非国民通信

ノーモア・コイズミ

悲しき亜熱帯

2011-06-25 22:52:21 | ニュース

埼玉・熊谷市で39.8度 6月の最高気温記録を更新(朝日新聞)

 梅雨の晴れ間が続く関東地方では24日、埼玉県熊谷市で39.8度を観測するなど、内陸部を中心に記録的な猛暑となった。気象庁によると、埼玉県鳩山、寄居両町、群馬県高崎、館林両市などの5地点で39度以上となり、国内での6月の最高気温を20年ぶりに更新した。これまでの最高は1991年6月に静岡市で観測された38.3度。記録的猛暑だった昨夏でも、最高気温は岐阜県多治見市の39.4度(7月)だった。

 35度以上の猛暑日は全国で53地点、30度以上の真夏日は442地点でいずれも今年最多。関東の内陸部は今年初の猛暑日となった22日から高温が続き、24日は太平洋高気圧に沿うように西からの暖かく乾いた空気が吹き込んだため、高温に拍車がかかった。各地で、熱中症によって病院に搬送される人が相次いだ。


熱中症で搬送、すでに685人…沖縄では死者も(読売新聞)

 熱中症で救急搬送された人は19日までの3週間に全国で685人にのぼり、うち沖縄県の女性1人が死亡したことが、総務省消防庁の調査(速報値)でわかった。

 九州・山口地方の今夏の気温は平年並みか、平年より高くなる見込み。節電のためエアコンの使用を控える家庭も多くなりそうで、関係者はこまめな水分補給などを呼びかけている。

 都道府県別の搬送者数は沖縄の67人が最多。愛知64人、大阪37人と続いた。このほか、福岡19人、大分12人、山口4人などとなっている。沖縄は昨年6月の1か月間(37人)を上回った。年齢層別で見ると、65歳以上が40・3%を占めた。

 死亡した沖縄県うるま市の女性は70歳代。沖縄地方が梅雨明けし、真夏日となった9日の夕方、自宅で就寝中に家族が異変に気づいた。救急隊員が駆けつけた際、室内は高温多湿の状態で、女性の体温は40度近く、汗をかいていなかった。

 さて、木曜金曜と恐ろしく暑い日が続きました。まだ暑さがそれほどでもなかった19日までの速報値ですら既に熱中症による死者が出ていることが伝えられていますけれど、今後はますます酷いことになりそうです。広瀬隆の占いによれば「今年の夏が昨年のように猛暑になることはまずあり得ない」とのことですが、占いをアテにして対策を怠れば大惨事を招くことでしょう。取りあえず以前にも書いたことですけれど、熱中症になりやすい、特に生命の危険にさらされるほど症状を悪化させてしまうのは、暑がりの人ではなく「暑さを自覚できない人」です。やはり高齢の人が多いわけですが、暑さを自覚できない、すなわち暑いのに「まだまだ平気」だと錯覚してしまう人も少なくなく、結果として救急車で搬送されることになります。死にたくなければ早めに冷房を入れた方が良いでしょうし、周りがそれを促すことも必要です。


エアコン停止作戦で会見ボードも新調…橋下知事(読売新聞)

 停電危機の際の「エアコン停止作戦」を打ち出した大阪府の橋下徹知事は22日午前、「エアコン切れば原発止まる」と書かれたボードを背に、報道陣の取材に応じた。

 ポロシャツ姿で「夏場の使用電力のほとんどはエアコン。一人ひとりの行動で、原発依存度は下げられる」と呼びかけた。

 橋下知事は、関西電力の八木誠社長と21日行った会談で、電力不足で大規模停電の危険性がある場合は、関西の府県民に「エアコン停止要請をする」と提案。この日朝、府庁で行う記者会見用のボードの模様替えも指示した。

 新調されたボードを背に橋下知事は「常に(エアコンを)切れと言っているわけではない。いざという時に一斉に行動してほしい」と理解を求めた。

 で、昨今の脱原発論の最大公約数的な姿を体現している橋下がこのように宣うわけです。「エアコン切れば原発止まる」なんてボードを掲げたそうですが、これから夏に向けてエアコンを切れば、先に誰かの心臓が止まります。脱原発のためなら罪なき民間人が死んでも構わないと思っているのでしょうか。まぁ、橋下が「尊い犠牲」を産むことに躊躇いなど感じないであろうことは想像に難くありません。「いざという時に一斉に行動してほしい」とも述べていますけれど、こういう危機に前にして大同団結、挙国一致的なムード作りも橋下は大いに好むところでしょう。例によって橋下には反対しているつもりの人も、こと原発が絡むと実質的に同じことを主張しているフシがあるだけに色々と危ういです。

 なお橋下によると「夏場の使用電力のほとんどはエアコン」だそうです。この辺は財政難の原因は公務員の人件費云々と似たような理屈で、不都合の原因を何か気に入らないものへ押しつけているに過ぎません。エアコンの電力消費は決して小さいものではないにせよ、家庭レベルで見てさえ冷蔵庫や照明、テレビやPC等々、負けず劣らず電気を消耗するものはいくらでもありますし、幾ら家庭レベルで節電に努めたところで産業用途だって抑えていかないと電力は絶対的に足りないわけです。もっとも産業用途を抑制すれば、それは第一に職場の空調など従業員の労働環境に関わる部分を削ったり、勤務時間を夜間や休日にシフトさせるなどの動きにしか繋がらないだけに、どのみち痛い目を見る人は変わらないとも考えられますが。

 橋下はポロシャツ姿で会見に臨んだそうです。どんなに暑くともスーツにネクタイで仕事に当たるべきという日本的な価値観が必然的に弱められようとしているのは、電力不足が迫る中では唯一の肯定的に評価できる点とも言えますが、ただ従業員なり職員なりが「自主的な」判断でポロシャツを着てきたらどうなるんだろうと思わないでもありません。知事なり会社上層部なりの号令で軽装が呼びかけられる中で、そのガイドラインに従った服装で出勤するのであれば橋下も咎め立てはしないでしょう。ただし橋下が「クールビズで」みたいな号令をかけるのに先立って、府の職員が自らの判断に基づきポロシャツでの勤務を始めたとしたら、それこそ非難囂々だったはずです。少なくとも風通しが良くなることはなさそうだな、という気もしますね。

 ちなみに私の子供の頃は、扇風機の風に当たり続けると死ぬと教えられてきました。出来るだけ扇風機の風に当たらないようにしろ、絶対に直接風に当たってはならないと口を酸っぱくして言われたものです。皆様の幼少時はいかがなものでしたか? まだエアコンがそれほど普及していなかった時代、悪玉はエアコンではなく扇風機だったのです。かつては読書や野球が悪癖として論難されていたのが、いつの間にかゲームや携帯電話が悪徳として批判の対象となったように、道徳が敵視する対象は時代と共に移り変わります。いずれにせよ「快適」をもたらすものは道徳的に断罪されやすく、その「快適」さを抑えこもうとする主張は左右問わず根強い支持を得ているのではないでしょうか。だから夏場に向けて快適さの象徴たるエアコンが悪玉としてあげられ、それを使わない節制が是とされるわけです。

 「誰もが何一つ不自由なく快適に暮らせる社会を目指します」なんてのより、「豊かさばかりを追わずにもっと慎ましく生きよう」みたいなことを説く輩の方が絶対的に賛同を集めるようになって久しいですが、こうした傾向が輪をかけて強まろうとしているのは頭の痛い話です。原発推進とか言っていた石原慎太郎にしてさえ節電を求めることに関しては妙に乗り気で、では石原に反対しているつもりの人はどうかと言えば、やはり「これからは低エネルギー社会だ、低消費社会だ」と方向性としては石原なり橋下なりと変わらない人が目立ちます。まぁ他人の欲望を抑え込みたがる、他人に我慢をさせたがる、それが日本人のアイデンティティになってしまったのかも知れません。

 

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コメント (16)
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