晴乗雨読な休日

休日の趣味レベルで晴れの日は自転車に乗ってお出かけ。雨の日は家で読書。

ジョン・グリシャム 『自白』

2014-04-30 | 海外作家 カ
これは文庫で買ったのですが、背表紙に書いてある数字が上下巻29と30、
今まで出た作品は上下巻なので、新潮文庫から出ているのはこれで15作品
ということですね。

グリシャムは赤い背表紙になっていて、家の文庫用書棚は1段が30冊程度
なので、外国作家カ行のところにズラッと並ぶと、ずいぶん読んだなあと
実感。

カンザス州のトピーカという町の教会に、杖をついた男があらわれます。
「牧師に会いたい」と謎の男はいうのですが、キース・シュローダー牧師
は用があるため、妻のデイナがその男にいくつか質問をします。
名前はトラヴィス・ボイエット。
現在は、州矯正局の社会復帰訓練所に住んでいて、仮釈放の身だというの
です。

デイナはキースにボイエットのことを伝え、そして会うことに。

ボイエットは脳腫瘍で余命いくばくもないことを告白。さらに、死ぬ前に
どうしても言いたいことがある、と。
それは、ドンテ・ドラム事件の真犯人は自分だというのです・・・

1999年にテキサス州で起きた、ハイスクールのチアリーダーの白人の
女の子二コルがフットボール部の黒人の生徒、ドンテ・ドラムに殺されたと
される事件で、裁判で死刑判決が出て、今週中に刑が執行される予定。

しかし、デイナが調べたところによると、ボイエットは過去に4件の婦女
暴行事件で有罪を受けていて、この話に信憑性があるのか疑わしいこと
この上ありません。
が、キースはどうにも気にかかり、訓練所まで出向いてボイエットの話を
聞きに行きます。

そのころ、テキサス州ではドンテ・ドラム裁判で被告側の弁護をした
弁護士のロビー・フラックが、あの手この手で死刑執行の延期手続きを
申請しますが、ことごとく却下されます。

キースはテキサス州のロビーに電話をかけ、あの事件の真犯人がうちの
教会に来たと告げますが、このたぐいの電話はひっきりなしにかかって
きていて、信用してくれません。

ボイエットの告白のとおりに、二コルを殺したのが自分でミズーリの山奥に
埋めたというのが真実なのか。

ドンテ・ドラムの死刑執行まであと3日、2日と迫り、街では黒人たちの
デモから暴動に発展。

そして、キースは、ボイエットをテキサスに連れて行くことを決意するの
ですが・・・

黒人の少年が無実なのであるならば、嘘の自白を強要したのか。もしこれが
冤罪だとするならば、警察、検察、裁判官、ドンテがやったと証言した元
チームメイトの男、そして州知事の立場は。

つい先日、日本でも死刑囚の無罪が確定になりましたけど、死刑の是非は
さておき、そもそもなぜ冤罪は生まれるのかをおざなりにしている限り
同様の不幸は起こり得るということです。









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浅田次郎 『沙高樓綺譚』

2014-04-28 | 日本人作家 あ
そういえばここ最近、時代小説以外の短編をあまり読んでませんでした。
別に嫌いというわけではないのですが、読み始めたら、なるべく文中の
世界観に長く浸っていたいと思うので、短編だと次また次と気持ちをいれ
かえるのが億劫と感じるタイプでして。

とはいっても、浅田次郎の「天切り松 闇がたり」シリーズも短編ではあり
ますが、主要な登場人物が同じなので、サーっと流して読むことができて、
あまり短編を読んだという気にはならないのです。

この『沙高樓綺譚』は、東京の青山にある高層マンションの一室にある「沙高樓」
という、女装の貸しビル王がオーナーの、地位、名誉、金のある人ばかりが
集って、他では言えない話を語る場。

その話は、自己申告ではありますが、けっして嘘や誇張してはならない、そして
いっさい他言してはならぬというルールがあります。

刀剣の商売をしていた「私」は、国宝の刀が展示されている国立博物館に出か
けます。するとそこで、知り合いの刀鑑定家である小日向賢吉に出会います。
小日向は室町から続く刀鑑定の家元、徳阿弥の第三十四世を継ぎ宗家に。

そんな小日向から、これから”ある場所”に一緒に行こうと誘われます。
そして、女装のオーナーが出てきて、この会の説明をし、小日向は語りはじめ
るのです・・・

「小鍛冶」は、小日向の話で、徳阿弥の四家が集まって鑑定を行う式があって、
そこに持ち込まれたのは、秀吉が所有していた幻の刀。しかしそれは大阪落城
の際に消失してしまったもので、文献しか残っておらず、しかし持ち込まれた
のは、その文献のとおりだったのです。

小日向は、ルール違反とは知りながらも、その刀を大学の放射性炭素の年代測定
にかけたところ、近年の作と分かります。つまり贋作だったのです。

しかし、こんなプロも見間違うほどの刀を打てる人物はいったい誰なのか。
小日向は、引退した義父である先代三十三世にその刀を見せると、「せいそうち」
という謎の言葉を紙に書いたのです。

そこで知った徳阿弥家の秘密とは・・・

ほかに、精神科の医師が語る、ある女性との不思議な関係「糸電話」、映画の
キャメラマンが語る、時代劇での不思議な体験「立花新兵衛只今罷越候」、
軽井沢の女性庭師の語る「百年の庭」、三千人の構成員を配下に持つヤクザの
七代目組長の語る「雨の夜の刺客」などなど。

裏表紙の説明にはミステリーとありますが、いわゆる犯人探し的なものは
ありません。ただ、こういう謎があって、これにはこういう訳、を本人が語る
という形式になっています。

ひとつひとつの話が、とても味わい深いです。

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半村良 『すべて辛抱』

2014-04-22 | 日本人作家 は
半村良の作品は、直木賞受賞作の「雨やどり」と続編の「たそがれ酒場」、
そしてマンションが舞台の「湯呑茶碗」の3作しか読んだことはなく、
一般的に有名なSFは、まだ読んでいません。

それよりも、以前何かで読んだのが、宮部みゆきが時代小説を書くときに
参考にしているだか影響を受けただかに4人の作家の名前をあげていて、
その中の一人が半村良で、ちょっと驚いたのを覚えています。

といっても、映画にもなった「戦国自衛隊」もある意味時代小説ですけど。

というわけで、ガッツリ時代小説が読んでみたいなあと思って本屋に行って
探して買ってきたのが『すべて辛抱』。

時代は江戸の後期、下野(現在の栃木県)の鹿沼に、亥吉と千造というふたりの
少年がいました。亥吉に父はなく、母親のおよしは未亡人、隣近所の畑仕事や
田植えの手伝いでかろうじて生活しています。千造は両親がいない孤児で、
およしが引き受けて、亥吉と千造は幼い頃から兄弟同然の暮らし。

ある日のこと、村の廃寺にどこかからお坊さんがやってきて住み着きます。
妙粋と名乗るお坊さんのもとに、およしは亥吉と千造に教育を受けさせて
やってくれと頼みに行きます。

村には他にも子供たちはいるのですが、彼らはもっとちゃんとした寺子屋で
学び、紙も筆もない妙粋は、地面に字を書いて亥吉と千造に教えます。

やがて、十一歳になった亥吉と千造は江戸に旅立つことに。亥吉は下野屋
という薬種問屋へ、千造は佐野屋という麻問屋へそれぞれ奉公に。

亥吉は、熱心に働き、五年で小僧から手代控えに出世します。仕事おぼえが
早いことと、何より田舎で妙粋に文字と子とばぢかいを教わっていたのが
奉公仕事にだいぶ役立ちます。

そのうち、亥吉の働きぶりが若旦那の目に止まります。大旦那は薬種問屋
の他に米相場や材木市場といった金融で金儲けをしていて、大旦那の死後、
若旦那の幸太郎が店主になると、幸太郎は金融の場の付き添いに亥吉を
連れていくことに。

そして、洒落着屋という呉服屋を買い取った幸太郎は、そこの経営を亥吉と
弥吉という先輩手代とふたりに任せます。

亥吉の先見の明で、洒落着屋は大繁盛。しかし、亥吉はクールというかリアリスト
で、この流行商売はいつか廃ると見切っています。今後の洒落着屋の方向性を
弥吉と話し合った数日後、亥吉は下野屋に戻ることに。

そこに、亥吉を尋ねて客が。なんとその客とは千造で、話をきくと、佐野屋に
奉公に上がろうとしたら主人はそんな話は聞いてないと言い、番頭に違う奉公先
を紹介してもらうとそこは湯屋で、すぐに辞めてしまい、それからどうにか
こうにか生きてきたようです。

さて、ふたたび薬種問屋で働くことになった亥吉ですが、旦那に呼ばれ、今度は
溜池の料理屋を手伝って欲しいと言われます。
じつは、世間では洒落着屋を繁盛させたのは弥吉だという評価になっていますが、
弥吉は亥吉の的確なアドバイスに沿って経営していて、旦那はそれを知って、他
の店を任せたいと考えていたのです。

そして、三蔵という男を紹介されて、亥吉は「溜池屋」という料理屋の下働きを
はじめることに。

しかし時代は老中松平定信が定めた寛政の改革の真っ只中、奢侈禁令で溜池屋の
経営にも徐々に影響が出始めます。お武家商売の溜池屋はここらが潮時だと三蔵は
店を畳みます。しかし三蔵は江戸のあちこちで茶店を経営していて、亥吉は代理と
して任されます。
亥吉は仕事をまじめにこなし、いく先々で高く評価されますが、自分の中では
「これじゃない」という気持ちが膨らんでいきます。

三蔵が死んで店を受け継いだ亥吉は、新しい商売をはじめ、それが軌道に乗って
きたら他人に任せるといった「新店開き」と呼ばれるようになります。

ある日のこと、ひょっこり現れた千造と話をしているうちに、ふたりで商売を
はじめてみようとなり・・・

亥吉と千造というふたりの人生を描いている部分と、当時の江戸の政治感、経済感
、そして江戸後期から幕末に向けて時代が変わっていく空気感が描かれていて
とても興味深く読むことができました。

あとはなによりも感じたのは、やっぱりこの人は文章が上手だなあ、と。
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佐々木譲 『笑う警官』

2014-04-16 | 日本人作家 さ
この人の作品も「読まずぎらい」でした。というか警察小説と呼ばれる
もの全般的に。

というのも、実社会において、警察機構があまりに小説的といいますか。
こうなっちゃうとフィクションとしてのエンタテインメントが素直に
楽しめないんですよね。

札幌大通署の刑事、佐伯は、小樽まで出張ってある犯人の逮捕に苦労させ
られます。というのも、先月まで稚内署の地域課にいた警官と組まされた
ので、あやうく犯人が不法所持していた銃で撃たれるところだったのです。

刑事経験のない警官が、北海道一の歓楽街ススキノを抱える大通署の刑事課
に配属されることになったのか。それにはある事件が原因になっています。

道警本部生活安全部の郡司という警部が、拳銃の不法所持ならびに覚せい剤
の密売をしていたのが発覚、道警はこれの対策として、部署や地域に長く
いさせないように頻繁に人事異動させるという方針に。
佐伯も去年までは釧路署の地域課に勤務していました。長くいれば癒着が
生まれるから異動させるというの郡司事件の解決策ではありますが、現場には
刑事経験のない人が不慣れな捜査をしなければならないという弊害も。

羽幌署の交番勤務の笠井が、駐在所で死んでいたのが発見されたという一報が。
銃の暴発事故だったのか、自殺か。
この笠井は、元道警総務で、郡司の件をリークしたと噂される人物で、異動と
称して”飛ばされた”のでした。

そんな中、事件が発生。円山のマンションで女性の変死体が発見。

首を絞められて殺された女性の身元確認をしたら大変、現役の女性警官だった
のです・・・

被害者は北海道警察本部生活安全部の水村朝美巡査。しかも現場のマンションは、
道警本部が借りていた、いわば”隠れ家”だったのです。

この事件は、管轄の大通署から、本部に捜査の引き渡しが。そして、生前に水村
と交際していた生活安全部の上司の津久井が重要参考人に。
この津久井という人物、郡司の部下だった男で、郡司事件は彼のスタンドプレー
でできるわけはなく、絶対に片腕がいたはずで、それが津久井だったと噂された
のですが証拠不十分で地方に飛ばされることはなかったのです。

佐伯は、津久井がそんなことするはずないと信じますが、被疑者は津久井と断定、
しかも覚せい剤吸引で幻覚症状が出ていて、拳銃の所持も可能性大ということで、
射殺命令が出されたのです。

すると、その津久井から佐伯に電話が。今日は非番で、同僚から水村殺害の指名
手配と聞かされた、と。佐伯は、津久井の「僕はやってません」という言葉を信じます。

しかも津久井は、翌日の道議会特別委員会に出席することになっていて、警察の
不正経理問題の委員会で証人として呼ばれていたのですが、誰を証人で呼ぶかは
道警には知らされていないはず。

この話はどう考えてもおかしい、と佐伯の意見に同調する数人が津久井をかくまい、
なんとしても翌日の委員会に出席させなければならず、それと同時に水村殺害の
真犯人探しも行うのですが・・・

アメリカのドラマ「24」を見ているかのようなスピード感。そしてドキドキ感。

警察において「うたう」つまり組織を売ることは何よりも重罪とみなされていて、
まあ閉鎖的な組織に陥りがちなことですね。
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宮部みゆき 『英雄の書』

2014-04-13 | 日本人作家 ま
たしか4年か5年前くらいにこの本の単行本を本屋で見かけたのですが
けっこう厚くて上下巻だったので、こりゃ文庫が出るまで待とうと思い、
それからずいぶん経ってしまいました。

小学5年生の森崎友里子は、学校での授業中、先生から家に帰るようにと
言われます。

母から衝撃的な話を聞かされる友里子。なんでも兄の大樹が中学校で、
同級生2人を刺して逃亡、その後行方不明となっている、と。

スポーツ万能で勉強も出来、明るい性格だった兄がなぜそんなことを・・・

兄の部屋に入り、そこで、いつか見た不思議な夢で聞いた歌が思い浮かび、
友里子は口ずさみます。すると、兄の部屋の本棚のほうから

「お嬢ちゃん」

と声が。

それは、表紙が何語で書かれているかわからない、赤い本。その本が友里子
に語りかけているのです。

夢の中で見た、兄が王様みたいな人といっしょにいたことを本に説明すると、
兄は”英雄”にとりつかれてしまった、というのです。

しかし、と友里子は考えます。ふつう”英雄”とは正義の味方、ヒーローの
ことをいうのではないか。なぜ兄は”英雄”に影響されて同級生を刺したり
したのか。

本はその問いには答えず、また”もとの本”に戻ってしまいます。

翌日、友里子は学校に行くと、友達や同級生がよそよそしく接し、中には
あからさまに「同級生を刺して行方不明になったヤツの妹」というふうな
態度を見せてくる子も。

いたたまれなくなった友里子は逃げるようにして家に帰ります。

夜になってふたたび兄の部屋に入った友里子は、赤い本に呼びかけます。
どうしても兄の行方を知りたいと訴えると、本は、友里子のお父さんの
叔父さん、大叔父の別荘に行けば分かると教えてくれます。

しかし、子供である友里子はその別荘の行き方が分からず、両親に、「
前に行った事のある大叔父さんの別荘におにいちゃんがいるかもしれない
から探しに行こう」と提案してみると、大叔父が亡くなってから管理も
してなく誰も住んでないはずで、そこに大樹がいるかも、と乗り気に
なって、車で別荘へ向かうことに成功します。

道中、友里子は車の中で赤い本と会話をします。そこで教えてもらった
のは、”英雄”とは本のことで、その本は大叔父さんが買ったもの。
そして、”英雄”は”無名の地”で封印されている、ということ。

別荘に入り、図書室へ向かいます。すると、書棚の本が光りはじめ、
赤い本に向かって「アジュよ、なぜその娘を連れて戻ってきた」
と語りかけます。

兄の部屋にあった本は”アジュ”という名前で、アジュは友里子の兄の
ヒロキが”エルムの書”を持ち出してしまい、”器”になってしまった、
と説明します。
すると、図書室の本の中の一冊が、ただの”器”ではない、”最後の器”
だと言うと、アジュは驚きます。
そして、”無名の地”では破獄が起こり、封印は破られた、と・・・

なんのことか意味が分からない友里子は、とにかく兄が大変なことに
なっているということで、その”無名の地”に連れてってほしいと
お願いします。

そこで、友里子は額”オルキャスト”、「印を戴く者」となり、”無名の地”
へと旅立つことに・・・

そこで出会う、「無名僧」と呼ばれる、同じ服装、同じ顔、名前も無く個性も
無い集団。彼らは何をしているのか。何のためにここにいるのか。”無名の地”
では、”狼”と呼ばれる者が、きっと友里子を助けてくれるだろう、と。
”狼”というのは何者なのか。
兄が憑かれてしまった”英雄”こと”黄衣の王”はどこにいるのか。そもそも
大樹はなぜ同級生を刺したりしたのか・・・

とまあ、ここまでが序盤。その後、友里子はユーリと名を変え、赤い本のアジュ
はネズミに召喚され、ソラという無名僧と、”狼”のアッシュと、アッシュの故郷
であるヘイトランドへと向かいます。

この話の中では物語の作家は”紡ぐ者”とされています。つまりあるひとつの世界を
生み出した者。正直に書きますと、どうにも終始、説明に普請して肝心の物語部分が
おざなりになってる感がありますが、しかし読み終わってみると、どうやらそこは
重要な部分ではないように思えてきます。

宮部みゆきという”紡ぐ者”の誕生させた、あるひとつの世界に読者を飛び込んで
来させる、受け身で物語を読むのではなく、能動的に”知ろう”とする、ある意味
”読む力”が問われるのではないか、と。




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パトリシア・コーンウェル 『神の手』

2014-04-08 | 海外作家 カ
この「検屍官スカーペッタ」シリーズも14作目。しかしまだまだ先はありまして、
去年アメリカで21作目が出たそうで、うーん。

ケイとマリーノはフロリダの法医学アカデミーで、地元警察の捜査協力として
働き、一方ベントンは、ボストンの精神病院で殺人犯の研究をしています。

マリーノは突然、医師のジョニー・スイフトの自殺の件を切り出してきます。
というのもマリーノの家に「ホッグ」と名乗る人物から電話があり、なぞの
メッセージを残したのです。

ベントンの研究対象である死刑囚は、フロリダで犯した殺人について話します。
時期的に、この死刑囚が語った現場のあたりで家族が行方不明になって、老婆
が殺害されるという事件があり、さらに、ベントンのいるボストンの公園で
女性の惨殺死体が・・・

マリーノはケイになぜかきつい態度で、ケイはケイでベントンに冷たい態度。
ここにも謎の人物の陰謀が・・・?

ところでルーシーはというと、こちらもなぜか自暴自棄になって酒場で仲良く
なった相手を部屋に連れ込んだりと。

さすがに14作までくると、敵というか犯人もだんだんパワーアップしてきます。
パワーアップというか、容易には捕まりそうにない設定ですね。

「人はなぜ人を殺すのか」というテーマもあり、脳の障害とか病気とかで片付けて
はいけないんでしょうけど、その「どうして」の一因といいますか、そういう部分
も掘り下げて描いていますので、単純な捜査ミステリーとは違う側面も。








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トマス・ブルフィンチ 『アーサー王物語』

2014-04-04 | 海外作家 ハ
アーサー王という名前はたびたび目にしたりするのですが、じっさいは
「で、誰?」状態でした。
薄っぺらい知識ですが、円卓会議、エクスカリバー(本書では”エスカリバー”)
ぐらいしか知りませんでした。

六世紀ぐらいにブリテンにいたらしいのですが、まあ真偽のほどはさておいて、
ちょっと前にイギイスのニュースでエクスカリバーの刺さってた岩が発見された
とかいうのがありましたね。

アーサー王は、ブリテン王コンスタンスの孫にあたります。コンスタンスの長男
モインズが王位を継いだのですが、家来の裏切りにあってサクソン族に制服され、
その家来ヴォーティガンが王になります。
ところが、モインズのふたりの弟ウーゼルとペンドラゴンがヴォーティガンと戦い
魔法使いマーリンの助けを借りて勝利し、ペンドラゴンが王位につきます。

サクソン族がふたたび攻めてきて戦いには勝利しましたがペンドラゴンが殺され、
ウーゼルが王位につきます。ちなみにこの話の中では、マーリンがアイルランドから
魔法で石を運んでペンドラゴンの墓を築きます。これがストーンヘンジなんだ
そうです。

で、ウーゼルと王妃イグレーヌとの間に生まれた子がアーサー。

アーサーは、父の死後、15歳で王位につきます。しかしウーゼルの重臣の一部から
反対があり、教会の司教に説得してもらいます。
すると、教会の外にいきなり大きな岩に突き刺さった剣があらわれます。岩には

「わが名はエスカリバー 正しき王への宝なり」

という言葉が刻んであります。アーサーが王になるのを認めない貴族や兵士たちは
剣を岩から引き抜こうとしますがびくともせず、アーサーがやってみたらスポッと
抜けます。

その後アーサーはブリテン島の東部を制圧、サクソン族を追い払い、それから
北部スコットランド、アイルランド島も制服します。
アーサーはギネヴィアと結婚し、ローマ帝国と戦争をし、フランスの山に住んでる
人食い巨人と戦ったりします。

とまあ、アーサーに関する話はじつはこのくらいで、あとは周囲の部下だったり優秀な
騎士の話になります。
ラーンスロットというめちゃくちゃ強い騎士が奥さんのギネヴィアと恋仲になるのですが、
そのくだりにちょっと出てくる程度。

円卓会議とは、ここに座る資格のある者は王への忠誠を誓い、戦略などを話し合うもの。
上座も下座もないので皆平等ということですね。日本でも農民の一揆などで、誰が首謀者
(リーダー)か分からないようにするために円状に書いた、なんて話もあります。
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東川篤哉 『もう誘拐なんてしない』

2014-04-01 | 日本人作家 は
この作者の作品は基本的にはフザケてます。しかし軸となってる
ミステリーの筋書きはしっかりしていて読み応えがあるんです。
そうなってくると、どこらへんまでをリアルに描くのか、たとえば
「謎解きはディナーのあとで」でいうと警察機構。そもそも超大金
持ちのお嬢様が刑事というフザケた設定のなかで警察署やら同僚先輩
もフザケて書いたら収拾がつかなくなってしまいます。

『もう誘拐なんてしない』では、北九州のヤクザが登場するのですが、
馳星周の作品に出てくるようなヤバイほうではなくて、ちょっとコミカル
に描かれていますけど、そこそこリアルにしています。

山口県下関市の大学生、翔太郎は、夏休みにバイトをしようと大学の先輩
の甲本から紹介されたたこ焼きの移動販売をはじめます。

関門海峡の向こう側、福岡県北九州市でたこ焼きを売っていると、そこに
女子高生が「助けて」と。

悪い人に追われているらしく、たこ焼きの移動販売車に乗せて逃げます。
話を聞くと悪い人とはヤクザで、女子高生に名前をたずねます。

彼女の名前は花園絵里香。

北九州で「花園」といえば「花園組」。翔太郎はおそるおそる聞いてみると、
お父さんは組長よ、とあっけらかんと答えます。

ふたりは下関に向かい、絵里香は下関の病院に連れて行って欲しいと言います。
どうやら、絵里香の異父妹が入院していて、しかしパパ(組長)からは見舞い
に行くのを許してもらえず、隠れて見舞いにきている、とのこと。

手術をすれば助かる可能性はあるのですが、妹のお父さんは亡くなってしまい、
お金がなくて困っています。

そこで翔太郎は狂言誘拐を思いつきます。つまり、絵里香を誘拐して、パパ(組長)
から身代金をもらって、それを妹の手術費用にあてるのです。

とはいっても相手はバリバリのヤクザ。そこで翔太郎は先輩の甲本に相談にのって
もらうことに。
手術費用は500万円なのですが、かりにも組長の娘を誘拐して身代金が500万では
少ないということで3,000万円にします。

一方、花園組では組長が絵里香の帰りが遅いとご立腹。そこに電話が。出てみると、
なんと娘が誘拐されたではありませんか。

狼狽する組長には任せられず、花園組の組員の山部と絵里香の姉、皐月が身代金
の受け渡しに行くことになったのですが・・・

このあと事態はなぜか殺人事件や偽札と、とんでもない方向に。
ラストの「怪人ワカメ男」には笑いました。
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