非国民通信

ノーモア・コイズミ

あの前原ですら相対的にマトモな部類に見えてしまう

2011-06-29 23:31:26 | ニュース

広がる消灯、障害者不安 車いす利用「エレベーター停止困る」(産経新聞)

 ■バリアフリー両立を

 東日本大震災と福島第1原発事故に伴う電力不足や関西電力の節電要請で、近畿地方の官公庁や企業などで節電の動きが広がるなか、施設の利便性の低下を懸念する身体障害者から困惑の声が上がっている。「車いすを使っているので、エレベーターなどが停止してしまうのは困る」「照明を目印にしていた視覚障害者は、暗い駅などで消灯されると身動きが取れなくなり、大変危険」といった声も多く、施設関係者は「極端な節電に走らず、バリアフリーと両立していく方法を考えてほしい」と訴えている。

 「官公庁やデパートではすでにエスカレーターやエレベーターが止まっている場所が多く、買い物にも行きづらくなってきた」。脳を保護する脳脊髄液が漏れ、歩行困難などの症状が出る「脳脊髄液減少症」のため、約10年前から車いすを使用する大阪市西淀川区のNPO法人理事長、栂(とが)紀久代さん(59)は、急速に広がりつつある“節電ブーム”への不安を口にする。

(中略)

 大阪府視覚障害者福祉協会(大阪市天王寺区)で勤務する全盲の男性職員(33)は、JRや私鉄などが導入を検討している「節電ダイヤ」について、「自分たちは、急にダイヤが変更されても掲示板を確認することができないし、情報を瞬時に把握するのは難しい」と、ため息交じりに話す。

 同協会によると、視覚障害者の半数近くは、わずかに視力が残る弱視者で、弱視者の多くはこれまで、照明の光などを目印に移動などを行っていたが、消灯の動きが広がっていることで、日常生活に影響が出始めているという。

 本来ならば節電の必要がなかったはずの関西圏でも、脱原発ドミノとも言うべき状況の中で俄に節電圧力が強まり続けています。この頃は脱原発自体が人気取りには格好の材料ともなりますし、節電にかこつけて隣人に節制や我慢を強いることを好む首長や市民も少なくない中では、こういった状況への批判はなかなか上がってこないものです。節電にかこつけて利用者や従業員に過剰な不便を強いたり、節電を装いつつ実は電気代を節約しているだけみたいな企業は非難を浴びてしかるべきではないかと思われるのですが、実態はいかがなものでしょう。むしろ便利さの方が過剰な贅沢として忌避され、適度に不便さを装ったぐらいの方が世論のウケは悪くないのかも知れません。しかるに、こうした節電ブームの影で真っ先に困窮するのは、引用元で挙げられたような障害者などの社会的弱者でもあります。


前原前外相「急激な脱原発はポピュリズム」 首相を批判(朝日新聞)

 民主党の前原誠司前外相は26日、神戸市内で講演し、菅直人首相が原発政策見直しに意欲を示していることについて「今の民主党は少しポピュリズム(大衆迎合)に走りすぎている。私も日本が20年先に原発をなくすことは賛成だ。しかし、振り子が急激に脱原発に振れた時、皆さんの生活が一体どうなるか考えるのが本来の政治だ」と批判した。

 首相が主導した中部電力浜岡原発の運転停止についても「止めることの是非と、止め方の是非を後で検証しなければならない」と語った。菅政権が検討する消費増税などについても「日本がかかっているデフレという病気を脱却し、安定した経済成長に移るまでは増税すべきではない」と慎重な考えを示した。

 この頃は産経新聞の方が他紙より弱者目線の記事を載せる頻度が高いのではないかというフシがあったり(反対に弱者の立場を無視したブルジョワ趣味丸出しの論調が目立つのは毎日新聞ですね)、あるいは今回の前原が随分とマトモなことを口にしたりと、まぁ天変地異を思わせる状況が続いています(もっとも橋下とかダイヤモンドの類は原発事故後も一貫してぶれることなくトンデモですが)。もちろん民主党がポピュリズムに走るのが今に始まったことではないのは言うまでもなく、前原発言に関しては「今の民主党も相変わらずポピュリズムに走りすぎている」と訂正したくなるところもありますが、その先はどうでしょうか。

 20年先に原発をなくすというのは難しいのではないか、例によって原発を一括りするのは乱暴で、老朽化の度合いや設計の新旧を鑑みて個別にリスク評価すべきではないか等々ツッコミどころはありますけれど、「皆さんの生活が一体どうなるか」というのは反原発の盛り上がりの中で忘れられがちなテーマだけに、これを持ち出しただけでも評価したいところです。そもそも東京電力管内は致し方ないところがあるにせよ、西日本は今まで通りの電力需給と生活を継続することが可能だったはず、しかるに「振り子が急激に脱原発に振れた」結果として、冒頭で引用したように弱者から真っ先に忍従を強いられる状況ができあがっているわけです(もちろん労働や雇用環境にも影響は及びます、まずは不安定な立場にいる人から……)。いったい何を今の政治は目的としているのか、住民の生活が第一ではないのか、それとも脱原発が第一なのか、有権者からの支持を集めることが目的であれば後者を選ぶのが合理的なのかも知れませんが、それを本来の政治とは認めたくはないです。

 消費税に関しては「安定した経済成長に移るまでは増税すべきではない」とのことで、まぁ景気が回復しても消費税より先に累進課税を機能させるのが先ではないかと言いたくもなりますが、これでも今時はマトモな方に見えてくるのですから困ったものです。かつては不況であるにもかかわらず財政再建を優先しようとする「財政再建が第一」な人も少なくなく、不況時にやるべきことか?と疑問を呈しただけでも財政再建に反対しているかのごとく扱われたわけですが、今は「脱原発が第一」の人が跋扈していて、代わりの発電手段を確保できない内にやることか?と問いかけただけでも原発推進派扱いされる有様です。自説を押し通そうとするだけではなく、適切な状況かどうかを考えようとする姿勢を持っているだけでも、今時は貴重なんじゃないかという気がしてきますね。とりわけ政治家となればなおさらです。状況によっては前原がマトモな部類に入るほど、今日の政治を巡る言論は激しい速度で劣化を続けているようです。

 

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コメント (6)
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