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Mizuno on Marketing

あるマーケティング研究者の思考と行動

ご恵贈御礼-マーケティング

2012-12-23 11:05:30 | Weblog
マーケティング研究の最前線にいる若手・中堅の研究者からも骨太な研究書をご恵贈いただいた。

久保田進彦『リレーションシップ・マーケティング』は,何となくは知られているが,はっきりは理解されていない(少なくともぼくにとって)この概念を包括的に整理したものである。著者らしい緻密さが行間から伝わってくる。

リレーションシップ・マーケティングは B2B マーケティングと重なるし,サービス・マーケティング,あるいは CRM とも重なる。関係性や絆という概念を中核に置くので社会学,社会心理学や組織論とも密接に関連する。

そもそもリレーションシップ・マーケティングとはマーケティング活動の一分野なのか,それともパラダイム転換なのか,それらは従来のマーケティングの枠組みとどういう関係にあるのか。本書から学ぶことは多そうである。

リレーションシップ・マーケティング --コミットメント・アプローチによる把握
久保田進彦
有斐閣


寺本高『小売視点のブランド・コミュニケーション』は,著者が流通経済研究所とともに行ってきた研究の集大成である。前半では店内プロモーションの効果分析,後半では「情報発信型消費者」に関する分析が集められている。

これらの研究がユニークなのは,店内プロモーションを行動への刺激としてだけでなく,ブランドに関するコミュニケーションと見ている点であろう。したがって,購買の前段階である態度変容に対する効果が重視されている。

広告とセールス・プロモーションは昔からよく比較される。店内もまたコミュニケーションの場だという見方はその通りだが,広告のような店外コミュニケーションがどう関係するのかが昔広告業界にいた人間としては気になる。

小売視点のブランド・コミュニケーション
寺本高
千倉書房


B2B,流通はいずれも自分にとって苦手な領域。いずれはじっくり勉強しなくてはならない。そのときはこの2冊が導きの糸になるだろう。ご恵贈いただき感謝いたします。

ご恵贈御礼-国際マーケティング

2012-12-23 10:58:10 | Weblog
今年ご恵贈いただいたが紹介できなかった本の紹介第2弾。グローバルマーケティングも自分にとって知識が浅い分野の1つである。それに関して,今年頂戴した著作を紹介する。いずれも本格的な研究書である。

朴正洙『消費者行動の多国間分析』はブランドイメージに対する原産国(Country-Of-Origin: COO)効果について,とりわけ日本の周辺国の自民族中心主義(エスノセントリズム)や敵対心を扱っている点に特徴がある。

中台韓は日本にとって非常に重要な貿易パートナーでありながら,お互いに感情的な対立を孕んでいる。それが消費者行動にどう影響するのかを多面的に調べた書籍は他にないと思う。タイムリーかつ貴重な著作である。

消費者行動の多国間分析
-原産国イメージとブランド戦略
朴正洙
千倉書房

この分野の第一人者の一人で,シニアな同僚でもある諸上茂登先生の新著は,あえてグローバルマーケティングとはいわず「国際マーケティング」とタイトルに書かれている。そこに著者の主張が端的に現れている。

国際マーケティング論の系譜と新展開
諸上茂登
同文館出版

本書は著者がこの十年ほど発表してきた論文をまとめたもので,グローバル化の困難性を重視する方向へと研究が進展したと述べられている。このような考え方は Ghemawat らによっても支持されているという。

日本企業の生き残りを考えると,(広義の)グローバルマーケティングの需要性は増す一方だ。自分の研究はなかなかそこまで及ばないが,知っておくべき知識であることは間違いない。ご恵贈感謝申し上げます。