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Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

2012 年を振り返る(世のなか篇)

2012-12-31 17:02:07 | Weblog
今年の社会や経済を振り返って自分として最も重要なニュースと思うのは,総選挙での圧倒的な勝利によって安倍政権が誕生(復活)したことである。まずは,その非常にアグレッシブな金融・財政政策(アベノミクス)の経済的・政治的効果がどうなるかが気になっている。

制限なき金融緩和と巨額の公共投資(国土強靱化)で経済成長を軌道に乗せることができれば,財政赤字はいずれ解消するというのがシナリオのようだ。反対する立場からは,たとえば,長期金利が上昇して国債価格が暴落して・・・などといったリスクが指摘されている。

先日,経済学者を含めた会合でアベノミクスをどう評価するかという話になった。最も専門が近いはずの研究者の答は「わからない」というもの。門外漢にあれこれ語っても仕方ない,ということがあったにせよ,専門家にとって簡単な問題ではないことは確かなようである。

そもそもアベノミクスでは,複数のお互いに対立する「学説」が同居している。金融政策を重視するいわゆるリフレ派は財政政策の効果を疑問視し,むしろ規制緩和を重要視するが,積極財政を主張する国土強靱派はそうした主張を新自由主義だとして嫌っているようだ。

アベノミクスへの反対論が主流派経済学者に多いのは,現在の日本経済はそれなりの均衡にあると見ているからだろう。日本経済を成長させるには,一時的効果はあっても長期的副作用の大きい需要側の刺激より,規制緩和やイノベーションによる供給側条件の改善が重視される。

いずれの主張も,いくつか検証不能な前提から紡ぎ出された物語だとみなすことができる。前提のいくつかが変われば物語の落ち着く先も変わる。わずかな摂動が系の長期的な軌道を大きく変えてしまうとしたら,その帰結は「わからない」という専門家の答は正しいといえる。

入り乱れる各種の言説は,それぞれ現実を部分的に反映しているのかもしれない。現実の経済は不均衡が持続する動的な複雑系であり,アベノミクスが期待する軌道は他の多くの軌道と同様に可能だという見方はあり得るだろうか。その場合も制御困難性が強調されることになる。

アベノミクスは,重病を患っている患者を前に,リスクを恐れずあらゆる治療法を施そうと主張する立場に,反対論は自然治癒力を信じ,リスクを避けることを主張している立場に喩えることができる。不確実・不可知な経済に対して,どこまでリスクをとれるかが分かれ目だ。

こうした政策が短期的に効果を出せば,来年7月の参院選挙で安倍政権が信認を得る。その結果,第三極も合わせて憲法改正が議題に上る状況が生まれるだろう。それはソ連崩壊や大震災・原発事故に匹敵する,ぼくが生きているうちに遭遇するとは思わなかった事態である。

ぼく自身は憲法を一字一句変えてはならないとは思っていないので,改正を巡る議論には是々非々で臨みたい。そうだとしても,国の成り立ちの基本に関わる問題なので,そこでの選択がのちの歴史に大きな影響を与えることは確かだ。その意味で来年は緊張に富んだ年になる。

2012 年を振り返る(自分篇)

2012-12-31 12:49:47 | Weblog
まずは仕事の話から。今年の年初に掲げた研究上の目標6つのうち,1つ(アフィリエイト広告の実態調査)はある程度遂行,もう1つ(乗用車の重装備が市場成果に与える影響)は年末ぎりぎりに着手したものの,残りはほぼ手つかずに終わった。ぼくの生産性はこんなものである。

「アフィリエイト広告」については研究助成をいただいた吉田秀雄記念事業財団に報告書を提出し,その後シミュレーション分析を拡張し続けて,その都度成果を ISMSJIMSWCSS といった学会で発表した。また,補足的な計量分析の結果を JASMIN で報告した。

アフィリエイト広告はスパムやステマということばを連想させることが多く,まともに研究されることは少なかった。しかし,この研究の成果に対して吉田秀雄財団から奨励賞をいただけたことは,こうした分野を研究する価値が認められたことを意味する。素直に喜びたい。

現在の形態のアフィリエイト・プログラムが今後どれだけ続くか分からないが,もっと多様な形での消費者生成型広告あるいは消費者駆動型広告と呼ぶべきものが今後拡大していくことは間違いない。その潜在的なメカニズムやダイナミクスについて,さらなる研究が必要である。

思い返せば,今年学会で発表した内容はアフィリエイト広告関係ばかりであった。この調子でいくと「アフィリエイトの水野」というポジションを獲得できるかもしれない。とはいえ,在庫はまだ多数あるし(現在1つを執筆中^^;),新たに取り組みたい課題もいっぱいある。

教育面では学内(富野先生)や学外(中川先生)のゼミとの合同イベントを実施したり,来年度の関東学生マーケティング大会への参加を決めたことが新機軸といえる。後者はゼミの活動内容を多少「アカデミック」な方向へ転換することを意味する。卒論を書かせる以上,それが自然にも思える。

明治大学ラグビー部のごとく「前へ」の精神でいこう。