晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

池波正太郎『熊田十兵衛の仇討ち(本懐編)』

2023-09-21 | 日本人作家 あ

池波さんの「真田太平記」という作品があって、文庫で全十二巻という大長編なのですが、まだ読んだことはなく、老後の楽しみにしているのですが、老後になってそのような大長編を読むだけの気力が残っているのかという不安がちょびっとだけありまして、もちろんご高齢でもすごい読書家という方は個人的にも知っていますし、そんなの「人による」といってしまえばそれまでなんですけど。

以上、老いを考える。

さて、『熊田十兵衛の仇討ち』のもう一冊のほう。

織田信長がいよいよ天下統一までマジックナンバー点灯といったときに明智光秀に裏切られて果てます。さて、このとき本能寺には忍びがいまして、明智側に忍ばせていた松尾九十郎から報告がなかったと信長側にいた忍びは悔しがりますが時すでに遅し。その松尾九十郎は、中国地方に向けて急いでいました。じつはもうひとり、松尾伝蔵という忍びがいて、光秀は「毛利へ行け」といって書状を伝蔵に持たせます。光秀は、信長亡き後に毛利と連合で天下取りという計画があり・・・という「鬼火」。

甲賀忍びの岩根小五郎は「明智光秀を見た」と助七という別の忍びのから告げられます。じつは山中で山賊の格好で光秀に竹槍でとどめを刺したのは小五郎。そんなはずはないと疑いますが、今では別名を名乗ってる、とまで具合的なことを聞き、小五郎は確かめに向かいます。しかし、助七から光秀を見たという場所の小屋に近づいた時に矢が・・・という「首」。

豊臣秀吉がいよいよ小田原の北条を攻めることとなり、籠城するか戦うか意見が二分します。鉢形の城主、北条氏邦ははじめは籠城派だったのですが出撃すべきと言い出したのは、忍びの小出寅松の裏切りのせいだと気づいた別の忍びが。じつは寅松は秀吉が北条側に放った忍びだったのです。寅松は鉢形の武将、山岸主膳之助の娘婿になっていて、はじめこそ秀吉側となって動いていたのですが、なんと寅松が義父の主膳之助と風呂に入っていると「おぬしはいずこの忍びなのだ」と・・・という「寝返り寅松」。

服部小平次は播州赤穂藩の浅野家、京都屋敷に務める藩士の次男坊。学問も武術の稽古もせず遊び歩いていて両親もさじを投げています。ある日、小平次が遊郭をふらついていたところ、船頭と揉めていたところにある武士が助けてくれます。その武士は「なんだ、服部小平次ではないか」というのです。その武士の正体は浅野家御家老、大石内蔵助。蔵之介は小平次ろいっしょに遊郭で遊ぶことに。そんなとき、小平次の兄が急死し、小平次が家の跡継ぎに。しかも江戸屋敷詰めを申し付けられ・・・という「舞台うらの男」。

宴会の席で熊田勘右衛門が山口小助という下役をみんなのいる前で罵ります。じつは小助は女癖が悪いのでまったくの言いがかりとはいえないのですが、小助は怒りのあまり帰りに勘右衛門を斬って、そのまま逃げます。勘右衛門の息子、十兵衛は父の仇討ちとして小助を探しに出かけます。二年後、ボロボロの坊主の格好をした小助は、茶店で十兵衛を見かけ、そのままあとを付いていくことに。仇討ちに出て五年。十兵衛は小助を見つけることができず、しかも目の病にかかって・・・という表題作「熊田十兵衛の仇討ち」。

小林庄之助は、弟の伊織と家来の原田定七とともに、父を殺した大葉勘四郎を探しています。ところが伊織も定七も乗り気ではなく、ある日、定七は岡場所の女を連れ込んでいたところを庄之助に見つかり、怒った庄之助は定七を斬りますが命に別状はありませんでした。という話を別の客にしていたその岡場所の女なのですが「その男は原田定七さんといってねえ」というのを聞いて顔色が変わります。その夜、小林庄之助が斬られていたのが見つかります。伊織が駆けつけ、斬ったのは大葉勘四郎ですかと聞きますが、なんと「さ、定七に・・・」といって・・・という「仇討ち狂い」。

「舞台うらの男」は、以前読んだ記憶がありますね。この二冊の文庫は総集編ですので、おそらく他の作品もどこかにあるのでは。あと池波さんは昔の作品を後年になってセルフリメイクすることもありますからね。

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池波正太郎『熊田十兵衛の仇討ち(人情編)』

2023-09-18 | 日本人作家 あ

前回の投稿では学校のほうが忙しくて本を読んでないと書きましたが、とりあえず忙しさからは一旦開放され、なんとか本を読める状況にありますが、おそらく来月はブログに投稿できそうにありません。というわけで今月ちゅうに読めるだけ読んでおこうと思います。

以上、学生の本分は勉強。

さて、池波さん。この作品は短編集です。表題作はもうひとつの本懐編のほうに収録されてます。

雲霧仁左衛門の子分の山猫三次が越後で捕まり、州走の熊五郎という子分は三次に「きっと助けてやる」といって逃げます。越後から江戸まで厳重な警戒で護送することになりますが、江戸から火付盗賊改方の与力、山田藤兵衛が途中で出迎えることになり、新堀という宿の茶店に寄ります。じつはこの茶店のお延は未亡人で、亡き夫はかつて山田藤兵衛に仕えていたのですが、雲霧一味の捕縛のときに州走の熊五郎に殺されます。夫を殺した憎きその熊五郎の人相書を見たお延は愕然とします。数日前、雨宿りに寄った(ある男)が、まさに熊五郎そのものだったのです。しかもあろうことかお延はその男に体を許して・・・という「熊五郎の顔」。

浪人の堀小平次は、疱瘡にかかりますが。ふつう疱瘡にかかると瘢痕(あばた)が顔に残るので忌み嫌われますが、小平次は喜びます。というのも小平次は敵もちで潜伏中の身。某藩の家臣だったときに上役の妻と不義密通しその上役を斬って逃げてはや十八年。あのとき五歳だった上役の息子は仇討ちのため小平次を探しています。小平次は「熊川又十郎」という別の名前を名乗っているのですが、その名前の主とは四年前・・・という「あばた又十郎」。

按摩の豊ノ市は短気なのが問題。ある日、旅籠に泊まった侍の按摩をやることになり、酔っていた侍と口論になりますが、なんと侍の刀が二本ともありません。そこにある男が豊ノ市の腕をつかんで外に逃げます。刀を盗まれたと町役人に訴えることもできずに侍は出ていき、豊ノ市は旅籠に戻って、助けてくれた男のことを聞きます。江戸の深川・黒江町の又吉というのですが、じつは又吉、右手の指が五本とも無く・・・という「喧嘩あんま」。

江戸の伊勢町河岸におでんの屋台を出している栄次郎はかつて「お手玉小僧」という掏摸でした。その屋台に栄次郎の幼なじみの平吉が来ます。平吉は木綿問屋の婿養子となっていますが、いきなり栄次郎に助けを求めます。平吉が仲間内の寄り合いに出た料理屋に幼なじみのお長が女中として働いていて、再会を懐かしみ、また会い、いつの間にか深い仲に。平吉はお長に会うのをやめようとしますが、お長は「子ができた」と・・・という「おしろい猫」。

うなぎの蒲焼きや川魚の小料理の料理屋「鮒屋」で、ある浪人が無銭飲食をします。ところが主人の半蔵が浪人の顔を見るとたちまち血の気が引きます。そして次の日、その浪人が店に来ますが、半蔵は「酒を出せ」といい、浪人に無銭飲食させるのです。じつは半蔵、前は乱暴者で江戸から逃げて、ある宿に泊まったとき、隣の部屋から「まだ四十両はあるし、なんとかなる」という声を聞いて、夜中に隣の部屋に侵入し・・・という「顔」。

 

「人情」という話もあるのですが、全体的に「そういう理由だったのか」みたいな、謎解きではないですけどミステリのような構成といいますか。

次は本懐編。

 

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井上靖 『夏草冬濤』

2023-09-10 | 日本人作家 あ

8月は投稿なしでした。学校のほうがいろいろやることがあって、小説を読んだのは移動時間くらいで、あまり読めませんでした。

 

という言い訳はさておき。井上靖さんです。この作品は井上靖さんの作品「あすなろ物語」「しろばんば」に続く自伝的作品で、洪作というメインキャラの背景はだいたい同じになってます。お父さんは軍医でお母さんと妹と転勤して、洪作は伊豆の複雑な家庭環境の中で育って、それでも勉強はできて旧制中学にトップ入学します。三島の伯母の家に下宿して沼津中学に通っています。

泳ぎが苦手な洪作は水泳講習会に参加しますが上級生に強制されて飛び込んで溺れます。そこに別の上級生がボートで救助に来てくれます。この上級生というのが、ちょっと不良っぽいグループで、ですが彼らの自由奔放さに洪作はちょっと気になります。

洪作は反抗期といいますが自我の目覚めといいますか、なんともやる気のない生活を送り、もちろん勉強もしないので学校の成績は落ちる一方。伯母は「うちに住んで成績が下がったなんて思われたくない」といって勉強しろとうるさく言いますが洪作はどこ吹く風。

しかし、離れて住む母から、これ以上成績が悪くなるなら寺へ預けると通告。

寺なんか行きたくないと洪作は勉強しますが、上級生のグループとひょんなことから付き合い始め、さらに彼らから「寺に住むのか、いいなあ」なんて言われて、洪作は勉強をやめてしまいます。

気になる女の子とのエピソードや、洪作が実家に戻ったときの幼なじみとのすれ違いなど、青春ストーリーにはなってます。

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