第17回統一地方選は24日、12都道県知事選が告示され、幕を開けた。投開票日は4月10日。民主党は政権獲得後初の統一選になるが、自民党とぶつかるのは北海道と三重だけで、2大政党の対決型は前回の五つから半減。残る10選挙は不戦敗か自民との事実上の相乗りで、政権党の低迷が際立つ。東日本大震災の爪痕が生々しく残っているだけに、「防災」「エネルギー」が論点に浮上するほか、各党や各候補が「自粛」ムードに包まれる異例の選挙戦となりそうだ。
首都の顔を決める東京都知事選は、小池晃氏を推薦する共産党以外、政党の姿はかすんでいる。自民、公明は石原慎太郎氏を都議会の会派が推薦するにとどめた。民主は独自候補擁立を断念。都議会会派が渡辺美樹氏を応援するが、推薦より弱い「支援」だ。
民主の不戦敗は東京だけでなく、奈良、島根、大分の計4都県に及んだ。前回の6県より減ったが、首都決戦で土俵にすら上がれないのは痛手だ。
現職の突然の引退で混戦になった神奈川では、黒岩祐治氏に自民県連が出馬を要請したのは告示日の半月前。それに民主県連、公明党県本部も乗った。民主、自民が事実上相乗りするのは福井、鳥取、徳島、福岡、佐賀も含めて計6県。前回の2県に比べて大幅に増えた。
有力候補の「政党隠し」も目立つ。奈良、鳥取、徳島、大分の現職は初当選時は自民の推薦を得たが、今回は受けていない。
さて、さっぱり話題になることがありませんが統一地方選が迫っています。元より地方選では自民と民主の相乗りは珍しくない、自民党系会派の議員と民主党系会派の議員が手を携えて首長を支えていることも多いわけですが、果たして自分の住む自治体の勢力図がどうなっているのか、把握している有権者はどれだけいるのでしょうか。それを把握している有権者が多ければ、自民の対抗馬として民主党を選ぶなどという愚は犯さないように思いますが…… 何はともあれ一時は対決ムードを装うために相乗り禁止を打ち出していたこともあったはずが、今回の統一地方選での民・自対決は北海道・三重だけなのだそうです。どこも政党隠しが進んで無所属を装おう傾向が強いだけに、各候補の自称「無所属」宣言を鵜呑みにしてしまうようだと気づきにくいのかも知れませんが、今回は6県で民主と自民が事実上の相乗りとなっています。菅内閣は自民党との大連立を模索しており、これはあまり好評ではないようですけれど、少しでも地方政治に理解がある人ならば、民主と自民が手を握るのはむしろ自然なことに感じられるはずです。
一方で都議会における民主党は、平時は石原都政の与党として活動しながらも、選挙が始まるや野党のフリをし始めるのが常だったわけです。これにより、石原都政への批判票を民主党が掠め取り、選挙が終わったらその批判票で得た議席を石原都政に還元するという茶番が続いてきたのですが、しかるに今回の選挙戦では、当初はみんなの党が推すと噂されていた渡辺美樹を支援すると決めたことが伝えられています。労働者の端くれからすれば渡辺美樹は石原以上に最悪な候補者と言えますが、民主党支持層は何を思うのでしょうね?
ネット上の民主党支持層には反共産「党」主義者とでも呼ぶべき手合いがいるもので、日頃は石原都政に批判的な風を装いつつ「石原以外なら誰でもいい」などと言いながら、いざ対抗馬として名乗りを上げたのが共産党候補だけだったりすると途端に「民主党は何をしているんだ」と騒ぎ出したりしたものです。この手の連中が今回の選挙戦で果たして誰を推すのか見物でもありましたが、他に大きな話題があるせいか見事にスルーされている感も否めませんね。取りあえずネット上の民主党支持層は、もうちょっと自分の主張に近い候補を選ぶべきだと思います。
都知事選、石原氏優勢 追う東国原・渡辺氏 情勢調査(朝日新聞)
朝日新聞社は2、3の両日、10日投開票の12知事選のうち東京など5知事選と、静岡など4政令指定市長選について電話調査をし、取材による情報も合わせて情勢を探った。東京では4選を目指す石原慎太郎氏が優勢で、前宮崎県知事の東国原英夫氏、元ワタミ会長の渡辺美樹氏が追う展開だ。
各選挙とも3~5割が投票態度を明らかにしておらず、情勢は変わる可能性もある。
投票態度を明らかにした人を分析した。石原氏は幅広い層から支持を受け、安定した戦いぶり。自民支持層の7割を固めたほか、無党派層の支持も4割を超し、東国原氏を上回る。民主支持層は東国原、渡辺両氏と3人で3割ずつを分け合っている。
神奈川は民主、自民が事実上相乗りした黒岩祐治氏が優勢。北海道は自民、公明の推す現職高橋はるみ氏が、民主などの推す木村俊昭氏を引き離し独走の形になっている。
出馬表明まで情報番組のレギュラーだった渡辺氏だが、震災後はニュースを除くとこの日が初の出演。「居酒屋チェーン創業者ではなく候補としての訴えが伝わらない」と陣営幹部。
東国原氏の陣営幹部も「テレビ報道が少ないのは非常に痛い」と話す。立候補を巡ってはワイドショーなどで注目されたが、震災後は相次いで出演依頼がキャンセルされたという。
で、結局は石原独走態勢のようです。概ね自粛ムードは現職有利と言えそうです。主立った候補は元から知名度の高い人ばかりで、どういう主張を持っているかは今さら聞かずとも判断できそうな気もしますが、テレビ出演で顔を売ってきた渡辺美樹や東国原にとっては大きな機会損失になったのかも知れません。もうちょっと似たもの同士で票を食い合ってくれたらと事前に期待したところもあったのですけれど、意外に票の奪い合い、潰し合いは発生しないものなのでしょう。
今まで東京都知事選はメディア上では国政選挙と同レベルの扱いをされてきました。主体的に候補者の主張を調べようとせずとも、適当にニュースを流し読みする程度の受け身の姿勢でも十分に情報が流れてきたのが従来の都知事選だったわけです。それが今回は震災報道、原発報道にリソースが割かれ、そして自粛ムードも相俟って都知事選の報道は随分と控えめ、「自分で調べる」ことが求められるようにもなりました。他所の自治体の選挙とは元からそういうものですけれど、こうなると具体的な首長よりも候補者の「イメージ」がモノを言いがちです。そこで広範な支持を集めたのが石原である、と。
色々と妄言の目立つ石原ですけれど、他人に対して「欲を捨てて慎ましく生きよ」と求める感覚は石原ならずとも幅広く共有されているものと思われますし、その妄言にしたところで反応している人は決して多くないのでしょう。福島から来たというだけで旅館への宿泊を拒否されたり、スクリーニングの証明がないからという理由で介護施設への入居を断られたり等々、こうした重大な差別が発生していることにすら無頓着な世論が、石原の妄言歴に一つや二つ新しいものが加わったくらいで今さら投票先を変えるとは考えにくいところです。元より差別発言に憤るのは最初から石原に投票するつもりなどない人ばかりだとしたら、それこそ得票数には何ら影響のないことですし。
石原に関しては、都知事としての業績が評価されているという報道もあります。しかし思われるのは、格差拡大、東京一極集中の時代であれば豊かな自治体がより豊かになるのは当たり前であって、別に石原でなくとも東京であれば誰でも成功できたのではないかということです。逆に貧しい自治体はなおさら貧しくなる時代ですから、地域によっては誰がやっても失敗の烙印を押されてしまうところもあるでしょう。都市部には有利なこの時代、石原ではなければもっと上積みが見込めたのではないかと想像できないでもありませんが、それを仮定しても詮無きことです。