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非国民通信

ノーモア・コイズミ

単一民族主義の国よりは成功してると思うけど

2010-10-20 23:00:59 | ニュース

「多文化主義は完全に失敗」 メルケル独首相が発言(CNN)

ドイツの多文化主義は「完全に失敗した」――メルケル独首相が16日、自党の青年部の会議でこう述べた。

メルケル氏は演説の中で、「『さあ、多文化社会を推進し、共存、共栄しよう』と唱えるやり方は完全に失敗した」と語った。

メルケル氏は先月、CNNのインタビュー番組「コネクト・ザ・ワールド」でもこうした考えを示していた。9月27日の同番組でドイツのイスラム系住民について質問された同氏は、「今や誰もが、移民は我が国の構成員であると理解している。(しかし)彼らは同じ言語を話し、ドイツで教育を受けるべきだ」と答えていた。

世論調査機関ピューのプロジェクトが昨年行った推計によると、イスラム系住民はドイツ全人口の約5%を占める。これは約400万人のイスラム人口に相当し、西欧最多の規模となる。

 このニュース、なにやら日本国内の拝外主義者を大いに喜ばせてもいるようなのですが、実際のところはどうなのでしょうか。他文化主義は失敗したと党会合でメルケル首相が発言したとのこと、いったい何をもって「失敗」と言い切るのか、まぁ各種の社会問題を移民のせいにする人が増えた、そうした世論に媚びないと政権の座を維持できないようになったのだとしたら、それは確かに失敗と言えそうです。移民排斥の気運が高まり、それに同調した政治家ばかりが議席を得るようになるのであれば、他文化社会を推進しようとする試みが失敗したことを意味します。次からは、もうちょっと上手くやらないといけませんね。

 移民の増加した中でドイツの何が変わったのでしょう。とりあえずサッカーは強くなりました。経済を見ても、OECD諸国の中では鈍い方ながらも日本よりは確実に伸びています。そして教育面ということで2000年以降の国際学力テストを見ると、数学では20位→19位→20位と横ばい(日本は1位→6位→10位)、読解力で21位→21位→18位とやや上昇(日本は8位→14位→15位)、科学は20位→18位→13位と順調に伸びてきたわけです(日本は2位→2位→6位)。少なくとも移民受け入れに肯定的であったドイツの方が、欧州の拝外主義者が羨むような状況にある日本よりも、国としては成功しているのではないでしょうかね。確実なのは、移民排斥に走ったからといって問題が解決するわけではないということです。移民を拒んだからといって物事が上手く行くはずがないのは、日本という格好の反面教師が身をもって示しているところですから。

 日本語メディアでは内容に踏み込んだ報道が見つからなかったのですが、どうやらキリスト教的な価値観とイスラム教的な価値観の対立を強調したもののようです(参考、Das Mekka der Diskriminierung und Chauvinismus? - flagburner's blog(仮))。ドイツの与党であるドイツキリスト教民主同盟やキリスト教社会同盟とキリスト教の関係は、創価学会や幸福実現党のそれに比べれば格段に薄いでしょうし、有権者レベルでもアメリカみたいにキリスト教原理主義者が闊歩しているわけでもないように思われますが、イスラムという異文化への反発からキリスト教が拠り所として担がれているところもあるように思われます。もっともその辺りはあくまで価値観の対立、すなわち好き嫌いの話でしかありません。移民が具体的にどういう悪影響をもたらしているのか、それが移民排斥に舵を切ることで解決するのかどうかに先だって嫌悪を持ち出しているわけです。単に多数派が嫌っているものを叩くことで国民にアピールしているだけであるならば、本当に深刻なのは移民の問題である以前に不寛容の問題、及びポピュリズムの問題と見るべきでしょうね。



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コメント (8)
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