソコンに向かっている少女の後頭部めがけて振り下ろします。ところが棒を握っていた男の手はしびれて痛いほどの衝撃が。バラバラと転がり落ちたのは、マネキン。少女は身の危険を感じ、マネキンに自分の服を着せてどこかに逃げたのです。

ジェニーヴァは博物館の非常口から外の通りに出て、待っていた友人のラキーシャに男に襲われそうになったと告げます。

科学捜査専門家でニューヨーク市警捜査顧問リンカーン・ライムの自宅にいたニューヨーク市警刑事のロンのもとに「傷害事件発生、五十五丁目のアフリカン・アメリカン博物館で強姦未遂事件、被害者は少女」という一報が。
現場に向かったアメリア・サックスは、捜索をはじめます。犯人が置いていったバッグの中身はダクトテープ、カッターナイフ、コンドーム、そして絞首台にぶら下がってる男が描かれたタロットカード。そして、少女がパソコンで調べていたファイルは持ち去られていました。
ロンは、博物館の図書室長に話を聞こうとすると、銃声が・・・

犯人が残したタロットカードは(吊るされ人)といい、二十二枚の「大アルカナ」というカードの十二番目にあたります。ですが、意味は「精神的な保留や待機」で、特に悪いお告げではありません。

ところで、ジェニーヴァが調べていたものとは何か。
高校の授業のレポートで自分の先祖を調べることになり、彼女の四代ほど前の祖父で、名前はチャールズ・シングルトンという解放奴隷。はじめはヴァージニア州で奴隷として暮らしていましたが主人から解放され、ニューヨーク州の農場を与えられます。その後、南北戦争に出征、ところが戦後、何かを盗んで容疑者となって逃亡しますが、ジェニーヴァが調べてわかったのはここまで。犯人は、この情報が欲しかったのか?

犯人にまだ狙われている可能性があるので、ジェニーヴァには警官の護衛がつくことに。高校にも警官がついていくことになったのですが、その高校に片足を引きずる怪しげな男が・・・

はたして犯人が高校生の少女を殺害しようとするその目的とは。高校に近づく怪しい男とは。そして百四十年前、ニューヨークでチャールズ・シングルトンは何を盗んだのか。それが百四十年後の現在と関係があるのか・・・

最終的に、この話の結末は「アメリカならでは」ということになるのですが、そういえばこの本がアメリカで出たのが十五年前、ということは文中にある「百四十年前の・・・」というくだりはこのブログを書いてる今現在では「百五十年以上前」になっちゃうのですが、まあそこらへんは。
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半村良 『どぶどろ』

2021-01-07 | 日本人作家 は
2021年初投稿。昨年は拙い文章満載の当ブログをご覧いただきありがとうございました。
また今年も飽きずによろしくお願いします。

さて、一発目の投稿は、半村良さんの時代小説。昨年ラストはジェフリー・ディーヴァーでしたので、ここは時代小説でいこうじゃないかと。相変わらず古今東西なんでもござれ、です。

莨問屋(宮川屋)の手代、繁吉は、付き合いのある店からの掛け取り金を使ってしまいます。こんなやけになるのも、宮川屋は本店が伊勢にあり、伊勢出身者しか出世できず、江戸生まれの繁吉は将来に不安。とはいえ、店の金に手を出すのはどう考えてもまずいことで、どうしようかとあるいてると「おい」と遊び人風の男に声をかけられ・・・という「いも虫」。

五十くらいの酔った男がちょうど店を出ようとしたとき、店に入ってきた若者とぶつかり、五十男がよろけて医者の渡辺順庵にぶつかります。「すまねえ」と若者。その若者を諫める飲み仲間の浪人の榎洋市郎。若者も不機嫌。まあまあそこらへんでとなだめるこれも飲み仲間の易者。若者が帰ったあと、店にいた浪人、医者、易者、それに店主の安兵衛がさきほどの五十男の身の上話を・・・という「あまったれ」。

小間物屋の寄合の席で、若い浜吉は、本所の源助といっしょに安兵衛の店へ。そこで先ほどの宴会の会場で料理をチクった女板前のお梅の話になり・・・という「役立たず」。

深川、六間堀にかかる北ノ橋のたもとに、蕎麦の屋台が出るように。しかも、たもとの両側に二軒。片方は若く、もう年寄りで、商売仇と思いきやこの両者、仲は良さそう。六間堀の屋台蕎麦屋の話を聞いた小間物屋の源助は、年寄りの名を小六といい、昔、吉原から遊女を落籍させたという話をしだし・・・という「くろうと」。

検校の使いで借金取りをしている伊三郎が、検校の家で榎という侍に声をかけられます。どうにも伊三郎が悩んでいるので榎は話を聞くと、油問屋の大坪屋の話に・・・という「ぐず」。

小間物屋の源助は、立ち寄った先で、木綿問屋の主に先立たれたふたりの息子がいる未亡人の話に。その母親は、兄に、最近、弟が土手にいる浮浪者と遊んでいるのかと聞き・・・という「おこもさん」。

莨問屋、宮川屋の番頭、清吉は、おこんという女房がいるのですが、おこんは一度離縁して、宮川屋の紹介で夫婦に。伊勢出身者しか出世できない宮川屋でそれでも番頭までなったのですが、あとは飼い殺し状態。そんな気力のない清吉に、おこんが「私はあなたが宮川屋に謀反を起こしてもいいと思ってる」と言い出し・・・という「おまんま」。

と、ここまでが短編で、ここから本編の「どぶぶろ」になります。
戯作者でこの当時のスター、山東京伝の従者の平吉は、世間から「町屋敷の平吉」と呼ばれ、岡っ引きだと思われています。実際、八丁堀の役人にも顔が利くし、他の地域の岡っ引きとも情報交換したりしていますが、正式には、銀座の町役人をしている山東京伝の父親の岩瀬伝右衛門の従者。
ある朝、伝右衛門から「ちょっと八丁堀に行ってくれ」と言われ、どんな用か尋ねると、昨夜、本所で人殺しがあって、どうやら下手人は、こっち(つまり銀座の関係)の人らしい、とのこと。
平吉は「引合を抜かせるんですか」と聞き、伝右衛門は、そうだ、と。つまり、伝右衛門に都合の悪い事実が出てきたとしても「なかったことにしておいてほしい」という意味。
しかし、まだ下手人すらあがってないというのに「無しの方向で」と言われても平吉は合点がいかず、八丁堀の同心に聞いてみると、被害者は、六間堀の近くで屋台の蕎麦屋を出していた小六という爺さんで、その殺害方法は、剣術の心得がある者つまり太刀でバッサリと斬られていたそう。さっそく平吉は本所へ行き、土地の岡っ引きに話を聞きますが要領を得ず、近くに住む知り合いの小間物屋の源助の家に行き、源助から、殺された現場はさる武家屋敷の前で、容疑者は橋の向かい側で屋台の蕎麦屋をやっていた宇三郎という若い男だと聞きます。さらに、小六と宇三郎との複雑な関係から宇三郎が殺すわけはないという情報もあって・・・

犯人は銀座に関係のある人物なのか。そして平吉が「知ってしまった」真実とは。

上記のように、前の短編の登場人物が「どぶどろ」に登場します。蕎麦屋のふたりと源助だけでなく、町屋敷に新入りでやってきたのが繁吉だったり、安兵衛の店にいた侍も医者も、女板前もみんな出てきます。

カテゴリ的には「時代小説ミステリ」になるんでしょうけど、それにしてもラストは「えっ?」と驚き。

文庫の解説が宮部みゆきさんでして、なんでも宮部さんの作品「ぼんくら」の(短編が集まって長編になる形式)と(ひらがなのタイトル)はこの小説のオマージュなんだとか。ああそういわれてみれば、という感じです。
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