Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

行動計量学会@成蹊大

2008-09-04 09:53:41 | Weblog
昨日は成蹊大学で開かれた行動計量学会で「好みの計量」セッションのコメンテータを行う。そこに含まれた6つの発表の方法論は様々だが,マーケティング実務に役立てることを目指す,という点で共通している。そこで,実務的な意味での妥当性検証をどうするか,という共通の問いかけをすることにした。答えるのは大変だが,聞くのは簡単だ。

学術的な研究であれば,方法論がその前提を満たしているか,発見されたパタンの再現性が高いか,競合する理論よりも単純に事象を説明しているか,などが妥当性の基準となる。他方,実務的な方法論の提案であれば,目的を明確にした上で,既存手法を上回る水準で目的が達成されたか,費用対効果はどうか,などが問題となる。

ウェブ広告やECサイトでのレコメンデーションの場合,競合する手法を顧客ごとに無作為に割り当てて,効果を比較することができる。そして,その結果は瞬時にわかる。しかし,たとえば新製品開発の手法で同じことができるだろうか? 比較のため複数のチームを作る,なんてことをすると膨大な費用がかかるし,たとえそれができたとしても,統制できない要因が山ほど残る。

それが非常に難しいことがわかっていながら,あえてこんな問題を提起したのは,そもそも学会という場で発表する以上,知識の客観性をどう担保するかを考えることが重要だと思ったからだ。しかし,そんなことはもはや古臭い象牙の塔的発想で,中身がたとえブラックボックスでも「使えそうだ」という直感を実務家に共有してもらえればよいのかもしれない。

実務家にとっては,学会は知識の面白さや美しさに触れる場などではなく,まして容易に結論にたどりつかない議論を楽しむ場でもない。そこは,使えそうな専門家なり機関なりを見つける場だということは,かつて企業にいた人間として,十分理解できる。だから二次会でも「営業」にいそしむ人が現れたりするわけだ…。

ところで,今回は MacBook Air 上で Keynote を使ったプレゼンのデビューとなった。そして同じ日に,吉祥寺駅前で iPhone 3G を購入。手にした質感,鮮明な画面,さくさく動くタッチパネルはなかなかいい。ただ,指による文字入力はまったくダメ。店頭で延々と聞かされた,アップルのサービスポリシーも傲慢すぎる。

今日は大学に戻って,来週から始まる長崎での非常勤の準備をしなくてはならない(実はそれが iPhone をあわてて買った理由でもある)。そして「引っ越し」準備はまだ終わっていない。