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非国民通信

ノーモア・コイズミ

過去に向き合う態度

2007-09-13 23:11:01 | ニュース

花形アナ、「ナチス称賛」で契約解除=家族政策めぐる発言に批判噴出-独 (時事通信)

 ドイツ公共放送、北ドイツ放送(NDR)の花形女性アナウンサーがこのほど、ナチス政策の称賛とも受け取れる発言で批判を受け、契約を解除される事態に発展した。

 エファ・ヘルマンさん(48)は公共テレビの人気ニュース番組「ターゲスシャウ」のキャスターを長年務めたほか、自分の名前を冠したトークショーや歌番組の司会、作家活動など幅広く活躍している。

 ところが、最新著作の宣伝に絡んで、「ナチス時代でも家族や子供、母親の存在といった価値が奨励された」とし、「これは良かったが、学生運動世代がこれを崩壊させてしまった」などと発言したと報じられた。

 実際のところドイツの戦後補償にも色々と問題はあるようですが、日本のそれとの決定的な違いとして、過去の過ちを公式に認めていることが挙げられます。ナチス政策は誤りであり、その賞賛もまた誤りであると、それが国是となっているわけです。過去の侵略や虐殺を、「誤りであった」と公式に認めている国と、詭弁と自分ルールを駆使して過去を塗り替えようとしている国、目に見える補償もさることながら、その過去に向き合う態度が両者を分けるのではないでしょうか。

 時には「今」の利益のために過去に目を瞑ることもあります。しかしその人過去の振る舞いを今さら修正することはできないとしても、その人が自らの過去の振る舞いをどう評価しているのかを問うことには意義があります。その人が自らの過去をどう評価しているのか、彼が過去にどう向き合っているのか、それによって彼を「これから」信頼して良いものかどうかが判断できます。

 例えば私は民主党を信頼できないのですが、その理由は民主党が自民党の共犯者であったからです。諸々の規制緩和に諸手を挙げて賛成してきた、今日の労働環境の悪化に積極的に荷担してきた過去を私は忘れません。そして一度たりとも反対することなく石原都知事を支えてきた与党としての民主党都議のことも忘れられてはならないでしょう。

 もし、自民党の共犯者としての過去を「過ちであった」と公式に認めるのであれば、過去の過ちを乗り越えて未来のために手を携えることも可能になるかも知れません。都知事選の時もそう、今まで一貫して石原都政を支えてきた過去の実績を隠すのではなく、それを公式に過ちと認めて謝意でも示したなら、その過去を乗り越えて未来のために手を携えることもできたかも知れません。ですが実際のところはどうでしょうか? 「今」がどうであるにせよ、「過去」の過ちを認めない者はその「過去」の過ちをいずれ繰り返すのではないか、そうした不安を与え続けます。

 そこで日本の場合、ドイツの場合です。過去に過ちがあって、現在は過ちを犯していないとした場合、その過ちを犯していない現在だけで信頼を得ることは可能でしょうか? 過去に罪を犯した人が二人いるとします。二人とも今は更正して真面目に暮らしているとします。そのうちの一人は過去の罪を反省しており、それが誤りであったと認めているとして、もう一人は「あれは自分が悪いのではない」「そんな過去はなかった」「あれは正しい行いだった」などと公言しているとしたらどうでしょうか? 前者が相手ならば、過去を克服して未来志向の関係を創ることもできるかも知れませんが、後者は絶えず周囲の人間を不安にすることでしょう。また過去の過ちを繰り返すのではないか、と。

 ちなみに問題となったナチスの家族政策とはどんなものだったのでしょうか? その骨子となっていたのは優生学思想で、「異常な」ものや「劣った」ものを排除し、「健全」で「優秀」な遺伝子を増やすことが至上命題でした。そこでは女性は「産む機械」としての役割が求められていたわけですが、まぁ柳沢元厚労相にも一定の支持はありましたし、女性の方が男性より自民党支持の傾向が強いくらいですから、そういう社会を「母親の存在といった価値が~」と賞賛する人もいるのかも知れません。

 ナチスとカトリック教会は概ね友好的な関係を保つなど、ナチスの家族観には保守的な色合いも濃く結婚や出産が強く推奨されていました。それが懐古主義者の共感を呼ぶところもあるのかもしれません。ただし致命的に違ったのはイエ制度よりもアーリアの血を増やすことが重視されていた点で、未婚女性の出産も積極的に奨励されていたわけです。曰く「ドイツ女性はすべて花嫁になれるとは限らないが、母親ならば全員がなれる」と。このナチスの「家族政策」をどこまで理解していた上で、どの立場から肯定していたのか気になるところですね。

 

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コメント (8)
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