非国民通信

ノーモア・コイズミ

誤解を広めてきたのは誰だ

2012-12-29 23:06:17 | 社会

牛タン風評被害、東電1300万円で和解 仙台の店と(朝日新聞)

 東京電力福島第一原発事故に伴う風評被害で客が減ったとする仙台市の牛タン飲食チェーン店に対し、東京電力が1300万円を支払う和解が、政府の原子力損害賠償紛争解決センター(原発ADR)の仲介で成立した。仙台牛タンの大半は外国産だが、地元産との誤解による風評被害が認められた。

 店側の代理人弁護士によると、客の7割は宮城県外の観光客で、牛に与える同県内の稲わらから放射性セシウムが検出された昨夏、売り上げが激減した。「地元産と思い込んでいる客が多く、風評被害は大きい」として1900万円の損害賠償を求め、昨年12月にセンターに申し立てていた。

 

 東京電力と仙台の牛タン飲食チェーン店との間で和解が成立したそうですが、風評被害を広めてきた人々やメディアは放っておいて良いのですかね? 朝日新聞出版とか中日新聞社など低俗な煽りメディアの出版元くらいは提訴しても罰は当たらないように思うのですが、やっぱり相手にするなら叩きやすいところを、というのはあるのかも知れません。

 賠償支払いを命じられたのは東京電力だけですが、原告の飲食企業に損害を与えたのは東京電力だけではないわけです。一つには牛肉が危険であるかのごとく誤解させ風評被害を広めてきた人々やメディアがあって、この辺は相手をに絞りきれないだけに訴訟の対象としては扱いにくいものではあるのでしょうけれど、明白な加害者が野放しにされていることには一抹の疑問を感じるところです。

 以前にも触れたことですが、原発事故もあって食品の「産地」を気にかけるようになった人もいるかと思います。そして気づくであろうことは、流通している食料品は国産ばかりだということです。あれだけ食糧自給率の低さを危機として伝えられているにも関わらず、店頭で見かけるのは日本産ばかりなのはなぜでしょうか。日本では食糧自給率をカロリーベースで計算するという独自の算出方式を採っているために誇張して伝えられているところもあります。それ以上に、日本の食糧自給率の「低さ」を支えているのは専ら「家畜の餌が輸入だから」なのですね。国産の牛や豚も鶏も、日本産ではなく国外から輸入した飼料を食べて育っている、故に日本の食糧自給率は低いと。

 その辺を理解していれば「地元」で取れた餌を主食としている家畜なんて相当な例外と分かりそうなところですが、まぁ何も学ばずに頭の中のイメージを膨らませる一方の人もいるのでしょう。そして、あたかも東北全域の農産物やガレキをも一緒くたに危険物、汚染物扱いするような、馬鹿馬鹿しくも深刻な風評被害をもたらす振る舞いを続けてきた人もいるわけです。そもそも健康被害を想定するには基準値越えの食品だけを一生涯にわたって食べ続ける必要があるわけで、なんとも現実味の無い話ではあるのですが……

 なお「仙台牛タンの大半は外国産だが、地元産との誤解による風評被害が認められた」とのことです。時事通信による別の報道では「提供しているのは外国産の牛タンだが、来店者の7割は観光客で、国産牛と思っている人も多い」と原告が主張していたそうです。これ、どうなんでしょうね。この「誤解」を広めた「犯人」は誰なのかと考えると、ちょっと印象が変わってくる気がします。

 とりあえず「仙台の名物」として牛タンは認知されており、そのイメージに乗じて売られてもいるわけです。そこで実際に供されているのは外国産の牛タンであるにも関わらず、仙台という特定地域のイメージによって付加価値を持たせてきた、そこから飲食企業は利益を得てきたはずです。今回こそ不当な風説の流布によって仙台を含めた東北地域産というものが悪いイメージを持たれるようになってしまいましたけれど、原発事故「前」までは逆だった、地元産というのがブランドだったと言えます。

 そんな地元「仙台」のブランドに乗じて外国産の牛タンを売ってきた事業者の側に問題はないのでしょうか。元より消費者の利益のため「当店で提供する牛タンは全てアメリカ産です」などと産地を明示してきたのならいざ知らず、しれっと「仙台名物」として売り込んできたのなら因果応報という気がしないでもありません。地元産との客の誤解に乗じて余分に収益を得てきた分までをも東京電力が損失補填を命じられるとすれば、流石に気の毒だと思いますね。

 

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