晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

山本一力 『欅しぐれ』

2016-11-30 | 日本人作家 や
江戸、深川の佐賀町に桜並木があり、通称「佐賀町の百本桜」
と呼ばれています。この通り沿いに店を構えるのが、履物問屋
の桔梗屋。

桔梗屋のあるじ、太兵衛は、書道に通っていて、ある日のこと、
書いているときに咳き込んでしまい、隣の人の紙に筆がすべって
しまいます。

お詫びに、隣にいた人を飲みにさそいます。ところが、その相手
とは、「達磨の猪之吉」という賭場の貸元。太兵衛はどうやら
この人物は堅気ではないとわかって近づいた様子。

この飲みの一席で猪之吉は太兵衛を気に入ります。それから
数か月後、猪之吉の賭場で、若い男の客が為替切手を現金に
両替します。が、この切手、振出は桔梗屋だったのです・・・

猪之吉はこの件を太兵衛に聞いてみると、「出回りはじめました
か・・・」と、予感があったようです。

そこで太兵衛は、あるところから脅迫されてることを告げます。
「あるところ」とは、鎌倉屋という油問屋で、ここのあるじ、
桔梗屋の立地を一目見て気に入り、ここに店を出したいので
立ち退きを要求してきたのです。

立ち退きに応じないとわかるや、今度はなんと嫌がらせをはじめる
というのです。その手が今回の切手騒ぎだったのです。

鎌倉屋が頼んだ相手はどうやら、汚れ仕事専門のプロ集団。

それを聞いた猪之吉は、太兵衛の助太刀を受けます。

そんな中、いよいよ太兵衛の体の具合が悪くなり、猪之吉に
桔梗屋の後見人になってもらい、息を引き取ります。

次々と襲い掛かってくる嫌がらせに猪之吉はどう対抗して
いくのか・・・

この猪之吉は、他の作品にもたびたび登場しますね。
それだけでなく、例えば平岩弓枝さんの「御宿かわせみ」
シリーズにも、主人公と家族ぐるみの付き合いをする
香具師(やし)の元締めが出てきます。

江戸時代では、こういったアウトロー的な人たちは、
現代よりも「必要悪」といいますか、受け入れられて
いたようですね。


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平岩弓枝 『はやぶさ新八御用帳2 江戸の海賊』

2016-11-20 | 日本人作家 は
さっそくシリーズ2作目を読みました。

まずはおさらいから。
主役は南町奉行、根岸肥前守の家臣で内与力、隼新八郎。
(内与力)とは、代々続いている江戸の町方役人、彼らの屋敷がある
ことから(八丁堀)なんて呼んだりしますが、それとは違って、奉行
の直属の部下にあたるのが、この内与力です。

文中では(根岸肥前守の懐刀)なんて紹介されていますが、つまり
同心や与力にちょっと頼みづらいことや内々の探索にはもってこい
ってことですね。

新八郎の奥さんは、幕府新御番組頭、神谷伊十郎の娘で、郁江。
その郁江の兄は江戸城勤務の鹿之助。新八郎とは幼馴染。

例えば新八郎の探索で大名や旗本の誰それはどういった人物で
まわりの評判は、といったことを知りたいときには鹿之助が
調べてくれたりします。

さて、新八郎は、町奉行所の深川方同心、高丸龍平とともに、
桜の名所である飛鳥山に来ています。
深川方とは、まるでベネチアのように縦横に運河が張り巡ら
された深川という町は、大雨や台風でけっこう浸水被害が
あったり橋が壊れたりでその救助や、あとは沿岸パトロール
をする、特別な係。

なぜそんな深川方の同心と、海川とは関係のない飛鳥山に
いるのか?

それは、ここ最近、江戸に入ってくる船が海賊に襲われて、
積み荷が奪われるといった事件が頻発しているのです。
そして、深川の橋に奇妙な張り紙が。

この頃お江戸に流行るもの
地震大水幽霊船
退治したくば飛鳥にござれ
花の下なる平将門

といった、意味不明なもの。
しかし、海賊のなかでも特に(幽霊船)と呼ばれる、神出鬼没で
被害も大きいこれが書かれているのは捨ててもおけまい、という
ことで、飛鳥山に。
まだ桜は満開にはなっていませんが、それでも花見の客はいっぱいいて、
茶店も繁盛している様子。中でも行列の長い茶店があって、新八郎に同行
していた高丸は「あそこはさくら茶屋です」と。

そこのお小夜という女中が「緋桜小町」と呼ばれる美人で、お小夜の父は
本所で船頭をしていて、高丸とは知り合いだったのです。
で、休憩がてら茶を飲み団子を食べていると、そこに武家の女房ふうな
女性が茶屋に入ってきます。そのあとに雷鳴が聞こえて雨に。
そこに五、六人の侍たちが雨宿りで入ってきます。すると大きな落雷が。
店内の人は頭をかかえて体を低くします。
頭を起こすと、さきほどの武家の女房ふうの女性に刀が刺さって死んでいる
ではありませんか。五、六人の侍たちは店にいません。

町奉行同心と内与力が同じ店内にいながら刺殺事件が起きるとは何事かと
軽く嫌味をいわれたりもしましたが、それにしても身分のしっかりして
そうな被害女性の身元が十日たってもわからず。

そんな中、仙台伊達藩の御用船が、江戸湾で幽霊船に襲われたのです・・・

さっそく現場検証に行ってみると、そこに緋桜小町ことお小夜が。船頭である
父の源七にお願いして、船で襲われた現場に行ってみることに。
そして、深川方の高丸と再会し、仙台藩の荷揚げを仰せつかってる「海手屋」
という荷揚げ屋に行って番頭に訊くと、あの日は仙台藩より使いが店に来て、
積み荷は品川で降ろすから大川には入っていかない、と言われたというの
ですが、仙台藩はそんな使いは出してないというのです。

海賊のアジトはどこにあるのか。そしてここ近年急成長した海手屋ですが、
一方で海手屋に得意先を取られて衰退した荷揚げ屋である事件が・・・

そして話はとんでもない方向に。それはそうと、シリーズ一作目に出てた
新八郎が結婚する前に女中奉公に来ていた、じつは新八郎はその女中、お鯉
のことが好きだったのですが、結婚してから自分の想いに気付いて・・・
みたいな話だったんですけど、そのお鯉は出てきません。まあその代わり
といっちゃアレですが、今回の「ヒロイン」は、緋桜小町ことお小夜。
お小夜は新八郎に恋心を抱いているのか、なんかそれっぽいシーンもあって、
このシリーズは、毎回違う女性が出てきて、事件のカギを握っていて、
新八郎とちょいとそういった感じになる、そういう構成なんでしょうかね。

まあそれは別にして、この江戸ミステリは読み応えがあります。
「御宿かわせみ」の短編もいいのですが、長編もまた違った味わいで
いいですね。


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平岩弓枝 『はやぶさ新八御用帳』

2016-11-11 | 日本人作家 は
長いこと投稿をサボってました・・・

入院とかパソコンが壊れたそういう理由ではまったくない
んですが、ようは新しい本を読んでなかっただけ。
前回の投稿が7月下旬ですか。うーん、暑かったですねえ。

そんな与太話は置いといてですね。

これはシリーズものなんですね。ただ「御宿かわせみ」
とは違って短編ではありません。

主人公は、南町奉行、根岸肥前守の内与力、隼新八郎。

町奉行には与力と同心という肩書があって、これは、
表向きは一代限りの役職なのですが、実際には世襲と
なっています。でも、町奉行のトップ、有名どころ
でいえば大岡越前とか遠山の金さんですね、は交代制
だったので、この「内与力」というのは奉行の直属の
部下にあたります。

で、新八郎の役目は、「市中取締」ならび「諸色調掛」。
すでに述べたように奉行は交代制で与力、同心は世襲なので
上司ではあっても殿と家来のような関係ではないので、
まあいろいろ頼みにくいこともあったりした場合には
この内与力に頼むことになります。

新八郎の奥さんは郁江といって、新御番組頭、神谷伊十郎の娘。
郁江の兄は鹿之助といって新八郎とは幼馴染。

さて、新八郎は、内藤新宿の西、淀橋近くにいます。
十二社権現の近くにある団子屋にいる、お鯉に会いに来たの
です。
あれ、新八郎は新婚では?
このお鯉は、かつて新八郎の家に女中奉公していたのですが、
新八郎の結婚が決まって、郁江が女中を連れて嫁入りしたので、
暇をもらったのです。
新八郎はお鯉のことを気にはなっていたのですが、いかんせん
武家と女中では身分違いですし、友達の鹿之助は「いずれは
うちの妹と・・・」というのもあったりで、お鯉に対する恋心
に気付いたときにはもう遅かった、といったところ。

淀橋からの帰り、夜であたりは暗闇、新八郎は何者かの気配を
感じます。すると突然、刀で斬りつけてきたのです。

すんでのところで相手の攻撃をかわした新八郎。何者かは逃げ
ますが、辺りから血の匂いがします。よく見ると、橋の袂に人
が。急いで近くの番屋に駆けつけ、現場に引き返したときには
橋の袂に人はいなく、そのとき新八郎は自分の着ている服の肩
先が切られていたことに気づきます。

翌日、新八郎は奉行の根岸肥前守に呼ばれ、昨夜、淀橋に死体が
あがったことを聞かされます。
水死体は、日本橋の菓子屋、鶴丸屋の主人、清兵衛。
鶴丸屋の番頭によると、昨日、清兵衛は母の見舞いに千駄ヶ谷に
行くことになっていたのですが、一緒に行った手代の話では、
千駄ヶ谷の手前で清兵衛はちょっと寄り道をするといってどこか
に行ったそうです。
清兵衛は出かける前に三百両もの金を包んで持っていたそうですが、
死体からは金は出てきませんでした。

新八郎は清兵衛の葬儀に日本橋の鶴丸屋へ行きます。
すると、家じゅうが騒ぎに。清兵衛の妹で、江戸城大奥に奉公して
いるお喜久が帰ってきたというのですが・・・

ふたたび、淀橋の近くで、今度は男の首なし死体が見つかります。
そして、新八郎に、大奥の御年寄、音羽様の鬼子母神参詣の道中
警固の依頼が。
普通、将軍が上野の寛永寺や芝の増上寺に御成りになる時には
町奉行が警固をすることはあるのですが、歴代将軍や御台所の
命日に大奥女中が代参で行く場合には町奉行は出ません。
しかも今回は鬼子母神という、音羽様個人の参詣に、御留守居役
より奉行に内々でお願いがあったというのです。

そこで、警固にあたっていた船越という町奉行が何者かに殺され、
音羽様までもが殺されたのです。

さらに後日、将軍の御鷹狩りでのこと、何者かが将軍を鉄砲で暗殺
しようと・・・

この事件のカギは大奥にあるのでは、と思ったところで江戸城内の、
さらに将軍以外の男が立ち入り禁止の大奥で訊き込み捜査などできる
はずもなく、さてどうしようと考える新八郎。

そこで、鹿之助が、新八郎に内緒で、お鯉に、大奥女中奉公に
行かせて、内偵をさせるのですが・・・

これはもう久しぶりに読み終わって「面白かった!」と叫びたくなる、
そんな時代ミステリです。
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