リクルートスーツは不要、卒業後3年以内もOK──ソニーのユニークな新卒採用方針(ITmedia)
「卒業後3年以内も対象」「服装は自由」──ソニーが2013年度新卒採用でユニークな方針を掲げている。「多様な人材がいるからこそイノベーションが生まれる」として、「それぞれの個性を大切にするため、日本特有の“シューカツ”というルールを変える」という。
対象に卒業後3年以内の人も含めることで卒業後に海外留学したり、起業したりといった「様々な選択肢を歩んだ人と出会いたい」という。マニュアル化された面接を避けるため、選考方法では複数のコースを用意。ワークショップや企画提案、プログラミング手法のディスカッションなどから選べるようにする。
さて、ソニーの2013年度新卒採用方針が、ちょっぴり話題を呼んでいるそうです。まだ就職の決まっていない2012年卒業予定者をこれから大々的に採用しようとか言うのなら画期的と思えるところですが、その中身はどんなものでしょう。このソニーの新卒採用方針を大きく紹介するメディアでは「卒業後3年以内も対象」「服装は自由」という点を指して「ユニーク」と呼んでいます。へー。「卒業後3年以内も対象」って割と最近に民主党政権が言い出したことだったはずですが、その当時のことを忘れている人もいるのでしょうか。
民主党内閣が「卒業後3年以内も」新卒者と同様に扱うべしとの提案をした時には、周囲の反応も随分と白けたものだったように思います。何を馬鹿げたことをと失笑を買うばかりであったように記憶しているのですが、同じことをソニーが言い出したら「ユニーク」なものとして紹介される、この点に関してばかりは民主党内閣に同情してしまうところです。まぁ、実際に採用の権限を持っている民間企業と、ただ笛を吹くだけの政府とでは、掲げたものが同じでも意味合いが異なってくることはあるのかも知れませんが。
どのみち、「卒業後3年以内も対象」「服装は自由」とか、その程度のレベルで「ユニーク」なものに思われてしまう日本の就職活動って何なんだろうと、首を傾げるばかりです。とりあえず新卒一括採用を否定しておけばOKみたいなマンネリ化した日本型採用批判みたいなもので、「ユニーク」の基準が少しばかりずれているように思います。では本当に「ユニーク」な採用を目指すなら、果たしてどうしたら良いのでしょうか。
奇をてらわずに手堅く、それでいて従来の就職/採用活動に変化をもたらすためには、有名どころでは極端に保守的な採用方針を誇るユニクロのやり方(参考)を裏返してみると良いかもしれません。つまりユニクロですと「早ければ大学1年からでも採用」「採用したらユニクロでアルバイト」「卒業したら店長に」みたいに日本の就職事情を悪臭が漂うまで凝縮したかのような方針が掲げられているわけですが、この逆をやれば確実です。すなわち「大卒見込に限らず採用、採用時期は遅くても良い」「学生のうちは会社の外での経験を重視」「卒業したら就職ではなく、本人に稼ぐ必要が出てきた時点で本採用」――このようにユニクロとは正反対のことをやれば、多少は風向きも変わってくると思います。ソニーはまぁ、60点くらいですかね。
なお「人生の選択肢は無限にあります」とソニーの採用サイトでは掲げているのですが、例示されているのは「海外の大学に留学する」「起業する」「海外の企業でインターンシップを経験する」「家業を手伝う」「世界を旅する」と、どうにも通俗的な代物ばかりです。どうせだったら「パチンコや競馬にはまって身を持ち崩す」とか「部屋に引きこもって外に出ない日々を送る」とか「ひたすらネット上でソニー製品を擁護し任天堂もしくはアップル製品を叩き続ける」みたいな選択肢も認めてくれたら良さそうな気がするのですが、そこまでの覚悟はなさそうに見えます。「無限にあります」と大きく出たのですから、世間的にはネガティヴに扱われがちな生き方だって肯定してみせろよ、と思わないでもありません。
それはさておき、「起業する」のもソニー公認の「人生の選択肢」のようです。コンサルなど、とかく無責任な人ほど他人に起業を勧めたがるものですが、しかし本人がその気になって起業して、若くして少なからぬ借金を背負うようにでもなったら誰が責任をとってくれるのでしょう。万が一、起業に成功したらソニーに就職する必要もなくなりますので起業に成功した人が応募してくる可能性は極小です。では起業に失敗して借金漬け、居場所がばれたら職場にまで取り立ての電話がかかってくるようになった人とかでも、ソニーは積極的に採用してくれるのでしょうか。
起業なんて本人からすれば博打に等しい、当たれば大きくても大抵は外れるものです(言うまでもなく、景気が悪ければ悪いときほど当たる確率は下がります)。そして外れたときのダメージは小さくない、下手をすれば家族や友人をも巻き込みます。身内に起業しようなんて言い出す人が出てきたら、それは全力で止めないとダメです。もちろんあなたが筋金入りのギャンブラーなら話は別ですけれど(でも身内に賭博癖を持つ人がいたら、趣味を改めさせたくもなりますよね?)。
期待値として、博打を打つ本人は儲からないものです。その代わり、博打を「打たせる」側が得をするようにできているわけです。起業とは要するに、そういうものなのでしょう。つまり起業に成功すれば大きいものの、ほとんどは失敗する、でもそのリスクは起業した個人(及びその身内など)に負わされます。これが社会全体から見たらどうなのか、誰かが起業に失敗しても、それが他人である限りにおいて痛くも痒くもありません。しかし、万が一でも誰かが起業に成功すれば経済にとってはプラスになります。あたかも起業さえすれば上手く行くかのように甘言を弄して若者を惑わそうとする人は後を絶ちませんが、それは少なくとも本人のためを考えての言葉ではないように思われます。
3年という区切りもまた、とってつけたような代物ですからね。社外での経験を求めるなら、仰るように3年じゃ足りないでしょうし。まぁ、「改革してます」というポーズをとってみただけ、それを周りが囃し立てているだけと言えそうです。
>やすさん
ドラえもんがのび太くんのところにやってきたのは、就職できなかったから起業した挙げ句に失敗したのび太くんのせいで子孫までが貧乏になってしまったからなんですが、今なお「就職できないなら企業も視野に」なんて平然と語る人が絶えないのは、ちょっと驚きでもありますね。企業を勧める声は、無視してください。自分の意思で「どうしても起業したい」というのでなければ、博打を打つ必要はありませんから。
笑わせていただきました。
例の親戚の余計な一言ですがやはり無視しようと思います。
大博打ですからね。
考えてもいないことを言われたものですからただただ驚きました。
3年って、なにを基準にした数字だよ?
と思う今日この頃。
その基準が示されなければ、結局のところ「年上の後輩・部下」が嫌なだけだろう?と勘繰ってしまうだけ…。
人生経験を積む回り道が、ちょうど3年で終わるなんて言うこともないだろうし。
「就職活動」が「就活」と略されるようになってから、
それにまつわる形式の馬鹿馬鹿しさの度合いが強まったような気がします。
企業側の「ポーズのアピール」も。
まぁ、ソニーに限らず求人広告ってのは元から嘘八百ですからね。どのような仕事をさせるのか、そういうビジョンが明確なら応募する側も対策のとりようがあるのでしょうけれど、往々にして日本の企業の場合は「コミュニケーション能力重視」で、まずは「総合職」として何をやらせるかは後から決めるものですし。
起業するような人材を採用したら
ソニーは社員全員が起業してしまい
会社が分裂してしまうという事でしょう。
どのような仕事をさせるかで社員を雇ったほうがいいのでは。
ソニーはどんなことを将来したいのか
まず決めてそれに沿って社員を雇うのが一番いい選択では。