Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

ご恵贈感謝-マーケティング実践

2012-12-24 09:53:23 | Weblog
ご恵贈御礼シリーズの最後(多分...)は,一般のビジネスパーソンや学生向けに書かれた書籍を紹介したい。

まず古川一郎(編)『地域活性化のマーケティング』。日本マーケティング大賞を受賞した地域活性化の事例が紹介されている。「地域活性化」に関する本は多いが,巻頭・巻末にある編者によるまとめが頭の整理に役立つ。

地域活性化のマーケティング
古川一郎(編)
有斐閣


上田隆穂・兼子良久・星野浩美・守口剛『買い物客はそのキーワードで手を伸ばす』は,消費者の「深層心理」を捉えてプロモーションに活用する,ユニークな方法を提案する。実例が豊富で,実務家にとって刺激的な本である。

買い物客はそのキーワードで手を伸ばす
上田隆穂・兼子良久・星野浩美・守口剛
ダイヤモンド社

奥瀬喜之・久保山哲二『経済・経営・商学のための実践データ分析』。著者たちの講義経験から作られた,主にマーケティングデータを想定したデータ解析の教科書である。コンパクトだが,カバーしている手法は幅広い。

前半では Excel を使った分析が紹介されているが,後半で紹介される手法は,統計パッケージがないと実行できない。授業で使う場合は教師が補足すればよいが,自習しようとする読者には後半で苦労するかもしれない。

経済・経営・商学のための実践データ分析―アンケート・購買履歴データをいかす (KS社会科学専門書)
奥瀬喜之・久保山哲二
講談社

研究者にとって,一般向けの啓蒙書の出版は社会への貢献につながる。以上の3冊はそれぞれタイプは違うが,そうした貢献を目指しており,自分も見倣いたい。著者の皆様には,ご恵贈に御礼申し上げます。

ご恵贈御礼-消費者行動

2012-12-24 09:44:19 | Weblog
ご恵贈御礼シリーズその4。

最近出版された消費者行動の教科書のうち,以下の2冊はいずれもコンパクトながら内容が充実しており,もし授業でどちらかを使うとしたら非常に悩むことになりそうだ。ただし,それぞれの特徴は,副題に端的に現れている。

守口剛・竹村和久『消費者行動研究』の副題は「購買心理からニューロマーケティングまで」。そこから分かるように,行動的意思決定理論(行動経済学)や神経科学といった最先端の認知科学につながろうとする意欲作である。

ありがたいことに「研究の最前線」にエージェントベースモデルまで入れていただいた。したがって,消費者行動研究の最先端ないし未来を知りたいという研究志向の強い読者には,本書は格好の手引き書になると思われる。

消費者行動論―購買心理からニューロマーケティングまで
守口剛・竹村和久(編著)
八千代出版

一方,青木幸弘・新倉貴士・佐々木壮太郎・松下光司『消費者行動論』は,副題「マーケティングとブランド構築への応用」が示唆するように,消費者行動研究の成果を実務に応用したいという気持ちの強い読者に向いている。

本書が有斐閣アルマ・シリーズから出ていることからしても,現時点で最も正統的な消費者行動論の教科書といえるかもしれない。もちろん,両方読めば鬼に金棒である。いずれもご恵贈いただき,ありがとうございました。

消費者行動論―マーケティングとブランド構築への応用 (有斐閣アルマ)
青木幸弘・新倉貴士・佐々木壮太郎・松下光司
有斐閣